京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

「さあ、こっちにおいで」

2017年11月21日 | こんなところ訪ねて
去る土曜日、友人から「彼女がその名を知らない鳥たち」を観に行かないかと映画への誘いが入ったのでした。内容のあらましも知らないまま気楽に乗っかって、なんとも後味悪く見終えました。話しも弾みません。それなら、と「もみじの永観堂」へ案内することにしました。私もモミジの時季に参拝したことがありません。
東山山麓にある南禅寺から少し北へ、地下鉄の蹴上駅で降りて歩きました。総門前の南北の道は狭くって、車と人の交通整理です。内へとくぐり入れば「モミジと壁に手を触れないでくださーい」と参道の脇に並び立つ若者から注意喚起の声が繰り返されていました。「大変なとき来ちゃったね」、と。



前回ここに来たのは、あるボランティア団体のハイキングで立ち寄ったときで7、8年は前のこと。「昨日、ここに死体が埋まっていたのよ」と木の根元を指しながら、前夜観たテレビドラマが話題になったものでした。
「もみじの永観堂」、モミジは約3000本あるとか。ヤマモミジや小型の愛くるしいイロハモミジなど素晴らしい美しさです。燃え上がる一番の盛りに出会えるのは、きっとほんの一瞬のタイミング。見頃を迎えていた紅葉の美しさにも、真っ赤な葉もあれば、橙色、黄みがかった葉もあり、まだ青葉に近い葉があるかと思えば、一足先に既に紅はくすみ始めたそれもあり、とその一葉、一葉の姿は様々です。あのみずみずしかった新緑の、いわば老化現象などと重ねては興が醒めるのかしら。


永観堂といえば、首を左に傾げ、振り向いた姿の「みかえり阿弥陀如来像」です。像高は77センチ。須弥壇の真正面からではお顔がほとんど見えず、右手側面に回ると近くから拝顔できるのです。
7代住持となる永観が、念仏行で念仏を唱えながら阿弥陀如来像の周りを回り続けていた時、阿弥陀如来が壇から降りてきて永観を導くように先に立って歩き始めた、とか。驚いて立ちすくむ永観を振り返って、阿弥陀如来は「永観、遅し」と言葉をかけたそうです。感涙し、合掌すると阿弥陀如来はその時の姿のままになった、とエピソードが伝わるようです。
「みかえり」の意味を講釈し出した若いカップルの女性の言葉が耳に入ってきて、聞いてみたいと思ったのですが立ち上がりました。「代償」としての意味合いでしたから、はて…。阿弥陀堂を出て、下がったところからお堂を振り返ってみました。


朝方の天気も回復して、秋の午後の日差しはどこかしみ入るやさしさです。徐々に陽が傾いていくのが感じられる午後3時過ぎ、ここを後にしました。これは、孫娘と吉野山を巡る楽しみがお流れになってしまった11日のことでした。

びわ湖北部にある石道寺(しゃくどうじ)の、紅をひとはけ唇に残し、右足親指を上げて、今にも一歩踏み出すかの十一面観世音菩薩像が思い出されます。「さあ、こっちにおいで」との如きここ永観堂の珍しい姿もあれば、浄土真宗の阿弥陀さまは「私はここにいますよ」と私たちの前にしっかとお立ちです。
――などと思うこといろいろです。 



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11 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは (Rira)
2017-11-21 16:42:34
紅葉の時節となりました🍁
色合いが好くて日本の四季の素晴らしさを感じます。
金曜日は今年最後の当番でお寺へ行きます。
紅葉が綺麗じゃないかと思ってます。
お寺で 南無阿弥陀 とか 阿弥陀さま とか よく耳に…。
有り難いです(*^^*)
やっぱり名所ですね。 (ゴマメのばーば)
2017-11-21 21:06:19
こんばんは。
永観堂、何度か訪れていますが、残念ながら紅葉の季には ご縁がありませんでした。
さすが、観光客も多いですね。
永観堂で買い求めた「見返り阿弥陀さま」の写真、今も私の部屋で、「見返って下さっています」。
石道寺・渡岸寺・・・みんな みんな懐かしく。
たしか井上靖の『星と祭り』の中に石道寺も記されていたように覚えています(記憶違いかもしれませんが)。
懐かしく、美しいものを見せて頂きました。
ありがとうございました。
紅葉、Riraさん (kei)
2017-11-21 22:16:42
こんばんは。
その土地土地で今の季節を堪能できますよね。
Riraさんはどのようなところでお愉しみなのでしょう…。
毎日の暮らしの中でも、街路樹や公園でさえ充分に今を楽しんでいます。
映画の後味は一掃されました。

『星と祭』、ゴマメのばーばさん (kei)
2017-11-21 22:31:00
こんばんは。
永観堂前のバス停は積み残しが出る状態です。
参拝されてらっしゃるのですね。
石道寺、渡岸寺、どちらも『星と祭』に。お聞きするだけで嬉しいです。
やはり作品内にありました福林寺の観音様を拝観したいと思っていたのですが、今年もまた見送りかもしれません。
須弥壇の脇に回って、しばらくその場を離れられませんでした。
いろいろなことを思って、胸が熱くなりました…。



紅葉の京都 (Rei)
2017-11-22 17:15:53
こんばんは!
京都は春夏秋冬、どの季節もよろしいと思いますが、
紅葉は格別と思います
春夏秋冬と申しましたが、夏はちょっと・・・・
猛暑の祇園を歩きました。
「哲学の道」冬にも歩いたのですが
記憶に残っています。

ハイキング、残念でしたね。
永観堂 (荒 野人)
2017-11-22 20:05:14
永観堂を始めとする、古都の紅葉。
その赤さは、格別です。
京都らしさ、とは紅葉の赤なのかもしれません。

そう思いつつ、ここ関東の赤も綺麗ですよ。
京都の赤に伍するとは思いませんが・・・。

一山、紅葉の平林寺の紅葉は見応えがあります。
来週早々にも、出かけるつもりです。
お見せできると思います。

京都の真似っこ、の風情も漂わせつつの紅葉です。
最近、佇まいという言い方を「居住まい」に変えて表現しようかと思い始めております。
齢を重ねた人の居住まい、は大切ですからね
佇まいと居住まい (荒 野人)
2017-11-22 20:59:02
少し敷衍しますね。
勿論、佇まいは他者。
居住まいは自分。そう分けると思いますが・・・。
敢えて、居住まいを他者として見る事。
そのように評価する事を課する、そのように云いたいのです。舌足らずでしたので、補足致します。
この場合、佇まいは「結構」とでも云いましょうか!
そんな切り分けであります。
見頃です、Reiさん (kei)
2017-11-22 22:19:57
こんばんは。
何といってもたくさんの人ですから、人の出の多いところは極力避けがちです。
そう言いながらも、賑やかさの中に加わりたくもありで、うろうろしております。
ハイキングと、それに「国宝」展もいまだ、です。
1時間待ちまでして、もういいかな、という程度です。
京都以外に、行ってみたい場所はありますよね。

お風邪など召されませんように。
居住まい、荒 野人さん (kei)
2017-11-22 22:49:16
こんばんは。

平林寺は名前だけは存じております。
風土に合って、やはりそれぞれの美しさがあるように思います。
楽しみに拝見させていただきます。

「佇まい」と「居住まい」、難しいお話ですね。
「居住まい」とは、外観的なものではないと思います。そのお方の生き方であり、そこから滲む品性ととらえればよいのでしょうか。

などと思いましたが、少し違う。…
居住まいを他者として見ることでt評価していってみようと?
やはり少し考えさせていただきます。

いってきまぁす (Rira)
2017-11-24 05:36:49
おはようございます。
今日は山のお寺に参ってきます。
紅葉が綺麗だと思います、撮影の時間があると好いのですが。
もちろん車で登りますが、階段があって寒い時は気合い入れて歩きます。
今、布団にもぐってiPadでやってますのょ (笑)
そろそろ起きます(^^)それではまた。。

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