地図のいろいろ

半世紀も地図作りに携わっていましたので、この辺で振り返って地図を見直してみようかな~・・・。

集成図

2008-01-31 11:10:01 | Weblog
「集成図」は、読んで字のごとく、普通の地形図では目的に関係なく経緯度で画一的に区切っているのを、観光や登山の目的にかなった地域の地図を寄せ集め、縮尺や方位や用紙の大きさも変えて使いやすく作ったものです。
しかし、「京都」など需要の多いところを除いて、初版のみで打ち切られているようで、現在発行されえている地図は情報が古いですね。
今後の新企画も今のところ予定はないようで、民間に任せる分野と考えられているようです。「民に出来ることは、民に・・・」の典型では・・・

上の集成図は「阿蘇・九重」の一部です。
山岳地図として利用できるよう、登山道、山小屋、キャンプ場等も記載されています。さらに、バス路線とバス停名、山小屋は有人、無人の別、水場、駐車場まで載せてあってよく出来ています。
ただ、発行年次は昭和53年(1973)で、35年も前のものです。登山には使えないですよね・・・
また、親切心で、等高線にボカシを添えて立体的に見せようと工夫のあとは見れますが、かえって等高線や植生の色分けが読み難くなっています。

それに、都市部の地図として、何故か「水戸」、「宇都宮」、「千葉」のみが四六全判(78.8:109.1cm)で出されています。その意図は?

現在まで10面が刊行されています。
1:25,000  「京都」(日本語版と英語版) 
1:50,000  「大山・蒜山」、「八ヶ岳」、「阿蘇・九重」
1:100,000 「支笏・洞爺とその周辺」、「千葉」、「宇都宮」、「水戸」、「南関東」  
1:300,000 「北方四島」 

一応、「地図のいろいろ」の一つとして、とりあげてみました。

火山土地条件図(昭和新山)

2008-01-30 08:41:03 | Weblog
「火山土地条件図」を再度とりあげてみました。
それは、私の頭に生々しい記憶が残っている昭和新山をもう少し調べてみたかったからです。

昭和新山は、1943年12月から1945年9月までの2年間に17回の噴火で、平地に忽然と表れた山だそうです。
その、驚いたことの一つに、
噴火の時期(昭和18年:19439)が,太平洋戦争中でもあり、世間の動揺を抑えるために噴火の事実は伏せられ、公的な観測すら行えなかったことと、
当時、有珠山麓の麦畑だった地面から突如活動を開始し、火山が出来たことです。

それらのことが、生々しく伝えられているのは、例えば、
①、山が赤色に見えるのは、かつての土壌が溶岩の熱で焼かれて煉瓦のように固まったとか・・・
②、中腹には、河原にあるような丸い石が、溶岩で持ち上げられて、場違いに転がっているそうですとか、・・・
③、かつてはこの地域には「フカバ」という集落があったとか・・・この集落名は、鮭鱒の孵化場があったことによるとか・・・
④、胆振縦貫鉄道が通る のどかな田園地帯であったが、火山の隆起とともに集落は消滅し、その痕跡が鉄道の橋脚跡などに残っているとか、などなど・・・

また、当時地元の郵便局長だった三松正夫氏が、火山の徹底的な保護のため、家と農場を失った住民から、山になってしまった土地を買い取ったそうです。

この人は、北海道伊達町に生まれ、北海中学を中退後、壮瞥郵便局に勤め、郵便局長になった人で、アマチュア火山研究家でもあったそうです.

それにしても金持ちだったのですね。火山一つ買い取るなんて。



昭和新山(しょうわしんざん)は、標高398mですが、現在も温度低下と浸食などによって年々縮んでいるそうです。

上の地図のピンク色の部分は「潜在円頂丘」で、「粘性の高いマグマが地表に現れなかったもの」です。
赤い部分は、「溶岩円頂丘」といわれ、マグマが地表に現れた部分です。
粘性の高いマグマのため、ハデに爆発はせず、じわじわ盛り上がってきてドーム状になる火山です。等高線からも読み取れるように、帽子のようなこんもりした山ですね。現在も噴気活動をしています。



電子国土サイト

2008-01-29 20:49:36 | Weblog

今日は、私の所属している山の会のハイキングの下見に行ってきました。
グループの人たちを案内するには、下見は欠かせませんね。今日も、標識や分かれ道で躊躇したところが結構ありました。1:25,000地形図には記載してない登山道が結構あります。
持参したのは、国土地理院の「電子国土」を検索して印刷した地図です。
(実は、インクが切れていてカラーに出来ないので取り敢えずグレーで掲載しました。後日切り替えます。)
検索機能を使って、日本地図センターの「電子国土」を呼び出し、必要とする地区の地図を拡大・縮小してから、必要区域を特定して印刷すればいいのです。
縮尺は線縮尺で、かつ余り厳密ではないようですが、ハイキングですからね・・・。
これに、ルートやコメントを入れるには、私は“Illustrator”で地形図を背景データにし、その上に幾つかの別レーヤーで入力します。
現在、地図ソフトは色々でており、どれが便利なのかよく解りません。
追々掲載しながら比較検討していきます。
ちなみに、今回の「電子国土」は正しくは「電子国土Webシステム」と云われ、平成17年3月から、国土地理院が一般公開した新しい仕組みの電子地図のです。
インターネット上で配信されている縮尺1/25000の地図データで、自由に、しかも無料で利用できます。
パソコンでカンタンに取り扱えるし、拡大や縮小が自由にできます。
さらに、この地図には、全国の公共施設の情報が載っていますので、これだけでもけっこうお役立ちです。
オリエンテーリング・マップを作るため、人工情報を削除したり・・・掲載情報の取捨選択も出来ます。
便利になったものです。活用しなくっちゃね。




火山土地条件図

2008-01-28 09:50:55 | Weblog
国土地理院では、火山噴火予知や防災対策の基礎資料として「火山基本図」(2008.1.26掲載)と「火山土地条件図」を作成しています。
作成している火山は、活動的で特に重点的な火山(13火山)と潜在的爆発活力を有する火山(36火山)です。
これまでに完成した「火山基本図」は31火山、
今回とりあげた「火山土地条件図」の火山は次の14火山です。

十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、安達太良山、磐梯山、草津白根山、
富士山、伊豆大島、三宅島、阿蘇山、雲仙岳、霧島山、桜島  
(縮尺 1:15,000~1:50,000)

記載内容は
1、 過去の火山活動によって形成された地形や噴出物の分布(溶岩流、火砕流、スコリア丘〔黒色多孔質の火山砕屑物〕、岩屑なだれ等)、
2、 防災関連施設・機関、救護保安施設、河川工作物、観光施設等 です。

火山は、活動が静かな時期にはその山麓の住民に温泉などの恵みを与えてくれますが、ひとたび活動が始まると、噴出する火山岩塊や火山灰、溶岩流などの直接災害、
土石流や泥流などの二次災害により多大な被害を与えます。

2008年7月7日~9日(3日間) に予定している洞爺湖サミットは大丈夫なんでしょうか?
開催されるウィンザー・ホテルは、洞爺湖西岸の「基盤山地斜面」の地盤の確りした山に位置していますが、・・・?
なにしろ、大有珠、小有珠、昭和新山など有史時代に入って7回も火山活動をしていますし、洞爺湖温泉も1910年の噴火の後に湧き出たもので、常に火山災害の危険をはらんでいるそうです。

この一帯は地盤も弱く、マグマ上昇の場となるだけでなく、地殻変動も受けやすいといわれています。






北方四島

2008-01-27 11:23:36 | Weblog
北方四島の中の国後島の「古釜布」(フルカマップ)の1:50,000図です。
現在、北方領土は1:50,000図で42面作られています。
現地調査の出来ない現状では実測図の1:25,000図は作れませんので、この縮尺図が、基本図になります。
この地図はどのようにして作られたか、各地図にその経緯が示されているので引用します。

「1、この図は、基図(大正11年測量平成3年資料修正5万分 1地形図)を《茶色》で印刷し、その上に地球観測衛星スポット1号による昭和63年12月1日観測の画像上で判読できた道路、建物及び飛行場を《黒色》で、大規模な改変地(地形又は植生を人工的に変化させた土地)を《墨網色》で、水面を《水色》で加刷したものである。
なお、現地調査は行っていない。
2、基図の水面と《水色》で加刷した水面との間には,基図の測量誤差、経年変化等により相違が見られる場合がある。」

よくぞ、作ってくれたという感じです。


1945年9月1日、大日本帝国に宣戦布告を行っていたソ連軍が国後島に上陸し、古釜布も占領した。既に大日本帝国はポツダム宣言の受諾を決めて無条件降伏をしていたが、調印はまだ行われておらず、法的には第二次世界大戦の戦闘状態が続いていたという状況・・・??


その後、ソ連政府は独ソ戦によって荒廃した自国の西部地域、ロシア西部やウクライナ等からの移民を送り込んで来ました。
移住者には他のソ連国内と比較して2倍以上の賃金を支給し、定住人口の移住を進めたそうです。
その際、ソ連はかつて日本人が住んでいた泊ではなく、その北にある高台地域に新たにロシア風の小都市を建設し、ユジノクリリスクと名付け、行政の中心地としました。
島内には新たに空港も造られ、港と並び、町の玄関口となりました。
気象は、寒流の影響を受け、夏でも冷涼で、霧も多く、航空便の欠航がよくあるそうです。冬は厳しく、しばしば海が大荒れになりますが、それでもオホーツク海側と比べ、流氷の影響を受けにくく、不凍港と見なされ重宝されているようです。


火山基本図

2008-01-26 08:12:31 | Weblog
国土地理院では、火山噴火予知や防災対策の資料となる「火山基本図」と「火山土地条件図」を作成しています。
作成される火山は、活動的な火山(13火山)と潜在的爆発活力を有する火山(36火山)で、これまで「火山基本図」は31火山、「火山土地条件図」は14火山を作成されました。

火口跡、火砕丘、断層崖等が記載されているほか、火口等の地表温度の分布図も挿入されています。(上の図は浅間山の地図に挿入された「地表温度分布図」です)

関東甲信越地域では
草津白根山
浅間山I~II
「富士山」(「富士山頂」「御庭」「宝永山」「白塚・桧塚」)
「東伊豆単成火山群」(「遠笠山」「大室山」「小室山」)
伊豆大島I~II
三宅島I~VI
焼岳
御岳山I~IV
の8火山、21面が発行されています。

富士山は、山頂を中心に南北12キロ、東西16キロの範囲を縮尺1万分の1で「富士山頂」「宝永山」「御庭」「白塚・桧塚」の4枚に分けて作成されています。
富士山噴火に備えたハザードマップ(災害予測地図)の基礎的な地図情報として作られたものです。
従来は省略されていた小さい砂防ダムなどの防災施設や登山道なども記載しています。
 

土地利用図

2008-01-25 11:40:56 | Weblog
土地利用状態を現地調査や空中写真、資料などによって調べ、地図に色分けして表したものです。
都市の商業や工業などの機能区分、農地、林地などの植生区分などが表示されています。
6色刷りの美しい地図なので、見るだけでも楽しめます。
また、郷土の地理研究、自然保護や環境問題など、幅広い分野でも活用されています。
最近、環境問題や過疎化の問題が賑やかになりましたが、土地利用図を基に、指標生物を現地調査し環境マップを作るなど緻密な対策が必要な時期ですね。(「環境マップ」は近いうち、調べてみます)
土地利用図が見直される時期でもあります。

土地利用図には、2万5千分1、5万分1、20万分1があります。2万5千分1土地利用図は、全国の平野部をほぼカバーしています。
現在販売されている面数は次の通りです、一部在庫切れや絶版もあるようです。
1:25,000図・・・1,194面
1:50,000図・・・45面
1:200,000図・・・123面

1)1:50,000土地利用図
総合開発地域に指定された地域を対象に、国土地理院と地方公共団体が協力調査し、1953~1967年までに約300面が作成されました。農林業に重点を置いた区分です。一般には刊行されていません。(国会図書館には所蔵されているようですが)
 また、1967年からは国土地理院の刊行図となり、1972年までに50面が刊行されています。

2)1: 25,000土地利用図
1974年の国土利用計画法成立にともない、作成されたものです。
当初の農業を中心にした土地利用から、社会のニーズにより都市機能を中心に作成されました。
1988年までに、全国の平野部約1200面(ほぼ全域です)が整備されています。35の土地利用区分で表現されています。
現在の土地利用図が作られて比較出来れば、過疎化の様子が明確になり、対策を検討する上でも貴重な資料になるはずですが・・・

3) 1: 200,000土地利用図
1: 25,000土地利用図のデータと、国土数値情報の土地利用メッシュデータを基に編纂された地図で、1984, 85年に発行されています。小笠原諸島と北方領土を除く日本全域において整備されています。


メッシュ番号

2008-01-24 00:13:00 | Weblog
わが国全体を「標準地域メッシュ」で区分する場合、全国の地域を1度毎の経線と、3分の2度(40分)毎の緯線によって区切った「第1次地域区画」が作られます。
それは、都合のいいことに、既製の1:200,000地勢図の区画に一致しています。
その番号は、南端の緯度を1,5倍した2桁の数字と、西端経度から100を引いた2桁の数字とを組み合わせて出来た4桁の数字をあてることになっています。
例えば、1:200,000「東京」は、南端の緯度は35度20分ですから、1,5倍すると「53」になります。また、西端緯度は139度ですから、これから100を引くと「39」になります。これらの数字を組み合わせた「5339」が1:200,000図の「東京」のメッシュ番号になります。
つぎに、その1:200,000図をタテ、ヨコ8等分して「第2次地域区画」が作られます。
これは、丁度1:25,000図に該当します。
これに、経線は南から、0,1,2・・・7と、緯線は西から0,1,2、・・・7の番号を、経線・緯線の順に組み合わせでつけます。「東京主部」は「64」です。第1次メッシュ番号と組み合わせて、「5339ー64」になります。
「図番号」は「NI-54-25-2-4」ですが・・・2つの整理番号を併用するのは??
多分、近いうちに、メッシュ番号に統一されるでしょう・・・?
その「第2次地域区画」番号が、地形図の右端上に記載されています。

ところで、メッシュはこんな粗い区域では役に立ちません。これら区画に色々な統計データを記載して、情報分析するには1k㎡とかそれ以下の区域のデータでないと。
そこで「第3次地域区画」が設けられています。これは、さらにタテ、ヨコ10等分して「00」から「99」の番号でその位置を表示しています。国勢調査の情報はこのメッシュで表示・分析されます。
さらに2等分、4等分した「分割地域メッシュ」が使われることもあります。
これらメッシュデータは、行政区画が変わろうとも不変です。経年変化の比較には大変貴重なデータになります。
メッシュ図についてはまた後日・・・


図番号

2008-01-23 11:44:21 | Weblog

わが国の地形図には、各図の左上に「図番号」が、右上に「メッシュ番号」が示めされています。
「図番号」は国際100万分1の枠組みの中で、整理された番号で、大変グローバルに位置が把握できて便利です。
まず、地球の北半球をN(南はS)、子午線上を、赤道から南北へ向かって4度毎にABCD・・・Tと緯度80度まで区分けしています。
更に日付変更線から経度6度毎に東に一回りした番号、つまり01~60までつけています。
従って、沖縄本島はNG-51、札幌はKK-57、東京はKI-54になるのでしょうか。
また、丁度いいことに、わが国の1:200,000図は、この区切りと図域の線が一致していて、国際図一区画の中に1:200,000図がタテ6枚、ヨコ6枚の36枚が収まります。その番号を右上から左下へ、下方へ向けて1,2、・・・36とつけています。
したがって、1:200,000「東京」はKI-54-25に成ります。
同様にして、1:200,000図を、タテ、ヨコ1/4づつに区切って1:50,000図の番号としますので、「東京西北部」はKI-54-25-6となり、1:25,000の「赤羽」はKI-54-25-6-1になります。
それが「図番号」として地形図の左上に示されています。
明日は、数値地図のための「メッシュ番号」について書いてみましょう。今日はもう時間がないので失礼します。




植生記号(地類記号)

2008-01-22 12:01:25 | Weblog
植生記号(以前は地類と云っていました)は、土地の使われ方や植物の種類などをあらわします。
既耕地と未耕地に分けられ、既耕地は一定の間隔で記号を表示しますが、未耕地の場合は、ポツンポツンと他の表示の邪魔にならないよう表示しています。

現在の1:25,000図の記号は昭和61年図式です。
戦前の地図には、植生記号の間に点を添えて通過困難な地域を表示していました。これは密林地帯で見通しの悪い地域や、つる草などで通過が難しい地域を表示したものです。
陸軍歩兵が歩きやすいかどうかを目的にしていたからです。更に、遮蔽物になるかどうかで、畑の界に桑が植えられている場合は、畑全体が桑畑のごとく表示されていたそうです。
歩兵中心の古き時代の軍用地図ですね。現在は省略されていますが・・・

さて、現在の1:25,000地図記号ですが
既耕地は
田は、稲、蓮、い草、わさび、せりなどを栽培している水田を表しています。稲を刈り取ったあとの形です。
畑は、陸稲、野菜、芝、パイナップル、牧草などを表しています。
果樹園は、リンゴ、ミカン、なし、もも、くり、ぶどうなどを表しています。
桑畑は、桑を栽培している土地をあらわしています。
茶畑は、茶を栽培している土地をあらわします。茶の実を半分に切った形です。
その他の樹木畑は、きり、はぜ、こうぞ、庭木や苗木などです。

未耕地は
広葉樹林は、木の高さが2m以上で、すき間なく生えているところをあらわします。2m以下でも植林している所はあらわします。
針葉樹林は、木の高さが2m以上のマツやスギなどがすき間なく生えているところをあらわします。スギなどの苗木を植えたところは、木の高さが低くても表します。
ハイマツは、高い山で木の高さが低いマツの仲間のハイマツ(這松)などがすきまなく生えているところをあらわします。
竹林は、竹がすきまなく生えているところをあらわします。
シノ竹(笹)は、笹または篠竹がすきまなく生えているところをあらわします。竹林の記号と似ているから注意してね。
ヤシ科樹林は、ヤシ科植物(フェニックス、シュロ、ナツメヤシなど)、大型のシダ植物(ヘゴなど)、大型の熱帯植物(タコノキ、ガジュマルなど)が生えているところをあらわします。
荒地は、利用されず荒れたままになっていたり、雑草が生えた土地や湿地、沼地などで水草が点々と生えているところをあらわします。

そして、これらの界には、点点・・・で植生界が表示されています。
結構、よく出来ています。登山者は利用してください。