地図のいろいろ

半世紀も地図作りに携わっていましたので、この辺で振り返って地図を見直してみようかな~・・・。

火保図

2008-01-14 11:11:27 | Weblog
火災保険特殊地図(火保図)は火災保険会社が火災保険料金の判断材料のため、業者に依頼して作った地図です。
昭和7から11年(1932~36)頃の戦前のものと、昭和20から30年(1945~55)頃の戦後のものとがあります。
依頼を受けて、火保図を作成したのは、都市整図社(沼尻長治社長)です。
ここの沼尻長治社長は、昭和3年に28歳の若さで地図研究所を設立し火保図の作成に専念した人です。
当時、住宅密集地や繁華街で最も恐ろしい災害は火災でした。建物は主に木造建築でしたので、ひとたび火災が発生すると広い地域に延焼してしまいました。
そこで、火災保険の料金判断材料としても、契約情況を把握するにも、火保図は必須のものでした。
当時は航空写真などはなく、役所に出向いて、公図と土地台帳を写し取り、一軒一軒現地を歩いて調査し、製図していました。文字は手書きです。気の遠くなるような根気の要る作業の積み重ねで作成されたものです。

現在の住宅地図よりも詳細な情報が記載されてます。特に重要なのは建築構造で、コンクリート造りか、レンガ造りか、木造作りかなど、防火建造物かどうかを細かく区別してありますし、更に屋根が可燃質葺か,亜鉛葺か、スレート、瓦かなど素材までも調査し、建造物を9種類に分けています。
また、建造物だけでなく、塀の種類や材質も調査してあります。
また、消化栓や火災報知機の位置、道路幅員、も記載してあります。
縮尺は1:600や1:750などです。
当時の東京都心部の、会社名、小売店名、食べ物や、銭湯などが詳細に見れます。
歴史的な価値加があります。