伏見稲荷大社の記事をupするまえに、
備忘録を兼ねて、お稲荷さんの事を少しまとめておきます。
(写真はすべて伏見稲荷大社)
ブログでたまに書いていますが、私はどうもお稲荷さんが苦手です。(T_T)
基本的に、どこの神社へ行っても境内社で稲荷社があると全力でスルーします。
写真はおろか、記事に稲荷社の名すら載せないことのほうが多いです。
今迄で大丈夫だったのは、松原神社、月夜見宮、佐久奈度神社、高座結御子神社。
チラ見程度なら可 だったのは、伊奈波神社、来宮神社、布智神社
・・ぐらいかな。
何がそんなにダメなのか・・。
たぶん、
境内のキツネさんがなんとなく苦手。
動物の狐は可愛くて好きなのですが。
でも怖いとか祟られるとかいう思いは全く無くて、
キツネさんが祟り神だと思ったこともありません。
(だいたいキツネは眷属であって神ではない。)
なのに、苦手。
なんでか分らん。(笑)
あとは、たまに連なった赤い鳥居でクラクラします。
これは単に三半規管が弱いせいなのかなと思う。
そんな私が、
よりによって全国およそ3万社あるとされる稲荷神社の総本社である、
伏見稲荷大社へ行こうなんて、
まあよく考えたら個人的にはあり得ない話・・。
なんせ、有名な千本鳥居をはじめ、
境内(含・稲荷山)には約1万基もの鳥居が立ち並んでいて、
そこらへんの稲荷社の鳥居の比じゃないわけで。
勿論キツネさんの数もすごい。(゜Д゜)
けれど、
なぜかここは大丈夫だという確信に近いものがあり、
それどころか「一度は行っておかねば」という気持ちにすらなる。
他社と何が違うの?って感じですが、
とにかく、行ってみたいなぁーと思えるから不思議でした。
そして実際に参拝してみたところ、想像通りの素晴らしい神社でした。
稲荷山に数万ヶ所ある「お塚(稲荷塚)」の光景なんて、
普段の自分なら絶対無理な感じなんだけど、
これが不思議と、冷静に興味深く観察できたというか・・。
山の上り下りなんて、楽しくてしょうがなかったし。
現世利益を強く求めるがゆえの我欲渦巻く空間なのかと思いきや、
意外にもぜんぜん平気。
長きに渡り、多くの人の色んな念が積み重なってきた場所なので、
みなさん受ける印象は様々だと思いますが、
個人的には、あの光景、あの空気を素直に楽しめました。
自分の基準としてまずあるのが、
神道系(=神社)のイナリは、場所によりけり。
仏教系(=お寺)のイナリは、まず無理。
(※あくまで個人的感想なのであしからず)
・・かな。
神道系(神社)と、
仏教系(お寺)。
同じイナリなのに、何が違うのか?というと、
基本的に、祀っている対象が違う。
「イナリ神社」・「神社の境内にあるイナリ社」で祀られているのは、
記紀に出てくる穀物・食物神である、
ウカノミタマのかみ(宇迦之御魂神/倉稲魂大神)や保食神など。 =稲荷大神。
一方、「お寺の境内にあるイナリ」で祀られているのは、
仏教のダキニ天(荼枳尼天)。
ちなみに、
愛知県豊川市にある豊川稲荷は仏教系のイナリ。(本尊は千手観音。)
正式名称を妙厳寺という、曹洞宗のお寺です。
このお寺の境内に祀られている、鎮守のイナリ(ダキニ天)が有名なので、
一般的には「豊川稲荷」の呼び方で通ってますが、
イナリ自体は、この妙厳寺の境内ある鎮守社(※1)にすぎません。
そして前述のとおり、
キツネさんは稲荷社の神さんではありません。
稲荷社の神さんは、農耕神・食物神である宇迦之御魂神(稲荷大神)です。
キツネはその神さんの御使い、
すなわち眷属です。
宇迦之御魂神は、別名を「御饌津(みけつ)神」と言い、
狐の古名が「けつ」だったことから、「三狐(みけつ)神」と当て字をされるようになり、
やがて、キツネ=稲荷神の眷属 となっていったとされています。
さらに神仏習合の時代に本地垂迹の影響を受けて、
白狐を従えるダキニ天と、“キツネつながり” で同一視されていきました。
(諸説あり)
なので、大雑把にいえば、
お寺の境内にあるイナリでは、ダキニ天を祀っている。(仏教系)
神社では、宇迦之御魂神(稲荷大神)などを祀っている。(神道系)
このほか、江戸時代に稲荷信仰が流行ると、
土地神や田の神、祖霊神、キツネそのものなど、何でもかんでも稲荷として祀ったりしたので、
そういう民俗的なイナリ社も多く存在します。
ただし、現在宇迦之御魂神などを祀っている神道系稲荷でも、
江戸時代まではダキニ天を祀っていたというケースが、どうやらかなり多いらしい・・。
神仏習合の時代には、
日本古来の神道と渡来系の仏教は混じりあい、境内には神社の社殿と仏教施設が混在し、
長いあいだ神社とお寺はその多くが一体となっていました。
しかし明治の神仏分離により神道と仏教は切り離され、
寺社は、「神社か寺か」の選択を迫られました。
このとき、稲荷社の多くは
宇迦之御魂神(倉稲魂命)、豊宇気毘売命、保食神、大宣都比売神、
若宇迦売神、御饌津神などの、
記紀神話の穀物神を祭神にした「神社」になったと言います。
神道系稲荷の総本社である伏見稲荷大社でも、
かつて同社の神宮寺(※2)だった愛染寺においてダキニ天が祀られていました。
この愛染寺から全国の寺社へとダキニ天を勧請していたのですが、
明治に廃寺となり、ダキニ天祭祀は消滅しました。
伏見稲荷の稲荷神とは本来、
今の伏見稲荷のあたりに住んでいた地元豪族が祀っていた農耕神・山神/田神(=地主神)や、
あとから当地へやって来た秦氏の祖先神(=今来神)なのでしょう。
それが、今から700年ほど前、
伏見稲荷の稲荷神は、真言密教のダキニ天とキツネつながりで習合し、
さらに500年ぐらい前には宇迦之御魂神に比定され、
明治になって稲荷三神の神名(宇迦之御魂神、大宮能売大神、佐田彦大神)が定まった。
ということで、伏見稲荷大社はなんとなーくですが、
自分的安心カテゴリーに入ります。
あと、
戦国期に武将が「城鎮守稲荷」としてダキニ天を祀ったケースも多いらしいので、
城跡にある稲荷社は、仏教系だったりするかもしれない。
神社にあるイナリ社=神道系イナリ とは言いきれない・・。
由緒や由来をよく確認しないと、一見しただけでは分かんないのね。(T_T)
じゃあもう、鳥居があるイナリだったら神社!
と言いたいけれど、
豊川稲荷は近世になってから建てられた鳥居があるもんねー。(;^ω^)
なので、
「習合時代はどうであれ、とりあえず神社の名を掲げている所のイナリなら良しとする。」
という、ざっくりとした区別をするしかないのです。
その先は、「好きか苦手か」の直感で選別。
まあ、伏見稲荷大社に行ったのは、
大元の総本社でご挨拶しとけば、
他の稲荷社を見て見ぬふりする罪悪感もちょっと薄れるかなー
なんて気持ちも多少あったりします。(笑)
※2 神宮寺(別当寺)
神仏習合思想に基づき、神社に附属して建てられた仏教寺院や仏堂。
神祇のための寺。
※1 鎮守社
神宮寺の反対で、寺院に付属して建てられた祠。
寺のための神社。
境内の人の多さに加え、
特に稲荷山は、点在する「お塚」や、鳥居の連続が生み出す独特の雰囲気がありますから、
ちょっと気合い入れないと踏破できないかも・・って方も、いるかもしれませんね。
最後にスピ的な戯言になりますが、
人の念を受けやすい等の自覚のある場合、
とりあえず参拝の前に「お塚(稲荷塚)」の画像なんかをググってみて、
大丈夫って感じれば平気じゃないかなーと思います。
(ちなみにこれが「お塚」の広がる光景↓。
お塚とは、稲荷大神につけた別名を刻んだ石を人々が山に奉納したもので、
これが数万ヶ所もあるとのこと。)
というわけで、
お稲荷さんニガテな私でも、ここは平気だったよ!ヽ(。・∀・。)ノ という感想とともに、
ややこしいイナリのお話をちょっと載せてみました。
結論。
危うきに近寄らず。
ここを、自分が唯一参拝するお稲荷さんと決めました。(笑)
記事本編へつづく・・。