山崎亮式「ブックカバーチャレンジ」最終回
客観的に、科学的に、そして論理的に物事を判断しているつもりでも、
無意識のうちに特定の分野に対して思考停止したり、
誤った思い込みに陥っている場合があります。
そうならないように、事実を見極めるための3冊。
文系のヒトでも分かるように書かれています。
文系・理系を問わず、統計学は仕事や学問の超基本。
標準偏差や正しさを確認する「検定」まで学べます。
「統計学」とは、現況把握のため現実のデータを集め、
代表値やばらつきを計算することにより、
その調査対象の全体像を得るための手法。
現状把握は、ほとんどの場合において、
データを取ることによってのみ可能である。
極言するならば「現実はデータをとるまでは存在しないのと同じ」。
データは改善のための道具であり、目的ではない。
データの結果を見て行動をとる予定がないなら、
データを集めてはならない。
使いもしないデータを集めたり、加工するのに時間を使って、
仕事をした気になっている人があまりにも多い。
*吉田 耕作「経営のための直感的統計学」も良書です。
いろいろな将来予測がある中で、
将来人口予測は、実はとても確実性が高いのです。
移民の急増や、伝染病の大量死等がなければ、
10年後のある年齢の国民の人数は、
病気や不慮の事故もありますが、10歳若い年齢層が歳をとるだけ。
合計特殊出生率*が2.3?を下回ると人口が減ると言われました。
今の平均寿命等を考慮すると、現在の人口置換水準は、概ね2.07。
では、2.07人に増えれば昔のような社会にもどるのか?
「人口」は維持できたとしても、年齢構成はまったく変わります。
日本では長い間少子化が続いた結果、
子どもを産める若い女性の絶対数が、すでに非常に少ないのです。
その方が2人以上子どもを産んでも、少子高齢化の少の部分なので、
子どもや働き手がたくさんいた昔のようには戻れません。
人口問題を考えるには、この構造を理解することが非常に大事です。
(「人口のマイナスモーメント」といいます)
かつての日本がそうだったように、
発展途上国は、急激に経済が発展するにつれ
子どもが多く生まれるようになり、消費が増えます。
それが国の経済を刺激し、さらに仕事が増え労働者が増え、
消費も増える拡大スパイラル(人口ボーナス)が出現します。
逆に、現在日本のように高齢化が進むと、
今度は人口ボーナスの逆の状態になります。
これを「人口オーナス」といいます。
現在の日本は人口を増やせと大騒ぎしていますが、
「人口増=良いこと」ではありません。
全ての国民がどのように食べていくのかが大問題。
発展途上国段階なら、安い人件費で大量に物を作り、
外国へ輸出しましたので、人口が多いほど有利でした。
しかし現在では、中国やベトナムなど日本より安い人件費の国があり、
それよりも低賃金では暮らせません。
安く大量に作って売るやり方は、日本ではもう成立しないのです。
「人口が多いこと=有利」ではなくなっているのです。
世界の中でどのようにお金を稼ぐかを考えずに、
人口ばかり増えたらどうなるでしょう。
極貧の人が何億人もいる国では、幸せと思えません。
人口問題は社会や経済の基礎要件ですから、
行政職員や政治家には、ぜひ人口学の基礎を学んで欲しいです。
*多田稔@伊勢崎市議「与件としての人口問題」 (2017.5)
*鬼頭宏「人口から読む日本の歴史」もぜひ。
(参考ブログ)
・与件としての人口問題 2017-05-05