伊勢崎市議会議員 多田稔(ただ みのる)の明日へのブログ

行政経営、地方政治、そのほか人生にプラスの楽しいこと eメールアドレスkucctada@mail.goo.ne.jp

商店街 売れる、売れないを分けるもの

2013-06-13 16:32:24 | マーケティング
(はじめに)

この検討は、小売店や商店街を批判することが目的ではなく、
問題構造を分析し、原因を探ることで、お店の売り上げ上昇や
商店街の再生につなげることが目的です。
関係者の皆様には、気に触る表現があるかもしれませんが、
私の本意を御理解のうえ御寛恕願います。



(商店街の歴史)

地方都市では、商店街の衰退が課題です。
「商店街はなぜ滅びるのか」(新雅史)光文社新書を参考に、
商店街の歴史を概観します。

日本の「商店街」の歴史は意外に浅く、およそ100年前の20世紀のはじめ頃です。
江戸時代など近世の商家は「イエ」制度でした。
家長家族と住み込みの奉公人で成り立っていました。
「家業」存続の危機になれば奉公人が店を引き継ぐこともありました。

20世紀以降の小売商は家族のみで事業を行っているために、
子どもが家業を継がないことが、即廃業に結びつきます。
親子三世代で住むような近代家族が衰退してくる中で、商店街も例外ではありません。

戦前の日本の商店は消費者の徒歩圏内にありました。
商圏は狭く、お店は零細。地域には限られた店しかなかったので、
地域独占状態の殿様商売であり、競争力はあまり必要ありませんでした。

やがてデパートが建ち始めると、デパートの総合的な品揃え(縦の専門店)に対して、
小規模な店が「商店街」として集まることで、横の専門店として対抗しました。

1980年代には大型店の郊外化が進みました。
やがて大規模小売資本は、大型店を力づくで出店し商店街と対立するやり方から、
フランチャイズチェーンにより、商店街そのものを取り込む戦略に変えました。
「コンビニ」という「よろず屋」が地域に出現することで、
タバコ屋、酒屋、八百屋、米屋などは、存在意義を奪われました。
大型商業施設の攻勢が、外からの商店街の破壊だとすれば、
コンビニの乱立は、内からの商店街の破壊だったのです。

以上が大まかな流れです。



(商店の歴史と立ち位置)

日本の商店街の歴史を元に、構造について考察しました。
これは学術論文ではなく、私のエッセイ的な考察ですので、
間違い等ありましたら御容赦ください。



2つの軸を使って、4つのマトリクスに分類します。
1つ目の軸は、売れているか、売れていないか、という分類です。
売れているものは上半分のピンク色の部分。
売れていないのは、下半分の水色です。

2つ目の軸は、特定分野の商品を扱っているか、
それとも総合的な品揃えか、という分類です。
特定分野のお店は左半分の位置、
総合的な商品の場合は右半分の位置になります。

歴史の流れに沿って観ると、100年以上前は
①のような自然発生的に生まれたお店が点在していました。
やがて総合的な品揃えの②デパートが出現してくると、
それに対抗するために③商店街が形成されました。

現在では、小さな総合販売店として④コンビニが乱立すると共に、
ネットも含めた⑤通信販売のシェアが大きくなっている状況です。



(経営不振の分析) 

(1)特定分野の商品を扱うケース

「商店街」衰退の問題は、それを構成している個々の小売店の
営業不振の問題とも言えるでしょう。このマトリクスでは水色の部分です。



①の小売店の状況を端的に言えば、
「私がココで売っているコレをもっとたくさんの人に買いに来てもらいたい」
という願望ではないでしょうか。
マーケティングでは、いかにお客の要望(ニーズ)に寄り添っていくかが
最重要ポイントです。しかし、もし①のお店の考え方が上記のようだったら、
消費者よりの視点ではなく100%売り手の都合です。

かつては、消費者の行動範囲は徒歩圏内でしたので、
地域の商店街は地域独占の商売が成り立っていました。
そのためお店の都合で「お店が売りたいものを売る」という
無意識のうちに「殿様商売」が可能だったのです。
結果として競争力が育ちませんでした

消費者の行動範囲が広くなり、
気軽にデパートや郊外の大型ショッピングセンターへ行けるようになると、
商品やお店に競争力が無ければお客に選ばれなくなってしまいます。
お客から選ばれるか、選ばれないかというこの区分を
「売れるための壁」と私は名づけました。図ではピンク色と水色の境です。

小売店や商店街が全部ダメかというと、そんなことはありません。
競争力があればピンク色のゾーンに入れます。
左上の「A専門店」の例では、山間部の地方都市にある時計屋さんが、
マニア向けの珍しい時計を扱い、インターネットで相当の売り上げがあります。

伊勢崎市内の酒屋さんでも珍しいお酒やギフト商品を工夫することで、
ネット販売で売れています。通信販売を通じて遠くのお客さんにも
商品を届ける努力をしているのです。
伊勢崎にあるアニメなどのフィギア(小さい人形)を大量に扱うお店は、
東京からもマニアが買いに来ると聞きました。
地元のマニアは少数ですが、専門分野に特化して、
そこでなければ手に入らない商品があれば、
商圏が広がり東京からでもお客が訪ねてくるのです。

「B地域密着店」の例では、商品配達のついでに
お年寄りのお客さんの困りごとに、ちょっとしたお手伝いを必ず一つする、
というお店もあります。高齢化や一人暮らしが増えている中で
地域に欠かせないお店になっています。

ある小さなスーパーでは、大手スーパーとの生き残りをかけて、
従業員が来店するお役さんの7割以上の名前を覚えて声をかけています。
すごいことです。お客さんとの対話を通じてお客さんの健康状態まで把握しています。
スーパーの社長さんの目標は、
「お客さんの家の冷蔵庫の中身まで分かるようになって、適切な商品をおススメしたい」
というものです。大規模店にはまねできない、小さい店ならではの強みです。

このように考えると、おなじ小売店といっても、
商品あるいはお店に、他の店とは違う選ばれる強みが、あるか、ないかによって、
ピンク色の売れるゾーンに入れるか、入れないかが決まってしまうのです。
お客が買いたいものがあれば、遠くからも買いに来るし、
お客にとって特別なお店ならばそこで買うのです。

私の作成した表から考えると、競争力の差は
競争環境にあるのか否かの違いから産まれてくるようです。

地方都市の中心商店街が衰退しても、もしかすると困っているのは商店だけで、
多くの市民はちっとも困っていないかもしれません。
お客が欲しいものを売るという根本の問題に手をつけずに、
商店街に街路灯を立ててみたり、駐車場を作ったりしても、
問題の本質の解決につながらないと思います。


(2)総合商品を扱うケース

多くの商店街が不振ですが、全部ではありません。
例えば、おばあちゃんの原宿と言われる「巣鴨地蔵通り商店街」や、
寅さんで有名な葛飾の柴又帝釈天門前参道商店街は人でごった返しています。
個々のお店も魅力的だと思いますが、その商店街のブランドが確立しています。

コンビニは、幅広い商品を揃え、公共料金の支払いや、ATMなどもあり便利に利用できます。
しかしあまりに乱立してしまうと、経営が難しくなります。
どのコンビニも売っているものは同じなので、
店の立地やアルバイトの確保などがカギのようです。

デパートにも淘汰の波が押し寄せています。かつてダイエーは
「なんでもあるけど、欲しいものは何も無い」と言われました。
勝ち組だったヨーカドーも、店を選別して撤退しています。
コンビにだから、デパートだから勝ち組、という色分けはできません。
あるのは個々のお店に競争力が有るか無いかです。



(お店レベルの対応策)

競争力の強化
・お客が欲しい商品を売る。
・この店で買いたいと思われるような顧客との関係を作る。

商売をやる以上、これが大前提です。
いくら大きな駐車場を作っても、その商店街に買いたい物が無ければお客は来ません。
個々のお店が競争力を強化できれば、総体として商店街の魅力も上がってくると思います。

賑わいが郊外へ移ったのに、殿様商売気分が抜けきらず、
「ココで売っているのだからココへ買いに来い」という意識ではだめでしょう。
お店のほうから人通りの多い場所へ移転するなどの対応も考えられます。



(商店街と行政の対応策)

商店街として魅力を保つには、時代の変化に合わせてお店の新陳代謝を図ることが必要です。
これはある商店街の理事長さんの言葉です。
 「商店街は、入れ替わりがあってこそ、魅力が保たれる。
  人気のなくなった店は、商店街から撤退し、新しいお店が次々と参入し、
  絶えず健全な新陳代謝が行われることで商店街としての魅力が保たれる。」

行政は商店街振興といいながら、「街」の振興ではなく、
経営が苦しい事業主に運転資金を融資するなど、
今ある「店」の保護に走っているように思います。

このお金が、新しい商品の開発や、
あたらしい販売ルートの開拓につながるならば、OKです。
しかし行政からのお金が、これまでと同じ商品を、
今までと同じように売ることに使われるなら、
そのお店の「延命」にはなりますが、そのことによって不振な店が
商店街から撤退する時期を遅らせ、「商店街」にとっては
逆に、魅力を下げる効果になってしまいます。

商店街が街の顔であるならば、
跡継ぎ問題など個々のお店の都合でシャッターを閉めるのでなく、
店の入れ替えを含めた商店街としての魅力を維持する努力が必要です。



(伊勢崎市のケース)

JR伊勢崎駅から本町通りまでの地域は、高齢化と、空洞化が進んでいます。
このあたりには生鮮食料品を扱う店が無くなり、高齢者の方は1km以上も離れた店まで
歩いて買い物に行かなければなりません。大根やカボチャなどの重い荷物は、
一度に持って運べないので日を分けて買って帰るそうです。



私がお会いした御婦人は
「小さくてもいいから、八百屋さんがあるといいわね」とおっしゃっていました。
伊勢崎市は買い物弱者支援のために月1回ほど「まちなか夕市」を開催しています。
伊勢崎商工会議所も軽トラック等で出店する「いせさき軽トラ市」を年5回開きます。
この地域にはこれほどの消費者ニーズがあるのです。

八百屋さんが新規開店しなくても、例えば「くだもの屋」さんが「野菜」も
扱ってくれるだけで地元のお年寄りは助かります。
コンビニのローソンは、近年野菜の販売に力を入れていて、
2012年度の販売数量は前年比で4倍です。

地域住民のニーズに向き合っていくことしか
地域商店が生き残る道はないと思います。



(参考ブログ等)

・買物支援宅配マップ
・中心市街地は 商店街で栄えるべきなのか?
・フードデザート(食の砂漠)
・コンビニは第2の成長期に突入“カット野菜”の進化が示すローソンの未来
ローソンのカット野菜、急成長の秘密



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 追加議案の質疑 市職員の給... | トップ | -ナルト- 我愛羅の尾獣 「... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

マーケティング」カテゴリの最新記事