伊勢崎市議会議員 多田稔(ただ みのる)の明日へのブログ

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中心市街地は 商店街で栄えるべきなのか?

2013-03-05 16:39:38 | 政治・政策・経済

(議会質問あいつぐ)

多くの地方都市で中心市街地が衰退しており、
伊勢崎市も例外ではありません

JR伊勢崎駅から本町通りあたりの地区は、
高齢化と、空洞化が進んでいます。

「中心市街地の振興」という言葉をよく耳にします。
これは、「中心市街地にある商店街の振興」と
同じ意味に使われているようです。

昨日と今日行われた市議会本会議の一般質問で、
駅周辺の再開発や活性化に関する質問が相次ぎました。
「中心市街地の振興」とはなんだろう、と考えてみました。

関係者の方でお気を悪くされる方がいらっしゃるかもしれませんが、
本日のブログは結論ではなく、検討の途中です。
商店街はどうあるべきか、行政はどのように取り組むべきかを
税金の使途を決める立場で、真剣に考えておりますので、ご了解ください。



(無意識の思い込み?)

この問題に取り組むにあたって、
まずはじめに「中心市街地」の概念を検討します。
「中心市街地」とは、「市街地の中心に位置する地域」を示すだけならば、
そこが商店街である必然性や、人が集まる必要性はありません。

かつての中心市街地の商店街は、人が集まりにぎやかでした。
 「中心市街地」だから → 「商店街」でなければならず、
 「中心市街地商店街」だから → 「人が集まらなければならない」
と考えてしまうのは、もしかすると、
過去の記憶を無意識のうちに、
将来あるべき姿に結び付けてしまった「思い込み」ではないでしょうか?



(行政の役割)

現在の日本は資本主義経済の国なので、
行政の役割は次のようなものと考えます。



消費者である住民には、さまざまなニーズがあります。
基本的には、市場を通じて、民間の企業や商店などが
代価を受け取り、消費者の望む商品やサービスを提供します。
この場合、行政は関与する必要はありません。

しかし、中には商売としては採算が合わないものでも、
社会的に必要なものには、行政が関与して
住民(消費者)に提供します。

ただし、税金を使ったり、規制したりして行政が関与するには、
その行為が社会的に必要だという立法や予算に対して
議会の同意が必要です。



(個々の商店の売り上げ)

個々の企業や商店の商売の結果は、それぞれが
市場の中でライバルと競争しながら創意工夫し、
自由競争で取り組んだ結果であり、まさに自由市場の分野です。

これは行政が介入するには一番適さない分野であり、
ある一軒のお店がどれほど「売り上げ不振」であったとしても、
それは、伊勢崎市の行政課題にはなりません。(生活保護は別の問題)

個々のお店や企業が、いくら営業不振だとしても
行政課題にはならないのに、
それが連なると、行政課題になってしまうのでしょうか?
ここが不思議なところです。



(中心商店街あれこれ)

・特定の地域のお店の売り上げが上がらないと、行政の責任なのか?
 →違うと思います。

・扱っている商品が時代や住民のニーズに合わなくなってきたなら、
 新しい商品の仕入れや、ネット販売など新しい売り方を模索すべき。
 商売の業種転換も。

・境町の国道354号線に面した阿原食堂や、伊勢崎市本町にある矢島食堂などは
 まわりの商店街には人通りが少なくても、大繁盛しています。
 売り上げの不振は、立地や商店街の問題ではなく、個々のお店が
 いかに魅力ある商品を提供しているかという問題ではないでしょうか?
 買いたいものがあれば、お客は来ます。



(どんな政策なのか?)

先ほど(行政の役割)で取り上げたように、
基本は市場に任せて、行政が介入しなければならない場合にのみ、
行政が介入すべきです。

行政が市場に介入する政策の例を考えてみます。
・競争力の弱い伝統産業の保護   文化財として保護する
・採算が取れないが必要なものの援助 特殊な医療・福祉用品など
・保育所などへの補助    子育て支援政策
などなど。

「中心市街地」の活性化は、
特定の地区に限定した施策なので、商「業」振興ではありません。

それでは、「中心市街地振興」とは、
「誰」に対して「何」を実現するための政策なのでしょうか?

仮説1
 だれ=中心市街地の商店主達に対し
 何を=人通りを多くする

疑問
・今、中心市街地商店街にいる商店だけが優遇されるならば
 既得権であり、他の商店に対して公平性を欠かないか?
 
・「盛り場だ(だった)から、人が集まるべき」なのか、それとも
 新しく人が集まる場所が出来たら、そこを「盛り場」と呼ぶべきか。
 対面販売が必要な商売ならば、人通りが少ないと嘆くよりも、
 人通りが多い場所へ出店すべきではなかろうか?

・特定の地域には、人が集まらなければならないのか?
 →用も無いのに、人は行きません。
 高崎市の資料34頁では、中心市街地へ行く時は、
   買いたいものがある場合60%、用事がある35%であり、
  雰囲気を楽しみに行く人は、わずか5%弱しかいません。
  そうだとすると、補助金で街灯を立てたりアーケードを造っても
  ほとんど効果がありません。

仮説2
 だれ=外から来る人に対し?
 何を=街の顔である中心市街地商店街をにぎやかにする

・単なる見栄や飾りでしょうか?

・「中心市街地」だから → 「商店街」でなければならず、
 「中心市街地商店街」だから → 「人が集まらなければならない」
 と考えてしまうのは、「思い込み」ではないか?

・街の顔とは、特定の場所に固定したものではなく、
 今の市の顔は、今盛り場となっている場所ではないでしょうか?
 伊勢崎市なら、西部モールやスマークなど。


仮説1と仮説2では、
「だれ」の対象が、市民(住民)になっていません。
行政が取り組むならば、市民目線が重要です。

市民の立場から考えてみると、
中心市街地に人が行かないことに、市民は困っていません。
ほかの場所で必要な買物を済ましており、
市民は自主的な判断で中心市街地には行っていないのです。 



   
(魅力ある商店街とは)

ある商店街の理事長さんの言葉です。
商店街は、入れ替わりがあってこそ、魅力が保たれる。
人気のなくなった店は、商店街から撤退し、
新しいお店が次々と参入し、絶えず健全な新陳代謝が行われることで
商店街としての魅力が保たれるのだ。

行政は商店街振興といいながら、
「街」の振興ではなく、今ある「店」の保護に走っているような気がします。
経営が苦しい企業に融資したり、繋ぎ資金を提供したり。

このお金が、新しい商品の開発や、
あたらしい販売ルートの開拓につながるならば、よしです。

しかし、もし行政からのお金が、
これまでと同じ商品を、今までと同じように売ることに対して
つかわれているならば、そのお店に対しては
「延命」にはなりますが、そのことによって
不振な店が商店街から撤退することを遅らせ、
商店「街」に対しては、魅力低下の効果になってしまいます。

もし行政が政策として、
「商店街」の魅力維持やアップを図るならば、
事業継続の融資でなく、新規開店のために融資するなど、
活発な新陳代謝を促す方向の施策が必要ではないでしょうか。



(変わっているのに変わらない)

冒頭に述べましたように、
JR伊勢崎駅から本町通りあたりの地区は、
高齢化と、空洞化が進んでいます。
社会環境は昔とは大きく違うのです。

それなのに、
中心市街地は商店街であるべきで、
人は大勢来るべきだと、昔の感覚を固定したままで
はたして良いものなのか。

中心商店街の不振は、伊勢崎市だけの現象ではなく、
日本の地方都市に共通の課題なので、
これには構造的な問題があるはずです。

次回は構造問題にメスを入れるとともに、
今の住民・消費者が求める商業サービスの形態とは何か、
などについて検討したいと思います。



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3 コメント

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Unknown (モハ111)
2013-03-13 17:33:14
中心市街地活性化については色々な意見が
あるようですが・・

一市民としては、本町目抜き通り周辺が寂れ、
ケバケバしい風俗店ばかりが目立つ現状は
恥ずかしい限りです。

あの辺は、伊勢崎神社、織物会館、図書館、
重要文化財指定の建物などもありますね、
僅かですが伊勢崎藩の風情も残っています、
伊勢崎文化の顔なんです、保護して延命させつつ
育成(発展≒活性化)の方向で検討して頂けると
有難いですね。
返信する
コメントありがとうございます (多田稔@伊勢崎市議 )
2013-03-14 13:09:38
モハ111さん、コメントありがとうございます。
私は都市としての将来的な姿として、
コンパクトシティが有望と考えています。

高度成長期に建設された、公共財が、
今後一斉に建て替えの時期を迎えます。
財政は厳しくなり、公民館や図書館など、
独立で建てるのは難しくなります。

他の自治体では、それらを組み合わせた
複合施設の建設も始まっているようです。

市役所や病院、高校、郵便局、福祉プラザなどが、
狭い地域に密集していれば、利用も便利ですし、
交通も其処を拠点にすれば良いのです。
人も集まるので、商売も成り立ちます。

近いうちにブログで、コンパクトシティについて
取り上げたいと思います。


返信する
Unknown (モハ111)
2013-03-14 17:16:10
コンパクトシティですか・・・
伊勢崎は、高齢者が多い街なので良いのかもしれません。
文化伝統を残しつつ、健康的に新しいものを取り入れた
魅力あるアクセスの良い街、新しく来た方や若い方と
高齢者が自然に触れ合え、片寄せあえるような街、
そんな街づくりを希望します、宜しくお願いします。
返信する

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