戦争を挟んで生きた女性の回顧録

若い方が知らない頃のセピア色に変色した写真とお話をご紹介いたします。

国境なき医師団に参加して帰ってきたという話を聞いて 3/6

2010-03-06 15:57:00 | Weblog
私の近くにいる若者が、国境なき医師団に参加して帰って来たという話を聞いたのは今年の初めの頃だ。
母親しかいないその子は、まわりには黙って行ってきて、戻ってからしばらくして母親に報告したという。
私はそれを聞いた時、立派だ、とだけは思えなかった。
人にはいろんな事情がある。恵まれている人は誰のおかげで恵まれていたのか、と考える必要がある。
黙って行った理由は、反対されるからである。
どのような気持ちで国境なき医師団に参加したのか知らないが、赴任地は命の危険を感じさせるような地域であった。無事で帰ったから良いようなものの、万が一、そうでなかったらと思うと、医師に育てた母やきょうだいの気持ちを考えて胸が迫った。私も好むと好まざるには関係なく、家を継ぐ運命にあった。結果としてそれが1番良かったとしてもその時は動けなかった。彼が自由奔放に医者として動き回れるようにしてくれた家族がいる。兄はおのれの希望は捨てて父亡き後の病院を継いだ。そのようにして彼を自由に動き回れる環境の医師に育ててくれた家族がいる。
国境なき医師団とは、崇高な目的を持って、恵まれない地域の住民に医療を施す団体である位は知っている。
彼は反対されても行ったと思うが、恩を受けた母や兄の事も考えて欲しいと思った。