霧のおじいさん(2)

2020-01-03 08:04:21 | 童話
その時『ハクショ~ン。』と大きなクシャミが聞こえた。
友達のクシャミではない、だれのクシャミだろうか?

その時
『ごめんごめん、びっくりしたかい?』
と大きな声が聞こえた。だけれど、近くには誰もいない。
『ここだよ。』
と聞こえる上の方を見ると、白いヒゲを生やしたおじいさんの大きな顔が有った。
『あなたはだ~れ?』
『わしは霧のおじいさんだよ。わしが現われると霧も出てくるんだよ。』
『なぜ霧が出るの?』
『霧の中には夢が詰まっているんだよ。だから、みんなに夢をあげるために、霧がでるんだよ。大人の人も霧の中の景色をきれいだと感じる人が多くいるんだよ。中国の「桂林(けいりん)」や北海道の「釧路(くしろ)」という霧の景色がきれいな所へ、旅行する人も多くいるんだよ。』
『ふぅ~ん。僕も大きくなったら「けいりん」や「くしろ」へ行きたいな。』
『そうだね、きれいだから行ったほうがいいよ。』
『僕や友達が霧の中で靴が脱げた時に、足の裏がふわふわとしていたのはなぜなの?』
『それはね、君たちの靴がわしのヒゲに絡まって脱げて、はだしでわしのヒゲの上を歩いていたからだよ。』
『そうなんだ。』
『霧が出ない時は、おじいさんはどこに居るの?』
『高い山の上に居るんだよ。そして、霧が出る時に、わしはその高い山から下りて来るんだよ。』
『それでは、高い山から下りて来た時は、いつもここに来てよ。』
『それがダメなんじゃ。いろいろな所から来てほしいと言われているので順番で行っているのだよ。』
『今度はいつ来るの?』
『いつなのかねぇ。わしにも分からないのだよ。』

そして、霧のおじいさんが高い山に帰ってからも、僕は霧のおじいさんが来るのを毎日待っている。

僕は『ハクショ~ン』と大きなクシャミが聞こえてくるのをずっと待っている。
霧のおじいさんのヒゲの上をはだしでふわふわと歩くのを楽しみにしている。
霧のおじいさんは明日来てくれるかなぁ。

              おしまい