僕達の小さくて大きな森(9)

2018-02-12 09:34:24 | 童話
ある日、おじいちゃんに頼まれて庭の掃除をしていて、梅の木の根元の雑草を取っている時に、根元に何か動く物を見つけた。
『やぁ、人間君、元気?』
忘れていたあの小さくて大きな森の動物だった。ゾウもキリンもチンパンジーもいるし、小さく点のように見えるのはカブトムシとクワガタだった。

『やぁ、みんな元気だったんだね。』
『うん、みんな元気だよ。君が引越しをしなくても良くなるようにしてくれたからね。』
『だけれど、みんなどうしてここにいるの?』
『僕達は、小さくて大きな森の中でしか生きていられないけれど、人間の君達に会いに来たんだよ。もう帰らないといけないけれどね。』
『僕と友達は、どうして君達に会いに行けなくなったの?』
『僕達の小さくて大きな森はね、小さな子供だけが行ける所なんだよ。君達は大きくなって高校生になったから、小さくて大きな森には行けなくなってしまったんだよ。』
『そうなんだ。今、友達を呼んでくるから、ちょっと待っていて。』

僕は急いで友達の家へ行った。
『今ね、小さくて大きな森の動物達がやって来ているので早くおいでよ。』
『えっ、あの動物達が来ているの?』
『そうなんだよ。』

僕は急いで庭の梅の木の所に来て根元にいる動物達に会ったが、小さくて大きな森に帰る準備をしていた。
『君達も帰る時はエンピツなの?』
『そうだよ、エンピツが無いと帰れないんだ。』
『僕達と同じだね。』
『うん、そうだね。』
『今度はいつ来てくれるの?』
『もう来られないよ。』
『残念だけれど仕方ないね。』
『じゃぁ帰るからね、バイバイ。』

キリンが『うわっ。』
ゾウが『うわっ。』
チンパンジーが『うわっ。』
カピバラが『うわっ。』
カブトムシが『うわっ。』
クワガタが『うわっ。』
そうして、動物達はみんな小さくて大きな森に帰って行った。
僕は今も梅の木を大事にしている、小さくて大きな森の動物達のために。

  おしまい