【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

【法案】「刑法改正案」(懲役・禁固廃止で「新自由刑」)と「少年法改正案」(18歳・19歳は家裁送致)を法務省が2021年に提出したいかまえ、成立は解散後か

2020年08月07日 06時59分59秒 | 第204通常国会令和3年2021年
[写真]法務省、きのう2020年8月6日、宮崎信行撮影。

 「刑法改正案」と「少年法改正案」が、来年の通常国会に提出される公算が高まりましたが、成立は第49回衆院選後になりそうです。

 懲役刑・禁固刑を「廃止」して新自由刑として執行猶予を刑に入れ込みやすくする「刑法改正案」と、18歳・19歳の処遇を特別扱いする「少年法改正案」について、早ければ令和3年(2021年)にも提出されるはこびとなりました。

 法務省の審議会は、きのう最終原案をとりまとめました。大臣からの諮問を2つで、(1)犯罪者に対する処遇を一層充実させるための刑事法の整備の在り方
(2)少年法における「少年」の年齢を18歳未満とすることーーの2点。3年半前に大臣から諮問(103号)されていました。

 (1)の動きは、今から3年半前、2017年1月1日付の当ニュースサイト記事で報じました。

 最終とりまとめ案では、懲役刑・禁固刑を「廃止」し「新自由刑」(仮称)に。30年を上限とする刑務所での身体拘束を可能としながらも執行猶予をつけられる刑期を広げ、執行猶予をつけやすくする改正となりそうです。刑務所が慢性的な定員過剰となっており、法務省矯正局・保護局が受刑者・保護観察者の人数を調整しやすくしたい思惑がありそうです。新自由刑導入後も、「死刑」、「罰金・過料」、「拘留」、「没収刑」は残ります。

 (2)改正公職選挙法(2016年)や改正民法(2022年施行)が「18歳・19歳を成人」と扱ったことに関連し、少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)に限っては、18歳・19歳を特別扱いすべきだとの検討会が法務省内に設置されたことは、当ニュースサイトは2015年10月28日付記事で報じました。

 いったん蛇足ですが、こういう過去の記事については、宮崎信行もグーグル検索などをして調べているのであって、私に面前で口頭で唐突に質問されても、タイトルからしてさっぱり覚えていませんから、お含みおきいただきたいと存じます。

 閑話休題。検察官が18歳・19歳で犯罪の嫌疑があると思った者は、家庭裁判所に送致でき、家裁が検察官に逆送致できるとする内容。こちらも、少年鑑別所、少年院、保護観察所の定員などについて柔軟にしたいという法務省の思惑もにじみ出ていると思います。

 ところで、少年法は昭和23年1948年に制定され、50年間抜本改正されなかったのに、今世紀の20年間で4回も改正。今回は改正民法(2022年施行)との比較考量の必要性が立法事実ですから、改正議論そのものは当然ですが、「立法爆発」をさける意味からも、年齢による扱いの違いをシンプルなものにすることがのぞまれそうです。

 少年法18歳・19歳については自民党プロジェクトチームが作成した1枚紙も、法制審部会員の机上に配布されたようです。ここでは、「18歳・19歳について、成年という言葉を使うと混乱するので、少年法では成年という言葉を使わないようにすべきだ」という趣旨のことが盛り込まれました。

 第48回衆院選後、4度目の通常国会となるので、過去の例から抜本的な法改正案の成立は難しいと思われます。第49回衆院選後の早期成立をめざして、法務省が突貫工事で、解散直前までの原案提出をめざすことは、あり得ます。

 法務省は一部の刑務所を「センター」の名称で民間委託していますから、定員を柔軟に考えることは理にかなっています。

 今日収監されている受刑者の7割は「高校中退以下」の学歴で、逮捕直前の職業は7割が「無職」。その事実は、全国民に知ってほしいところです。

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Ⓒ2020年、宮崎信行 Miyazaki Nobuyuki


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