【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

民法債権編改悪法案で、聾唖者からの融資の連帯保証の公正証書の作り方が新設、廃案しかない!

2016年05月07日 09時06分38秒 | 第190回通常国会(2016年前半)

 きょねん3月31日に国会に提出されながらも、来月、平成28年2016年6月1日までの今第190回通常国会での成立がありえない現状となっている、民法債権編抜本改悪法案(民法の一部を改正する法律案、第189閣法63号)の中に、聾唖者が融資の連帯保証人になる場合の公正証書の作り方を定めた条項を新設しようとする改正条項が含まれていることが、筆者・宮崎信行の法案精査で判明しました。

 今の民法には無い、「第465条の7」をつくる改正条項。

 この中に、事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約の公正証書について、

 「口がきけない者である場合には、公証人の前で」「通訳人の通訳により申述し、又は自書して、同号の口授に代えなければならない」

 「耳が聞こえない者である場合には、公証人は」「筆記した内容を通訳人の通訳により保証人になろうとする者に伝えて、同号の読み聞かせに代えることができる」

 とし、聾唖者が融資の連帯保証人になる場合の公正証書の作り方を細かく定めました。

 あくまでも参考として、きょう現在施行している民法の第969条の2は、次のようになっています。

 「口がきけない者が公正証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で」「通訳人の通訳により申述し、又は自書して」「口授に代えなければならない」

 「耳が聞こえない者である場合には」「筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝えて、同号の読み聞かせに代えることができる」。

 このように、聾唖者の公正証書遺言の作り方の現行法規を参考にして、民法債権編抜本改悪法案に聾唖者の連帯保証の公正証書の作り方を新設するのです。これについては、法務省内の部会(座長・鎌田薫早稲田大学総長)がとりまとめた「改正要綱」に記されており、法務省民事局参事官室が法案として作成したのでしょう。

 この改正法案は、国会で審議入りしていないにもかかわらず、既に今年発売された六法全書に付録などとして全文収載される状況にまでなってしまっています。

 融資の連帯保証の公正証書を聾唖者からとろうとする条文をわざわざ付け加える法案を、今国会で通していいのでしょうか。

 6月1日の会期末に、継続調査(閉会中審査)の手続きをとることなしに、与党・自民党が審議未了廃案の決断をすべきなのです。

 以下、「改正法案」の中の、参照条文。

[民法債権編抜本改悪法案で新設される、第465条の6及び第465条の7の全文引用はじめ]

(公正証書の作成と保証の効力)
第四百六十五条の六 事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。
2 前項の公正証書を作成するには、次に掲げる方式に従わなければならない。
 一 保証人になろうとする者が、次のイ又はロに掲げる契約の区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める事項を公証人に口授すること。
  イ 保証契約(ロに掲げるものを除く。) 主たる債務の債権者及び債務者、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものの定めの有無及びその内容並びに主たる債務者がその債務を履行しないときには、その債務の全額について履行する意思(保証人になろうとする者が主たる債務者と連帯して債務を負担しようとするものである場合には、債権者が主たる債務者に対して催告をしたかどうか、主たる債務者がその債務を履行することができるかどうか、又は他に保証人があるかどうかにかかわらず、その全額について履行する意思)を有していること。
  ロ 根保証契約 主たる債務の債権者及び債務者、主たる債務の範囲、根保証契約における極度額、元本確定期日の定めの有無及びその内容並びに主たる債務者がその債務を履行しないときには、極度額の限度において元本確定期日又は第四百六十五条の四第一項各号若しくは第二項各号に掲げる事由その他の元本を確定すべき事由が生ずる時までに生ずべき主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものの全額について履行する意思(保証人になろうとする者が主たる債務者と連帯して債務を負担しようとするものである場合には、債権者が主たる債務者に対して催告をしたかどうか、主たる債務者がその債務を履行することができるかどうか、又は他に保証人があるかどうかにかかわらず、その全額について履行する意思)を有していること。
 二 公証人が、保証人になろうとする者の口述を筆記し、これを保証人になろうとする者に読み聞かせ、又は閲覧させること。
 三 保証人になろうとする者が、筆記の正確なことを承認した後、署名し、印を押すこと。ただし、保証人になろうとする者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
 四 公証人が、その証書は前三号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。
3 前二項の規定は、保証人になろうとする者が法人である場合には、適用しない。
 (保証に係る公正証書の方式の特則)
第四百六十五条の七 前条第一項の保証契約又は根保証契約の保証人になろうとする者が口がきけない者である場合には、公証人の前で、同条第二項第一号イ又はロに掲げる契約の区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める事項を通訳人の通訳により申述し、又は自書して、同号の口授に代えなければならない。この場合における同項第二号の規定の適用については、同号中「口述」とあるのは、「通訳人の通訳による申述又は自書」とする。
2 前条第一項の保証契約又は根保証契約の保証人になろうとする者が耳が聞こえない者である場合には、公証人は、同条第二項第二号に規定する筆記した内容を通訳人の通訳により保証人になろうとする者に伝えて、同号の読み聞かせに代えることができる。
3 公証人は、前二項に定める方式に従って公正証書を作ったときは、その旨をその証書に付記しなければならない。

[全文引用おわり] 

このエントリー記事の本文は以上です。
(C)宮崎信行 Nobuyuki Miyazaki 
(http://miyazakinobuyuki.net/)

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