goo blog サービス終了のお知らせ 

ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。

「就活漂流生」が吉川沙織さんに申し入れ、“就職環境改善法”制定へ 具体的提案

2011年01月19日 12時50分57秒 | 第177常会(2011年1月)大震災・3党合意
[写真]民主党参院議員の吉川沙織さん、2009年8月、宮崎信行撮影

 昨年末のエントリーで、「就職氷河期」の代表、参院議員・吉川沙織(吉川さおり)さんの第174通常国会の予算審議での質問を紹介しました

 きのう(2011年1月18日)、大学生の就職難に関して「就職環境改善の法律策定」をもとめて「4団体」が民主党参院議員の吉川沙織さんに申し入れました。

 2011年1月18日付の「大学生の就職難に関する申し入れ書」の提出者は4団体、代表者はのべ5人で、
 「就活どうにかしろデモ@東京 本間篤」(本間さんは東京新聞などでも実名で「神奈川大4年生」と報じられているので、実名)
 「就活くたばれデモ@札幌 Oさん(文書では実名、以下同)」
 「ここがヘンだよ就活パレード in 関西 Tさん」
 「就活したくないよぉ~☆パレード@松山 Sさん・Fさん」

 の4団体・5人の連名です。

 そして、おそらく後見人的存在ということでしょうが、「参議院議員 吉川沙織様 私は東京大学大学院教育学研究科教授の本田由紀と申します。(中略)私からもこころからのお願いを差し上げ申します」という東大院教授で・日本学術会議の「大学と職業の接続」検討分科会幹事の本田由紀さんの前日(1月17日)付のお手紙も添えてあります。

 私自身も、バブル崩壊&第2次ベビーブーム世代&大学進学率上昇のトリプルパンチで、大卒就職難の時期で、真夏の地下鉄で疲れ果てたことがあります。ただ、今回はどうやらネット上から派生したデモの参加者らが組織したようで、東京、札幌、関西(大阪ではなく)、そして松山というようにティーパーティー的な広がりを感じさせます。

 文書によると、2010年11月23日に、全国4都市(札幌、東京、大阪、松山)でデモ行進をしたということで、その日は「勤労感謝の日」ですから、センスの良さを感じさせます。

 そして、12月27・28日に10政党に4団体連名で申し入れをしたそうです。私はこのことをまったく知らず、12月30日付で吉川さんのエントリーを書きました。学生というのは、政治家から見ると、「票にも政治資金にもならない」ので、おそらく生煮えだったのでしょうか。2011年1月1日放送のテレビ朝日「朝まで生テレビ!」の観覧席に、実行委員12人が入り、番組中で発言した、とのことです。ごらんになったかたも多いのでしょうか。

 そして、「就職氷河期は社会構造が生み出したものであり、政府が積極的に取り組まなければならない」「政権与党である民主党には、就職環境改善のための法律の策定を申し入れたい」(申し入れ書の文面)ということで昨年の予算審議で具体的な国会質疑をした政権与党の吉川さんへ直談判となったもようです。

 また、参院厚生労働委員長の津田弥太郎さん(民主党参院議員でものづくり産業の労働組合「JAM(ジャム)」出身)と意見交換もしました。申し入れには、吉川さんが役職を務める「民主党青年局」の事務を扱う民主党国民運動委員会の党職員も同席しました。

 私は申し入れ書を見て、大変感心しました。

 吉川議員が3月の質問で提案し、菅直人政権のチームが8月に打ち出した、「卒業後3年以内は新卒扱い」について、「方向性としては良いが、より一層の緩和を求める」として、「卒業の年数による差別を防ぐため、履歴書に卒業年を書くことを禁止する」ことなど「実効性を高める法律の策定を要望する」と、タイヘンに具体的な手法を提言しています。

 申し入れ書のもう一つの柱「就職活動の早期化是正」ですが、経団連(会長企業・住友化学)が1月12日に発表した会社説明会のスタートを(大学3年生の)10月から12月に遅らせる」という指針について、「(法的)強制力がない」とし、「そもそも12月でもまだ早すぎる」と一刀両断、バッサリ斬り捨てました。それと対比させるかのように、日本貿易会(会長企業・三井物産)の「説明会を3年生の年明け2~3月頃、採用活動を(4年生に進級した)8月以降とする」との方針を「この水準を実現してほしい」と評価するという「分断工作」を使っており戦術面でも長けています。また具体的な提言として「学業を阻害しないよう広報・採用活動は長期休暇・週末・夕方以降にし、できるかぎり教育課程を修了した遅い時期に開始することを義務付ける法律の策定を要望する」としています。

 一連の文書では、「就職活動ナビサイト偏重に起因するミスマッチ問題の一考察」という文書も添付してありました。

 これによると、「現在就職活動中の学生が使う主な情報源は、ナビサイト(就職情報サイト)であり、合同説明会もナビサイト主催のものが多い」んだそうです。そして、このナビサイトとは、大手3サイトとして、「リクナビ2011」、「マイナビ2011」、「日経ナビ2011」があるそうですが、この大手3サイトでは全企業の1割以下の企業の情報しか得られないようだ、と分析しています。その理由として、「掲載料が高額で、数十万~100万円近くの基本料金に、1つあたり10万円~100万円程度の様々なオプションがつく料金体系となっており、中小零細企業は掲載をためらうではないか、と考えられる」という、分析があります。ご存じのように、中小企業に限定すれば、新卒採用の有効求人倍率は4~5倍だとされています。この点で、文書は「ナビサイト以外の情報源を活動できる環境を構築することが効果的で、具体的には公的な就職情報機関(例:ハローワーク)の充実が必要だ、と指摘しています(法制化は求めていない)。この考察は私はまったく知らなかった情報ばかりで目から鱗が落ちました。

 本田教授もお手紙で「当事者である若者自身が声をあげる動きはこれまでほとんど見られませんでしたが、ここに来て、ようやく若者たちによる現状への建設的批判や提言が現れるつつあります」としています。私も、

 これだけの具体的提言ができる若い人材は、元気な日本を復活するうえで、必要不可欠です!と僕も思う。

 本田教授も、吉川さんへのお手紙で、「これは明らかに正当かつ健全な前進であり、社会は、なかでも為政者(与党政治家)の方々は、ぜひ彼らの切実な訴えに耳を傾け、その求めに応えて、大学(および他の教育機関)から仕事への移行」への対策が必要とし「若者がその力を十全に発揮できるような社会の構築を願う」と書き綴っています。

 さて、参議院議員、吉川沙織、34歳。ずいぶん重い課題を与えられました。

 この人は、情報労連(NTT労組など)の推薦をもらえれば、現行制度では当選し続けられるんですよ。ここが政治家として大きくなれるかどうかの正念場です。歴代の総評系国会議員は、野党第1党の党首(日本社会党中央執行委員長)や、首相(村山富市さん)、衆参両院副議長がいましたが、これだけ大きな課題を与えられた旧総評系議員は吉川さんが初めてといういえるでしょう。私のように政権交代ある政治に必要な二大政党のひとつとしての「民主党」というとらえ方をしている人間と同様に、民主党に「欧州型社民主義政党」の要素を求めている人もいます。私が信頼する政治家の一人であり、2月6日に北九州市長再選をめざす北橋健治さんは「日本のブラント」をめざしてきましたが、吉川さんには「日本のメルケル」のような政治家になってほしい。頑張れ!

 このブログでも何度も書いているように、衆参の厚労委は法案が大渋滞になっているし、通常国会の前半戦は、衆参の予算委員会に大臣が拘束されて、一般委員会は開催すら難しいです。しかし、そう言っていられる状態でもありません。

 私としては、超党派の議員立法として、衆参与野党の話し合いや委員会での意見表明を経て、「厚労委員長起草の法案」として国会提出し、委員会審議を簡略化して、本会議に上程して可決・成立するのが現実的だと考えます。経団連もルール化に動いている以上、法律への圧力はかけづらいだろうし、実は経団連の正副会長の企業というのは、逆に日本貿易会の会員会社に頭が上がらない(旧財閥や海外事業での協力関係など)ことがあるので、ここは一気に突破できるのではないかと考えます。

 吉川さんなら、衆・議運委理事で、野党時代は厚労委理事の経験が長かった山井和則さんの協力も得られるし、津田弥太郎委員長は良くも悪くも力がある。参院自民党は津田さんのことをヤジるけど、それは力があるから、おそれているだけで、おそらく参院自民党がネックになりそうですが、ここは他党の協力があれば、参院でも過半数の支持を得られると推測します。やはり、まずは審議日程をどうするか、ということで、「就職氷河期の代表・吉川さおり」さんの背中を衆参与野党の先輩たちが背中を押して欲しいと願います。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 天皇陛下、詔書を発布 | トップ | 与・野党 衆・参 閣僚経験... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。