渡辺恒雄の後継者、宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

小野寺大臣、法案可決に涙のシビリアンコントロール 自衛隊法改正法案

2013年10月31日 20時33分10秒 | 第185臨時国会(2013年10~12月)秘密保護法

[画像]筆者(宮崎信行)=赤丸内が傍聴する中、自衛隊法改正法案を起立多数で可決する衆議院安全保障委員、2013年10月31日(水)午後6時過ぎ、衆議院インターネット審議中継からキャプチャ、赤丸は筆者加筆。

【衆・安全保障委員会 2013年10月31日(水)】

 発足から11か月たって、いまだに内閣のメンバーが変わらない安倍内閣。閣議陪席者を入れると、民主党政権から続投していた山本庸幸さんが最高裁判所判事に転出し、小松一郎・フランス大使に代わった一点のみです。

 その中で、唯一、法案を可決させた経験がない大臣が小野寺五典さん(宮城6区)です。菅官房長官もここまで成立させていませんが、総務大臣として法案成立を経験しています。5期12年と、男性閣僚では最も勤続年数が少ない小野寺さん。国務大臣で唯一、法案成立経験がないとは、いかにも小野寺さんらしい。なお、男性議員の勤続12年未満では馬淵澄夫さん(民主党)だけが閣僚経験があり法律も成立させています。

 民主党政権は解散当日に、改正自衛隊法を成立させています。また、民主党政権(北澤俊美防衛大臣)で最初の成立法律は改正自衛隊給与法でした。どういうわけか、自民党政権では自衛隊給与法案は提出されていません。

 別段、自衛隊の任務遂行には、法律改正の必要がなければそれでよしと思うのですが、ライバル官庁の警察庁は毎通常国会に法案を提出し、法律改正を47都道府県警察本部に徹底することで、キャリアへの求心力を高めているようです。

 その中、1月のアルジェリア人質事件を受けて、小野寺大臣自らが働きかけて、政権交代後、初めて防衛省が書いた法案、「自衛隊法を改正する法案」(183閣法63号)が審議入りしました。すでに第183通常国会で審議されていることから、趣旨説明の省略が全会一致で認められました。

 質疑では、民主党から長島昭久・筆頭理事が登場。小松一郎内閣法制局長官を見ながら、「小松さんは国際法の権威で、以前から著書を読んでいました。ぜひがんばってほしい」とエール。小松法制局長官はかなり緊張していて、長島さんへの答弁を「平成15年の伊藤英成議員への答弁書を読み上げます」と切り出しました。伊藤英成さんはこの委員会の委員長を務め、民主党ネクスト外相として国務省も訪れましたが、政権交代前に引退していますが、こうやって国会の継続性の中で、名前が出ました。民主党が国会論戦で大きくなって政権を獲得したあかし。

 法案は人質を救出した後、これまでの飛行機、船に加えて、車両でも輸送できるようにする改正案。長島さんは「私は人質の奪還そのものに武器を使用しろ、とは一言も言っていない」としながら、「警察官職務執行法(警職法)第7条の武器の使用に該当する場合でも自衛隊は手を出せないということでいいのか」と質問。小松長官は硬い表情ながら「長島さんの通常国会での議事録をよく精読しており、お考えはよく理解している」と語り、長島さんも「無国籍船と国籍不明船の違いのあいまいさなど、政府の安保法制懇談会でしっかりやってほしい。内閣法制局長官、期待しています」と語り、小野寺防衛大臣に向かって「防衛大臣も自衛隊を出される責任者なんですから、しっかりやってください」というと、小野寺さんは唇を引き締めてその責任の重さを加味しているようでした。

 この後もいくつか面白い議論がありました。維新の宮沢隆仁さんの「シミュレーションだが、邦人保護後の移送の車で、武器を使えるのか」との質問に、防衛省運用企画局長は「安全のためには使える」と答弁。「それでは邦人救出時に武器を使えるのか」と重ねて問うと、小野寺大臣は「自衛隊法上の根拠がない」と答弁。宮沢議員は「もう少し武器の使い方については、政府内の慎重な検討をお願いしたい」。小野寺大臣は自衛隊法のさらなる改正を国会にお願いし、野党の宮沢議員は政府に武器運用についてていねいにやって国会に報告してほしい、と求めあっているようにも感じました。

 共産・赤嶺氏の「ソマリア・ジブチの海賊対策としてつくった海上自衛隊の拠点で(海外での活動が)無制限にならないか」と党と、小野寺大臣は「積極的平和主義をかかげる安倍内閣として国際貢献していきたい」。ここは噛み合わない問答で、海上自衛隊には「初の海外基地」との昂揚がありますが、200か国の中で海外基地を持つ国がほとんどないという世界観があれば、あまりはしゃぐのは禁物です。生活の党の玉城デニー議員への答弁で小野寺さんは「人質が働く企業の社員や家族も航空機で輸送できる改正も盛り込まれている」としました。自民党政権であまり経団連会員企業が「企業戦士」として世界に出やすい環境を整えすぎるのも考え物です。ただ、玉城議員も「大臣には、質問通告していないところが答えていただき、ありがとうございました」と質問を終えました。

 討論では、自民党の1期生、笹川博義さんが賛成討論しましたが、ゆっくりかんでふくめるように、およそ3分以上にわたって朗読。およそ3倍のスローモーションという感じでしたが、今までの早口での討論の方が日程戦術の悪影響でおかしかったのです。後に続いた議員もゆっくり読み上げました。これからは、このくらいゆっくり討論をすればいいのでしょう。これも一つの国会改革です。

 採決の結果、共産党、社民党の2名を除く、自民党、民主党、維新、公明党、みんな、生活の賛成多数で可決しました。

 この後、附帯決議を付すべしとの動議が6派(自、民、維、公、み、生)共同提出で、維新の議員が朗読。やはりゆっくりしていたのでメモが取りやすかったのですが、3本目に「自衛隊による人質の輸送にこだわることなく、政府としてもっとも取りうるものを選択すること」とくぎをさしました。自民党政府が、空自所有のジャンボジェット政府専用機を退役前に、自民党系企業の人質輸送に利用することがないよう、国会が政府にくぎをさした格好です。なお、附帯決議案の採決では、法案に反対した社民党が賛成に回りました。

 このように、国会がしっかりと政府にくぎをさす。日本国憲法では「シビリアン・コントロール(文民統制)」が書いてありますが、現在ではポリティカル・コントロール(政治家による軍の統制)が世界の主流です。こうやって小野寺大臣を民主党の長島理事や、各党の国会議員が支えることこそ、私たち国民による軍の統制です。

 小野寺大臣は12年目で法案の衆・委員会可決を初めて体験しました。散会後、小野寺大臣が長島筆頭理事と握手すると、感極まったのか、涙を流しました。そこに、先輩で未入閣の元防衛副大臣、岩屋毅さんがそっと背中に手をやっていました。

 自衛隊法改正法案は、あす11月1日(木)の本会議で可決し、参院に送られます。


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