【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

自民党、緊急定数是正0増5減法案を衆議院に提出

2012年07月28日 06時18分36秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

 当ブログは1人別枠方式(基礎配分方式)が明白に憲法違反であると断定した第45回衆院選の1票の格差訴訟判決(2011年3月23日の最高裁大法廷判決(最大判))と2010年国政調査による10年に1度の小選挙区区割り見直しのために、定数是正を早急に進めるべきだと強く主張してきました。

2012年5月3日付)細田博之さん「0増5減しかない」 定数是正 野田さんは「樽床切り」もカードにすべきだ

2012年2月29日付)“樽床違法状態”に突入

2011年11月16日付)最高裁「小選挙区制は2大政党による政権交代がしやすく国政が安定性する」須藤正彦・裁判官が太鼓判


 各党協議会の座長を務めた樽床伸二・民主党幹事長代行の不作為を激しく批判してきましたが、やはり6月26日の総理が政治生命をかけた一体改革法案で、小選挙区選出議員も含めて民主党から大量造反者が出るという最悪の結果を招きました。仮に定数是正と10年に1度の新区割りが法律通り2月にできていれば、伝家の宝刀を持つ野田佳彦総理への求心力が高まったはず。樽床氏は腹切り物です。

 自民党の細田博之さんや村田吉隆さんが2012年7月27日(金)、「衆議院小選挙区選出議員の選挙区間における人口較差を緊急に是正するための公職選挙法および衆議院議員選挙区画定審議会設置法の一部を改正する法律案」を鬼塚誠・衆議院事務総長に提出しました。議案番号はおそらく180衆法27号になると思います。これは「衆院選挙区0増5減緊急定数是正法案」と呼ぶべきものでしょう。

 緊急定数是正法案第2条は衆議院の定数を475人とし、小選挙区選出議員を295人とします。0増5減の定数是正を優先し、定数削減は棚上げします。そして、「各都道府県の区域内の衆議院の小選挙区の数について、いわゆる「1人別枠方式」を廃止する」とし、区割り審設置法(衆議院選挙区画定審議会設置法)の第3条の2を削除します。この区割り審設置法第3条の2を削除しないで第46回総選挙をした場合は、選挙区ごとどころか、選挙全体が違憲とみなされると思われるのが、2011年3月の第45回衆院選に関する最高裁大法廷判決です。国会議員や新聞記者は判決文を読んでいないから、危機感が薄いのでしょう。

 また、勘違いしている人が多いでしょうが、10年に1度の国政調査にもとづく新区割りなので、全国のおそらく44ぐらいの都道府県でその県内の選挙区境界線の変更があります。また緊急是正法案には書いてありませんが、平成の大合併による基礎自治体の境界線の変更もなるべく反映する必要があります。新区割りは知事の意見を求めることになっており、緊急是正法成立後も区割り審による内閣総理大臣への勧告は若干時間がかかるかもしれません。

 なお、新区割りは内閣総理大臣に勧告したときから周知期間が始まると考えてもいいという説があります。さらに、新区割りを定めた公職選挙法(この法案の後に再度法改正が必要)の施行日は、衆議院議員選挙の公示日で良いという法解釈なので、施行日の28日ほど前からは衆議院を解散してもいいということになります。このことについてもっと知りたい方は、1986年の中曽根内閣の死んだふり解散(衆参ダブル解散)について調べてください。

 緊急定数是正の細田法案をオリンピック期間中に、3党合意して、可決・成立させましょう。政治倫理の確立と公職選挙法改正の特別委員会の衆院側委員長は赤松広隆さん、参院側委員長は足立信也さんです。

 定数削減や比例代表ブロック(11ブロック制の廃止や連用制の導入)などの抜本改革は棚上げして第47回衆院選から適用すべきです。民主政治の基本はシンプル・イズ・ベストであり、大幅なルール変更はすべきではありません。例えば、今の選挙制度で、千葉県の有権者は、全国で唯一千葉県がブロックの飛び地になっていることを知っている人が1割もいるでしょうか。千葉県は南関東ブロックですが、東京都が東京ブロックで独立しているので、神奈川県、山梨県などと飛び地になっています。第44期衆議院では民主党比例南関東ブロックで千葉県連の長浜博行衆院議員が参院選に院替え出馬し、神奈川県連の藤井裕久さんが繰り上げ当選する事例がありました。要するに、複雑なルールはよくありません。0増5減と、おそらく44都道府県での新区割りだけでも、日本中大変更です。それで、民主党も自公も、衆参とも過半数に達しないハング・パーラメント(宙ぶらりん議会)になるでしょうから、あまり間を置かずに第47回衆院選で「決められる政治」に持っていくべきです。英国ではハング・パーラメント解消のため、1974年に2回解散総選挙をしています。

 私、この件は本当に怒っています。この細田法案を速やかに、もうロンドン五輪(2012年7月28日土曜日~8月12日日曜日)の間に成立すべきです。そうでないと、大阪維新の会の進出で、既成政党は事実上の定数大幅削減の選挙結果が待っています。決められる政治はすべての現職国会議員に責任があります。

 なお、最高裁大法廷の判決文は→こちら(PDF)で読むことができます。

[緊急定数是正細田法案の要綱はこちら(PDF)から。以下、全文引用はじめ]

「衆議院小選挙区選出議員の選挙区間における人口較差を緊急に是正するための公職選挙法及び衆議院議員選挙区画定審議会設置法の一部を改正する法律案」要綱
第1 趣 旨〔緊急是正法第1条関係〕
この法律は、衆議院の小選挙区をめぐる現状に鑑み、平成22年の国勢調査の結果に基づく衆議院の小選挙区の改定案(以下「今次の改定案」という。)の作成に当たり、各小選挙区間における人口較差を緊急に是正するため、公職選挙法(昭和25年法律第100号)及び衆議院議員選挙区画定審議会設置法(平成6年法律第3号)の一部改正について定めるものとする。
第2 公職選挙法の一部改正〔緊急是正法第2条関係〕
1 衆議院議員の定数の削減
衆議院議員の定数を475人(現行480人)とし、小選挙区選出議員を295人(現行300人)とする。 (公職選挙法第4条第1項関係)
2 衆議院の小選挙区
衆議院の小選挙区は、別に法律で定める。 (公職選挙法第13条第1項関係)
第3 衆議院議員選挙区画定審議会設置法の一部改正〔緊急是正法第3条関係〕
各都道府県の区域内の衆議院の小選挙区の数について、いわゆる「1人別枠方式」を廃止する。 (選挙区画定審議会法第3条第2項関係)
第4 今次の改定案の作成基準、勧告期限等の特例〔緊急是正法附則関係〕
1 衆議院議員選挙区画定審議会(以下「審議会」という。)の行う今次の改定案の作成に当たっては、各都道府県の区域内の衆議院の小選挙区の数は、 別表 で定める数とする。
2 審議会の行う今次の改定案の作成は、次に掲げる基準によって行わなければならない。
① 各小選挙区の人口は、人口の最も少ない都道府県の区域内における人口の最も少ない小選挙区の人口以上であって、かつ、当該人口の2倍未満であること。
② 小選挙区の改定案の作成は、次に掲げる小選挙区についてのみ行うこと。この場合において、当該都道府県の区域内の各小選挙区の人口の均衡を図り(イの小選挙区の改定案の作成の場合に限る。)、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行うこと。
- 2 -
イ ①の都道府県の区域内の小選挙区
ロ 小選挙区の数が減少することとなる都道府県の区域内の小選挙区
ハ ①の基準に適合しない小選挙区
ニ ハの小選挙区を①の基準に適合させるために必要な範囲で行う改定に伴い改定すべきこととなる小選挙区
3 審議会の行う今次の改定案に係る勧告は、この法律の施行の日から6月以内においてできるだけ速やかに行うものとする。
4 政府は、今次の改定案に係る勧告があったときは、当該勧告に基づき、速やかに、法制上の措置を講ずるものとする。
第5 施行期日等〔緊急是正法附則関係〕
1 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第2(公職選挙法の一部改正)は、第2の2に規定する法律の施行の日から施行する。
2 その他所要の規定の整備を行う。
別 表〔緊急是正法附則関係〕
(都道府県)小選挙区の数
北海道 12
青森県 4
岩手県 4
宮城県 6
秋田県 3
山形県 3
福島県 5
茨城県 7
栃木県 5
群馬県 5
埼玉県 15
千葉県 13
東京都 25
神奈川県 18
新潟県 6
富山県 3
石川県 3
福井県 2
山梨県 2
長野県 5
岐阜県 5
静岡県 8
愛知県 15
三重県 5
滋賀県 4
京都府 6
大阪府 19
兵庫県 12
奈良県 4
和歌山県 3
鳥取県 2
島根県 2
岡山県 5
広島県 7
山口県 4
徳島県 2
香川県 3
愛媛県 4
高知県 2
福岡県 11
佐賀県 2
長崎県 4
熊本県 5
大分県 3
宮崎県 3
鹿児島県 5
沖縄県 4
(※下線を付した県は、現行より各1減)

[全文引用おわり]

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