【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

採決近づく「共同親権」で、教育議員「通過しても法律の再改正必要かも」答弁者も総務・国税・外務に広がる

2024年04月10日 18時29分52秒 | 第213回通常国会 令和6年2024年1月召集
[写真]立憲民主党の鎌田さゆりさん、おととし2022年6月の議員会館の党会合で、宮崎信行撮影。

 離婚後共同親権を認めたり、養育費の先取特権を明記したりする民法改正案の審議が続きました。

【衆・法務委 きょう令和6年2024年4月10日(水)】
 「民法改正案」(213閣法47号)の審議は6日目となります。趣旨説明、参考人質疑を済ませて、きょうは対政府質疑は4巡目でした。理事を実務者として、自公立維の4党の修正協議がされており、野党は審議に応じていることから、今週にも修正案を採決することが予想されます。

 4巡目になると、野党が出す議題が煮詰まってくることもありますが、共同親権では逆に広がりました。

●鎌田さゆり→総務省に市町村のDV加害者への住民票写し交付
 立憲の鎌田さゆりさんは、市町村の職員の間で、DV加害者に住民票の写し交付してしまった場合に、弁護士から訴えられるリスクがあると委縮する動きがあると指摘。総務省は「住民基本台帳事務では、被害者の住所を探索することを防止するDV等支援措置を実施しております」「今回の民法改正により、離婚後に父母双方が親権者とされた場合におきましても、DV支援措置の必要性が認められる場合には、これを実施する基本的な考え方に変更はないものと考えております」としつつも、「ご質問のように審査請求でありますとか処分の取り消しの訴えなどが提起されることはあり得るものと考えている」と鎌田さんの指摘を認めました。

●おおつきくれは→国税庁に住宅ローン控除の適用
 大築紅葉(おおつきくれは)さんは、「先週の質疑に関連して、離婚についての住宅ローン減税のあり方について私のところに声が寄せられました。離婚前は住宅ローンで購入していた家に住んでいて、離婚後は(主に夫が)実家に移り住んで、配偶者と子供たちは購入した家に住み続けている場合なんですが、名義は変更せず住宅ローン残高払いを含めた養育費を実家に移り進んだ方が払っているという事例。居住しなくなったので住宅ローン控除が適用されなくなったという現実がある。そこで、例えばこのようなケースにおいて今後の共同親権で、単身赴任者と同様に、住宅ローンの控除が適用されることになるのか伺います」と問いました。国税庁は「住宅ローン控除は、その年の12月31日まで引き続きその居住の用に供しているときに限り、控除の適用」があるとしつつ単身赴任などでは柔軟に適用されているとしました。そのうえで国税庁は「元夫の方が実家に移り、購入した住宅に居住しておらず、元妻と子供が購入した住宅に居住し続けているケースにつきましては、該当しない」として控除を使えないとしました。そして「この控除は親権の有無を要件としておらず、今般の民法改正後に、離婚後の父母双方を親権者と定めたことをもって、具体的な変更を生ずるわけではない」と答弁しました。

●米山隆一→外務省に子のパスポート発給の両者の同意
 対政府質疑1巡目の枝野幸男さんの指摘からくすぶっている、未成年者のパスポート取得に関する双方の親権者の同意について。米山隆一さんが外務省に問いました。外務省は「離婚後も共同親権が維持される場合、その方々からの署名をだけをもってパスポートを発給していいかどうかということについては慎重に検討したい」「現行のルールとしては、事前に署名を行ってないもう片方の親権者から、不同意書をあらかじめ提示する場合があるんですけれども、こういった手続がそのままでいいのかと。つまり民法改正後もですね、共同親権であっても、不同意書の手続きを維持していいかどうかは、慎重に検討をしていきたい」と述べました。施行前に課題があることになります。

 こういった質疑を聞きながら、政党「教育無償化を実現する会」(維新と共同会派)の斎藤アレックスさんは「今回の法改正の趣旨は我々は重要だと思うが、それにそった法運用がなされなければ、さらなる法改正を含めて立法府が責任を果たさなければならない」と語り、仮に今週法案が通過しても、問題がくすぶる懸念を示しました。

【参・憲法審】
 今国会初めて開会し、「3カ月を経過した能登半島地震」の黙祷と幹事の選任だけで終わりました。今国会は残り10週(連休谷間の5月1日水曜日含む)となります。衆側から「国民投票法改正案」が送付された後でなければ「憲法改正項目の発議案」も通らないと思われますが、10回となると、まだ可能性はあるように思えます。

【衆・国土交通委】
 「陸上輸送の2024年問題の一括法案」(213閣法19号)について、共産党が単独で修正案を提出しました。採決では修正案が否決。政府原案を自公立維などの賛成多数で可決すべきだと決めました。

【衆・厚生労働委】
 「雇用保険法改正案」(213閣法10号)の質疑が終局。共産党の宮本徹さんが「料率が上がってしまう」と修正案を出しました。修正案は否決され、宮本さんが、補選で候補者調整をした立憲も含めた「戦わない野党」に対して声を荒げた不規則発言をしました。政府原案通りに可決すべきだと決めました。また、2年前に提出された「介護・障害福祉従事者の人材確保に関する法律案」(208衆法30号)で、早稲田ゆきさんら立憲単独の提出者からの申し出で、撤回が了承され、廃案となりました。

【衆・内閣委】
 「道路交通法改正案」(213閣法38号)と「車庫法改正案」(213閣法39号)が国家公安委員長から趣旨説明され、審議入りしました。

 当ニュースサイトでは、およそ11年前に、警察庁が参院選の半年前に参院先議で提出する国会対策をしている疑いがある(警察庁の国会対策は不自然なのか?見習うべきか? 道路交通法改正法案が4たび参議院先議の怪 - ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記)と報じました。11年前の記事の効果があったかどうかは分かりませんが、今回は衆院先議ですが、国家公安委員長の松村祥史さんは参院議員。直近のニュースで、エクアドル国の副大統領が亡命を求めてメキシコ大使館に逃げ込んだところ警察が突入して身柄奪還。国交断絶となりました。日本の警察は、地検や自衛隊とのパワーバランスがうまいのですが、サイバーをめぐって国家警察の様相も帯びつつあり、若い政治学科学生には外国と比較することも頭の片隅に入れてほしいところです。

【衆・財務金融委】
 日銀報告に対する質疑。

【参・決算委】
 「令和4年度決算案」の審議3日目で、省庁別審査2回目。国会、会計検査院、復興庁、総務省、環境省。

 国民民主党の浜口誠さんは会計検査院に対する質問として、ガソリン補助金の総額を質問。「2022年1月以降、6・4兆円の予算で4・6兆円執行した」との財務副大臣答弁に続き、検査院第五局長は「資源エネルギー庁が効果を検証していなかった」と批判しつつも「変動する要素をすべて勘案して金額を出すことは困難である」と理解も示しました。

 吉川さおりさんの国会に対する質疑で、参議院改革協議会(参改協)が議事録を作成していないことが明らかになりました。

 以上です。