(憲法改正は20年施行目標、9条に自衛隊…首相)
安倍首相(自民党総裁)が、読売新聞に対して、平成29年2017年4月26日(水)に語った独占インタビューが、同5月3日付の読売新聞で報じられました。
首相は憲法改正の日程感について、
「発議のタイミングは、衆参の憲法審査会での審議の結果として決まるものだ。自民党総裁として、この方向で、と言って私が決められるものではないが、私はかねがね、半世紀ぶりに日本で五輪が開催される2020年を、未来を見据えながら日本が新しく生まれ変わる大きなきっかけにすべきだと申し上げてきた」
「2020年も、今、日本人にとって共通の目標の年だ」「新しい日本を作っていくこの年に、新たな憲法の施行をめざすのはふさわしい」
と語りました。
私は昨夏、第24回参院選で改憲勢力が衆参各院で3分の2を超えながら、憲法審査会(とくに参側)がほとんど動かないことに疑問を持ってきました。私はきょうのインタビューを読んで、やはり安倍首相(自民党総裁)は、たいして憲法改正に意欲は無いのだなと感じました。
日本国憲法第96条は、憲法改正について国民投票の承認をえたら、天皇は国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちに公布する、第100条は(1946年改正は)公布の日から起算して6か月を経過した日から施行する、とあります。
憲法改正手続き国民投票法(平成19年法律51号)は、その2条で、国民投票は、国会(衆参各々)が憲法改正を発議した日から、起算して60日以後180日以内に行う、としています。
なので、安倍晋三さんの発言を勘案すると、2019年秋ごろに発議し、2020年国民投票し、公布、施行する、というようなスケジュール感だと思います。これは、自民党総裁の任期は(来年秋に再選すれば)2021年9月まで、その間の国政選挙は、参院の半数改選(第25回)と、第48回衆院選ですから、仮に3分の2を維持できれば、発議すればいい、レガシーになるというくらいの感覚ではないでしょうか。
このインタビューでは、自民党憲法改正草案について「党の目指すべき改正はあの通りだが、政治は現実であり、結果を出していくことが求められる。改正草案にこだわるべきではない」、との発言をおそらく初めてして、大幅な軌道修正をしました。
具体的な改憲項目について、第1章天皇には否定的、第7章辺りに教育無償化を書き込むことは肯定的、第7条などの衆議院解散権には言及を避け、緊急事態条項には前向きな姿勢ながら国会に委ねるとしました。第4章の参議院についても、参議院に議論を任せるとしました。
第9条については、「例えば、第1項、第2項をそのままの残し、そのうえで自衛隊の記述を書き加える」と語りました。これは、2014年7月1日の集団的自衛権解禁の閣議決定により、首相はすでに9条改正に興味がなく、その「なかば犯罪行為のカモフラージュ」のために、9条1項と2項を残したまま、3項を書き加えることで、集団的自衛官の上書をしたい、との真相の心理のあらわれでしょう。
解釈改憲による、平和安保法制の改正自衛隊法の第90条や、第90条の2あたりでは、米艦防護ができることになっています。いったん話がかわりますが、一連の規定で、「警護」と「防護」という言葉の定義が整理されていないように感じられます。「米艦防護」は日米ガイドラインなどの二国間協議の言葉で、それを、自衛隊法に落とし込みたいのが、平和安保法制のねらいだったことの裏打ちのようにも感じられます。
同日の読売新聞は、米国の補給艦に対して、ヘリ空母護衛艦「いづも」だけでなく、護衛艦「さざなみ」(艦番号113)も米艦防護すると報じられました。「さざなみ」は哨戒ヘリを飛ばすことができ、艦対艦ミサイルも搭載していますので、仮に北朝鮮の潜水艦などに追尾される事態が生じたときは、日米一体化して武力行使ができることになるでしょう。こういうことができるのですから、首相は改憲にはあまり興味が無く、レガシーにできれば恩の字というところでしょう。
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Miyazaki Nobuyuki