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ニュースサイト 宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が3党協議を現地で取材したり国会中継を見たりして雑報を書いています。

維新・和田有一朗「巨大組織に緩みがあってはならない」、ガーシー議員は「陳謝」で案文決定

2023年02月21日 20時18分19秒 | 第211回通常国会(2023年1月)
[写真]日本維新の会の兵庫3区比例の和田雄一朗衆議院議員、きょねん11月の東京・神宮外苑の「早稲田大学鵬志会35周年式典」で、宮崎信行撮影。

 ガーシー議員は「議場での陳謝」となりました。首相はきのう役員会で、「森まさこ補佐官がLGBTQ同性婚法案を準備する」と言明。あすは泉健太代表、遠藤敬国対委員長、玉木雄一郎代表ら各党のキーマンが衆議院予算委員会に登場します。

【衆議院財務金融委員会 きょう令和5年2023年2月21日(火)】
 「所得税法改正案」(211閣法2号)は2巡目の小ぶり改正の法案審査。今次改正にない「インボイス」が問われました。次回の開催は未定。

【衆議院総務委員会 同日】
 「地方税法改正案」「地方交付税法改正案(211閣法8号及び9号)の法案審査2巡目。珍しく財金委を飛び越していましたが、同じペースで次回の開催は未定。今次改正にない「森林環境税」「マイナンバー」が話題となりました。

【衆議院予算委員会 同日】
 「令和5年度予算案」は15日目で、そのうち分科会2日目。
 第七分科会では、兵庫3区比例の和田雄一郎衆議院議員が「三菱飛行機のMRJジェットの終了は残念だ」「JAXAのH3ロケットの打ち上げは現地まで見に行き、日本人の夢と未来に希望を乗せて舞い上がれとSNSに書き込んだのに打ちあがらず残念だ」と語りました。和田さんは「失敗と言ってはいけないのかもしれないが」としつつ政府に原因をたずねると「あすJAXAが発表する」との答弁だけで「けっきょくいまだに原因が分かっていない」と突き放しました。そのうえで、「巨大組織に緩みがあってはいけない」とくぎをさしました。

 宮崎の思いとしては、JAXAの法務・企画室長は学部のゼミの同級生で、千葉5区の自宅に行ったり、湘南の海に繰り出したりしました。このサイトの常連読者ですが、四十代後半になるとオーナー2代目社長の自分とはどうにも話が合わなくなり、会話等をしないでほしいとの意向を去年あたりに示しました。私は機械販売業の家業から「安全装置は電力を落とすのだから働いたのは当たり前。もちろん人間が介在しなければ。メインロケットエンジンが勝手に引力・重力から自由になれるわけではないので、中止でなく、失敗と言います。損害保険料が高くなるのかもしれないですが」との思いしかありません。今48歳ですが、彼とも66歳の前期高齢者になったころには、また湘南の海にでも繰り出したいところです。

【参議院懲罰委員会 同日】
 鈴木宗男委員長が議事を取り仕切りました。「議員ガーシー君懲罰」に関して、前回議長から説明を聞いたので、「理事会で議院運営委員長から経緯の説明を聞くことに決定した」と語り、石井準一委員長が口頭で説明したうえで「招状などすべての文書を配布しました」と述べました。ここで、ガーシー議員の代理として、浜田聡NHK党議員の入室が許可され、発言しました。

 浜田さんは弁明として「ガーシー議員が綾野剛氏を、NHK党が三木谷氏を虚偽告訴だとして民事で提訴したからだ」と欠席の新しい理由を説明しました。これに先立ち同党の立花孝志代表はSNSで訴状を公開しました。

 きょうの懲罰委に戻り、鈴木委員長は「尋問」に移るとしましたが、ガーシーさんがいないので「尋問はしないと理事会で決めた」と伝えました。そして委員外委員の発言が許され、維新の片山大介さんが維新に割り振られた1委員が鈴木委員長なので、代わりに党の考えを述べるとして「我が党はオンライン議会に賛同するが、実現する前はガーシー議員は登院すべきだ」と語りました。

 討論では自民党の牧野京夫さん(参議院改革協議会専門委員長)が「国会法122条の第2号の公開議場における陳謝という懲罰を課すべきだ」との立場を表明して、その理由として、この日の弁明で理由が変遷していることも加えました。立憲、公明、維新、国民、共産も同じ立場で討論しました。採決され、全会一致で「国会法122条の第2号の公開議場における陳謝」とすることを決めました。あすの本会議に上程。ここで休憩となり理事会が開かれました。委員会が再開し、鈴木委員長が文面を朗読しました。

 散会後、NHK党の浜田議員は立花代表(非議員)とともにぶら下がりに応じ、陳謝の本会議に出席することはないと語りました。立花さんは既に党会合兼記者会見をしており、名簿4位の人を繰り上げ名簿トップに移すことを発表しました。名簿2位の元候補者はきょうのTwitterで親から励まされたと明かし悔しさを明言しつつも立花さんに従う意向を示しました。

【参議院議院運営委員会 同日】
 会計検査院の検査官候補の一橋大学教授の女性の所信表明と、所信及び経歴に対して「亡くなった京セラ・稲盛社長と親交があったようだが」との質問に答えました。こちらは、委員会での決定はないまま、本会議で結論が示されます。衆議院はあすなので、珍しく参議院側が1日先んじたかっこう。


[写真]日本維新の会の兵庫3区比例の和田雄一朗衆議院議員、きょねん11月の東京・神宮外苑の「早稲田大学鵬志会35周年式典」で、宮崎信行撮影。

このエントリーの本文記事は以上です。
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【篠原孝】「たとえ新幹線が水没しても、千曲川にダムは要らない」→大臣「信濃川中流域の治水にダムは必要だ」とかみあわないやりとり

2023年02月20日 21時30分37秒 | 第211回通常国会(2023年1月)
[写真]篠原孝・立憲民主党幹事長代行=肩書は当時、きょねん3月、宮崎信行撮影。

 篠原孝さんは前回の長野1区でわずか6461票差で自民公認候補に敗れましたが、連続当選7回19年となり、74歳の現在も意気軒高。新生党以来の「羽田・北澤姓以外の長野県連代表」として全県一区完勝、民主党源流とする政党で、国民民主党の地方議員が県内1人だけという「大きな塊」を維持しています。菅直人元総理から2学年下の「団塊リベラル」として昨夏まで西村ちなみ幹事長を幹事長代行として支えるなど永田町でも精力的に活動しています。前回の惜敗は「コロナで自粛しすぎて、山がおろそかになった」(側近中の側近)ためですが、自民現職が生まれたことで、巷間噂され続ける小平奈緒信州大学特任教授の1区出馬はなさそうという運をつかんだかのように、私には思えます。

 長野オリンピックパラリンピック・北陸新幹線開業以降、少子化を食い止めて、失われた30年での地位を浮上される長野県北信など長野1区。一方、岸田文雄首相・斉藤鉄夫国土交通大臣率いる広島県は若者の出超が最悪となっています。

 きょうは、篠原孝さんが、衆議院予算委員会の第八分科会に登場しました。篠原さんは「私はエコロジストだ」とし「四大文明は川の流域から始まった」と指摘しました。4年前の令和元年台風19号での、長野市内における北陸新幹線基地水没を振り返りつつも「千曲川にダムは必要ない」と主張。根拠として「私の選挙区である、塩崎というところなど3カ所で穴を掘って遊水地を整備している」とし運動場や田畑に使えば、ダムは必要ないとしました。篠原さんは「私はアメリカのシアトル、そこを流れているフレイザーリバーというのがある。全長1400キロ、4倍、流域面積は信濃川(千曲川含む)の20倍です。そこの本流には一つもダムはありません」と語り、斉藤さんに元環境大臣と現国土交通大臣の経験をいかせと迫りました。


[写真]野党系が強いとされつつも、速やかに始まった千曲川左岸氾濫地域の土手かさ上げ工事、旧更級郡塩崎村(長野市)でおととし宮崎信行撮影。

[写真]民間企業の新しい看板が目立つ、千曲川右岸の新幹線上田駅前(長野3区)おととし宮崎信行撮影。

[写真]美しい信州、宮崎信行撮影。

[写真]篠原孝・立憲民主党幹事長代行=肩書は当時、きょねん3月、宮崎信行撮影。

 斉藤さんは「篠原委員のご理解、ちょっと違うところがあるのではないかと思っております。その遊水地をできるだけ有効に利用するのは、我々も同じ考え方だ」としつつ「利水、治水のバランスをとることが必要だ」とし、私有財産である水田への活用は、土木構築物による災害時の流出の観点からも後ろ向きでした。

 大臣は、篠原さんが「千曲川」と呼んだにもかかわらず「信濃川中流域においても、ダム所有者は鮭がのぼりやすい川作りといった河川環境の保全に取り組んでいる。国土交通省としては河川環境、水力発電、激甚化する災害に対する治水対策など様々な観点から河川に求められる期待に対して調和のとれた川作りを目指し、関係機関と連携して努力してまいりたい」と答弁しました。

 今国会序盤では、自民政調会長から「今ある空家を子育て世代に活用してもらったら」と促されたのに、斉藤大臣が「UR賃貸住宅の入居者に年収が上がったら退去してもらい、より若い子育て世代に入居してもらう」ことを検討すると答弁し、まったくかみ合わない場面が続出しています。

 以上です。
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自民党で統一教会と関係深い石橋林太郎議員「天皇陛下が天照大神の子孫と宮内庁は明記を」「昭和天皇の皇籍離脱前夜の最後の晩餐の内容答弁して

2023年02月20日 20時31分13秒 | 第211回通常国会(2023年1月)
[写真]天皇皇后両陛下を守る皇宮警察本部警察官(手前)、今から4年前の2019年1月2日、東京千代田区の皇居で、宮崎信行撮影。

 予算は来週、衆議院を通過するとみられます。きょう月曜日と火曜日は「分科会」が8つ設けられ、質問の機会が少ない議員も登場しました。

【参議院 きょう令和5年2023年2月20日(月)】
 予算送付を待ち受ける参議院では行政監視委員会が開かれ、有識者から話を聞きました。また、あす懲罰委員会は尾辻秀久議長の懲罰動議によるガーシー議員について初めての質疑を行う見通しで国対委員長らが会談しました。

【衆議院予算委員会 同日】
 「令和5年度予算案」は先週までに59時間を審議しており、きょうは15日目。朝8時40分からの理事会後に8つの分科会が設けられて、国土交通の第八分科会も含めて一律8時間コースの質疑がありました。

 第一分科会の「皇室費」では、与野党通じて、自民党の石橋林太郎さん(比例中国単独1位=安佐南区に事務所、当選1回、岸田派)だけが質問しました。

 統一教会との関係が深いと報じられた石橋さんは「おはようございます。自由民主党の石橋林太郎でございます。本日は久しぶりなんでありますけれども質問の機会をいただきまして、先輩また同様の皆様に心から感謝を申し上げたいと思います」と苦境をうかがわせました。

 石橋さんはまず、宮内庁次長に対して初当選前の「皇室典範特例法」について質問。そのうえで、戦後のアメリカ主導の「皇籍離脱」について数字を詳しくやりとりしました。そして、皇籍離脱直前に昭和天皇が開いた食事会について、「当時の週刊誌報道でいうところのいわゆる最後の晩餐」と呼ばれているとし、会話の内容を尋ねました。宮内庁次長は昭和天皇は「皇族としての皆さんと食事を共にするのは今夕が最後であります。しかしながら従来の縁故というものは、今後においても、なんら変わるところはない」「機会あるごとに遠慮なく久しい気持ちでお話しにおいでなさるように希望します」と語ったとしました。

 石橋さんは「ご承知の通り、天皇陛下は天照大神の直系のご子孫」であるとし、アマテラス(天照大神)の8代後が初代神武天皇だとする古事記の歴史観を示し、「その起源を神話に求める天皇陛下のご存在というものが宮内庁のホームページ等々ではなかなか見受けられませんし、また、残念ながら戦後の我が国の学校教育におきましても、そうした点は十分には子供たちに伝えることができていない」とし、「宮内庁のホームページでは、神話に連なる存在であるという天皇陛下についてのの説明というものはない」とし、「神話に繋がる存在としての天皇を知っていただくような広報活動取り組み」を要望するとし、政府答弁は求めませんでした。

 石橋さんは最後に北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)による拉致問題の解決を自分自身も取り組んでいくと強調しました。

 当ニュースサイト内の関連記事のご紹介。

【週刊文春】岸田文雄首相の比例中国1位議員と系列県議も壺、石橋林太郎議員は「ピースロード共同実行委員長」で、親は「日韓トンネル全国協議会幹事長」、系列県議は「広島県平和大使協議会共同議長」 - ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記

天皇陛下に忍び寄る旧統一教会の魔の手 未来に向かって関係を断たなかった岸田自民、比例中国1位議員 - ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記

 筆者の感想としては、石橋さんが示した価値観には全面的に賛同します。保守を重んじる立場と選挙での協力関係から、統一教会との関係が深くなったのでしょうが、統一教会の文鮮明氏らの考え方に自民党の皇族観・家族観が完全に洗脳されたかのような毎日新聞などの報道には無理があると感じます。

●第五分科会では国内外の臓器移植をめぐる議員立法の機運

 第五分科会では、日本維新の会の池下卓さんが一部NPOが「国内外を通じた臓器移植に関して不適切な取引」が見受けられるとし、臓器移植法をめぐる適正化の厚生労働省など政府による法整備が必要だと指摘。今国会では超党派の議員連盟を通じて、適正化のための法整備が検討される動きとなりました。

 以上です。
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岸田文雄首相が予算委外で追い込まれ週に、米大統領がキーウ訪問でG7で唯一に、LGBTQ未法制に続き、立維共闘は児童手当所得制限撤廃法案を提出

2023年02月20日 19時56分13秒 | 第211回通常国会(2023年1月)
[画像]キーウ訪問を明かす、バイデン大統領の公式ツイッターアカウント「POTUS」=スクリーンショット

 報道や、アメリカ大統領の公式ツイッターアカウント「POTUS」によると、バイデン大統領がキーウを電撃訪問して、ゼレンスキー大統領に連帯する姿勢を態度で示しました。

 G7(先進国・主要国首脳)のうち、ロシア侵攻後にキーウを訪問していないのは、あろうことか今年の議長である、岸田文雄・日本首相だけとなりました。

 岸田さんは自民党総裁の立場で、「G7でLGBTQを念頭にした同性婚が法制化されていない唯一の国だ」と世論の過半数がから追い込まれています。

 岸田さんは、先月22日に、今月中のキーウ訪問を計画していると読売新聞が報じ、予定はないとしつつ、報道の全否定はしてません。

 岸田文雄首相が来月2月中にウクライナ・キーウ訪問へ、予算委員会審議日程に影響も 読売報道 - ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記

 日本の国益にとって、G7よりはるかに重要な国際枠組みである「日米同盟」の当事者・アメリカ大統領の今回の訪問の動きの情報と連携していたかどうかは不明。

 予算審議は今週は、あさって集中審議3本目を終えて、天皇誕生日の後、来週は集中審議4本目をやって、来週半ばに衆議院から参議院に送られます。

 立憲民主党と日本維新の会の2党による「立維共闘」は、きょう「児童手当法所得制限撤廃法案」(211衆法 号)を提出して、後半国会に向けて気勢を上げる思惑を示しました。

 内閣支持率は底打ち傾向の岸田さんですが、「G7唯一」という瀬戸内海グローバル思想で、今後追い込まれる公算も高まりました。

 政府は「キエフ」を「キーウ」と法律でも改める条項を含んだ「在外公館位置・名称・給与法改正案」(211閣法11号)を国会に提出しており、こちらは野党も早期に賛成するとみられます。

 以上です。
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天皇陛下に忍び寄る旧統一教会の魔の手 未来に向かって関係を断たなかった岸田自民、比例中国1位議員

2023年02月17日 18時24分41秒 | 第211回通常国会(2023年1月)
[写真]天皇・皇后両陛下、3年前の2020年、宮崎信行撮影。

 自民党の中国ブロック単独1位で岸田派の石橋林太郎議員が、週明け月曜日の衆議院予算委員会分科会で、全国会議員の中でただ一人、皇室費について質問することが分かりました。

 分科会は週明け月曜日20日、火曜日21日開催。第1分科会は、皇室、衆参両院事務局、内閣府、デジタル庁などを所管。池田宮内庁次長の予算説明の後に、午前10時半から11時まで、石橋さんだけが「皇室費」の質問に立つことになりました。

 分科会は、いつも予算委とは逆に、若手の希望に沿って割り振る運用を各党がしています。

 石橋さんの父親である元広島県議会副議長は、日韓トンネル推進会議の広島県の会長や全国の幹事長を歴任。林太郎さんも統一教会のイベントの実行委員をした過去を持ちます。
 
 統一教会の「統一」が何を示すか判然としない部分がありますが、6000人以上の日本人が合同結婚式で、日本国籍を離れていることから、日本の天皇・皇室をめぐって複雑な心情をにじませた教義を持っていることが予見されます。

 こういった中、全国会議員で最も旧統一教会に親密な石橋さん一人だけが、皇室費の予算の審議に立つのは、単に、自民党執行部が思い至らなかったからだと思われます。岸田さんは「未来に向かって関係を断つ」としながら、まさに近未来である皇室予算に統一教会関係議員が与野党ひとりだけ立つことになったのは、投票率が低い選挙と議会制度の間隙をつく統一教会の政治手法そのものといえそうです。

 以上です。
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「こども予算倍増答弁揺れで集中審議やり直せ」、国税庁次長「確定申告のコロナ延長はことしはない」

2023年02月17日 17時32分19秒 | 第211回通常国会(2023年1月)
[写真]財務省、3年前の2020年6月、筆者撮影。

 予算審議は低調と言えば低調ですが「安全保障」「こども」「エネルギー」の3本柱は骨太な議論が続いています。

【衆議院予算委員会 きょう令和5年2023年2月17日(木)】
 「令和5年度予算案」14日目で、そのうち一般的質疑6日目となりました。きょうの3時間を加えて審議時間は59時間となり、採決をめぐる攻防へ。

 おとといの集中審議2本目で首相が「家族関係社会支出は2020年度の段階でGDP比で2%を実現している。それをさらに倍増しようではないかと申し上げている」と語りました。梅谷守さんの問いに答えて松野官房長官は「防衛費との関係においても、決して取り組みが見劣りするわけではないとの趣旨で申し上げたものだ」と答弁しました。首相の真意を確かめる必要があるとして集中審議をやり直したり、集中審議が3本目を立てるようにもとめました。

 月曜日と火曜日は分科会。

【衆議院財務金融委員会 同日】
 「令和5年所得税法など改正案」(211閣法2号)。きょうが質疑1巡目でした。地方税法が先に質疑されたのは珍しいかもしれません。

 なお、審議の後、次回は21日・火曜日の午前10時10分から委員会を開くことになりました。財務省・国税庁・金融庁に関する分科会がすむとすぐに法案審議再開ということになりそうです。

 日本維新の会の藤巻健太さんの問いに国税庁次長が答弁し、「コロナ禍において、令和元年分、2年分と十分な準備ができるように一律に一カ月間所得税の確定申告期間を延長し、3年分は簡易な申請で延長できた。4年分は緊急事態制限による行動制限がなかったので、延長することはない」としました。

 また、藤巻さんは、「確定申告期間中に本業が止まり、経済に影響が出ている」とし、確定申告が経済活動を阻害していると指摘しました。国税庁次長は、政策減税などの導入を迫られることもあると自民党政権下での苦心をにじませつつ、簡素な税制にとりくみたいとの前向きな姿勢を示しました。

【参議院 同日】
 ありません。

【法務省法制審議会 同日】
 「諮問117号 性犯罪に対処するための法整備について」の答申が、ようやくなされました。1か月前後という超スピードで法案作成し、今国会提出へ。

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自公国3党実務者協議で、ことしは自民党は宏池会・上川陽子幹事長代理が担当、きょねんは茂木派だった

2023年02月16日 20時44分46秒 | 第211回通常国会(2023年1月)
[写真]上川陽子・実務者、おととし、自民党大会ホテルで宮崎信行が撮影。

 自民党・公明党・国民民主党の3党実務者協議が立ち上がり、自民党の実務者は、上川陽子幹事長代理となったことが、報道されました。

 きょう令和5年2023年2月16日(木)は、予算審議は公聴会でした。

 自民党が上川陽子幹事長代理、公明党きっての秀才とされつつ神奈川6区で落選(議席は立憲民主党→自民党)した上田勇参議院議員、国民民主党は電力総連・関西電力組織内の浜野喜文副代表の3名となったようです。

 秋の臨時国会での救済新法の自公国実務者協議は、若宮健嗣・宮崎政久・大口善徳・大塚耕平・古川元久の各実務者でした。茂木敏充幹事長の派閥から起用されました。

 若宮健嗣さんは、復興大臣交代にともなう玉突き人事で、「5階の経理局長」に回りました。幹事長と同じ派閥から経理局長が起用されるのは異例。

 今回は、岸田文雄総理・総裁と同じ宏池会で中途入社ながらも岸田さんと近いとされる、上川陽子幹事長代理が起用されました。国民民主党の榛葉賀津也幹事長とも静岡市内の会合で顔を合わせることが多いようです。

 上川幹事長代理の自公国3党協議実務者起用は、茂木さん、岸田さんとの関係性から、注目したいところです。

 以上です。
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所得制限第5条を削除する「児童手当法改正案」を立憲が決定、小倉将信・こども家庭庁相の国会引っ張りだしをねらう

2023年02月16日 19時00分52秒 | 第211回通常国会(2023年1月)
[写真]小倉将信こども相、きょねん7月4日、東京・町田市で、宮崎信行撮影。

 立憲民主党はきょうのNC(次の内閣)で杉尾秀哉NC内閣府大臣らが作成した「児童手当法の第5条削除などの改正案」を決定しました。泉健太代表も「ネクスト首相」として出席しました。長妻昭「ネクスト官房長官」が、次の常任幹事会に「事後報告」しますので、同党の判断としてはきょうで最終決定となります。

 法案の内容は、児童手当の所得制限を定めた「第5条」を削除し、その周辺の法文を整理する内容。例えば、第26条第1項の「一般受給資格者」を「受給資格者」に当たら目、「前年の所得の状況及び」の法文を削るなどとした内容で、A4判2ページ。

 今国会3日目に自民党の茂木敏充幹事長が「児童手当(民主党政権下では子ども手当)の所得制限の撤廃」岸田文雄首相に提案しましたが、厚労相、政調会長らが異論を呈しています。

 今国会は「安全保障」「こども」「エネルギー」の3本柱を維持して、スキャンダル追及なく序盤が進んでいます。しかし、「こども」だけ法案がなく、小倉将信大臣が内閣府8号館に各省庁を呼んで「たたき台」を3月に作成し首相に提出。首相が揉んで6月の骨太の方針に入れますが、この揉む時期と第20回統一地方選が重なるため、首相主導でやってる感をアピールするとの疑念が野党内に充満しています。

 小倉大臣のチームには、全省庁が協力しているとみられますが、画期的な政策メニューはないとみられ、国会内での方向感が定まらない風向きとなっています。



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自民党推薦公述人「新しい戦前を迎えて友人のマイケル・グリーン、アーミテージと台湾有事100パターン研究中だ」予算、議院運営、総務も開催

2023年02月16日 18時42分45秒 | 第211回通常国会(2023年1月)
 植田日銀総裁候補への「2月24日(金)9時半から2時間45分の国会審議」が決定。予算委では中央公聴会、総務委では地方税法改正案の審議が粛々と進みました。

【衆議院議院運営委員会理事会 きょう令和5年2023年2月16日(木)】
【参議院議院運営委員会理事会 同日】

  「植田総裁・氷見野、内田副総裁案」の漏洩について、松野博一官房長官が「2月14日に、政府14名・候補3名に対して副長官がヒアリングした調査結果」のペーパーを配布。「就任要請を聞いたのは2月13日だ」として、情報漏洩はなかったと報告。委員長、両筆頭理事は「今後このようなことがないように情報管理の徹底を求める」と語りました。維新の遠藤敬理事が「申し合わせを廃止してもよいと思う」と述べましたが、打ち止めとなりました。
 この後、2月21日(水)午後3時から検査官候補の所信聴取と質疑をし、2月24日(金)午前9時半から2時間45分「植田候補」、午後1時から2時間「両副総裁候補」の所信聴取と質疑をすることになりました。海の向こうではリズ・トラス首相兼保守党党首がマーケットの混乱でわずか2か月間で退陣に追い込まれ、きょうは日本経産省で西村康稔大臣と会談して再起を期しているようですが、日本のマーケットが国会に圧力をかける展開はあるのでしょうか。

●衆議院憲法審査会幹事懇談会 同日
 きょねんから「予算委が開かれていても大臣が出ないので憲法審査会は開く」展開となりましたが、ことしは予算委審議中はやらないことになりました。きょうは幹事懇談会で、予算が衆議院を通過していたら3月2日(木)に開くことが決まりました。

【衆議院予算委員会 同日】
 「令和5年度予算案」の質疑は13日で、きょうは中央公聴会でした。
  自民党推薦の拓殖大学教授の川上高司公述人は「我々は新しい戦前にいる」との現状認識を提示しました。そして「私の友人のマイケル・グリーン、リチャード・アーミテージと、岡崎大使(岡崎久彦元駐タイ大使=2014年逝去)と話し合って、台湾有事を100パターンから200パターンを研究している」と語り、自身の国益・国際情勢を披露しました。
 公聴会を入れて審議時間は56時間。あすは9時から一般質疑。週明けは月、火曜日が分科会、水曜日が集中審議3本目と決まっています。

【衆議院総務委員会 同日】
 「地方税法改正案」(211閣法8号)と「地方交付税法改正案」(211閣法9号)の質疑1巡目でした。
 立憲民主党の神谷裕さんは民主党政権の途中で衆参ねじれで自民党の主張で法案タイトルから削除された「地域主権」について、民主党出身の松本剛明大臣が就任したことから地方分権と旧・地域主権の良いきっかけとしてほしいと語りました。
 きのう水曜日は所得税法改正案の審議はなく財務金融委の理事懇談会が開かれ、きょう木曜日は地方税法改正案の質疑1巡目となりました。共産党は財金が各々田村貴昭・総務が宮本岳志委員となっています。籠池夫妻は今月実刑が確定し、近く収監される見通しです。なお、同じ大阪府でIRカジノ予定地の「地盤が軟弱だ」との情報が出てきています。大阪府の公有地の地盤をめぐる情報戦が繰り返されています。

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スキャンダル無き政策国会、枝野幸男「脱・電力総連」にウィング広げる、石破茂健在ぶり「6回目の昭和16年夏の敗戦」

2023年02月16日 01時53分46秒 | 第211回通常国会(2023年1月)
 第2次岸田改造内閣は4大臣が去りました。先週は「大臣在任6か月おめでとう」ケーキを大臣室スタッフからもらった大臣もいたようです。

 今国会は野党はスキャンダル追及は少なくなっています。「安全保障」「こども」「エネルギー」の3本柱は崩れていません。

【衆議院予算委員会 令和5年2023年2月15日(水)】
 「令和5年度予算案」12日目。そのうち集中審議2本目でタイトルは「安全保障及び少子化対策など内外の諸課題について」で1本目と同タイトルになりました。
 分科会が来週20日(月)21日(火)に行われることが決まりました。
 自民党は石破茂さんが質問。「総理、その後具合はいかがでしょうか。私は政調会長のとき内視鏡手術をしましたが後がつらかった」と語り「総理と私は同じ昭和32年生まれだ」と2期後輩の首相に対して健在ぶりをアピールしました。

 石破さんは、統一教会との関係があった政策科学研究所(中曽根康弘・渡辺美智雄派)に在籍していましたが、質疑では相変わらず「私の師である田中角栄」と語り、「猪瀬直樹さんの昭和16年夏の敗戦」を取り上げました。石破さんが同書を引き合いに出すのは、6回目以上でした。

 石破さんは幹事長時代も土曜朝の議員会館に出勤するとされ理由を訝る向きもありました。勉強しているのかと思いきや、何もアップデートされた兆候の無い健在アピールでした。きのうの山本有二さんと同じくさっそうと連続当選してきましたが、立憲民主党の岡田克也さんが勉強を欠かさず「国民保護法の核シェルター」「配偶者控除と配偶者手当の整理」など政策プログラムを浮上させていることと違いが際立っています。国と地方での子分づくりの面倒見がよくない点は似通っているようにも感じますが、石破さんは地元はそれなりにやっているのかもしれません。

 立憲民主党は枝野幸男前代表が登場しました。泉健太執行部への批判はまったくありませんでした。

 枝野さんは「安全保障」「エネルギー」を質問。実は、枝野さんが代表時代に「関西電力助役問題」が浮上しましたが、幹事長・国対委員長ら近畿ブロック選出議員が労使で「質問させない議連」の結成に追い込まれ、追及が立ち消えになりました。関電は9会社で最も原発依存率が高いです。しかし、電力総連の国民民主党支持も際立ち、以前のように参議院会派副会長として自民党若手と勉強会をつくる現職もいないこともあり、脱原発に舵を切ったように、私は感じました。

 枝野幸男は、2011年の東電福島原発爆発で茶の間にお詫びしました。発送電分離のシステム改革に立ち戻り、小規模業者の傾斜地などへのソーラーパネルを増やすよう求めました。原発への攻撃を防げないとして廃止をうながしました。首相の言葉尻をとらえて、「安全よりも効率を優先している」と批判しました。

 黒田東彦日本銀行総裁に対しては1期生の藤岡隆雄さんが質問しました。野党は「植田総裁案」の提示で大規模量的金融緩和の修正を迫る姿勢を崩してはいません。

【衆議院内閣委員会 同日】
 「谷公一国家公安委員長の所信的あいさつに対する質疑」がありました。

●衆議院財務金融委員会は理事懇談会を開きました。

【参議院国民生活経済及び地方に関する調査会 同日】
 「地方の現状と地域経済」をテーマに参考人質疑と自由討議がありました。
【参議院外交及び安全保障に関する調査会 同日】
 「原発」「核」など広く言えばエネルギーに関した参考人質疑。
【参議院資源エネルギー・持続可能な社会に関する調査会 同日】
  エネルギーをめぐる国際情勢。調査会は政局と離れることになっていますが「安保」「エネルギー」国会となっています。

●あすの衆議院議院運営委員会理事会は「植田総裁案」リークの官房長官の調査報告とそれに対する質疑。
●あすの衆議院憲法審査会は、今週も開かれません。

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【全文つき】立憲民主党は「植田総裁ら案」に「新しい金融政策の実現に向けて」をチェックシートにして審議

2023年02月15日 13時33分17秒 | 第211回通常国会(2023年1月)
 10年ぶりの日銀総裁交代で「植田総裁・内田・氷見野副総裁案」がきのう、国会に提示されました。国会審議はきょうの衆議院予算委員会集中審議が初めてとなります。立憲民主党は1期生の藤岡隆雄さんが、黒田東彦・現総裁に質問します。1期生が立つというところに、アベノミクス量的金融緩和を真っ向から批判するわけではないとの意向も透けて見えます。

 同党は今月、「新しい金融政策の実現に向けて」を決定し、「次の内閣」の階猛NC財務・金融担当相が発表しました。このペーパーに基づき、植田候補らの所信聴取に対する質疑にのぞむことになります。

 全文を独自のルートで入手しましたので、全文紹介します。




「新しい金融政策」の実現に向けて
2023(令和5)年2月3日
立憲民主党 財務金融部門会議・新しい金融政策WT

目次
「新しい金融政策」の実現に向けた改革工程表...................................... 1
1. 日銀の金融政策への警鐘.......................................................................................................... 2
2.「異次元の金融緩和」がもたらした諸問題....................................... 4
3.「異次元の金融緩和」は修正すべき.............................................. 10
4.長短金利操作(YCC)の一層の柔軟化....................................................................................................... 12
5.政府・日銀の共同声明(アコード)の見直し.................................... 14
6.長短金利操作(YCC)の撤廃....................................................................................................... 16
7.日銀保有国債の安定的な処理..................................................... 17
8.日銀保有ETFの安定的な処理..................................................... 18
 
Phase Ⅰ: 正確な現状認識 
1. 日銀の金融政策への警鐘
(1) 日本銀行の黒田総裁は、2013年4月4日の政策委員会・金融政策決定会合後の記者会見において、①金融市場操作目標を金利からマネタリーベースが年間約6 0兆から70兆に相当するペースでの増加に変更、②長期国債買い入れを年間5 0兆円に相当するペースで増加するよう拡大し、買い入れの平均残存期間を長期化、③ETF、J-REIT等のリスク性資産をそれぞれ年間1兆円、300億円に相当するペースで増加するよう拡大、④2%の「物価安定の目標」の実現を目指す――を打ち出し、これを「量的にみても、質的にみても、これまでとは全く次元の違う金融緩和を行う」として、いわゆる「異次元の金融緩和」を開始した。
(2) しかし、3年を経ても2%の「物価安定の目標」が実現されないことから、2016年1月、一定量以上の当座預金にマイナス金利を課す「マイナス金利付き量的・質的緩和」を始め、更に同年9月には、長短金利の操作を行う「イールドカーブ・コントロール(YCC)」と、安定的に2%の「物価安定の目標」を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続する「オーバーシュート型コミットメント」を内容とする、
「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入することを決定した。この長短金利操作付き量的・質的金融緩和は現在に至るまで継続され、国債については20 22年9月末の普通国債発行残高993兆円の52.9%を、ETFについては市場全体の約8割、国内株式市場の約7%相当を占めるに至っている。
(3) この間日銀は、2021年3月19日の政策委員会・金融政策決定会合でYCCの柔軟な運営のため、長期金利の変動幅を「プラスマイナス0.25%程度」とすることとしたが、その後長期金利は度々0.25%を上回る事態を生じていた。これに対して日銀は、2022年3月29日から3日間連続指値オペを実行するなど国債の大量買い入れを継続して、長期金利0.25%を上限とするYCCを死守しようとしていたが、10月11日には長期金利の指標である新発10年国債の業者間取引が3営業日連続で売買未成立となり、10月31日にはこの時点での日銀の新発10年国債3 68回債の保有額が3.11兆円と同日時点の市中発行額2.88兆円程度を上回り、保有比率が108%となるなど、国債市場が日銀の大量買い入れに完全に依存し、長期金利が日本の経済状況を表す指標としては全く機能しない状態が生じていた。
(4) このような中で、2022年1月4日に1ドル115.4円だった為替相場は10月21日に150円を突破し、32年ぶりの円安水準を更新した。これらの事態に対して、 YCCの柔軟化の必要性が再三問われていたが、黒田総裁は9月26日の大阪経済4団体共催懇談会後の記者会見では、YCCの変動幅「±0.25%」を変更することを「利上げに当たる」として否定し、11月2日の財政金融委員会に置いて長期金利の上限を0.5%とするよう変更を求めた立憲民主党の階猛議員の質問に対しては、「2%の物価安定目標の実現が見通せるような状況になったときに、その前段階でイールドカーブ・コントロールを御指摘のような形で柔軟化していくとか

 
いうことは一つのオプションとしてあり得る」と留保しつつ、これを否定していた。

(5) ところが、その一月半後、突如日銀は12月19日、20日の金融政策決定会合で、
「市場機能の改善を図り、より円滑にイールドカーブ全体の形成を促していくため」として、0%という10年国債利回りの目標は維持しつつも、変動幅を従来の
「±0.25%程度」から、「±0.5%程度」へと拡大する方針を決定した。これについて黒田総裁は、金融政策決定会合後の記者会見で「利上げではない」と説明しているが、従前の説明との矛盾は大きく、国債(金利)相場と株式市場が完全に「官製相場」となって日本の経済状況を表す指標としての機能を失っている中、海外との取引で「官製相場化」が出来ない為替市場だけが、日本の経済状況と政策ミスによる日銀の金融政策破綻の危機に対して鳴らしていた警鐘に対応せざるを得なかったものと考えられる。
(6) この金融政策決定会合で日銀は、月間の国債購入額を7.3兆円から9兆円程度に増額することも決め、10年国債の利回りを抑えるために12月には月間としては過去最大の17兆円もの国債の買い入れを行ったが、12月20日から僅か2週間後の2023年1月6日、10年債の長期金利は上限とされた 0.5%に達した。
(7) 黒田日銀総裁は、12月21日の政策決定会合後の記者会見で、「日本銀行は、イールドカーブ・コントロールのもとで、賃金の上昇を伴うかたちで、2%の物価安定の目標を持続的・安定的に実現することを目指しており、その実現までになお時間を要する見通しで、金融政策の枠組みや出口戦略等について具体的に論じるのは、時期尚早である」として具体的な出口戦略を否定し、「異次元の金融緩和」継続の方針を打ち出しているが、市場の為替相場、国債相場に促される形で従来の「長短金利操作付き量的・質的緩和」の修正を余儀なくされたことはもはや否定できない状況となっている。市場から次々と政策の修正を迫られ、その対応が後手に回り続ける事態となれば、日銀、日本政府、更には円の信用が毀損し、市場をコントロールできなくなる事態を招く可能性も否定できない。我々は、市場の警鐘に真摯に耳を傾け、その信頼を失わない適切な金融政策を講じなければならない。

 
2. 「異次元の金融緩和」がもたらした諸問題
(1) 日本経済への影響
① 黒田日銀総裁による「異次元の金融緩和」はまもなく10年を迎える。金融緩和による緩やかな景気拡大や、円安による輸出促進効果があったこと自体は否定しないが、その成果は、アベノミクスが始まった2013 年から2021年までの9年間で、2012年に比べてGDPが実質で 10.4%(年率 1.1%)、名目で 5.05%(年率 0.55%)成長したに過ぎなかった。この間日銀は、2%の
「物価安定の目標」を最大の目標に掲げていたが、目標への到達そのものである物価高が国民生活を苦しめる最大の要因となっている。物価高の要因としてポストコロナによる需要回復やロシアのウクライナ侵攻による資源高が上げられることがあるが、輸入物価高の上昇のかなりの割合が円安によるものとなっている。現状の円安要因は大きくは2つ。1つが日米金利差。もう1つが対米貿易赤字である。
②  2020年初頭、コロナ禍で経済が冷え込む中、世界的に金融緩和策を含む景気対策が打たれた。2021年にはV字回復を果たした欧米諸国は、テーパリングに加え、金融引き締めにステージを移し、GDPがコロナ前の水準に至っていない日本との金利差が顕著になった。加えて、資源価格の高騰とあいまって円安が貿易赤字の要因となり、さらに貿易赤字が円安の要因となる悪い円安ループが現実のものとなっている。2022年は過去最大となる20兆円の貿易赤字となっている。
③  これらのことについては、コロナ対策が諸外国と比べ効果的でなかったことや、アベノミクス下の円安で輸出企業が売上や利益で過去最高を記録するもドルベースでは売上がほとんど増えていないにも関わらず、アベノミクスの成果と過大に喧伝し、成長戦略を怠り、稼ぐ力が伸びず、貿易収支が赤字基調から抜け出せていないことが一因であることも指摘しておかなくてはいけない。
④  個人投資家の一部は既にキャピタルフライトを加速させてきている。ただ、2 022年3月末外貨性資産は未だ67.6兆円であり、個人金融資産の半分を占める現預金は1,000兆円以上あり、潜在的な円安要因として捉えておく必要がある。少子化で労働力不足に悩む日本経済であるが、円安を受け外国人労働者が日本を選ばない事例が出てきている。農業や製造業は外国人頼みの現場が多くあり、労働力の「買い負け」が日本の底力を減退させかねない。さらには日本の若者がワーカーズフライト、いわゆる海外への「出稼ぎ」に出る事例も出てきている。これは円安のみならず、この10年で実質賃金が上がってきていないことも指摘しなければいけない。
⑤  外資による企業買収はまた、日本からの頭脳流出につながる可能性もあり、経済安全保障の観点からも懸念材料である。日本のドル建て不動産価格指数は、2010年を100とすると2022年6月が93で過去最低に迫る水準に

 
なっている。株式等や山林も含めた不動産が海外資本により買い叩かれることも懸念される。
⑥ 以上のことも含め、長すぎる「異次元の緩和」がもたらした現状はもはや悪い円安局面と認識せざるを得ず、「異次元の金融緩和」の見直しや、現状の円安をくい止める対策が求められる。なお、対症療法的ではあるが、レパトリ減税も検討の余地はあると考えられる。


(2) 国家財政への影響
① 金利の低下は2000年頃から始まった世界的潮流だったが、アベノミクスの開始によってさらにこれが増強され、2013 年1月6日には 0.74%だった新発10年国債の利回りは、2016年6月には-0.23%をつけ、その後「異次元の金融緩和」の中で、概ね 0.1%以下で推移し続けた。この間、30年債、4 0年債の利回りも、概ね1%以下であった。これは、10年国債を発行すれば、わずか10億円の利払いで、1兆円の資金調達ができるということであり、借換債の日銀直接引き受けが財政法5条等によって許容されていることと相まって、国債発行による資金調達コストを極めて小さなものにした。
②  日本の財政は、バブル崩壊後の不況が深刻化した1992年以降、税収が低迷する中で、経済対策の名目で歳出が拡大し、大量の国債発行で穴埋めがなされるようになった。1990年代において普通国債発行残高は200兆円程度から400兆円に倍増したが、この間、概ね年間10兆円程度の利払いが必要だった。その後2000年に368兆円となった普通国債残高は2010年には6 36兆円、2022年には1000兆円規模に急拡大したにもかかわらず、世界 的な低金利と「異次元の金融緩和」が相まってもたらされた超低金利により、年間の利払いは8兆円前後で推移している。
③  2000年代、85兆円程度で推移していた日本の歳出は、リーマンショックに対する経済対策で2009年に100兆円を超え、その後世界景気の回復と合致したアベノミクスの時代の日本国内の景気回復によって、緊急的な経済対策の必要性が減じたにもかかわらず、「異次元の金融緩和」による低金利の中で、元の水準に戻ることなく維持され、累積債務の減少への努力はおざなりにされ続けた。2020年に日本で新型コロナウイルス感染症が広がると、歳出は147兆6000万円にも膨らんだ。それ自体はやむを得ない部分もあるが、やはり「異次元の金融緩和」による低金利の中で、翌2021年、2022年も歳出を平常時に戻す努力は全く忘れ去られ、100兆円台の当初予算と、 30兆円規模の補正予算が組まれ続けている。
④ この間税収は、2009年のリーマンショック時の39.7兆円から徐々に増え 続け2022年には過去最高の68.3兆円を記録すると推定されているが、膨張したままの歳出には追い付かず、国債の新規発行額は2009年の52兆円

 
から2017年には33.6兆円まで減ったものの、その後増勢に転じ、2020年は108.5兆円、2021年は57.7兆円、2022年は62.5兆円と税収に 匹敵する額の国債を発行し続けている。この結果、国債発行残高は2022年度末で1026兆円に達する見込みであり、政府債務残高対GDP比は、2021年に251.6%で世界最悪となっている。なお、この水準は太平洋戦争末期 の1944年の204%を上回り、過去120年間で最悪の水準である。
⑤ 発行済みの国債の利率は借換えの時まで変わらないので、金利上昇が利払いに反映するのには一定の時間を要するが、金利が平均で1%上昇すれば一定の年限を経て利払いは年間10兆円増加し、仮に欧米並みに3~5%の金利上昇となれば、30兆円~50兆円と、税収に匹敵する額の利払いが生じ、日本の財政は現実的な破綻の危機に瀕することになる。
⑥ 市場に促されて、YCCが修正を余儀なくされた現在、もはや国債発行は、事実上ノーコストの資金調達手段ではなく、現時点で0.5%、今後さらに金利が上昇すれば、数%の利払いという当然のコストを伴うようになる。「異次元の金融緩和」の修正とともに、国債に頼った安易な財政支出もまた修正の時を迎えている。


(3) 地域経済への影響
①  上述の通り、異次元の金融緩和による景気拡大の規模は緩やかで限定的であったが、これにより前向きな資金需要の喚起や与信費用等の減少等を通じて地域金融機関の収益にプラスの影響があったこと自体は否定するものではない。また、地域銀行が保有する外債の約9割が外貨建てで、その為替変動リスクが「部分ヘッジ」となっているケースが少なくないが、現在のような海外金利上昇局面においては、債券評価損の拡大が円安による評価益で緩和されるという、技術的なプラスの影響も存在する。
②  一方で、地域経済・地域金融機関は、少子・高齢化、人口減少という構造的要因に直面している。このような資金需要が弱くなってくる状況での超低金利の長期化は、地域金融機関のリスク資産への投資を高めるなど、資産運用ポートフォリオの歪みを生じさせるというデメリットがある。これは、短期的には、地域金融機関の収益力向上につながり、金融緩和のプラス効果を生じさせるが、他方で、このような収益を求めることによる市場の歪みが長期化することは、金利正常化段階での調整コストを大きくさせるため、金融仲介機能を低下させるというデメリットを有する。
③ 関連して、与信分野においては、リバーサル・レートの懸念が呈されている。リバーサル・レートとは、金利を下げすぎると金融機関の預貸金利ざやの縮小を通じて資本バッファーが低下することで、金融仲介機能も低下、結果的に金融緩和効果がマイナスになるという概念である。このような状況は、特に預貸率

 
が相対的に高い地域金融機関において深刻であると捉えることが適当と考えられる。現時点で日銀は、①リバーサル・レートに該当するような状況にはない、
②金融循環を表す金融ギャップは10年にわたり拡張を続けているが、マクロ的に金融不均衡は観察されていない、③地域金融機関を全体で見ると十分な資本バッファーを有しており、相応のストレス耐性を備えている――と説明している。ただし、個別で見るとばらつきもあり、損失吸収力の低下した金融機関の金融仲介機能の低下が懸念されることや、超低金利が長期化すればするほど、資本余力のない金融機関の割合が増加するとともに調整コストも大きくなる可能性があるため、金利正常化に際しての問題のマグニチュードが大きくなるという問題が内包されていることは留意すべきである。
④ なお、政府は、構造的要因による地域金融機関の収益力低下を防ぐため、銀行の規制緩和、合併の特例、経営統合等に係るシステム経費補助を可能とする法改正を行うとともに、日銀もOHRの改善に応じた特別付利を実施し、供給面からのアプローチを行っている。他方で、需要面である超低金利政策については、基本的には変更されていない。
⑤ これらの状況から、超低金利政策による地域金融機関への影響については、以下のデメリットが考えられる
  1. 超低金利による国内預貸業務への影響 ――長引く超低金利環境によるイールドカーブのフラット化により、預貸利ざやが縮小
地域金融機関は従前から資金需要が低迷しており、貸出競争による利ざや縮小が起きていたところ、「異次元の金融緩和」により、さらにイールドカーブがフラット化することになった。預貸率が大手行と比較すると高く、預貸利ざやの縮小は収益悪化に直結すると考えられる。政府・日銀は、低金利環境が地域金融機関経営にグロスでマイナスの影響を持つことを認めている。他方で黒田総裁は、グロスのプラス効果を考慮すれば、ネットでマイナス効果とは認められないと答弁している(2022年2月2日衆議院予算委員会における階議員への答弁)。ただし、黒田総裁は、リバーサル・レートについて、「低金利環境が金融機関の経営体力に及ぼす影響は累積的なものであるため、引き続き、こうしたリスクにも注意していきたい」と述べており、低金利環境が長期化することのリスクは認識している。
  1. 低金利環境下で収益確保のために増加した有価証券投資リスク
資金需要が伸び悩む状況で、国内の低金利環境・量的な緩和環境が続き、さらにコロナ禍における預金流入が起きる中、地域金融機関は収益を確保するため、より高い利回りが期待できる有価証券での資金運用を増やしている。その中で地域金融機関は、ポートフォリオ上、国債運用を減らし、長期の国内債、外債やマルチアセット型などの投資信託(地域金融機関の多くが保有するマルチアセット型投資信託には、先進国の金利・クレジット・株価を含む、複数のインデックスが組み入れられている)の割合を増やしている。

 
そのため、地域銀行や信用金庫の信用リスク量と金利リスク量は上昇している。また、2022年に入り急速に進んだ海外金利上昇は、地域金融機関の有価証券の評価損を拡大させ、益出し余力を低下させている。行き過ぎると金融仲介機能の低下にもつながる懸念が生じる。更に、地域金融機関は、より高い利回りを求めて、運用ポートフォリオの国債から他の国内債券へのスイッチを行うとともに、デュレーションも長期化させてきた。そのため、以前と比べて金利リスク量は大きくなっており、金利上昇に弱いポートフォリオとなっている。そのため、金融仲介機能の低下リスクが以前よりも高まっている。なお、現時点では十分な資本バッファーが確保されているものの、低金利環境が今後も長期化した後の金利正常化の段階においては、評価損の発生に伴う金融仲介機能の低下リスクがより高まると考えられる。
iii.   低金利環境下で増加した不動産向け貸出のリスク
地域金融機関は、デメリット②で述べた、より高い利回りが期待できる運用先として、ミドルリスク先融資の拡大や不動産賃貸業や個人向け住宅ローンも拡大している。一般に低金利環境は、土地の投資を生み、地価の上昇を招くが、低金利環境下において、地域金融機関は不動産賃貸業や個人向け住宅ローンなどの不動産向け貸出を積極化してきた。(日銀「金融システムレポート」のヒートマップでは、不動産業向け貸出の対GDP比率について、金融活動の過熱を示す「赤」が2018年から点灯)。中には不動産業向け貸出比率が30%を超える地域金融機関もある。不動産賃貸業の収入は不動産取引業と比べ景気変動の影響を受けにくいとされるが、金利正常化における地価の調整やマクロ経済環境の減速は、賃貸物件の借主の減少などを通じて、地域金融機関の信用コストを増加させ、地域金融機関の収益を悪化させる。なお、最近でも賃貸物件の収益性と金融機関からみた賃貸業向け貸出の採算性は低下している。
  1. 価格転嫁が困難な中小企業における物価高による経営悪化
円安・原材料価格高騰を背景とした仕入価格の高騰は、大企業と比べ価格転嫁が難しいとされる中小企業の経営を直撃する。価格転嫁が進まないと、短期資金不足や利払い能力の低下を通じてデフォルト確率が上昇しやすくなると考えられる。特に純債務(借入金-現預金)が増加した中小企業は、デフォルト確率がそもそも高く、価格転嫁の進捗が倒産に直結しやすい傾向にある。上記のような中小企業の流動性バッファーの低下が続くと、中小企業の主な取引先である地域金融機関の信用コスト増を通じて、収益を悪化させる。
  1. 顧客への金融商品の販売に係る問題
低金利環境下において、銀行業は金利収入から顧客への金融商品の販売による販売手数料収入による役務取引等利益へのシフトも進めつつある。金融商品の販売において、法令違反とまではいかないものの、顧客本位の業務運営の観点からは疑義のある販売行為が行われる事例も散

 
見されており、金融庁も情報の見える化やモニタリングを強化するなど対応を強化している。スルガ銀行の不正融資事案やかんぽ生命の保険の不適切販売を含めて、低金利環境による本業の収益力低下の影響が、金融商品販売に間接的に影響している可能性がある。
⑥  以上のデメリットから、超低金利政策が長期化することにより、地域金融機関における預貸利ざやの縮小に伴い資産運用ポートフォリオの構成に歪みを生じさせるなどの副作用を膨らませ、金融正常化にあたっての調整の困難さを高め、地域金融機関の金融仲介機能の低下などをもたらしていくリスクや、円安・物価高により貸出先である価格転嫁が難しい中小企業の経営悪化のリスクには十分留意しなければならないと言える。

 
3. 「異次元の金融緩和」は修正すべき

(1) 「異次元の金融緩和」によってもたらされた「ゼロ金利の10年間」は、企業の資金調達を容易にして緩やかな景気回復をもたらし、円安によって輸出企業の収益を拡大し、何よりも、国債発行による資金調達を容易にして財政支出の拡大を可能にした。「異次元の金融緩和」が多くの経済主体にとって「微温的心地よさ」を有するものであったこと自体は、事実であると思われる。
(2) 一方で、ファイナンスの世界でよく言われる通り、”Thereain’tnosuch thing as a free lunch”  (世の中にただ飯はない)であり、当然「異次元の金融緩和」によって生じるリスクとコストが積み上がっている。その最も端的な指標が日銀のバランスシートであり、「異次元の金融緩和」を開始した2013年4月には174兆6913億円だった日銀のバランスシートは、2022年11月現在で699兆8931円と、4倍に膨らんでいる。その大半を占める国債は高値(低金利)で買い入れられているため、わずかな金利上昇で巨額の含み損を出す状態となっており、実際2022年9月の中間決算で8749億円の評価損が発生している。更に、 12月2日の参議院予算委員会では、金利が1%上昇すると28兆6千億円、5%上昇すると108兆1千億円の評価損が発生するとの試算が示された。
(3) 日銀は通貨発行権を有する中央銀行であり、国債は満期保有の簿価評価であるため、日銀保有国債の含み益それ自体が日銀の運営を直接制限するものではないが、言うまでもなく日本円は日本銀行の資産と引き換えに発行された日銀の債務証券であり、日銀のBSは日本円・日本経済の状態を移す鏡像そのものである。上記(1)(2)で述べた通り、現在の日本円・日本経済は、人為的に作られたゼロ金利の上に立脚し、日本銀行のBSと同様に、軽度の金利上昇によって大きな影響を受ける極めてリスクの高い状況となっている。また、諸外国もゼロ金利政策を続けていた間はこの「人為的ゼロ金利」を維持するコストはさほど高いものとは言えなかったが、2022年には新型コロナウイルス感染症とウクライナ戦争を契機として諸外国でインフレ率が上昇し、各国が利上げをする中で、日本円一人負けの円安という非常に高いコストを日本経済に課している。
(4) 黒田総裁は頑強にそれを否定するが、おそらくはこのコストに耐えかねて2022年12月19日、20日の金融政策決定会合で、日銀はついに、2016年9月から6年3カ月にわたって継続されたYCCの一部を突如修正し、それまで±0.25%だった10年債の変動幅を±0.5%とした。一方で、黒田総裁はこれが利上げであることを認めず、新たに設定した10年債の金利の変動幅±0.5%を死守するために大幅な買い入れによる金融緩和を継続し、2023年1月の国債買い入れ量は2 3兆円と、月間としては過去最高を更新している。2023年1月17日、18日の金融政策決定会合では、YCCの更なる修正がなされるか市場の注目が集まったが、黒田日銀総裁は「長期金利の変動幅をさらに拡大する必要があるとは考えていない」として大規模金融緩和の継続を強調し、更に共通担保資金供給オペレーシ

 
ョンを拡充する方針を打ち出した。

(5) 10年近くの長きにわたって「異次元の金融緩和」が続いたために、その「微温的心地よさ」が永遠に続くかのような幻想が巷間に流布しているばかりか、部分的とはいえYCCの修正を余儀なくされてなお、日銀自身がその幻想から脱することができずにいるように見えるが、それは、何らかの突発的自体が生じた時か、今なお続く「人為的ゼロ金利」のコストを日本経済が払えなくなった時に、突如崩壊する。その時、日本の財政・経済は大きな打撃を受け、戦後日本人が営々と築いてきた日本円に対する信頼が失われ、その回復には非常に長い期間と労力を要する事態となるのであり、日本の現在と未来に対する責任を負う政治は、そのような事態が生じる前に、「異次元の金融緩和」をより現実的に修正し、積み上がったリスクとコストをコントロール可能なレベルに抑える責任を負っている。

 
Phase Ⅱ: 新しい金融政策 
4. 長短金利操作(YCC)の一層の柔軟化
(1) YCC 柔軟化の必要性
PhaseⅠで記載した通り、日銀は、2022年12月19日、20日の政策決定会合で、日銀は2016年9月から6年3カ月に渡って継続されたYCCの一部を突如修正し、それまで±0.25%だった 10 年債の変動幅を2倍の±0.5%とする柔軟化
を発表した。これにより 12 月19日には 136.88 円だった為替相場は一気に
131.70円に修正され、0.25%に張り付いていた10年債の金利は午後には
0.46%に急騰した。黒田総裁は、この YCC 柔軟化の目的を「市場機能を改善することで、イールドカーブ・コントロールを起点とする金融緩和の効果が…より円滑に波及していくようにする」為、「イールドカーブの歪み…を是正する」為(12月 20日記者会見)と言っているが、1月27日現在のイールドカーブは、YCC柔軟化前のイールドカーブが全体に0.25%上昇しただけで、歪みは是正されていない。同時に、10年債の金利は12月20日のYCCの柔軟化後わずか2週間後の1月6日には上限の 0.5%に達し、1月15日、16日、17日には 3 営業日連続で上限の0.5%を突破した。日銀は、この状況下で、新たに設定した変動幅±0.5%を死守する為に大幅な買い入れによる金融緩和を継続し、2022年12月の国債買い入れ量は17兆円、翌1月は23兆円と、過去最高を更新し続けている。2023年1月17日、18日の金融政策決定会合では、YCCの更なる修正がなされるか市場の注目が集まったが、黒田日銀総裁は「長期金利の変動幅をさらに拡大する必要があるとは考えていない」として大規模金融緩和の継続を強調し、更に共通担保資金供給オペレーションを拡充する方針を打ち出した。このような状況から、日銀のYCCによって押さえつけられていた国債市場には、より一層の金利上昇の圧力がたまっており、現在の10年債の変動幅±0.5%を長期間に渡って維持することは現実的に非常に困難で、今後一層のYCCの柔軟化が必要となることはほぼ明白である。
(2) YCCの一層の柔軟化による影響予測
12月20日の突然のYCCの柔軟化は、円安の進行に歯止めをかけ、YCCが2022年に急激に進んだ円安の主因であったことが証明された。一方、我が国では「異次元の金融緩和」を10年にわたって行ってきたことから、YCCの一層の柔軟化による悪影響に留意すべきであり、以下、考えられる主な悪影響について検討する。
① 日本銀行の財務問題
現在、日本銀行は約500兆円もの日本国債を保有していることから、時価評価を行えば少しの金利上昇でも含み損が発生することとなる。ただし、日本銀行では日本国債を満期まで保有することを原則としていることから時価評価は行わない(簿価で評価)。したがって、会計上、含み損が直接の問題になることはない。一方で、仮に時価評価を行うとすれば、金利上昇が「1%の場合マイナス28

 
兆6千億円、2%の場合マイナス52兆7千億円」と試算されている(12月2日参院予算委員会 雨宮副総裁)。2022年11月28日に発表した2022年4~9月期の決算で日銀には既に8749億円の含み損が発生しているが、日本銀行の純資産は4.7兆円(2021年度末)、税引前当期剰余金は1.6兆円(2021年度)であることから、今後一層のYCCの柔軟化に伴って拡大する含み損に対応するために、損失繰延制度(FRBが採用)などの手法を検討すべきである。
② 日本政府の債務問題(利払い)
日本国債の金利上昇による最大の懸念は、政府の利払い費の増加である。ただし、平均残存期間は9.0年であり、借り換え債を含めて国債の金利が上昇後の金利に入れ替わるのには時間的猶予がある。現在の 0.25%上昇に留まれば5年後の利払い増加は、0.8兆円程度だが、YCCの一層の柔軟化で1%金利が上昇した場合は、2025年時点で利払いが3.7兆円増加すると試算されている。日銀は、突如そのような事態を招かないように細心の注意を払うとともに、政府はそのような事態に備えた新しい財政政策を講じておく必要がある。
③ 民間金融機関の財務への影響
日本国債の金利が上昇した場合には、民間金融機関が保有する日本国債に評価損が発生する。民間金融機関は時価評価が原則であり、含み損は損益に計上しなければならない。0.1%上昇(=0.35%)であれば、民間金融機関全体で1.0兆円程度の含み損だが、0.25%上昇(=0.5%)であれば 2.4 兆円
の含み損、更に 0.5%の上昇で 5 兆円、1%の上昇では 10 兆円もの含み損が生じると見積もられる。全国の銀行110行の経常利益は約3兆円(2021年度)であることから、日銀は突如そのような事態を招かないように細心の注意を払うとともに、民間金融機関はそのような事態に備え、日本政府はそのような事態を回避する対策を講じるとともに、仮にそのような事態が生じた場合の対応策を立案しておく必要がある。
④ 民間部門への貸出金利への影響
2021年3月19日に日本銀行は長期金利(10年物国債金利)の変動許容幅を±0.1%から±0.25%への拡大を決定した。しかし、短期プライムレートは変動せず(3メガバンクは1.475%)、TIBORも全く変動しなかった。したがって、2021年3月のYCC柔軟化による貸出金利への影響はなかったものと考えられる。YCCの一層の柔軟化が生じると、短期プライムレート、TIBORへの影響も考えられ、注意が必要である。
⑤ 経済全般への影響
金利上昇によってGDPにはマイナスの影響があるが、0.1%上昇でマイナス 0.01%、0.25%上昇でマイナス 0.03%と推定され、ここから一層のYCCの柔軟化が進み、金利が 0.5%となれば 0.06%、1.0%となれば0.12%程度のマイナスの影響が出ると推定される。この影響は毎年積み重なることに留意が必要である。

 
5. 政府・日銀の共同声明(アコード)の見直し

(1) 現行のアコードの帰結
アベノミクスにおいては、「デフレは貨幣現象」(安倍晋三元総理)との前提で「異次元の金融緩和」がスタートした。アベノミクスの「異次元の金融緩和」の10年の結果が、輸入物価上昇によるコスト・プッシュ・インフレであるが、「物価が上昇すれば、賃金も上昇する」(黒田東彦日銀総裁)とはならなかった。すなわち、賃金が上がれば物価は上昇し得るが、物価が上昇したからといって賃金が上がるとは限らないのである。因果関係を逆に捉えてはならず、アベノミクスの失敗でいわゆるデフレは貨幣現象ではなかったことが証明された。デフレの原因としては、イノベーションの欠如、正規雇用から非正規雇用への流れなどによる賃金の下落、新興国の工業化が考えられる。つまり、デフレ脱却のためには賃金上昇が必要だが、賃金を引き上げるのに金融緩和だけでは不十分であると言える。金融緩和による円安等により、人手不足が生じ、企業収益も好調だったが、実際には、賃金引上げは進まなかった。その背景には、労使双方に、円安等による高収益は一時的なものであるという認識があり、また、将来の企業の競争力に自信がないため、賃上げよりも将来の雇用維持が優先されたことがあると考えられる。人々は所得に明るい展望が持てない中で、物価が上がり、実質賃金は下がると予想した。そうではなく、賃金上昇を金融政策の目標にすることで、賃金の先高感が広まり(フォワード・ガイダンス)、賃金上昇に引きずられて物価も上昇するものと考えられる。生産性向上こそが実質賃金を引き上げるはずであるが、日本では賃金と生産性の連動性が極めて低く、生産性はそれなりに向上しているにも拘わらず、賃金上昇につながっていない。その背景には、日本では賃金上昇よりも継続雇用が重視されていることがある。したがって、政府において賃上げに繋がる具体的な政策が必要である。
(2) 実質賃金をアコードの目標とする必要性と合理性
物価がマイナス(=デフレ)では実質金利が高止まりするなど、経済において様々な問題が生じることから、物価はプラス(=インフレ)にする必要がある。したがって、金融緩和が必要となる場面があることは否定されない。しかし、物価上昇に賃金が追い付かない状況では、物価上昇は国民生活を貧しくする。したがって日銀は、金融政策においては賃金上昇を超えないような物価上昇に留める義務を負う。一方で、日本銀行は賃金を引き上げる手段をほとんど持ち得ない。黒田総裁は、2014年3月に行った「なぜ『2%』の物価上昇を目指すのか」と題した講演の中で「賃金が上昇せずに物価だけが上昇するということは普通には起こらない」と述べ、この9年間物価上昇による賃金上昇を実現しようとしたが、現実には8年間物価上昇を実現できず、9年目に外生的要因も相まって物価上昇が実現したら賃金上昇は物価上昇に追いつかなかった。日銀の役割は、物価の(プラスでの)安定と、好景気の実現・維持であるという原則に立ち返るべきである。そのようにして、安定した物価上昇率の下で好景気が実現したにもかかわらず実質賃金が上

 
がらないー好景気が実質賃金に反映しないのであれば、その障害となっている原因を見定め、これを取り除く対策を講じることが出来るのは政府である。したがって、政府と日本銀行とのアコードおいて、日本銀行は賃金上昇率に配慮しながら物価の調整を行うとともに好景気を実現・維持する義務を負い、政府はその好景気を賃金引き上げに反映させる政策を実施する義務を負うとすることが必要であり、かつ合理的である。したがって我々は、
①日銀は、適切な金融政策で好景気を実現・維持する。
②日銀は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率でプラスの領域とする。
③政府は、機動的なマクロ経済政策運営による需要の創出、競争力と成長力の強化により、労働生産性を引き上げ、それを実質賃金の上昇につなげることを目指す。
④政府及び日銀は、実質賃金について、コロナ禍以前の水準を回復した上で、労働生産性の向上に見合う伸び率を実現すべく、一体となって取り組む。
ことをアコードとして公表し、政府と日銀の役割分担を明確にしつつ、強固に連携して日本経済を持続的に発展させることを提案する。なお、アコードの実現に向けては、日銀の独立性を十分確保した上で、政府、日本銀行の連携が適正に機能し、日本経済の持続的な発展に向かっているか否かを定期的に分析・検証し、政策の改善に繋げる制度の整備も併せて提案する。

(3) 中央銀行の金融政策における賃金の扱い
アメリカFRB(連邦準備制度理事会)は、デュアル・マンデートとして「雇用の最大化 maximum employment」と「物価の安定 stable prices」を課されている。FRBが「雇用の最大化」としてどのような統計・指標に着目しているかは定かでないものの、雇用者数や失業率だけでなく賃金上昇率にも着目しているとの見方がある。ECBやBOEのマンデートには雇用は明示されていないが、オーストラリア、ニュージーランドの中央銀行には、マンデートに雇用を含んでいる。中央銀行のマンデートに雇用を含めることは、奇異ではなく、雇用の要素としての賃金を含めることも問題はない。

 
Phase Ⅲ: 金融政策の正常化
6. 長短金利操作(YCC)の撤廃

(1) 「4.YCC の一層の柔軟化の必要性」で述べた通り、YCC は限界を迎えている一方で、その修正によって金利が更に上昇した場合、日銀のバランスシート、日本の財政、更には日本経済が、少なからぬマイナスの影響を受ける。その根本的原因は、「異次元の金融緩和」と「長短金利操作付き量的・質的金融緩和(YCC)」によって、日銀、民間金融機関が大量の国債を保有し、民間の経済主体が多額の債務を抱え、その状況下で日本政府が多額の国債発行に依存する財政運営に傾いてしまったことにある。本来金融政策は、その時々の経済状況、特に物価に合わせてタイムリーに金利を変動させるべきものであるにもかかわらず、0.25%程度の金利上昇で日本経済全体に大きな影響が出る為に、インフレが生じても、円安が生じても金利を動かすことが困難な状態となっていること自体が、「YCCによる自縄自縛」ともいえる異常事態である。そもそも金融政策は短期金利のみを対象とするのが通常であり、長期金利と短期金利の双方、更にはイールドカーブ全体を操作することは極めて異例で、市場機能を歪めるものである。同時にYCCによって日銀が金利のすべてにコミットすることで、政策変更のコストと影響が極めて大きくなり、その時々に応じた柔軟な対応をむしろ困難にしてしまっている。現時点でYCCの維持には多大なコストを要しているが、そのコストに見合う成果がなかったことは9年間のアベノミクスの実験で実証されており、日本が、正常な金融政策の自由度を取り戻すためにも、債券(金利)市場のひずみが蓄積して破局的事態を避けるためにも、どこかのタイミングで撤廃することは必須である。
(2) ただし、YCCを撤廃することは、元々金融政策の対象ではなかった長期金利の急上昇に繋がる。よって、そのタイミングを計ることは難しい作業であるが、上記
「5. 政府・日銀のアコードの見直し」によって、日銀が突発的な金利上昇を招かないように細心の注意を払いながら徐々にYCCの柔軟化を進めると共に、政府は金利上昇に対応した現実的財政政策を講じ、プラスの安定したインフレ率の下で持続的な好景気と実質賃金の上昇が見越せる局面を実現し、日本経済と財政に対する影響を最小限に抑えながら、長短金利操作(YCC)の撤廃を行う必要がある。なお、現在我々は「新しい財政政策」についても検討を進めており、長短金利操作(YCC)の撤廃により金利が上昇した場合でも財政が持続可能となるように、必要な方策を併せて提示する。

 
7. 日銀保有国債の安定的な処理

(1) 令和4年3月末の日銀が保有する長期国債の残高(簿価ベース)は511兆円、「連続指値オペ」による追加購入を行った結果、現時点では540兆円を超える。また、平均残存期間は6.6年、利回りは0.23%である。ちなみに、「異次元の金融緩和」が始まる直前の平成25年3月末時点では、保有残高91兆円、平均残存期間は3. 9年、利回りは0.72%であった。
(2) このように「異次元の金融緩和」が10年近く続いた結果、日銀は収益性、流動性が低い資産を膨大に抱えることとなった。それでも日銀の収益が悪化していないのは、日銀の債務の大半を占める当座預金への支払利息が極めて低い水準に留まっているからである。すなわち、これも「異次元の金融緩和」によるマイナス金利政策等により、令和4年3月末時点で563兆円の当座預金残高に対し、支払利息(コロナオペによる付利分を除く)は1802億円に過ぎず、調達金利は0.03%である。
(3) ただし、今後金融政策を見直し、仮に調達金利が1%になったとすると、支払利息は約5.5兆円に急増する。他方で、保有長期国債から得られる利益は1.2兆円程度であるから、年間で4兆円以上の逆ザヤとなってしまう。もちろん、保有国債のうち償還期限が到来したものから順次同額の新発債に入れ替えていけば、新発債の利回りにも金融政策の見直し後の金利が反映されるため、徐々に逆ザヤは解消に向かうであろう。
(4) しかしながら、入れ替えが完了するまでに約7年かかり、その間は収益の悪化が続く。しかも、新発債に入れ替えても保有国債の残高に変化がない以上、政策金利を引き上げる都度、日銀は逆ザヤのリスクを負う。逆に、このようなリスクを回避するために、物価上昇が急激に進んだ場合でも金融引き締めを見送るようなことがあれば、「物価の安定」という金融政策の目的を犠牲にすることとなり、本末転倒の事態となる。
(5) そこで、日銀が保有する大量の国債から生じるリスクを日銀本体から切り離し、運用収益の改善を図るための方策を検討・実行するなど、日銀が適時適切な金融政策を行い得る状況を作るべきである。

 
8. 日銀保有ETFの安定的な処理

(1) 令和4年3月末時点で日銀が保有するETFの簿価は36兆円、時価は約50兆円で含み益が約14兆円に上る。この巨額の含み益は日本銀行の会計処理において、利益と認識されることはない。他方、万一ETFの時価が著しく下落し、含み損が生じた場合には「減損処理を行う」こととなる。要は、日銀がETFを保有し続ける限り、株価変動によるリターンを得ることはなく、リスクのみを負う。
(2) また、ETFを構成する上場株式の発行会社からすると、株価下落の際に日銀が買い支えをし、平時には実質大株主でありながら「物言わぬ株主」でいてくれる安心感から、コーポレートガバナンスは緩みがちである。これにより、日本の株式市場は、投資先として魅力のないものと評価される可能性がある。
(3) そこで、日銀が巨額のETFを保有するリスクを回避し、株式市場を健全に発展させるために、例えば、ETFを日銀のバランスシートから切り離し、国民に有益な形で移転することを検討・実行すべきである。
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日銀総裁人事案で立憲は「植田候補の宴の後片付けの柔軟性問いたい」と委員会審議に前向き、枝野幸男前代表があす衆議院予算委員会に登場すると逢坂誠二筆頭理事が明かす、地方税法改正案審議

2023年02月14日 13時08分04秒 | 第211回通常国会(2023年1月)
[写真]あすのテレビ入り予算審議に登場する、枝野幸男立憲民主党前代表(サンクチュアリ顧問)、おととし2021年10月31日深夜、東京プリンスホテルで、宮崎信行撮影。

 植田総裁案が提示され、立憲など野党は意欲的に審議する方針。松野官房長官があさって「リーク」の調査報告をすることを、自民自ら提案し、決定しました。

【衆議院議院運営委員会 きょう令和5年2023年2月14日(火)】
【参議院議院運営委員会 同日】
 木原、礒崎各官房副長官が「日本銀行の次の植田総裁・氷見野・内田副総裁案」を含んだ21機関31名の国会同意人事を内示しました。
 衆議院では人事案の事前漏洩に関して、あさって16日(木)午前11時から、松野官房副長官が調査報告をして、野党が質問することがさっそく決まりました。与党側は自発的に情報漏洩を認めて謝罪しました。

【立憲民主党衆議院会合 同日】
 安住国対委員長は植田さんに「宴の後の片づけの十年生を我々がしっかり問いたい」とし、来週と思われる所信表明と質疑の機会に期待しました。また「予算委員会の集中審議を、あと3回とりたい」と語りました。
 衆議院予算委員会の筆頭理事に逢坂誠二さんが復帰しました。逢坂さんは「あすの予算委員会集中審議に枝野幸男前代表が登場する」とし、自らが属する「サンクチュアリ(近藤昭一グループ)」の枝野顧問が久しぶりに登場することを明かしました。枝野さんは北九州市長選や統一地方選の事前準備で活発な応援演説活動をしています。また、報道によると、今週、サンクチュアリは、西村ちなみさんらが属する「国のかたち研究会」(菅直人会長・石橋通宏事務総長)と昼に共通会合を開きました。両団体の共通会合の開催は初めてと思われます。

【衆議院本会議 同日】
 午後1時開会。
 「地方交付税法改正案」(211閣法8号)と「地方交付税法改正案」(211閣法9号)が松本総務大臣が「令和5年度は償還を前年度より増やす」などと趣旨説明しました。立憲民主党は今月亡くなった横路孝弘元議長の後継者で当選2回、北海道自治労会館がある1区の道下大樹さんが登壇し「見通しが不透明だ」とただしました。答弁に、岸田文雄首相は立ちません。

【衆議院総務委員会 同日】
 総務委は火曜・木曜が定例日だとされています。
 松本総務大臣の所信的あいさつに対する質疑がありました。質疑で大臣は「地方分権一括法で国と地方の関係は対等になった」「マイナンバーカードの取得状況で地方交付税に差をつけると国から地方に言ったことはない」と語りました。

 なお、「自治3局長」のうち自治税務局長が召集日2日前に交代したことへの質疑や、自治労の支持が厚いとされる議員が自ら会計年度任用職員の待遇を質問することはありませんでした。

 本会議散会後には、「地方交付税法改正案」(211閣法8号)と「地方交付税法改正案」(211閣法9号)が審議入り。

●衆議院予算委員会はきょうは設定されませんでした。

【参議院 同日】
 委員視察など。

このエントリーの本文記事は以上です。
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米山隆一さん、故・安倍晋三さん回顧録「財務省陰謀論」を問い「故郷の選挙区・田中角栄首相、責任は私がとる」の姿勢を政府に求める

2023年02月13日 17時53分00秒 | 第211回通常国会(2023年1月)
[写真]新潟5区の米山隆一衆議院議員、きょねん2022年6月、宮崎信行撮影。

 辞職した岸信夫さんに代わり出馬する岸信千代さんがホームページに家系図を掲げて炎上。予算委員会は立憲若手議員全員が「安倍晋三回顧録を読んだ」と質問しました。

【衆議院予算委員会 きょう令和5年2023年2月13日(月)】
 「令和5年度予算案」は11日目で、一般質疑5日目・4時間コース。会議の最後に、金曜日の地方公聴会について、第1班新潟市・第2班福岡市が「亀田製菓を視察した」「福岡市で会議を開いた」などと報告しました。

 質疑では、新潟5区で無所属で当選して立憲民主党に加わった米山隆一さん消費税率引き上げの先送りに関する・故安倍さんの判断について鈴木財務大臣に問いましたが、はっきりした答えはありませんでした。

 米山さんは安倍晋三さんに対比させるかたちで、「最後に私の選挙区の出身である、極めて高名な、そして御党の宰相であります、安倍元総理とは全くなる人生を歩んだ田中元総理の言葉を紹介させていただきます」としました。

 田中大蔵大臣が、「皆さんは全国から集まった天下の秀才で金融財政の専門家ばかりだ。小生は素人であります」「今日から大臣室の扉はいつでも開けておく。若手職員も遠慮なく、何でも言ってほしい。上司の許可を取る必要ありません」とし「全ての責任はこの田中角栄が負います」と語ったとしました。

 米山さんは「もちろん毀誉褒貶のある人物であり、全てこのと言葉の通り責任を取ったのかどうか定かではございません」とバランスをとりつつ、「安倍元総理のような大宰相にして全部財務省の責任だという。そんなことをしていてはですね、本当にこの日本の行く末がどうなってしまうのかと思います」と述べました。

 復興増税をめぐっては、鈴木俊一財務大臣と根本匠予算委員長は当時落選しており、忸怩たる思いがあったと思います。当時の政策判断は正しかったと財務大臣は強調しました。

 自民党はベテランの山本有二さんが登場。初当選から33年間、細田博之議長や、岡田克也立憲民主党幹事長と同じく衆議院に在籍しており、やはり高知県は弩田舎だからか、予算委員在籍が長くなっています。山本さんは「きょうは下水道サーベイランスについて取り上げたい」としました。2020年から続くコロナ禍ですが、この話は荒井聡・立憲民主党衆議院議員が国土交通委員会などで取り上げており、荒井さんは2021年秋に引退しました。きょうの山本さんの話は、札幌市の単独事業を取り上げて、厚労相に対して「全額ではなく2分の1国費負担にしたらどうか」と働きかけ、政府が検討することになりました。

 きょうまでで手元の計算では42時間の審議時間になっていると思います。あすはなく、あさって15日(水)8時55分から集中審議2回目を開くことにして、散会しました。

【参議院 同日】
 参議院予算委員は、委員派遣として石川県・空自小松基地などを訪問。

 関連記事のご紹介。10年以上前の記事ですが、先週も7000記事中の、27位のアクセス数となっています。
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予算委は地方公聴会、日銀総裁は14日提示、茂木敏充提唱の児童手当の所得制限撤廃論で与党は梯子外しの機運もあるが立憲が議員立法提出へ

2023年02月10日 20時29分55秒 | 第211回通常国会(2023年1月)
[写真]日本銀行本店、7年前の2016年、宮崎信行撮影。

 今週の火水木は、訪問者が1098→1084→1108と安定しましたが、ページビューが4528→5058→3558と、木曜のページビューが目標の4000を切ってしまいました。前年同「週」比ではようやくプラスが見えてきました。ある程度、選挙のさきどり話も書いていく必要がありそうです。

 麻生太郎派と茂木敏充派の番記者はいないのでしょうか。JNN世論調査で児童手当の所得制限に「6割が反対」。立憲民主党は杉尾秀哉NC内閣府大臣が「児童手当法改正案」(211議法 号=未提出)を作成することを、きのうの次の内閣で決定しました。

【自民・立憲国会対策委員長会談 きょう令和5年2023年2月10日(金)】
 高木自民国対委員長が安住国対委員長に「14日(火)提示の日程」を打診し、了承。その後になってから、「植田和男総裁・氷見野良三副総裁・内田真一副総裁」案が日経電子版に載り、「雨宮さんは打診を辞退した」と報じられました。この報道の情報源は不明。斎藤義隆参議院立憲民主党国会対策委員長(日教組組織内)はSNSで「政府筋から表に出る。国会軽視も甚だしい。野党間や衆議院側とも対応について議論する」と不快感を示しました。

【衆議院予算委員会 同日】
 「令和5年度予算案」は10日目で、地方公聴会でした。宮崎信行は以前直接取材にも行きましたが、4月7日までは「神奈川県横浜市港北区」での選挙運動を念頭においた活動と、「長野市」の墓参り以外は、出張せずに都内にとどまります。週明け13日(月)は午後1時から4時間コース。自民党は山本有二さんが20分質問する予定で、与野党全員の男性デーとなります。

【衆議院財務金融委員会 同日】
 「令和5年度所得税法など改正案」(211閣法2号)が鈴木大臣から提案理由説明され審議入りしました。きのうの本会議では財務相のみ登壇で審議され、きのうのうちに当委員会に付託されていました。今国会の法案付託第一号となりました。
 これに先立ち、財務大臣兼金融担当大臣の所信的あいさつに対する質疑がありました。

【衆議院内閣委員会 同日】
 松野官房長官ら7大臣の所信的あいさつに対する一般質疑があり、与野党一巡しました。次回は次の定例日、15日(水)9時に開催。

【参議院懲罰委員会 同日】
 鈴木宗男委員長(日本維新の会)が開会。まず、自・立の議員会長である委員が辞任し、幹事長らが補欠選任されました。
 尾辻秀久議長が分館に赴き、説明。尾辻さんの説明に対する質疑を委員長が促しましたが、発言がなく、散会しました。

 尾辻議長は「議員、ガーシーくんに懲罰事犯の件を本委員会に付託した理由につきましてご説明いたします。議員ガーシーくんは第209回国会および第210回国会において議院運営委員会理事会の了解を得ないまま海外に滞在し、議院運営委員長から、ガーシーくんの公設秘書や会派代表者である浜田聡くんを通じて速やかに帰国の上登院するよう求めてきましたが応じるには至りませんでした」と述べました。

 そして「今期国会におきましても、議院運営委員会理事会の了解を得ないまま海外に滞在し正当な理由がなく召集日から7日以内に召集に応じなかったため去る1月30日議長から招状を発しましたが、その後7日が経過したにもかかわらず、ゆえなく、2月8日の本会議に出席しなかったことから、国会法第124条の規定による本委員会に付託した次第です」と語りました。

●週明けの政治は、月曜日は一般的質疑、火曜日は地方税法、水曜日は集中審議、木曜日は中央公聴会と「奇妙な沈滞」のまま進みます。

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【ガーシー議員】公設秘書の「責務」も言及、「動議提出者」の尾辻秀久参議院議長が分館で発言、懲罰委員会

2023年02月10日 19時59分43秒 | 第211回通常国会(2023年1月)
[写真]尾辻秀久参議院議長、おととし2020年9月、西武グループ直営ホテル敷地内で、宮崎信行撮影。

 きょねん7月10日に初当選したガーシー議員が一度も登院しないことで、懲罰委員会が開かれました。

 いわゆる懲罰動議と言われる「懲罰委員会に付するの件」は、尾辻秀久参議院議長が出したもので、きょうは議長が異例の「参議院分館」に赴き、発言しました。

 尾辻議長は「議員、ガーシーくんに懲罰事犯の件を本委員会に付託した理由につきましてご説明いたします。議員ガーシーくんは第209回国会および第210回国会において議院運営委員会理事会の了解を得ないまま海外に滞在し、議院運営委員長から、ガーシーくんの公設秘書や会派代表者である浜田聡くんを通じて速やかに帰国の上登院するよう求めてきましたが応じるには至りませんでした」としました。

 そのうえで、「今期国会におきましても、議院運営委員会理事会の了解を得ないまま海外に滞在し正当な理由がなく召集日から7日以内に召集に応じなかったため去る1月30日議長から招状を発しましたが、その後7日が経過したにもかかわらず、ゆえなく、2月8日の本会議に出席しなかったことから、国会法第124条の規定による本委員会に付託した次第です」。

 鈴木宗男懲罰委員長は「説明について質疑がありましたらご発言願います」と、尾辻議長への質疑を求める委員はいませんでした。ここで、委員長は「本日はこれにて散会します」と語りました。

 議長が「公設秘書や会派代表者を通して求めた」と公設秘書の責務ともとれる発言をしたのは異例と見られます。

 なお、立花孝志NHK党代表への言及はありませんでした。きょねんの「国葬」では国政政党党首の立場で、茂木幹事長より先に登場した立花さんですが、きょうの議長の説明ではその存在はありませんでした。

 翌週にもガーシー議員への懲罰案が全会一致で決まり、本会議にはかられそうです。その懲罰にガーシー議員が従わない場合は、再び手続きが取られそうです。

 現行の公職選挙法で、ガーシー議員が辞めたら、「同姓同名の山本太郎」、その次は渋谷の統一教会・新宿区の創価学会・公明党本部デモなど積極的な街頭運動を継続している黒川さんとなっています。立花さんの判断にも、正しい公職選挙法にそって注目されます。

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