恋、ときどき晴れ

主に『吉祥寺恋色デイズ』の茶倉譲二の妄想小説

話数が多くなった小説は順次、インデックスにまとめてます。

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茶倉譲二 続編第八話~その7

2015-11-30 07:49:17 | 吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二

吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二の妄想小説。譲二ルート続編のお話を彼氏目線で眺めてみました。
ネタバレありです。
 

☆☆☆☆☆

茶倉譲二 続編第八話~その7

〈譲二〉

翌日、みんなに集まってもらった。

そして、俺の決心をみんなに伝えた。

実家の会社を立て直すために、一度向こうに戻ることにすること。

その仕事に専念したいから、クロフネの営業は一度正式にストップすること。


一護「…閉店するってことか」

譲二「そういうことになるね…」

一護「…百花はどうすんだよ」


ハルが心配そうに声をかけてくれた。


春樹「おい、一護…」


俺は一護に殴られることも覚悟していた。

大きく息を吸って話し始める。


譲二「百花ちゃんは…」


俺の言葉を遮るように百花ちゃんが言った。


百花「私、ここに残る」

百花「クロフネに住んだままで良いって言ってくれてるし、譲二さんのこと、待ってたいの…」

百花「ちゃんと…ちゃんとおかえりって言いたい」


それを聞いて、一護は「…そーかよ」と言っただけだった。

一護は百花ちゃんの固い決意と笑顔を見て、許してくれたんだと思う。

百花ちゃんは、昨夜俺の胸の中で泣いて泣いて…泣き尽くして、みんなの前では明るい笑顔をみせていた。

…と言っても、目は真っ赤だったから、みんなにはバレバレだろう。


(百花ちゃん、本当にごめんね。…そして、ありがとう)


みんなとのやり取りを聞いていた一護がため息をついた。


一護「納得いくいかねーの問題じゃねーんだよな」

一護「マスターがそう決めたなら、俺らはそれを応援するだけだろ」

譲二「みんな…」


なんだか胸が熱くなってそれ以上の言葉がでない。


百花「もっと怒るかと思った…」


(うん。俺もみんなにもっと怒られるかと思ったよ。そんなに簡単にクロフネを止めちゃだめだって)

その8へつづく


茶倉譲二 続編第八話~その6

2015-11-29 07:48:03 | 吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二

吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二の妄想小説。譲二ルート続編のお話を彼氏目線で眺めてみました。
ネタバレありです。
 

☆☆☆☆☆

茶倉譲二 続編第八話~その6

〈譲二〉

まっすぐな瞳で俺を見つめる百花ちゃん。


譲二「…本当はね、ずっと迷ってたんだ」

譲二「百花ちゃんの卒業までは…必ずここで見守っていたかったから」

百花「はい…」

譲二「だけど…けじめをつけたかったんだ」

百花「けじめ?」

譲二「前にも言ったけど、俺はそろそろ実家の仕事を継がなくちゃって時に、中途半端に家を飛び出してクロフネのマスターになった」

百花ちゃんはそっと頷く。

譲二「今までどおり実家と距離をとって…茶堂院グループが無くなろうとも、俺には関係ないんだと、ずっとこのまま生きてくこともできたんだろうけど」

百花「けど?」

譲二「俺、百花ちゃんのおかげで、逃げないでちゃんと向きあおうって思えたんだ」

百花「私の…?」


百花ちゃんの頬にそっと触れる。


(こんなに柔らかくて、華奢で、ちょっと力を入れ過ぎたら、すぐ壊れそうに思えるのに…)

(なのにこの子はなんでこんなに強いんだろう)


コツン、とおでこを合わせて、小さくささやいた。


譲二「前に言ってくれたでしょ。『私を頼ってください』って」

譲二「あの瞬間、思ったんだ。ああ、もっとこの子に甘えていいんだって」

百花「譲二さん…」


あの時まで、ずっと、俺は百花ちゃんを一方的に守ってるつもりでいた。

だけど本当は、俺も、百花ちゃんの優しさに守られてたんだ。

明里に言われた言葉。

『百花さんはちゃんと譲二に頼られて、支えてくれてる』

それを実感した瞬間だった。


譲二「あの言葉がなかったら、クロフネを閉める決断はできなかったよ」


百花ちゃんの瞳から涙が、一気にあふれた。

ごめんね。

本当は泣かせたくはなかったけど。


俺はもうたまらずに彼女を抱きしめた。

百花ちゃんが俺の名前を呼びかけたが、後は嗚咽に変わってしまう。


二人でしばらく、抱き合っていた。

このまま、ずっとこうしていられたらいいのに。


譲二「ごめん…約束守れなくて」

譲二「高校を卒業するまで、クロフネは閉めないって言ったのに…」

百花「いいんです…」

百花「今度は…私が待つ番だから」


健気な彼女が愛しくて、腕に自然と力が入った。


譲二「ごめん…」


彼女の髪に頬ずりする。

柔らかくて、とてもいい匂いがする。

このまま…いつまでもこのままで。



時折、百花ちゃんの啜り泣く声が響いた。


俺は抱きしめたまま、彼女から身体を離すことが出来なかった。


そして……、いつしか眠り込んでしまった百花ちゃんを抱き上げ、彼女のベッドに寝かせる。

涙で汚れた彼女の頬にそっとキスをした。


譲二「おやすみ…」


このまま彼女の側にいたいという衝動を抑えて、そっと扉を閉めた。

 

その7へつづく


茶倉譲二 続編第八話~その5

2015-11-28 06:18:24 | 吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二

吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二の妄想小説。譲二ルート続編のお話を彼氏目線で眺めてみました。
ネタバレありです。
 

☆☆☆☆☆

茶倉譲二 続編第八話~その5

〈譲二〉

次の言葉が出せなくて、俺は黙りこんだ。


百花「譲二さん?」


百花ちゃんに促されて、喉につかえたままの言葉を絞り出す。

譲二「…会社を立て直すために、一度実家に戻ることにした」

百花「え?」


百花ちゃんが驚いたように目を見張る。

お願いだ。そんな顔をしないで…。

前もって決めていた言葉を口に出す。


譲二「じいさんが守ってきた会社を、吸収合併させるわけにはいかないからね」


しかし、それはまるで言い訳のようにしか聞こえなくて、慌てて言う。


譲二「でも、百花ちゃんは今まで通りここに住んでもらって構わない」

百花「譲二さんは…ここには住まないんですか?」


不安そうに聞かれる。

そうなんだ。

クロフネに住みながら、百花ちゃんと暮らしながら、実家の仕事ができたらどんなにいいだろう。


譲二「そうだね…しばらくは仕事中心の生活になるだろうから」


かなり必死でやらないと吸収合併を防ぐことはできない。

そのためには仕事以外のことは全て諦めないといけない。だから…。


譲二「引っ越して、実家に住むことになると思う」

百花「でも…クロフネは?」

譲二「クロフネは…」


鉛のように重たい言葉を口にする。


譲二「…閉めようと思う」

百花「閉める…」

譲二「仕事をしながらここのマスターもやるとなると、きっと、どっちも中途半端になっちゃうからね」


百花ちゃんの大きな瞳に見る見る涙が溢れてくる。

俺は彼女を慰めたくて、握った手に力を入れた。


譲二「…百花ちゃん」


百花ちゃんは、溢れた涙をこぼさないように目を見張った。


百花「私…待っててもいいですか?」

譲二「え?」

百花「譲二さんがいつでも吉祥寺に帰って来られるように」

百花「帰ってきたら一番に『おかえりなさい』って言えるように…ずっとここで待っていたいんです」


そう言って、百花ちゃんは微笑んだ。

その笑顔はとても可愛くて…でも、とても辛そうで痛々しかった。

 

その6へつづく


茶倉譲二 続編第八話~その4

2015-11-27 08:16:18 | 吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二

吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二の妄想小説。譲二ルート続編のお話を彼氏目線で眺めてみました。
ネタバレありです。
 

☆☆☆☆☆

茶倉譲二 続編第八話~その4

〈譲二〉

夕食の時は、二日間のクロフネでのエピソードを百花ちゃんに聞かされた。

あいつらのドタバタした働きには腹を抱えて笑った。

そして、時々訪れる話の合間に、百花ちゃんが俺の説明を待ってくれているのが分かった。

しかし、その明るい雰囲気を壊すのが怖くて、実家でのことを口にすることは出来なかった。


百花ちゃんが部屋に引き上げたあと、食器を洗いながら、自分の決心を固めた。

逃げちゃだめだ。

百花ちゃんにはちゃんと話さないと。


☆☆☆☆☆


彼女の部屋の戸をノックした。

譲二「百花ちゃん、ちょっといい?」


百花ちゃんが返事をして、部屋に入れてくれる。


大事な話がある、と言うと彼女は少し緊張した面持ちで頷いた。

2人一緒にベッドに座る。

そっと、百花ちゃんの両手を取った。


譲二「…今日、実家で聞いてきたこと、ちゃんと伝えたくて」

百花「はい…」


百花ちゃんに実家での話の内容を噛み砕いて説明をした。

吸収合併は向こうから細かい提示を受けていて、このままでは避けられそうもないこと。

勢いのある武藤グループの傘下に入るべきと考えている人たちもいること。


譲二「それで…兄貴や親族とも、色々話し合ってきて…」


その後の言葉が続かない。

実家でいる間中、クロフネに帰る途中も帰ってからも、百花ちゃんにああ言おうか、こう言った方がいいだろうか、と悩んで悩んで、話すべき言葉は決めたはずなのに…。

黙りこんだ俺の顔を、百花ちゃんは心配そうに見上げた。


その5へつづく


茶倉譲二 続編第八話~その3

2015-11-26 08:01:55 | 吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二

吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二の妄想小説。譲二ルート続編のお話を彼氏目線で眺めてみました。
ネタバレありです。
 

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茶倉譲二 続編第八話~その3

〈譲二〉

最後のお客さんが会計を済ませて出ていった。


春樹「ありがとうございました」

一護「あーやっと客途切れた…」


2人の声には少し疲労の跡がある。


譲二「みんな…本当にずっと営業しててくれたんだね」


百花ちゃんが俺の上着を受け取りながら、「お客さんが『マスターは休み?』って心配してましたよ」と言った。

そんな風に心配してくれるお客さんもいたのか。

改めてありがたいな、って思う。

お客さんも…そして、こいつらも。

俺はみんなに向き合って、頭を下げた。


譲二「みんな、どうもありがとう」

口々にみんなが声をかけてくれる。

俺を気遣ってくれる、みんなの言葉が嬉しい。

そして一番頑張ってくれたのは…。


譲二「百花ちゃんも、本当にありがとうね」

百花「いえ、私なんて…それより、みんなのおかげです」


そんな風に、みんなを気遣う言葉を口にできるのが百花ちゃんらしいところだ。

その百花ちゃんの言葉にハルやりっちゃんは、百花ちゃんがみんなを教えたりさり気なくフォローしたことを話してくれる。

実家での話し合いのことが気にかかっていたろうに、その心配を見せないように頑張ってくれた健気さがとても愛しい。


みんなは俺も疲れているだろうから、店はもう閉めたら?と勧めてくれた。

言われてみて、かなり疲れているのに気づいた。

ただ、話し合っただけなのに、気を張り詰めっぱなしだったせいだろう。

話し合いがどうなったか、本当はみんな知りたかっただろうと思う。

だが、そのことには誰も触れなかった。

俺もそのことについては何も言わなかった。

実家に戻るようになったこと…、まずは百花ちゃんに最初に話したい。

2人だけで…。


いつも通り、百花ちゃんと2人でみんなを送り出した。


その4へつづく