譲二さんと毎日うふふ 妄想小説と乙女ゲーム

主に『吉祥寺恋色デイズ』の茶倉譲二の妄想小説

話数が多くなった小説は順次、インデックスにまとめてます。

小説を検索しやすくするためインデックスを作りました

インデックス 茶倉譲二ルート…茶倉譲二の小説の検索用インデックス。

インデックス ハルルートの譲二…ハルくんルートの茶倉譲二の小説の検索のためのインデックス。

手書きイラスト インデックス…自分で描いた乙女ゲームキャラのイラスト記事


他にも順次インデックスを作ってます。インデックスで探してみてね。



サイトマップ






人気ブログランキングへ

『胸騒ぎ』

2014-07-30 09:40:03 | ハル君ルートで茶倉譲二

譲二さんルートとの混乱を避けるため、ヒロインの名前は佐々木美緒とします。


☆☆☆☆☆
 好きになったヒロインに迷わず告白し、実力行使にでてしまう男らしい譲二さん。
 ただやっかいなのは、ヒロインが好きなのは譲二さんではなく、別の男の人だった。そう…、たとえばハル君。


☆☆☆☆☆
茶倉譲二: 喫茶クロフネのマスター
身長:183cm 体重:70kg

☆☆☆☆☆


『胸騒ぎ』その1


〈美緒〉
 七夕祭りも終わった数日後、学校で変質者が出るというのが噂になっていた。

 あれからハル君とは話ができそうで、できていない。

 色々考えてながら彷徨って、土手についた。ぼーっとしていると辺りは暗くなっていた。携帯に着信やメールがたくさん来ていた。



〈譲二〉
 美緒が夜遅くなっても帰って来ない。クロフネに集まったみんなも心配して、メールや電話をするが、返事がない。

 ここにいないのは美緒だけで、ハルも一護もいるというのが心配だ。1人で何をしているのだろう。胸騒ぎがする。

 みんなで手分けして探しにいく。俺も店をcloseにして探しに出かけた。


 美緒の名を呼びながら、土手を歩いていると、争っているような声が聞こえて来た。

 走っていくと、ハルと一護がつかみ合って喧嘩をしている。その側に美緒がいて、少しホッとする。

 2人とも興奮していたが、もう遅いからと帰らせて、美緒をクロフネに連れ帰る。

 美緒がいなくなったことの心配と見つかった安堵、ハルと一護のただならぬ雰囲気。

 俺の心はいっぱいいっぱいだった。
 とにかく美緒を連れ帰り、何があったのかを問いただそう。

☆☆☆☆☆

『胸騒ぎ』その2


〈美緒〉
 ハル君と一護君の喧嘩を止めた譲二さん。私を連れてクロフネに帰ってくれた。

 2人で並んで歩く間、譲二さんはずっと黙っている。なんだかとても怒っているみたい。いつも穏やかで優しい譲二さんの怒った顔はとても怖かった。


☆☆☆☆☆

 クロフネに着くと、譲二さんは私のためにココアを作ってくれた。

 譲二さんは私と並んで腰掛けると、「まずはココアを飲んで気持ちを落ち着けて」と言った。

 私が飲み終わるのを見計らって、譲二さんは真剣な顔で尋ねた。

譲二「今日何があったのか、全部話してくれる?」

 私は譲二さんに今日の出来事を話した。
 考え事をしながら、何となく土手でぼーっとしていたこと。
 時計を見ると、遅くなっていたので、慌てて帰ろうとしたら、不審な男に襲われた事。
 ナイフをつきつけられて、茂みに連れ込まれそうになった時、ハル君が来て、助けられた事。

 そこまで話すと譲二さんは私を抱き寄せた。私の顔を覗き込むと聞いた。

譲二「それで…、怪我はなかったのか?」


☆☆☆☆☆

『胸騒ぎ』その3


〈譲二〉
 ナイフを持った不審な男、そこまで聞くと俺の心臓は止まりそうになった。

 あの胸騒ぎはあたっていたのか。

 とにかく美緒を抱き寄せ尋ねる。

譲二「それで…、怪我はなかったのか?」

美緒「うん。突きつけられたナイフをハル君が蹴り上げてくれたから…。」

譲二「よかった…。でも、ハルが来てくれなかったら、取り返しのつかないことになっていたんだな…。」

 まさに危機一髪だったようだ。

 もしハルが間に合ってなかったら…。

 男に乱暴され、ナイフで切り刻まれた無惨な美緒の姿が浮かんで来て、俺は心臓が凍り付きそうだった。

 (よかった。ハルが助けてくれて。それも最初に見つけたのがハルでよかった。俺や一護では美緒を怪我させずに、ナイフ男から助け出すことはできなかっただろう)

 俺は安堵のため息を漏らした。


 

〈美緒〉
  苦悩と安堵のまじった譲二さんの顔。

 それを見て、私は悟った。
 さっきの譲二さんは本当は私の事をとても心配して、余裕がなくて、それが怒っているように見えたのだと。

 そして、遊園地でデートをした日にも、今日のようなことがあったんじゃないかとすごく心配してくれていたんだということも。

(それなのに、私はわざと譲二さんに意地の悪いことを言って傷つけたんだ…)

譲二「でも、ホントによかった。美緒に何もなくて。もし、美緒が傷つけられていたら…俺は…」

美緒「ごめんなさい。譲二さん、ごめんなさい、いっぱい心配をかけてしまって。」

譲二「美緒が謝る事はないよ。俺が心配したことなんかどうでもいい…。美緒が無事で、美緒の身に何もなかった事が一番大事なんだから…。もう、そんなに泣かないで。」

譲二「美緒、本当に怖かったね。それなのに、俺は美緒が一番大変な時に側にいて、守ってやる事ができなかった…。」

 譲二さんは泣き続ける私を黙って抱きしめてくれた。

 私が少し落ち着くと、譲二さんは腕をほどいて、私を見つめた。

譲二「それで…。その後何があったの? 俺が行った時、どうしてハルと一護が喧嘩していたの?」

☆☆☆☆☆

『胸騒ぎ』その4


〈譲二〉
美緒「怖くって泣きじゃくる私を…、ハル君が慰めてくれて…。そこへ私を探しに一護君が来てくれて…。ハル君は私に一護君に送ってもらえって、一護君がいるなら安心だからって。」

譲二「…うん。それで?」

 美緒の話によると、自分が身を引いて一護に送れというハルに、一護は怒ったらしい。

 ハルは欲しいものを欲しいと言わないし、美緒に期待させては突き放すような無神経さを一護は怒ったというのだ。

 一護は『今だって、お前が出てくるから』といい、売り言葉に買い言葉で、ハルは思わず『好きな女を守って何が悪いんだよ』と叫んだらしい。

 それを話す美緒は心なしか嬉しそうだった。

譲二「…」

美緒「ハル君は一護君に『お前こそ、何やってんだよ。佐々木の事守れないで』って。
『俺はそんなつもりでお前に佐々木をまかせたんじゃない』って。
それで、二人とも取っ組み合いの喧嘩を始めたから…。
なんとかやめさせようとしてたところに、譲二さんが来たの」

 俺は美緒の頭を優しく撫でた。

 ハルの『お前こそ、何やってんだよ。佐々木の事守れないで』という言葉は俺の心にも鋭く突き刺さった。

譲二「…俺も一護と同じで美緒を守れなかったんだよな…」

 守れないばかりか、いつも美緒を傷つけている…。

美緒「!」


 それにしても、あまりにハルの『好きな女を守って何が悪いんだよ』というくだりを話す美緒が嬉しそうだったので、疑問に思った俺は聞いてみた。

譲二「それで、もしかして美緒は、それまでハルが美緒のことを好きなことに気付いてなかったの?」

美緒「だって、ハル君は七夕祭りの時も一護君に『好きなヤツはいるのか』って言われて、『いない』って答えたり、『一護と佐々木が幸せになればいい』って、言ったり…。」

譲二「…七夕祭りの時って? 何があったの?」

 やっぱり俺のいないところで、3人の仲では色々なことがあったみたいだ。
 それをはっきりさせようともう一度聞いてみた。

譲二「それで? 何があったのか話して。」

美緒「一護君が先に『2人だけで七夕祭りに行こう』って、誘ってくれたので、みんなで行くのを断って、一護君と七夕祭りに出かけたの…」

譲二「…一護と?」

 なんてこった。

 ハルのことばかり警戒している間に、一護も美緒に手を出して来ていたとは。

 一護は昔の七夕祭りで美緒が迷子になったときの話をして、告白をしたらしい。
 そこへ偶然ハルが通りかかったそうだ。

美緒「一護君がハル君に『聞きたいことがある。おまえ好きなヤツはいるのか』って。ハル君がいないって言ったら、一護君は『俺はいる。ハルも同じかと思ってたら違うんだな』って。」

美緒「『俺がもらうぞ』って言った一護君にハル君は『それは佐々木が決める事だ。俺は口出しできない』って…」

 美緒は話しながら、涙を流す。俺はティッシュを渡した。

☆☆☆☆☆

『胸騒ぎ』その5


〈譲二〉
美緒「そんな風だから、ハル君は私の事は好きじゃないって思ってた。一護君もいつも意地悪ばかりだし…、私を好きなわけじゃないって思ってた…。」

 美緒は自分がどれだけモテているか全然わかってないらしい…。

譲二「男がそんな風に言うってことは、その子が好きだって証拠だよ…」

美緒「…そうなの?」

譲二「そうでなくても、ハルも一護も端から見て、美緒が好きなのは一目瞭然だったよ。」

美緒「…気付かなかった。」

 俺は大きなため息をついた。

譲二「なんで俺は、自分の好きな子に他の男の気持ちを教えるはめになってるんだろうか…。」

譲二「美緒は天然というか…鈍すぎだよ…。」

美緒「…ごめんなさい」

譲二「美緒はハルに好かれているのを知ってるんだと俺は思ってた。知ってて、その上で俺を受け入れてくれてるんだと…。でも、ずっと片思いだと思っていたんだな…」

美緒「…」

譲二「それで…。これからどうするの?」

美緒「え?」

譲二「ハルと両思いだと分かって、ハルと付き合うの? それとも一護の方にする?」



 俺の言葉に美緒は動揺した。

美緒「譲二さん…」

譲二「俺は…。美緒を抱いて自分のものにしたと思っていたけど…。
自分のものに出来たのは美緒の体だけだったんだな…。
美緒の心まで自分のものにすることはできなかった…。それが今日良く分かった。」

 俺の突き放したような言葉に不安を覚えたのか、美緒は俺の手を掴んだ。

譲二「美緒。俺たちの仲をどうするかそろそろ真剣に考えないといけないみたいだ。
俺と別れてハルと付き合うか…。それとも俺との仲を続けるなら、そろそろみんなに付き合っていることを話した方がいい…。
秘密にしていたことが間違いだった。
もっと前にみんなに公表していたら、こんなややこしいことにはならずに済んだんだから…」

美緒「みんなに…話すの?」

譲二「秘密にしたのは、俺に後ろめたい気持ちがあったからだ。10歳も年下の未成年を無理やり体を奪ってまで恋人にしたから…。でも、このままじゃ美緒が辛いだけだろ?」

美緒「…」

譲二「それとも、やっぱり俺とは別れる?」

 美緒は黙ったまま考え込んだ。しばらくして、決然と俺を見つめた。

美緒「譲二さん。今の私の気持ち、はっきり言うね。
私がハル君のことが好きな気持ちは変わらない。
諦めようと何度も思ったけど、諦めることは出来なかった。」

 当たり前にわかっているつもりなのに、何度聞いてもその言葉は俺の胸をえぐる。

美緒「でも、譲二さんのことも好き。今はハル君とどっちの方がたくさん好きなのかわからないくらい。私の心の中で譲二さんはだんだん大きくなって…。でも、これではだめなんだよね?」

 俺の心臓がドクドクと胸を打つ。

 俺のことも好きだって??

 いや、好きでいてくれることは知っていたけど、ハルには遠く及ばないものだと諦めていた。

 それが、ハルと同じくらい俺を好きなんだって?

☆☆☆☆☆

『胸騒ぎ』その6


譲二「今は…俺のことをハルと同じくらいには好きでいてくれるんだ…。」

美緒「うん。」

 美緒は俺をじっと見つめた。

 心の中に嬉しい気持ちがわき上がってくる。

 美緒が俺をもっと好きになってくれるなら、それが期待できるなら、俺は何も怖くない。

譲二「それは…いつか俺の方が大きくなって…。俺だけが美緒の心の中を占めることがあるって期待してもいいってことかな?」

美緒「きっと…」

譲二「それなら…。俺たちが付き合っていることをみんなに公表しよう。少なくともハルと一護にははっきり言った方がいい。」

美緒「えっ!」

譲二「ハルも一護も自分の気持ちを美緒に伝えたんだから、美緒の答えを聞きたがっていると思う…。
もし、美緒がその2人のどちらかの気持ちに応えたいと思っているなら、今のままでもいいと思う。
でも、いずれ俺を選ぶのなら、ズルズルと引き延ばすのはみんなが苦しむだけだ。」

 今までの俺の臆病さがこんなややこしい事態を招いて来たんだ。もう逃げるのはやめよう。

 いつみんなに公表するかを話し合う。俺は出来るだけ早い方がいいといった。

 しかし、ハルに未練のある美緒はなかなかうんと言わない。

 俺から言うからと押し切った。

☆☆☆☆☆

『胸騒ぎ』その7


〈美緒〉
 私はまだ好きな気持ちの残るハル君にはっきりと拒絶の言葉を伝える勇気が持てなかった。

 ハル君の空手の全国大会が二日後にある。

 みんなへの交際宣言はそれが終わってからにしようということになった。


☆☆☆☆☆

 翌朝、ハル君から「話したいことがあるから井の頭公園にきて」というメールがあった。

 私は譲二さんとも相談して、
「今日はどうしてもいけない。でも、明日の空手の全国大会が終わったら、話したいことがある」
と返信した。

 本当は飛んででも、ハル君に会いに行きたかった…。

でも、今ハル君に会いに行くことは、一護君がハル君に言ったように『期待させるばっかり』なんだと思う。

譲二さんを選ぶと決めたのだから、ハル君に期待させて、苦しめるのはイヤだ。



〈譲二〉
 翌朝、ハルから「話したいことがあるから井の頭公園にきて」というメールがあったと美緒が教えてくれた。

 今までだったら、俺に内緒で会いに行っていたことだろう。

 危なかった。

 ハルはきっと美緒にもう一度告白するつもりだろう。

 美緒は大好きなハルから告白されたら、決してことわれないだろう。

 俺たちのことを公表するまで、ハルとも一護とも2人っきりにさせてはならない。決して。




『胸騒ぎ』おわり


☆☆☆☆☆

この続きは『全国大会』です。

コメント

『七夕祭りの夜』

2014-07-26 10:00:45 | ハル君ルートで茶倉譲二

譲二さんルートとの混乱を避けるため、ヒロインの名前は佐々木美緒とします。


☆☆☆☆☆
 好きになったヒロインに迷わず告白し、実力行使にでてしまう男らしい譲二さん。
 ただやっかいなのは、ヒロインが好きなのは譲二さんではなく、別の男の人だった。そう…、たとえばハル君。


☆☆☆☆☆
茶倉譲二: 喫茶クロフネのマスター
身長:183cm 体重:70kg

☆☆☆☆☆


『七夕祭りの夜』その1

〈譲二〉
 七夕祭りがもうすぐ始まる。七夕祭りのポスターを美緒に貼るよう頼んだ。

 あいつらは七夕祭りの話題で盛り上がっていた。

 俺は美緒を連れて行けないから、みんなで行ってくれればいい。それぞれが牽制して、まあ大丈夫だろう。



〈美緒〉
 七夕祭りのポスターを貼るのを譲二さんに頼まれた。
 みんなが集まった夕方。七夕祭りの話題で盛り上がる。

春樹「そういえば、ここ何年か行ってないな」
一護「祭りで騒ぐような歳でもねーだろ」

(…一護君、この前2人で七夕祭りに行こうって誘ってくれたけど、あれは本気じゃなかったのかな?)

美緒「あの…私、このポスター貼って来るね!」

ポスターを貼ろうとしたら、上の方まで手が届かない。その時、頭の上から誰かの手が伸びてきた。

春樹「ははっ、そんな背伸びして…早く呼んでくれればよかったのに」
美緒「ハル君!ありがと…」

振り返るとハル君の顔がすぐ近くにあった。

美緒「わっ!」
(なんか…これって、壁に追いつめられているみたい…!)
春樹「あ…ご、ごめん!」
美緒「…」
春樹「なんだか、佐々木と最近、こんなんばっかりだな」
美緒「そう言われると、そうかも…」
春樹「気をつけないと!一護に誤解されたら、困るだろ?」

 え?一護君? 譲二さんではなく?
 もちろん、譲二さんとのことは気をつけて秘密にしてるから、ハル君は気付いてないんだろうけど…。
 でも、どうして一護君? 一護君に七夕祭りに誘われたことを気付いているのかな?


☆☆☆☆☆

『七夕祭りの夜』その2

〈美緒〉
 みんなのところへ戻ると、みんなで七夕祭りに行こうという話になっていた。

美緒「みんなで?」

みんな口々に盛り上がっている。
(…そっか、みんなで行けば、一護君と2人っきりで行くっていう話もなくなるよね。譲二さんもみんなで行っておいでって言ってくれたし…)

一護「…俺は先約があるから」

(えっ!? 先約って私のことだよね?)

理人「あれ?もしかしていっちゃん、ついに彼女できちゃったの!?」
竜蔵「おお!やったな!」
一護「うるせーな、関係ねーだろ」

一護君の顔が赤くなった。

春樹「そっか、先約があるんじゃ仕方ないよな…」
春樹「あ、佐々木は?」

 ハル君に聞かれてドギマギしてしまう。

美緒「あ…えっと…私も、用事があって…」
春樹「…え?佐々木も?」
美緒「うん…」

一護君と先に約束したんだから、守らないといけないよね?

春樹「誰かと一緒に行くの?」

 ハル君に聞かれて言葉に詰まった。
美緒「え?えっと…」

まさか「一護君と行く」なんてとても言えない。ハル君は畳み掛けるように聞いて来る。

春樹「それとも…用事で祭り自体に行けないとか」

美緒「えっと、実は」

どう答えたらいいか分からなくなって、一護君を見た。

一護「美緒だって用事くらいあるだろ。べつに行けるヤツだけで行けばいいんじゃね?」

春樹「あ…そうだよな。ゴメン、佐々木」

美緒「ううん…私こそごめんね。せっかく誘ってくれたのに」

ハル君は気を取り直したように爽やかに言う。
春樹「ま、祭りなんてしょっちゅうあるし。また別の機会にみんなで行けばいいよな。」

私は必死で相づちを打った。
美緒「今度なんかあったら絶対いくから」
本当はハル君と一緒に行きたかった…。

一護「…」

ハル君はちょっと何かに気をとられているようだった。
春樹「…うん。そうだな」

春樹「じゃあ、祭りは4人で行こっか。たまには男4人で遊ぶのも悪くないだろ」

一護「…」

理人「美緒ちゃんが来るまでは、いっつも男ばっかりだったじゃん」

竜蔵「今年こそ射的の景品全部撃ち落としてやるぜ…」

剛史「…リュウ兄、そろそろ出入り禁止になるんじゃない?」

竜蔵「上等だ。毎年レベルあげてくるからな、あのテキ屋」

みんなが盛り上がっている横で、一護君をそっと見た。

一護「…ブサイクな顔」

一護君は相変わらず、意地悪だ…。直ぐに言い返した。

美緒「う、うるさいなー」

一護「…祭り…時間とか、メールするから」

美緒「あ…うん…」

一護「じゃあな」

一護君はどうして私を誘ってくれたんだろう。『みんな一緒に』ではなく、私だけを。


☆☆☆☆☆

『七夕祭りの夜』その3

〈譲二〉
 七夕祭り当日。
 美緒はおしゃれをしていそいそと出掛けていった。

 この頃、美緒が少し明るくなって来たことを思って、嫉妬心を押さえ込む。


〈美緒〉
 一護君とは土手で待ち合わせした。

 2人で笹を見て回る。一護君は相変わらず意地の悪いことばっかり言ってる。
 ハル君はどうしているだろう? もう、みんなと集まってお祭りを見に来ているだろうか?
 ぼんやり考えていると、一護君が立ち止まった。

一護「なあ?」
美緒「何?」

 私が何気なく返事すると、一護君はとても真剣な顔で話しかけて来た。

一護「前、話したよな。七夕祭りでお前が迷子になった話」

美緒「うん…紗枝ちゃんの誕生会の時だよね」

一護「…ああ。お前が迷子になった時…俺が、こいつ守んねぇとって思った」

美緒「…一護君…」

 なんだか、譲二さんに告白されたときと似ている。もしかして、一護君も…?

一護「あん時から、俺…お前のことが」

 一護君はその言葉を最後まで言えなかった。ちょうどその時、ハル君の声がした。

春樹「リュウ兄ー!」

私は思わず、振り向いた。
美緒「え…ハ、ハル君!?」

春樹「あ…佐々木と一護…」

ハル君は驚いたように私たちを見つめた。一護君がバツ悪そうに声をかけた。

一護「…よう」

春樹「…そっか、やっぱり2人で来てたんだ」

(やっぱり、って…ハル君、気づいてたの!?)

気を取り直して、ハル君に話しかける。
美緒「ハ、ハル君はどうしたの?リュウ兄を探してるの?」

春樹「あ…うん。リュウ兄、射的の景品でブレステ当てたのが嬉しかったらしくて、そのまま走ってどっか行っちゃって…」

 リュウ兄らしい…。

一護「どんだけだよ」

一護「…ちょうどいいや。ハルに聞きたいことあんだよ」
春樹「…なに」

一護「ハル…お前、好きなヤツとかいんの?」

(一護くん!?いきなり、どうしたの!?)

春樹「俺? 俺は…いないよ」

美緒「…」
ハル君の言葉を聞いてショックを受けた…。

一護「俺はいる…すぐ近くに」
 えっ。胸がドキドキする。それは…私のことだよね?
春樹「…うん」

一護「ハルも俺と同じだと思ってたけど…違うんだな」

春樹「…」
一護「だったら、俺がもらってもいいだろ?」

 一護君、やっぱり本気なんだ…そんな顔、初めて見た。

春樹「…俺に聞かれても困るよ。佐々木が決める事だし」

美緒「…!」
 ハル君はやっぱり私のことはどうでもいいんだ…。

一護「お前…いいのかよ、それで」

春樹「…いいも何も…俺は口出しする権利ないし。別にみんなの関係が壊れるわけでもないし。俺は一護と佐々木が幸せになれればいいって思う。」

 何か…胸が痛い…どうしてこんなにショックなんだろう…

春樹「えっ」
一護「…美緒」

2人が驚いたような顔で私を見ている。

美緒「な、なに?」
一護「泣いてる」

美緒「あ…」

 ハル君に言われたことが辛くて、私の目からは涙がこぼれていた。
 ハル君のことはもう諦めて…しまったはずなのに。はっきり拒絶されるとどうしてこんなに辛いのだろう?

美緒「ご、ごめん、ちょっと!」

 いたたまれなくなって、私はこの場を逃げ出した。

一護「お、おい!どこ行くんだよ!」
春樹「佐々木!」

 2人の叫ぶ声が追いかける。
 その声を振り切るように、必死で走った。

 ハル君に想われていない事は、どうしようもないのに…。むしろ踏ん切りがついてよかったじゃない。


☆☆☆☆☆

『七夕祭りの夜』その4


〈美緒〉
春樹「佐々木!」

 後ろからハル君の声がしてびっくりした。

美緒「きゃっ」

 そして、ハル君に手首を掴まれる。

百花「ハ、ハル君!?」

 追いかけて来てくれたんだ。

春樹「あの、さっきのだけど…俺…」

美緒「いいの!気にしてないから!」

 ハル君のことはもうキッパリ諦めよう。独りで悩んでばかみたい。

春樹「え…」

美緒「ごめんね、急に泣いたりして…あれは、その…」

 なんとか泣いたわけを誤魔化そうと言い訳を考える。

春樹「佐々木!聞いて、俺は…」

♪~
春樹「あ…」

美緒「…ハル君、携帯鳴ってるよ…出た方がいいんじゃない?」

春樹「…ちょっと待って。絶対、逃げるなよ!」
 ハル君はちょっと怖い顔で念を押した。

美緒「…うん」

春樹「もしもし」

 あれ? ハル君のポケットから何か落ちた。あ、これ、私と撮ったプリクラ…なんで今、これを持ってるんだろう。

 プリクラをハル君に手渡すとハル君は真っ赤になった。

美緒「もしかして、それいつも持ち歩いてるの?」

春樹「えっ、あっ、そうだけど」

美緒「ほ、ホント?}
 なんだか嬉しい。ハル君は私とのプリクラをいつも持ち歩いてくれていた!

春樹「あー、もう!俺、女々しいよな」

美緒「女々しいって…」

春樹「このときの佐々木、すげー可愛いんだもん。だから、なんか持ち歩いちゃって…。うわー、俺、変態みたいじゃん」

 私との思い出、大切に思っていてくれたんだ。
 
春樹「ごめん、気持ち悪くて」

美緒「そんな風には思わないよ」

 でも、それ以上何を言えばいいのかわからない。気まずくて、無言で立ち尽くす。

春樹「あのさ、さっきの一護が言ってたヤツだけど…」

春樹「佐々木が決めればいいというのは、本当で。ただ、そう言ってる俺が、佐々木の気持ち無視してて、一護とくっつくんだろうなとか勝手に想像しちゃってたからっていうのもあるんだけど…。とにかく、ごめん!」

春樹「俺が中途半端なことしたから、泣いちゃったんだろ?」

美緒「ううん…私も、いきなり泣いたりしてごめんね?」

春樹「いや、それは俺が悪いからって、堂々巡りしちゃうね」

美緒「うん。ふふっ」

春樹「あっ、その笑顔。やっぱり佐々木の笑顔、安心する」

 やっぱりハル君、天然のたらしだ。ハル君を諦めようと思った気持ちが薄れていく。

春樹「じゃあ帰ろうか?クロフネまで送るよ」

美緒「もう、お祭りはいいの?」

春樹「俺はもういいよ。佐々木は?今から戻ってみんなで回る?」

美緒「ううん、もう帰る」

 目の前にある段差を上る時、ハル君は手を貸してくれた。でも、その後、ハル君はすぐに手を離した。
 前のようにはずっと繋いでくれたりはしないんだ…。
 



〈譲二〉
 思っていた時間より早く、美緒は帰ってきた。

 ハルに送ってもらったといいながら、今日もなんだか上機嫌だ。

 ひとしきり七夕祭りが懐かしくて嬉しかったという話をしてくれる。

 あまりにも饒舌で、やはり何か隠し事をしているのではないかと不安になった。


『七夕祭りの夜』おわり

☆☆☆☆☆

この続きは『胸騒ぎ』です。

コメント

今さらですが…。瑛希くん本編

2014-07-25 20:59:50 | 特別捜査密着24時

毎日暑いですね。あまりの暑さにゲームしても、レポを書く元気も出ないという…。
(;^ω^A

今さらですが…。

特別捜査密着24時が、桐沢さん1位キャンペーンで、本編が300円になっていたので、まだ読んでなかった浅野さんと瑛希くんをダウンロードした。

とりあえず浅野さんの1話目を読んだら、あまりの素っ気なさに心が折れたので(ー ー;)、瑛希くんから読むことにした。

瑛希くんは優秀で難事件も天才的推理で解決してしまう分、本当の自分を押し殺して、みんなが期待する『瑛希くん像』を演じてしまっているらしい。
しかし、ヒロインの前では素直に自分の気持ちをだせるということで、ヒロインを好きに。

で、ずっとヒロインとはラブラブな感じで進行するけど、今の事件が終れば瑛希くんはニューヨークへ帰ってしまうというのが常にあって、ラブラブ感に切なさが加わっている。

事件の方は犯人は見つけるけど、犯行動機が同情を誘う物だったので、見逃すことに…。
まあ、殺人事件じゃないしね…。
それで、瑛希くんはすぐにNY市警に戻ることになるし、桐沢さんは部下をかばって(きっと)かなり苦しい立ち場に立たされた筈。。・゜゜・(≧д≦)・゜゜・。
もともと特捜は後味の悪い結末になることがよくあるけど…、犯人を捕まえられなかったと言うのはちょっともやもやするかな。



それでendですが、本編では京橋さんに続いて2人目のnormal endでした。orz
いけるかと思ったけどあまかった。

もっと積極的に行った方が良かったのかな。

瑛希くんのスチルほどれもこのうえもないほど綺麗だった。

次は浅野さんだ。また、normal endだったらどうしよう。((゜m゜;)

コメント

吉恋外伝~一乗谷

2014-07-25 10:00:00 | 吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二

 えー、吉恋ではいつもオジサン扱いされている譲二さんなので、あえて年上の女性との恋愛を描いてみた。

 男性がキスしやすい女性との身長差は12cmくらとのことなので、譲二さんにちょうどいい女性は171cmくらい。

 この話のヒロインはそこまではいかなくても、160cm代後半の細身の女性を想定しています。
 譲二さんと並ぶとお似合い?v(^-^)v

 それとクロフネでいるだけでは、女性との出会いもないので、相手女性を歴女にして、歴史関係の遺跡で出会わせることにした。

 一乗谷を選んだのは、超有名というほどの遺跡ではなく、でも歴オタにとってはとても魅力的な場所だからだ。

 私は一乗谷にはツアーで一回しか行ったことがないので、山城跡まで登ったことはありません。
 また行く機会があれば、ぜひ宿直跡からの展望を眺めてみたいですね。

☆☆☆☆☆

この話での譲二さんは25歳。クロフネのマスターとしても慣れて来た頃。



☆☆☆☆☆
吉恋外伝~一乗谷~その1

『 一乗谷は戦国大名・朝倉氏が越前を治めた際の政治・文化の中心となった城下町。

 朝倉氏は5代続いた名門だったが、天正元年(1573)織田信長に破れ、滅亡、一乗谷は戦火によって焼土と化した。

 敵から守りやすいように一乗谷は谷が最も狭くなっている地点2ヶ所に石垣や堀・土塁で城門を築いてある。
 上・下の城戸間は約1.7kmあり、「城戸ノ内」と呼ばれ、城主の居館、重臣の屋敷等が密集していた。

 守りを最優先にしていたため、交通の便が悪く、後の平和な時代には町が作られることはなかった。
 そのため400年以上も埋もれたまま残っていた。
 新しい町が出来ていればその遺跡を発掘することは出来なかっただろう
 しかし、その上には何もなかったために、朝
倉氏の館をはじめ、武家屋敷、寺院、職人達の町家が道の両側に所狭しと建てられていたことが発掘で明らかとなっている。


 この一乗谷は前々から気になっていたのだが、思い立って小旅行することにした。

 吉祥寺から5時間かけて昼の1時過ぎに一乗谷に着いた。

 一乗谷の遺構は明日に譲るとして、とりあえず一乗谷資料館を見学する。
 気候の良い時期で、家族連れやツアー客などで結構込み合っている。

 展示品に見入っていると、
???「すみません。これを落とされたんじゃないですか?」
という声がする。

 振り返ると背の高い、ショートボブで涼しげな目元の若い女性が俺の手帳を差し出して立っている。

譲二「あ、すみません。」

彼女はにっこり笑うと立ち去った。

☆☆☆☆☆
吉恋外伝~一乗谷~その2

 翌日、いよいよ一乗谷の朝倉氏遺跡巡りをした。

 朝倉館跡の松雲院唐門の写真を構図をとりながら撮影していると、同じように写真を撮っている女性がいる。

 なんだか見覚えがあるなと見とれていると向こうから会釈してくる。

 あっと思った。昨日、落とし物を拾ってくれた女性だ。

 俺も会釈して、「昨日はありがとうございました」と言った。

彼女は微笑んで「あなたも今日朝倉館跡を回ってらっしゃるんですね。」と言った。

譲二「ええ、今日は1日かけてゆっくり回ろうと思っています。」

???「おひとりですか?」

譲二「はい。あなたも?」

 何となく2人で遺跡を回りながら、会話した。
 色々話してみると、彼女はかなり歴史にくわしいことが分かった。

それを誉めると
???「ええ、歴女なんです。それが高じて仕事にしちゃいました。」
と笑う。

 よく話を聞いてみると、彼女は『歴史散歩』という雑誌の編集に関わる仕事をしているということだった。

 彼女は杉田冴也香と名乗り名刺をくれた。

譲二「ということは雑誌の取材なんですか?」

冴也香「いいえ、取材というほどではないんです。でも、今回の旅行でいい記事が書けたら、雑誌に載せてもらえるかもしれません。」
と言って笑った。

 俺は「名刺など持っていないので…」と言いながら、茶倉譲二と名乗り、吉祥寺で「クロフネ」という喫茶店をしていることを話すと目を丸くした。

冴也香「『黒船』なら知っているわ。以前吉祥寺で住んでいたこともあるから、でもあそこのマスターはもっと年取った人だったはずだけど。」

譲二「ああ、前のマスターには俺もお世話になりました。3年ほど前に急に病気で亡くなって、その後を俺が引き継いだんですよ。店の名前も漢字からカタカナになりました。」

 冴也香さんは少し驚いて「そうなの?」と言った。

☆☆☆☆☆
吉恋外伝~一乗谷~その3
 館跡をほぼ見て回り、山城跡にも上って見ようと言うことになった。
 ガイドの人に聞いてみると、足元はしっかりした装備をした方がよいと言うので冴也香さんを気遣うが、本人は「スニーカーを履いてきましたから。」とけろりと言う。

 とりあえず、ペットボトルのお茶を2本ずつ用意して、朝倉館の後方から2人で上り始めた。

『 本丸跡には標柱が建っている。
 一七個の礎石の残る山上御殿(千畳敷)跡である。
 この付近に堀切や土塁によって区切られた観音屋敷跡・赤淵明神跡・宿直跡・月見櫓跡が集中する。
 観音屋敷は三方に土塁をめぐらし、枡形虎口も設けられている。宿直跡からの見晴らしは抜群で、福井平野を全部見渡せる、天気がよければ三国湊まで遠望できるといわれている 。
 本丸があるのは四一六mぐらいのところで、通常の山城と違って本丸があって、そこから東南の頂上に向かって尾根伝いに「一の丸」(標高四四三m)、「二の丸」(同四六三m)、「三の丸」(同四七三m)と続く。
 総延長は約 五百mに及ぶ。各郭がそれぞれ堀切によって区切られた連郭式城郭である。


 結構な山道で、運動不足の身には少しこたえた。
 しかし、冴也香さんの手前虚勢を張って平気な振りをした。

 ガイドブックの通り、宿直跡からの景色は素晴らしかった。

 そこで、宿直跡でお茶を飲みながら休憩する。
 用意のいい冴也香さんはチョコを出してきて俺に分けてくれた。汗をかいた後で、山風が心地いい。

 なんとなく、吉祥寺や喫茶店が『黒船』だった頃の話になり、俺が入り浸っていた頃に冴也香さんも時々『黒船』に来ていたことが分かった。

 そして年齢の話になり、俺が25歳だというと冴也香さんは驚いた。

冴也香「えーっ、私より年下なの? 落ち着いているからもう少し上かと思った。」

譲二「喫茶店のマスターが若造だと様にならないので、ヒゲも生やして老けて見えるように努力してますからね。
俺より年上って、冴也香さんこそ俺と同じ年くらいかと思ってましたよ。」

冴也香「またまた、若く見えるってお世辞を言っても何もでないわよ。」

譲二「レディに年を尋ねるのは失礼ですよね。でも本当いくつ上なんですか?」

冴也香「ふふっ、いくつに見える?」

譲二「え? それを俺に言わせますか? っと、26歳?」

冴也香「いい気分にしてくれて、ありがとう。ほんとはね、譲二さんより4つ上なの。」

譲二「ええっ、とてもそんなには見えないな。」

 その後、また歴史の話で盛り上がり、東京に帰って、またいつかクロフネに来てくれたらコーヒーを奢るという約束をした。


 翌朝早くの電車で冴也香さんは帰るというので、俺も予定を切り上げて、同じ電車のチケットを買った。

帰りのJRの中でも話は盛り上がり、東京駅で別れた。

☆☆☆☆☆
吉恋外伝~一乗谷~その4
 それから2週間ほど経ったある日、クロフネに冴也香さんが訪ねてきた。

 冴也香さんは最近テレビでも紹介された有名店の焼き菓子をお土産に持ってきてくれた。

 冴也香さんは店の中をあちこちのぞいては、
冴也香「へぇー、前のマスターの頃とほとんど変わっていないのねぇ。」と笑顔をみせた。

 俺はとびきり美味しいコーヒーを入れてその焼き菓子と一緒に出した。

冴也香「コーヒーも同じ味がする。美味しい。」

譲二「よかった。前より味が落ちたと言われたらどうしようかとドキドキした。」

 冴也香さんはカウンターに座って、厨房での俺の動きを眺めている。

 ちょうど2組ほどのお客さんが入ったので、俺は忙しく動いていた。

 オーダーを出し終わって、冴也香さんの前に戻ると

冴也香「すごいわねぇ。譲二さんは1人でなんでもこなすのね。店の雰囲気やコーヒーだけでなく、メニューも昔のままなのね。」

譲二「前のマスターに色々仕込まれたんですよ。歴史好きと一緒に。」

 冴也香さんは「ああ、それで」と言いながらコーヒーを飲み干した。

 俺はコーヒーのお代わりと一緒に小さく切ったサンドイッチも出した。

冴也香「こんなにいただいてもいいの?」

譲二「ええ、俺のおごりです。」

冴也香「サンドイッチも昔と同じ味だわ」

 冴也香さんは懐かしそうにつぶやいた。

帰り支度をしながら、彼女が言った。

冴也香「もしよかったら、携帯とメールアドレスを教えてもらえませんか? あの時、聞き忘れたので、連絡の仕様がなかったから。」

 俺はいいですよと、携帯を取り出した。

☆☆☆☆☆
吉恋外伝~一乗谷~その5
 それから、時々冴也香さんはクロフネに訪ねてきてくれた。

 メールでも頻繁にやり取りをするようになった。ほとんどが歴史の話題だったから、いくら歴史好きとは言え、若い女性には物足りなかったかもしれない。

 ある時、思い切って彼女の休みの日にデートに誘ってみた。
 歴史関係は敢えて封印して、女性の好きそうな町ブラをしたり、映画を見に行ったり、買い物をして過ごした。

 夕方は予約してあったオシャレなイタリアンで食事をした。

 そんなデートが何回か続いた。

 彼女は俺のことをどう思っているだろう。
 快くデートに付き合ってくれているのだから、好意は持っているのだろう。

 そして大人の女性なのだから、もう少し踏み込んだ付き合いを求めているだろうか?

 単なるデートだけというのは物足りなく思われているだろうか? 

メール
『おはよう

この間借りた「幕末の志士列伝」は面白かったよ、ありがとう。

ところで、今度の水曜日の夜は空いているかな。

ちょっと感じのいいフレンチを見つけたので、付き合ってもらえる?

早めに店も閉められそうだし、冴也香さんの都合がつくようなら、ゆっくり出来るとうれしい。
返事待ってます。

 

譲二』

 



『連絡遅くなってごめんなさい

今日に限って携帯を持って出るのを忘れちゃってて、ごめんなさい。

譲二さんが気に入った店なら美味しいでしょうね。楽しみ。

翌日はゆっくり目の出勤なので、少々夜遅くなっても大丈夫です。

いつものところで、5時半に待ち合わせでも大丈夫かしら?

楽しみにしています。

 

冴也香』

 


☆☆☆☆☆



 予約した店はムードたっぷりで、冴也香はとても喜んでくれた。

 食事のあと、夜の公園を散歩した。

 夜景の美しいポイントで冴也香の肩をそっと抱き寄せた。
 冴也香はそのまま俺の肩に頭をもたれさせる。

 俺は彼女の額にそっとキスをしてその瞳をみつめた。冴也香も俺をみつめ、2人の視線がからみあう。

譲二「冴也香さん。俺に好意を持ってくれていると思っていい?」

 冴也香はいたずらっぽく微笑む。

冴也香「それを女の方から言わせる気?」

 彼女の瞳に元気づけられて、思い切って声にした。

譲二「冴也香のことが大好きだ。こんな風に会うたびに、ますます好きになってる。」

 冴也香はそっと目を伏せた。

冴也香「私も譲二さんが大好き。」

 冴也香の顎を持って上向かせると、そっと唇にキスをする。触れた途端に吸い付くように唇は唇を求め、舌を入れて絡ませる。

 長いキスのあと、冴也香を抱きしめると囁いた。

譲二「今夜は帰さないよ。」

 冴也香もそっと頷いた。


☆☆☆☆☆
吉恋外伝~一乗谷~その6

 近くのホテルにチェックインする。

 部屋の鍵を閉めるとお互いに強く求め合うように抱きしめてキスをした。

 唇を離すと冴也香を抱きしめ、「シャワーを浴びよう」と誘った。
 俺からシャワーを浴び、冴也香に交代する。

 冴也香を待つ間、バスタオルを巻いたままの姿で、ハイボールを用意する。

 女性を抱くのは何年ぶりだろう。焦って早まらないようにと心を落ち着けた。

 冴也香がしっかりバスタオルを巻いて現れるとそのまま強く抱きしめた。

譲二「ハイボールを作ったよ、一緒に飲む?」
冴也香「ええ、ありがとう。いただくわ。」

 2人で乾杯して、一口ずつ飲む。冴也香は茶目っ気たっぷりに微笑んだ。

冴也香「次は私が譲二さんに飲ませてあげる。」

 冴也香はハイボールを口に含むと、俺の首根っこに抱きついてキスをしてくる。

 彼女の温かい唇の間からハイボールが流れ込み、それを飲み干すと彼女の舌が入ってくる。
 積極的な彼女に応えると、彼女のバスタオルをはぎ取った。


☆☆☆☆☆


 2人で荒い息を吐きながら横たわる。

 今度は俺がハイボールを口に含んで、彼女に飲ませた。

 彼女が飲み切る前に舌を入れてしまったので、ハイボールがしたたる。
 俺はそれを舐めながら舌を彼女の胸まで這わせていった。

 今まで、手をつなぐこともキスすることもなく過ごしていたせいか、一度タガが外れると欲望は留まることを知らなかった。

 お互いの体を温め合い抱き合って、何度も交わった。

 朝、ホテルを出て、近くのファストフードで軽い朝食をとり、別れた。

 名残惜しかったが、冴也香は一旦家に帰ってから会社に出勤するということだった。



メール
『昨夜はありがとう

冴也香はとてもきれいだったよ。
冴也香のすべてが見られて、とても嬉しかった。
愛してるよ。

譲二』       


『私も愛してる

昨夜のことを思い出すと、顔が火照って来るのを止められません。
ちょっと恥ずかしいことばかりしてしまったかも。
またお休みの日に会いたいな。
                              冴也香』


☆☆☆☆☆
吉恋外伝~一乗谷~その7

 それから、1週間に1度くらい冴也香がクロフネを訪ねたり、俺が出かけて待ち合わせてデートをしたりした。

 彼女の仕事は忙しくて、それくらいが限度だった。

 冴也香がクロフネに来たときは、店が終わるまで彼女はカウンターの隅で俺と話したり歴史の本を読んだりして過ごした。

 その後、俺が夕食を作り、俺の寝室で朝まで過ごした。

 俺が出かけてデートをした時は歴史館や博物館巡りの後、食事をし、ホテルに泊まったり彼女の部屋に泊めてもらったりした。

 なかなか会えない分、夜は熱く激しいものになりがちだった。

 常にメールや携帯でやり取りしていたので、俺は寂しくはなかったが、果たして彼女はどうだっただろう。

 今から思えば、結婚の「け」の字も言い出さない俺に不安を覚えていたかもしれない。

 俺はまだ25でクロフネの経営にもやっと慣れてきたばかりだったから、結婚など考えるのはまだまだ早いと思っていた。

 しかし、彼女は29歳。女性だから色々焦っても仕方なかったのかもしれない。


☆☆☆☆☆

 ある日、クロフネで2人っきりの食事をした後、冴也香は突然ポツリと言った。

冴也香「私…、お見合いを勧められているの。」

譲二「…」

 唖然として、何も言えない俺に畳み掛けるように。

冴也香「相手は同じ出版関係の人なの。1つ年上なんですって。」

譲二「俺は…」

「お見合いなんかするな」と言う言葉がのどまで出かかって、しかしその言葉を口にすることができなかった。

 俺のような不安定な仕事の人間より、しっかりした所に勤めている男の方が冴也香を幸せにできるのではないかという気持ちが俺の舌を重くした。

冴也香「譲二さんは…、私を引き止めてくれないの?」

譲二「俺は…、冴也香に見合いなんかしてもらいたくない。」

冴也香は嬉しそうに俺をみつめ返す。

譲二「俺はまだこんなだけど、いつか冴也香と一緒に暮らしたい。」

 それまで、冴也香との将来のことは特に考えてはいなかった。

 ただ漠然と結婚するなら冴也香とだろうと考えていたが、具体的な準備というものは何もしてこなかった。

 しかし、冴也香はその「一緒に暮らしたい」という言葉にすがりついたのだった。

冴也香「うれしい。譲二さんは私のことを単なる遊び相手としてしか見てくれていないのじゃないかと時々不安になっていたの…。」

譲二「冴也香が遊び相手なんて思ったことはないよ。俺にとって一番大切な人なんだから。」

 その言葉に嘘はなかった。

 本当にそう思っていたから。

 しかし、正式には明里という婚約者がいる以上、茶倉の家族に冴也香を紹介するわけにもいかず、なんとなく宙ぶらりんなままなのはどうしようもなかった。

☆☆☆☆☆
吉恋外伝~一乗谷~その8



 その夜、冴也香はいつになく積極的に挑んできた。

 俺もなんだか盛り上がっていつになく熱い夜になった。

 荒い息をして横たわる冴也香を優しく愛撫しながら囁いた。

譲二「冴也香、とってもきれいだったよ。」

冴也香「…譲二さん…。私なんだか今日はとっても変。あんないやらしいことをしてしまって…。」

譲二「愛してるよ冴也香。」

 俺は彼女を抱きしめるとまた熱いキスをした。

☆☆☆☆☆

 なんとなく冴也香のことを思い出しながら、食器を拭いていると、百花に声をかけられた。

百花「譲二さん、何を考えているの? 同じお皿ばかり拭いてるよ。」

 俺はポーカーフェイスで百花をみつめると答えた。

譲二「あっそうだった? ちょっと昨夜の百花のことを思い出してたんだ。」

 百花は真っ赤になって、あっちを向く。

 百花の肩を持って振り向かせると、額にキスをして抱きしめた。



 あの後、結局、冴也香は煮え切らない俺に愛想をつかせてお見合いをし、 3ヶ月後にはその相手と結婚したのだった。

 あの時冴也香の言った通り、俺は彼女をただの遊び相手にしていたのだろうか?

 いや、あの時は本当に彼女に夢中だった。
 その証拠にあの頃から明里のことは何とも思わなくなったのだから。

 しかし、冴也香に振られても、明里や未希に振られたときほどの悲しみは感じなかった。仕方ないなと思い、彼女が幸せになったことを心から喜んだ。

 百花が俺の前からいなくなったときのようなショックを受けたわけでもない。

 最初に冴也香が見合い話のことを持ち出した時に覚悟していたんだろう。

 でも、冴也香のことは百花には絶対に話せないなと思う。

 明里とのことは話せたけれど、冴也香のことは百花を嫉妬に駆り立て苦しめるだけだろうから。

 整理していた棚から出てきた一乗谷のパンフレットや資料館のチケットを眺める。

 いつか、もう一度一乗谷に行きたい。

 その時は百花を連れて行こう。
 宿直跡からの眺めを百花に見せてやりたい。

 …もちろん、冴也香の思い出話は封印して…。

 俺も悪い男だなと苦笑した。


吉恋外伝~一乗谷~おわり

コメント

蘭endで、若狭はどうなったか?

2014-07-20 16:08:05 | ヤンデレ天国~華麗なる西園寺家編

ヤンデレ天国~華麗なる西園寺家編~/HOBiRECORDS

 

 

町外れにある古びた洋館。
何時からそこに建ち、誰が住んでいるのか…。
気味悪がった人々は1人も近づくことはない。

ある日のこと。
主人公は錆び付いた門前に立ち、チャイムを押す。
彼女を出迎えたのは、
館の住人である双子の青年達だった。

西園寺蘭 CV櫻井孝宏
24歳。冷徹で高圧的な性格。
感情を余り表に出すことがない。
自分と弟以外の人間に興味はない。

西園寺若狭 CV羽多野渉
24歳。社交的で人懐っこい性格。
感情の変化が豊か。
主人公には病的なくらい懐いている。

主人公
西園寺家の住み込みメイド



Youtubeが削除されてしまいました。
ただ妄想の方は続けて行きたいと思います。


☆☆☆☆☆

蘭endでは、若狭は外国へいったということですが、それまでの顛末を妄想してみました。今回も蘭目線です。

ヒロインの名前は玉井美緒と名付けます。
 蘭と若狭に「どっちを選ぶのか」と詰め寄られたヒロイン。

☆☆☆☆☆
その1

美緒「蘭さんと一緒にいたいです」

蘭「当然だな」

若狭「……」

 安堵と喜びが沸き上がる。正直どちらが選ばれるかは五分五分だと思っていた。
 若狭はよほどショックだったのか黙ってうつむいている。

美緒「若狭さん、ごめんなさい。あなたのことが嫌いというわけではないの。でも、私は蘭さんと一緒にいたい。」

 うなだれていた若狭が突然こちらに突進して来た。俺は若狭を警戒していたので、素早くよけた。若狭は勢い余ってソファーに激突した。若狭の手にはスタンガンが握られていて、激突した拍子にバチバチと大きな音を立て火花がとんだ。
 俺はすかさず若狭に馬乗りになった。若狭の腕をひねり上げる。スタンガンが滑り落ちる。

若狭「痛い! やめろ!」

蘭「お前こそ、動くな」

若狭「くそ! もう少しだったのに…」

 驚いて、固まっている美緒に指示を出した。

蘭「美緒、若狭のポケットを探れ! 多分、手錠が入っているはずだ。鍵があればそれも」

 美緒は、引きつった顔で頷くと、若狭の服のポケットを一つ一つ調べた。ガチャリと音がする。

美緒「これ?」

 美緒が手錠と鍵を見せた。

蘭「ああ、俺が手を押さえているから、若狭に手錠をかけてくれ」

美緒「でも…」

若狭「美緒ちゃん、僕を助けてくれ。お願いだ」

蘭「美緒、何を躊躇している。お前も見ただろ? 若狭は自分が選ばれなかったから、スタンガンで俺を襲おうとしたんだぞ!」

 美緒は決心したように頷くと若狭の両手に手錠をかけた。若狭は相変わらず俺を振り落とそうと暴れている。

蘭「美緒、俺の部屋に行って、離れの鍵を取って来てくれ! 俺の机の右側の引き出しの上から2番目に入っている。離れというタグが付いているからすぐわかる。」

 俺の言葉を聞くと、美緒は緊張した面持ちで頷き、小走りで走っていった。

蘭「若狭、甘かったな。お前の考えていることは、俺にはだいたいわかる。」

 若狭は暴れるのをやめた。甘えるように言う。

若狭「兄さん、降参。冗談だよ。僕が本気で兄さんを襲うわけないじゃないか」

蘭「しらじらしいぞ!」

 美緒が鍵を持って、息を切らしながら戻って来た。
 俺はその鍵を受け取ると、若狭の上から降りた。

蘭「ほら、立て!」

 俺は後ろ手に手錠をかけられた若狭を歩かせる。美緒が後ろから着いて来ようとしていたので、すかさず制止した。

蘭「お前はここにいろ! 後は俺1人で大丈夫だ。」

美緒「でも…。」

蘭「夕食の準備でもしていてくれ。俺たち3人分のな。」

美緒「…」

蘭「ああそうだ。さっき若狭が落としたスタンガンも拾って持って来てくれ」

 俺は一方の手でスタンガンを構え、片手で若狭の腕を後ろから持って離れに連れて行った。

 この洋館の裏庭には小さな離れがある。その中に物入れに使えるように外鍵の付いた小部屋があった。俺はそこに若狭を放り込むと鍵をかけた。念のため二重にかける。

若狭「兄さん、ひどいじゃないか…。こんなところに閉じ込めて。兄さんはあの子を手に入れたんだから、僕のことはもう許してくれてもいいじゃないか」

蘭「心にもないことをいうんじゃない。俺を出し抜くチャンスがあれば、あいつを自分のものにする気だろ?」

若狭「そんなことないよ。僕たちは血を分けた双子じゃないか。お願いだよ。出してくれ」

蘭「まあいい。しばらくそこにいろ」
 

☆☆☆☆☆

 櫻井孝宏さんの声は私的に『特命捜査密着24時』の花井一沙の声そのものでした。
 で、この話の蘭の顔もジャケットカバーのイラストの顔立ちじゃなく、一沙の顔で再生されています。
 一卵性の双子なのに顔が違うじゃなーい。と、いうのは置いといて…。

 ちなみに一沙とハル君の体格はほぼ一緒です。ふふっ( ̄ー☆

(
ハル君の体重が1kg軽いだけ)

 

☆☆☆☆☆

その2



 美緒に作らせた食事を持って離れにいく。鍵を開けると、若狭は手錠をしたまま随分暴れたようで、いろんなものが床に散らばっている。

蘭「食事を持って来たから、食べろ」
若狭「手錠をしたままで? 手錠を外してよ」
蘭「自分で工夫して食べろ」
若狭「そんなむちゃ言わないでよ。外から鍵をかけてあるんだから、逃げられやしないよ。だから鍵を外して」
蘭「手錠の鍵は今持っていない」

 俺はテーブルにお盆を置くと、戸を閉めてまた鍵をかけた。

若狭「兄さん、ひどいよ。」

☆☆☆☆☆

 俺が部屋にいると、チャイムがなった。
(早かったな)
 美緒が「篠崎さんという方が来られています」と取り次いだ。

蘭「すぐ部屋に通してくれ」

 40歳くらいの男が入って来た。一見ごく普通のサラリーマンに見えるが眼光は鋭い。
 篠崎は父の代から付き合いのある人間だ。会社の業務で、法に抵触する恐れのあるものの処理を時々頼んで来た。篠崎という名が本名かどうか、俺は知らない。

篠崎「お久しぶりです。」
蘭「前に若狭がしでかした後始末の時には、世話になった。ありがとう。」
篠崎「いえいえ、単なるビジネスですから、礼には及びません。」

 俺たちの住むこの屋敷を見つけてくれたのも、篠崎だった。

篠崎「それより、蘭さんがメールで済まさず、直接会って依頼するなんて珍しいですね。」
蘭「ああ、かなり厄介な案件だからな。お前の部下は連れて来てくれたか?」
篠崎「はい。メールで連絡頂いた通り、2人連れて来ました。部屋の外に待たせてあります。」
蘭「裏庭の離れに若狭を閉じ込めてある。これが離れの鍵だ。手錠はかけてあるが、暴れるし、1人で置いておくのは心配なので、そいつらで見張っていてもらえないか?」

 篠崎は鍵を受け取ると、ドアの外にいる部下に手渡して指示を出した。

篠崎「今回も若狭さんのことですか?」
蘭「ああ。事情があって、若狭をこの屋敷から遠ざけたい。二度と俺の目の前に姿を現すことのないようにしたいんだ。」
篠崎「それだと…。日本国内より、海外に出した方が安全ですね。パスポートを取り上げれば帰って来れませんし…」
蘭「お前が一番いいと思う方法でやってくれ。」
篠崎「若狭さんがなるべく快適に過ごせるように尽力します。」
蘭「そうしてくれるとありがたい。ただし…、日本国外にでた後で、もし若狭が暴れてどうしても手が付けられないようなことがあれば、その時は…その生き死にの判断はお前に任せる。」

 篠崎は片方の眉をわずかにあげた。

篠崎「報告書はどうしましょう?」
蘭「いらない。…いや、何か変わったことがあった時点で、例のメアドに添付書類として送ってくれ。固有名詞は抜きでな。」
篠崎「わかりました。」
蘭「これは手錠の鍵だ。若狭の移送先が決まるまで、例の離れは自由に使ってくれていい。」
篠崎「請求書は?」
蘭「いつも通りの方法で送ってくれ。」
篠崎「先ほどこちらへ案内してくれたお嬢さんは、新しい家政婦さんですか?」
蘭「ああ。まだ非公式だが、俺の婚約者でもある」
篠崎「それは! おめでとうございます。それで、今回の仕事依頼になったわけですね。」
蘭「余計な詮索はするな」
篠崎「これは失礼しました。」

 篠崎に若狭のことを依頼して、俺はほっとした。あれだけの諍いをしたとは言え、実の弟を排除する作業は、精神的にかなり堪える。
 若狭には「おまえを憎んできた」と言ったが、妹亡きあと、若狭はたった一人の弟であり、肉親としての愛情もあることは事実だ。
 若狭には幸せになって欲しいと思っている。俺の美緒に手出しさえしないならば…。

 

☆☆☆☆☆
その3


 美緒がおずおずと話しかけてくる。

美緒「あのう…」

蘭「なんだ?」

美緒「若狭さんは?」

蘭「暴れて手が付けられないので、人に来てもらって面倒を見てもらっている」

美緒「私が、話してみましょうか? 若狭さんも落ち着けば…」

蘭「お前は余計なことをしなくていい!」

 つい声を荒げてしまう。

蘭「それにお前の声を聞いたら、かえって若狭は手に負えなくなるだろう。今はしばらくそっとしてやった方がいい」

 美緒は少し不満そうだった。今まであれだけ仲良しだったのだから、確かに気になるだろう。それでも俺は、美緒には若狭ではなく、俺のことをもっと見て、もっと考えて欲しかった。
 しかし、俺には若狭のように美緒を楽しませるような会話ができなかった。何を話題にしたらいいのかすら分からなかった。

 俺は途方に暮れた。


 美緒はなぜこんな俺を選んでくれたのだろう?

蘭「おまえ…。なんで俺を選んだんだ?」

美緒「私は…。お2人のどちらもそれぞれいいところがあって好きです。でも、ここ最近の若狭さんには、時々得体のしれない怖さを感じることがあって…、若狭さんを選ぶ気にはなれませんでした。」

 俺はため息をついた。

蘭「俺が選ばれたのは、単なる敵失か。」

美緒「そんなことはないです。蘭さんのことが好きなのは本当です。」

蘭「別に無理しなくていい。」

美緒「蘭さんは、最初は気難しくて、とっつきにくかったけど…、少しずつ知っていくと、水が少しずつしみ込むように、私の心に入って来ました。蘭さんは優しい人なんだと私は知っています。」

 少し照れくさくなって、俺は話題を変えた。

蘭「おれは仕事をするから、紅茶を入れて部屋に持って来てくれ」

美緒「わかりました」

 部屋にもどり、PCを立ち上げる。今日一日ゴタゴタしていて出来なかった、会社の業務の報告書に目を通し、指示のメールを打つ。
 おばあさまには、若狭が海外に出ることになったと適当な理由をつけて報告しないといけないな…。定期的なご機嫌伺いも、これからは俺がいかなければならない。あの人のことは本当に苦手だが、美緒を確実に手に入れるためにはそれも致し方ない。

☆☆☆☆☆
 数日後、若狭のとりあえずの移送先が決まった。
 若狭を移送するところを美緒には見せたくなかったので、少し離れた大きな町での買い物を頼んだ。
 篠崎の部下2人に付き添われ、手錠をかけられたままの若狭が離れから出て来た。
 日に当たらず、食欲もなかったのか、少しやつれて青白くなっている。これからどこに連れて行かれるのか分からず、不安そうだ。

若狭「兄さん。僕をどうする気?」

蘭「お前を預かってくれる人ができたので、頼むことにした。お前の荷物は、最終的な目的地が決まれば全部送り届けてやる。」

若狭「でも、その中には美緒ちゃんの写真は入ってないんだろ?」

蘭「当たり前だ」

若狭「美緒ちゃんは? お別れを言いたい」

蘭「買い物があったので、使いを頼んだ。いまは留守だ」

若狭「兄さん、ひどい! 美緒ちゃんを僕から取り上げた上に、お別れも言わせてくれないなんて!」

蘭「会えば、別れが辛くなるだけだ」

若狭「兄さんは鬼だ! 兄さんのことは一生許さない。」

蘭「ああ、好きにしろ」

 若狭は車に乗せられ、去っていった。ヒバリが鳴き、暖かな春の日差しが降り注ぐ田舎道を車はゆっくりと進んでいく。俺は車を豆粒のように小さくなるまで見送った。

 「あばよ! 俺の半身…。」小さく呟いた。

 庭の桜のつぼみが膨らんでいる。今年は桜が咲くのも、いつもより早いかもしれない。

蘭endで、若狭はどうなったか?おわり

☆☆☆☆☆

 玄関のチャイムが鳴っても、「若狭がいないから、自分が出ないと行けないのか?」と悶々としていたのと同一人物とは思えないような蘭です。ww
 とにかくヒロインを若狭から守り、自分のものにするという目的のためにはなりふりかまってはいられないわけですね。苦手なおばあさまの相手も自分がこれからはしなければ!!(若狭がいないので)と決心する蘭。なんか可愛い。
 蘭endの告白の中で、ヒロインの手を握って、「お前に触れるのはこれが初めてだったな…」と呟くシーンがある。
 ひと月の間何してたんだよ!と思ったけど、蘭にとってはいっぱいいっぱいだったんですね。ヒロインに触れるのを忘れるくらい。


☆☆☆☆☆

コメント