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インデックス 茶倉譲二ルート…茶倉譲二の小説の検索用インデックス。
インデックス ハルルートの譲二…ハルくんルートの茶倉譲二の小説の検索のためのインデックス。
手書きイラスト インデックス…自分で描いた乙女ゲームキャラのイラスト記事
他にも順次インデックスを作ってます。インデックスで探してみてね。
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10歳上の女性との恋愛。譲二さんはヒロインからみて年下の若い男性なんだけど、色気のある大人の男性で頼りがいも包容力もあるという、ものすごくおいしい男性になっちゃいました。
☆☆☆☆☆
譲二ルート以外のどれかのルートの譲二さん。
本編のヒロインは大学を卒業して就職、クロフネを出ている。
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年上の彼女~その1
〈奈実〉
とうとう譲二さんと恋人になった。
昼のデートはなかなか難しいけど、夕方からクロフネを訪ねて、一緒に食事をしたり、夜のデートに出かけたりした。
彼の部屋には私の着替えも置くようになって、時々は泊めてもらうこともある。
そんなデートで、エスニック風の雑貨屋さんに2人で立ち寄った時、可愛らしいビーズ細工の指輪を見つけた。
譲二さんがそれを私に買ってくれたので、店から出た後、私は半分冗談で、「左手の薬指にはめてちょうだい」と言った。
譲二さんは少し戸惑った顔をしたけど、
譲二「いいよ」
とはめてくれた。
譲二「でも、こんなのでなく、いつかもっとちゃんとしたのを買ってあげたいな」
でも、私はそれを本気にはとらなかった。
だって、いくら恋人にはなったとはいえ、10歳も年上の女性を本気で妻にするほど物好きではないだろうと思っていたから…。
彼はまだまだ若いのだから、もっと若い女性との出会いがあるに違いない。
だから…。
奈実「この指輪で十分」
ビーズの指輪の入った左手をそっと撫でた。
クロフネの厨房で食器の後片付けを手伝いながら、先のことが不安になる。
今はこうしていられても、10年、20年経った時、おばあちゃんを相手することになる譲二さんは後悔するんじゃないかと…。
その時のことを思うと涙が溢れそうになる。
私は慌てて目をしばたたかせて、涙を引っ込めた。
譲二さんが後ろから私を抱きしめる。
譲二「奈実。どうしたの? 悩みがあるなら俺に言ってよ…」
奈実「…」
譲二「それとも、俺では頼りにならない?」
奈実「そんなことないよ。私、譲二さんに頼り切ってるもん」
譲二「なら…、今なぜ泣きそうになったのか話してよ」
奈実「泣きそうになんかなってないよ…」
譲二さんは私の顔を覗き込んだ。
譲二「うそ。俺の目は誤魔化せないよ」
譲二さんは私の手を引いて、店のソファーのところに連れて来ると、いつものようにソファーに腰掛け、私を横向きに膝の上に乗せた。
こうすると私たちの顔はとても近くなって…私を見つめる譲二さんの目から逃れられなくなる。
今まで何度こうして、気持ちを白状させられたことだろう。
譲二「さあ、俺に話してみて?」
奈実「私、譲二さんより九つ上だから…譲二さんより早くおばあちゃんになっちゃうなって…」
譲二「うん」
奈実「それで、もっと先になった時、10年、20年経った時、譲二さんは私を恋人にしたことを後悔するんじゃないかって…」
譲二「…それで、悲しくなってしまったの?」
奈実「うん…なんか、言葉にするとバカみたいだね…」
譲二「そんなことないよ。言葉にしないと、奈実が何で悩んでいるのか俺には伝わらないからね」
譲二さんはそっと唇に軽いキスをした。
譲二「ねぇ、俺のこと…もっと信じてよ」
奈実「…」
譲二「自分で言うのもなんだけど…、俺は女(ひと)を一度好きになったら、そんなに簡単に気が変わったりしないよ。
他の女(ひと)に目移りしたりもしない。
奈実のこと、一生愛するって誓ってもいい」
譲二さんの心を信じていないわけじゃない。
でも、私を一生愛するなんて誓わせて、後で譲二さんが後悔することを恐れた。
だけど…、これ以上譲二さんを心配させてはだめ。私はにっこり微笑んだ。
奈実「ありがとう。譲二さんの気持ちはしっかり受け取ったよ」
譲二「そうか。…ならよかった」
しかし、譲二さんには私が無理に笑顔を作ったのを見透かされている気がした。
その夜、譲二さんに誘われてクロフネに泊まった。
譲二さんに優しく愛されながら、私はもうこの人から離れることはできないと、確信した。
例え、彼を失うのが怖さに無様な姿を晒したとしても、私は彼から離れることはできない。
その2へつづく
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年上の彼女~その2
〈譲二〉
奈実と恋人になった。
初めて会ったときから心引かれる女性だったから、恋人になれて俺は有頂天になった。
だが、彼女はどうなんだろう。
時々、心ここにあらずという時もあれば、静かに涙を流しているときもある。
最初は俺に強引に押し切られたのが不本意なのかなと心配したが、どうもそういうことではなさそうだ。
彼女は俺より9歳年上だということをひどく気にしている。
初めてあったときに、あんなにあっけらかんと自分の歳をバラした女性とは思えないくらいだ。
あの時は、俺は単に初めてあった男というのに過ぎなかったから、10歳差があっても気にならなかったのだろう。
しかし、今は…。恋人より9歳も年上というのが彼女の心に重くのしかかっているようだ。
俺はそんなことを気にしていないと何度も言って聞かせたが、彼女はもっと先のことを気にしていた。
彼女に10年先、20年先のことを言われた。
俺の気持ちは変わらないつもりだが、確かに彼女がいうように奈実が本当におばあさんのようになってしまっても、俺は彼女を愛せるだろうか?
今、俺が彼女を好きなのは、彼女の女性らしい愛らしさ、朗らかで気取らない性格、そして俺のことを一途に思ってくれる気持ち…そういうところがいいのだと思う。
そして、今、彼女が俺を失いたくなくて苦しんでいる気持ち、老いに対する恐怖で怯えている姿も愛しくてならない。
おばあさんのようになってしまった奈実というのは想像できないけど…、でもそうなった時は俺だっておじいさんになっているんじゃないだろうか?
俺だって奈実より9歳若いだけで、10年先、20年先には確実に歳をとっている。
それを彼女に分からせてあげたいけど…。
今はもう少しそっとしておこう。
その3へつづく
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年上の彼女~その3
〈奈実〉
譲二さんからメールではなく電話が入った。
譲二「ごめん、奈実。忙しい時に。今、大丈夫?」
奈実「うん、大丈夫だよ。何?」
譲二「デートの約束をしてあった今度の土曜日なんだけど…」
ああ、何か予定が入ったんだ…。残念だけど仕方が無い。夕方からだけでも会えるかもしれないし…。
譲二「クロフネで過ごすということでも、いいかな?」
奈実「え? 何かあるの?」
譲二「うん。それがね…」
譲二さんによると、例の10歳下の常連さんたちが譲二さんに恋人ができたことを知って、どうしても会わせろと言われたらしい。
譲二「この前の俺の誕生日、花とケーキを買ったろ?」
奈実「うん」
譲二「あの花屋とケーキ屋の息子がそれぞれメンバーにいてね。それで、他の奴らにも知れ渡ったらしい」
奈実「あちゃー、ごめんなさい」
譲二「いや、俺は平気なんだけど、奈実に申し訳なくて…。せっかくのデートの予定だったのに…」
奈実「私は大丈夫だよ。いつも話だけで聞いている元気な常連さんたちに私も会ってみたいし…」
譲二「よかった! あいつらみんな気のいい奴らだから…、奈実はきっと気に入ると思うよ」
〈譲二〉
奈実への電話を切った。
理人「マスター、彼女OKしてくれた?」
譲二「ああ、かまわないって言ってた」
百花「マスターの彼女に会えるなんて楽しみです」
竜蔵「ジョージにもやっと春がきたんだなぁ」
剛史「彼女とはどこまで進んでるんだ?」
譲二「さあ、それは想像にまかせるよ」
一護「それで、彼女との馴れ初めは?」
春樹「それは俺も是非聞きたい」
譲二「異業種交流会というのに参加しているんだけど、そこで知り合ったんだ。会のイベントを彼女と一緒にすることになって、それで親しくなった」
理人「ねぇねぇ、どっちから告白したの?」
一護「どうせ、マスターからちょっかい出したんだろ」
譲二「ちょっかいを出したわけじゃない。気が合っただけで…」
竜蔵「ジョージもすみに置けないな。」
百花「きれいな人なんですか? それとも可愛い系?」
譲二「うーん。どっちかな? 俺は可愛い系だと思うんだけど…。一応、大人の女性だから…」
剛史「大人の女性…」
理人「タケ兄が言うとなんかやらしい響きだね」
譲二「さあさあ、俺の彼女の話はそれぐらいにしといてくれる?どっちみち、土曜日には本人に会えるんだから…」
その4へつづく
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年上の彼女~その4
〈奈実〉
次の土曜日、昼前にクロフネを訪ねた。
奈実「こんにちは」
譲二「あ、いらっしゃい」
奈実「みんなは?」
譲二「まだ来てないよ…というか、あいつらには3時過ぎに奈実が来るからっていってある」
奈実「え? そうなんだ」
譲二さんは私を抱きしめて、額にキスをした。
譲二「だって、あいつらが来る前に奈実と2人だけで過ごしたいから…」
奈実「譲二さん…」
私も譲二さんを抱きしめる。
譲二「しばらくぶりだね…。会いたかったよ…」
奈実「私も…」
譲二さんはカウンターの椅子に座り、私は立ったままで何度もキスを繰り返した。
譲二「…ねぇ、ちょっと二階に行こうか?」
奈実「いいの?」
譲二「このままだと夜まで我慢できそうにない…」
ドアに鍵をかけると、私たちは二階に上がり、愛し合った。
☆☆☆☆☆
2時半すぎると、常連さんたちがボチボチ現れ始めた。
譲二さんは一人一人を私に紹介してくれる。
みんな譲二さんほどではないけど、背が高い。
百花ちゃんという女の子はとても可愛らしかった。若さが溢れて、肌も20代の子らしく輝いている。
(譲二さんはこの子のことが好きだったんだろうな…)
少しだけ嫉妬する。
譲二「あと来てないのは…リュウか」
春樹「もうそろそろ来るんじゃないかな。俺が店の前を通った時、もうすぐ行くって言ってたから…」
剛史「あ、来た」
チャイムがなって、譲二さんと変わらないくらい大きな人が現れた。
理人「リュウ兄、遅いよ!」
竜蔵「悪い悪い」
譲二「リュウも来たから改めて。こちらが明石奈実さん。俺の恋人」
譲二さんは『俺の恋人』という言葉をとても優しく発音してくれた。
奈実「初めまして。明石奈実です。皆さんのことはいつも譲二さんから聞かされてました。今日お会いできてとっても嬉しいです」
拍手が起こる。ピーピーという口笛も。
理人「マスターにはなんて口説かれたんですか? 痛い! いっちゃん、やめてよ」
一護「このエロガキ」
春樹「もう少し、デリカシーをもって尋ねようよ、初対面なんだから」
理人「じゃあ、どんな風に聞けばいいのさ? ハル君が聞いてよ」
春樹「ええっ、俺?」
剛史「マスターのどこが気に入ったんですか?」
奈実「優しくて、男らしいところかな」
理人「わぁ、直球」
一護「マスターは?」
譲二さんは私の答えで照れていたらしく、耳が少し赤い。
譲二「んー。可愛らしくて、その上気取りの無いところかな」
剛史「マスターとは9歳違いという噂がありますが…、上か下かどちらに違うんですか?」
譲二・春樹「タケ!」
私は思わず吹き出した。
誕生日のメッセージに自分から書いたのだから、これはバレてもしょうがない。
奈実「実は…私、譲二さんより年上なんです」
あちこちから「うそーっ!」「信じられない」という声が上がる。
剛史「マスターの方が老けてる」
みんなは私たちのために花束とパティシエの一護君が作ったというケーキを用意してくれていた。
譲二さんの手料理が運ばれて(今回は私も手伝った)、宴会が始まった。
その5へつづく
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年上の彼女~その5
〈奈実〉
話には聞いていたけれど、みんなのやり取りが本当に面白い。
そして、譲二さんはなんだかんだとみんなにからかわれているけど、みんなに慕われているのがよくわかった。
奈実「百花ちゃんて、高校、大学とここに下宿していたんですって?」
百花「ええ、マスターには本当にお世話になりました。
だから、マスターに素敵な恋人ができて嬉しく思ってます」
奈実「素敵な恋人だなんて、照れくさいな。
どっちかというと、私の方が素敵な恋人を捕まえたってところだし」
百花「明石さんて、きれいなのに面白いことをいいますよね?」
奈実「そうかな? それより名字じゃなくて奈実って呼んでもらってもいい?」
百花「奈美さん? いいんですか?」
奈実「うん。その方が年齢差を感じずに若いつもりでいられるから」
百花「奈美さんは十分若いですよ」
奈実「百花ちゃんも師匠に似てお世辞が上手ね」
百花「師匠ってマスターのことですか?」
奈実「そう。あなたたちみんな譲二さんの影響を結構受けてるなって思った」
私たちは顔を見合わせて笑った。
百花ちゃんはちょっとおっとりしたところがあって、可愛い。
さっき少し感じた嫉妬が消えて行くのを感じた。
私たちは譲二さんのあれやこれやをこっそりと情報交換した。
☆☆☆☆☆
夜もふけ、お開きになった。
譲二さんはまだ残っていたリュウくんとタケくんを追い出した。
奈実「そんなに手荒く追い立てなくても…」
譲二「あいつらが残っていたら、奈実と2人きりになれないじゃない」
譲二さんは私をしっかりと抱きしめた。
譲二「今日は俺の我がままに付き合ってくれてありがとう」
奈実「ううん。私もとても楽しかった。いいね、ああいう若い人たちと過ごすのって…」
譲二「奈実にそう言ってもらえてよかった…」
後はキスの微かな音だけがクロフネの店内に響いた。
『年上の彼女』おわり
続きは『思いがけないひと』です。
譲二「みなさん、こんにちは。『譲二の歴史散歩』の時間です。講師の茶倉譲二と」
百花「アシスタントの佐々木百花です」
譲二「今回、俺の好きな歴史のウンチクを初心者にも分かりやすく語ってくれってことなんだけど…」
竜蔵「よ! ジョージ! 俺は期待してるぞ!」
理人「リュウ兄、マスターを調子に乗せないでよ」
譲二「まず、初回は…うーん、江戸時代のファッションてことで何か質問はあるかな?」
剛史「はい!」
譲二「はい、タケ」
剛史「幕末ものの漫画を読んでていつも思うんだけど、なんでみんな前髪を剃ってるのかな?」
理人「そうそう、ちょんまげはまあいいとして、おでこの上に髪が無いのは不自然だよね」
竜蔵「え? あれ剃ってたのか? 俺はてっきり、江戸時代の人はみんなハゲてたのかと思ってたぜ」
春樹「リュウ兄、そんなわけないだろ」
譲二「はいはい、あれはね月代(さかやき)といって、わざわざ剃ってたものなんだ。
リュウの言うように薄くなってた人もいるとは思うけど、大半の人は手入れでああしてたんだからね」
一護「若いヤツがハゲてるわけないもんな」
譲二「元々は戦国武将が兜を被った時に頭が蒸れるので、それを避けるために頭頂部の髪を抜いたり剃ったりしていたものなんだ。
最初は戦いの時だけ髪を抜いてたらしいけど、戦国時代くらいからは日常的に剃るようになったらしい。
だから、最初は武士が実用としてしてたものなんだけど、江戸時代になると町人たちも『月代はかっこいい!』ってことで真似して流行って行ったものなんだ」
譲二「みんなもう髭の生える年だから分かると思うけどあんな状態に保つのはしょっちゅう剃ってないとできないから、みんな髪結いに通って月代を剃ってもらってたんだよ」
百花「マスターのお髭も手間と時間がかかってますものね」
譲二「うん、まあね」
竜蔵「ジョージ、その髭はそんなに手間がかかってんのか?」
剛史「鏡を眺めてうっとりするマスター」
理人「そんなことしてんの?」
譲二「いや、俺の髭の話はもういいから…」
☆☆☆☆☆
譲二「女性の髪型も身分や既婚、未婚で決まってたんだ。
それと化粧としておしろいとか変わったとこではお歯黒があるよね」
百花「歯が真っ黒なのは驚きますよね」
譲二「うん。現代人の俺たちには不気味に見えるけど、当時の人達に取ってはそれが色っぽいって思われてたらしいんだ…」
理人「うへぇ」
譲二「未婚の女性は眉もそらず歯も白いんだけど、既婚女性はお歯黒をし、子供を産むとさらに眉も剃ってたらしいね」
百花「剃るって細くですか?」
譲二「いや、全部そり落とすらしい」
一護「げ、不気味」
譲二「だから、江戸時代だったら、百花ちゃんも未婚の間は今と一緒なんだけど例えば俺と結婚したらお歯黒をつけて、子供が産まれると眉も全部そり落としてたわけだよね」
一護「マスター! なに寝言いってんだよ!」
春樹「ジョージさん、今さりげなく願望を混ぜましたね」
剛史「しかも、見事な佐々木のスルー」
譲二「ま、とにかく今日はここら辺で…。
また機会があったら第二回も楽しみにしててね」
一護「もうねーだろ」
剛史「一回こっきり」
譲二「シクシク」
竜蔵「ジョージ、俺は面白かったぞ。
江戸時代の人がみんなハゲだったわけじゃないってわかったし」
譲二「ありがとう、リュウ」
百花「というわけで、みなさんさようなら」
特別捜査密着24時の『妄想飛行~冗談は脳内だけにしろ~』で野村さんが言っていたこと
>>「9つも歳が違うと同じ学校に通うなんてことないしさ、妄想が膨らむよね」
>>「もう少し年齢が近かったら、こんなこともあったかな~っていう俺のロマンじゃーん」
みたいに譲二さんも妄想してたかな…と思ったらこんなお話が浮かびました。
なお、妄想の中の『マスター』は先代マスターです。
☆☆☆☆☆
【☆妄想中☆】
俺は茶倉譲二、高校二年生。
最近、俺の下宿先のクロフネという喫茶店の二階に、幼なじみの一つ年下の女の子が住むようになった。
新聞部の部長から言い渡された俺たち担当の記事。
部長「頑張ってる部を応援しようってことで、毎回2つづつ部を紹介してるんだけど。
今回は空手部と陸上部…。ジョージ、お前どっちも知り合いがいたよな?」
譲二「はい。空手はハルで陸上はタケ。どっちも一つ下の幼なじみです」
部長「なら、大丈夫だな。お前ら二人にまかせた」
譲二「わかりました」
百花「はい」
☆☆☆☆☆
二人でまず空手部が練習している武道場に向かう。
百花「ハルくんて強いみたいだね」
譲二「ああ。中学時代から全国大会にでてるから、高校でも期待されてるみたいだよ」
百花「ほんとに? すごい。ハルくんは頭もいいし、家の手伝いもしてるのに頑張ってるんだね。
幼なじみがそんなになってるなんて、なんだか嬉しい」
素直に喜んでいる百花ちゃんだが、俺はなんだか面白くない。
譲二「…」
部員がたくさんいて、ハルがどこにいるかはよくわからない。
同じクラスの空手部の部長に取材の挨拶をした。
部長「あ、ハル! 新聞部がお前の取材に来てるぞ!」
ハルが俺たちを見つけて駆け寄って来た。
春樹「佐々木! もしかして新聞部に入ったの?」
百花「うん。ジョージくんに誘われて」
春樹「そっか。佐々木に取材されるなんて、ちょっと緊張しちゃうな」
百花「えーっ。そんな、いつも通りに話してくれればいいのに。」
譲二「ハル…。俺のこと忘れてないか?」
春樹「ハハッ。ジョージさん、気のせいですよ。気のせい」
☆☆☆☆☆
百花「次は陸上部だから運動場だね」
譲二「百花ちゃん疲れてない? インタビューのメモを一人で書いてもらってごめんね」
百花「大丈夫ですよ。質問とかは全部譲二くんが考えて聞いてくれたし」
譲二「でも、合間で百花ちゃんが挟んだ質問が的確だったから、いい記事になると思うよ」
百花「私の質問が役にたったんだったらよかった」
ちょっと頬を染めて上目遣いでみる百花ちゃんの瞳はキラキラ輝いている。
俺は幸せな気持ちに満たされてにっこり微笑み返した。
☆☆☆☆☆
幸せな気持ちで食器を拭いていると、タケが声をかけた。
剛史「マスター。腹減った。なんか喰わせてくれ」
竜蔵「ジョージ。俺も、特製ランチがいいな」
剛史「俺はハニートーストがいい」
譲二「リュウもタケも…。それメニューにない料理だから…」
百花ちゃんはテーブルを拭きながら笑っている。
百花「でも、どっちも美味しそうですよね」
剛史「実際に美味しい」
理人「マスター、観念してどっちもメニューに載せたら?
どーせ裏メニューで知ってる人は知ってるんだから…」
春樹「メニューに載ったら注文する人も増えるだろうしね」
譲二「いや、店で出すとなるとそれなりに量を確保しないといけなくなるしね。
ハニートーストはともかく、特製ランチは仕込みに手間がかかるからな…」
百花「マスター一人で忙しかったら、私が少しでも手伝いますよ」
キラキラした瞳で百花ちゃんが微笑んでくれる。
あー。この笑顔がいいんだよなー。
譲二「今だって色々手伝ってもらって申し訳ないし…。
百花ちゃんは勉強だってあるんだから…」
百花「でも…マスターにはいつもお世話になってますし」
百花ちゃんと見つめ合う格好になった。
その時…。
チャイムの音がして、ドアが乱暴に開いた。
一護「百花!」
譲二「やあ、一護。いらっしゃい」
一護「今日は俺んちの店を手伝うって約束だったろ!
いつになったら来るんだよ!」
百花「ごめんなさい。
直ぐ出るつもりだったんだけど、クロフネが忙しそうだったから…」
理人「そうだよ。今日は珍しく忙しそうだった」
春樹「りっちゃん、フォローになってないよ…」
一護「とにかく、約束は約束だ。さっさと来い!」
百花「まって、いっちゃん…。
マスターごめんなさい。行ってきますね」
エプロンを外した百花ちゃんはいそいそと出かけて行った。
一護「全く…。なんで俺が迎えに来なきゃなんねぇんだよ…」
百花「ごめんね…」
二人が去った後を俺たちは呆然と眺めた。
春樹「…なんか…つむじ風みたいだったね」
理人「あーあ、またいっちゃんに百花ちゃん取られちゃった」
竜蔵「俺も今度百花に店の手伝い頼もうかな…」
理人「リュウ兄は無理だと思うよ」
竜蔵「なんでだ?」
百花ちゃん…。あの笑顔はなんだったんだ…。
妄想飛行~譲二の場合 その5へつづく
特別捜査密着24時の『妄想飛行~冗談は脳内だけにしろ~』で野村さんが言っていたこと
>>「9つも歳が違うと同じ学校に通うなんてことないしさ、妄想が膨らむよね」
>>「もう少し年齢が近かったら、こんなこともあったかな~っていう俺のロマンじゃーん」
みたいに譲二さんも妄想してたかな…と思ったらこんなお話が浮かびました。
なお、妄想の中の『マスター』は先代マスターです。
☆☆☆☆☆
妄想飛行~譲二の場合 その2よりつづき
【☆妄想中☆】
俺は茶倉譲二、高校二年生。
最近、俺の下宿先のクロフネという喫茶店の二階に幼なじみの一つ年下の女の子が住むようになった。
住んでいる所と学校が一緒だと、何かと行き帰りも一緒になる。
毎朝一緒にクロフネをでて、下駄箱のところで別れ、放課後は下駄箱で待ち伏せては一緒に帰ってくる。
今朝も二人で土手の道を並んで歩いている。
譲二「百花ちゃん、部活は何に入るかもう決めた?」
百花「ううん。いろいろと誘われて入るけど…。そういえば、譲二くんは部活に入ってないの?」
譲二「入ってないわけじゃないけどね…」
百花「でも、いつも私と帰っているよね…。もしかして私のために部を休んでるの?」
譲二「いや…、俺の部はそんなに忙しくないから…。
あのさ、もしまだ部活が決まってないなら…その…俺の部に見学に来ないか?」
百花「譲二くんの部? それは何部なの?」
軽く深呼吸した。
譲二「俺は新聞部に入ってるんだ。けど、今二年生は俺だけでね。
今年は一年生も入部してこなかったから、今の三年生が引退しちゃうと俺だけになってしまうんだ…」
そっと百花ちゃんの顔を覗き見る。
そんな廃部寸前の部には入れませんって言われるかな?
百花「それって、大変なことじゃない?」
譲二「え?」
百花「学校新聞を作るには色々することがあるんでしょう?」
譲二「うん、まあ」
百花「それなのに、一人で全部するなんて無理だよ。
新聞を作るなんて、私にできるかどうか分からないけど出来るだけ頑張ってみるね」
譲二「それって…新聞部に入ってくれるってこと?」
百花「譲二くんは入ってほしいんでしょ?」
譲二「え? ああ、もちろん。やった!」
百花「もっと早くに言ってくれればよかったのに…」
譲二「いや…。ほら、他に入りたい部とかあるかもって思ってさ」
☆☆☆☆☆
放課後、百花ちゃんを新聞部の部室に連れて行く。
3年生は男一人、女三人の四人。
部長に百花ちゃんを紹介すると小声で囁かれた。
部長「おい、譲二。結構可愛い子じゃないか。どっから見つけて来たんだ?」
譲二「俺の幼なじみで最近転校してきたんです。」
部長「で? お前の恋人なわけ?」
俺は慌てた。
譲二「何をいうんですか? いきなり。
恋人なんかじゃないですよ」
部長「なら、俺がモーションかけてもOK?」
譲二「ダメです!」
部長「即答だね」
部長はニヤリと笑った。
部長「俺たちはあと数ヶ月の命だから、二人で頑張れよ」
今の部長とのやり取りを百花ちゃんに聞かれていないか、そっと伺ってみる。
よかった。女子の先輩たちに囲まれて、色々聞かれている。
新人教育は次期部長である俺の仕事、ということで百花ちゃんと二人一組で取材に動くことになった。
あまりにも物事がうまく進みすぎて怖いくらいだ。
☆☆☆☆☆
妄想にふけっていると、いつものごとく、タケに声をかけられる。
剛史「マスター、今週のマンデーは?」
譲二「え? そこの棚にあるはずだよ。よく探してみて」
百花「マスター、さっき帰られたお客さんのテーブル。片付いてなかったのでここに置きますね。
布巾を出してくだされば拭いてきますよ」
譲二「あ、ありがとう。テーブルは俺が拭くよ」
春樹「この頃ジョージさん、何だかぼんやりしてるよね」
一護「この陽気で眠気でも増してるんじゃね?」
竜蔵「それはタケだろう」
剛史「俺は年中眠い…ああ、あった」
理人「そういやマスター、この間も幸せそうな顔で居眠りしてた」
百花「やっぱり陽気のせいなのかな?
そう言えばもうすぐマスターの誕生日だったよね」
春樹「ジョージさんを元気づけるために何かする?」
竜蔵「おお、それいいな」
理人「しーっ、リュウ兄声がでかいよ」
譲二「ん? 何がいいの?」
一護「何でもねーよ」
理人「マスターには関係ないことだよ。しばらくこっちに来ないでね」
譲二「えーっ! 俺だけ仲間はずれ?」
あーあ、時々こういうことがあるんだよね…。
まぁ、俺は大人だからあいつらと一緒に騒いじゃだめなんだけど…。でも、寂しい…。
まあ、いい…。
仕事しよう、仕事。
妄想飛行~譲二の場合 その4へつづく