譲二さんと毎日うふふ 妄想小説と乙女ゲーム

主に『吉祥寺恋色デイズ』の茶倉譲二の妄想小説

話数が多くなった小説は順次、インデックスにまとめてます。

小説を検索しやすくするためインデックスを作りました

インデックス 茶倉譲二ルート…茶倉譲二の小説の検索用インデックス。

インデックス ハルルートの譲二…ハルくんルートの茶倉譲二の小説の検索のためのインデックス。

手書きイラスト インデックス…自分で描いた乙女ゲームキャラのイラスト記事


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ひとつ屋根の下・もう一つの結末~その4~その5

2014-12-07 09:09:39 | ひとつ屋根の下

ひとつ屋根の下・金木犀or蟻地獄の後、もうひとつ別の結末になるストーリーを思いついたのでupします。
しつこくてすみません。

☆☆☆☆☆

俺:茶倉譲二
その妻
:茶倉宏子
その娘:森田友梨花
友梨花の同僚:八田竜蔵

☆☆☆☆☆
ひとつ屋根の下・もう一つの結末~その4

〈譲二〉

マナーモードにしてあった携帯を確かめる。

仕事の連絡事項ばかりか…。

この頃、友梨花からのメールはほとんど入らなくなった。

もちろん、俺がメールを出せば返信はくるのだが…。

彼女からの発信はほとんどない。


とうとう、愛想を尽かされたか…。

そりゃそうだよな。

ロコと離婚すると言いながらいつまでたっても離婚できないし、仕事が忙しくてほとんど恋人らしいことはできない。


それに…八田とかいうあの男の存在。

あいつとは職場が同じだから、友梨花は毎日顔を会わせている。

しかも友梨花のひとつ上で年も近い。


こんなんじゃ、あいつに勝てるわけはないな…。

ため息をついたとき、メールの着信音がした。友梨花からだ。


『今度の日曜日、できれば予定を空けてもらえませんか?
大切なお話があります

                           友梨花』


大切な話ってなんだろう? デートの誘い?

 なわけないか…それならそうと書くだろう。



俺は予定を調べてOKの返信をした。



☆☆☆☆☆

夜、ロコと夕食後の片付けをしていた。

宏子「ねぇ、友梨花から日曜日を空けろってメールが来た?」

譲二「え?」


なんで、ロコがそのことを知っているんだろう?


宏子「ふふっ、私にも来たのよ。同じメールが」


ロコは嬉しそうだ。


譲二「なんでだか知っているの?」

宏子「聞きたい?」

譲二「もったいぶらないでよ」

宏子「あのね。多分なんだけど…リュウくんも一緒よ」

譲二「それって…」

宏子「友梨花、リュウくんにプロポーズされたんだと思うの」


 その後はロコが何を言っているのかほとんど頭に入らなかった。




☆☆☆☆☆

次の日曜日、パリッとした背広姿のあの男が現れた。

いつもはジャージ姿だから、見違えるような男ぶりだ。

ニコニコと上機嫌なロコがアイツを家に上げた。

俺が入れたコーヒーは少し苦いものになってしまった。




ヤツはリビングのソファに友梨花と並んで座る。

恐縮しているのだろう…大きな身体が気の毒なくらい縮こまっている。

友梨花と年が近いだけあって並んだ姿はお似合いだったが、それは意地でも認めたくなかった。


宏子「リュウくん、そんなに緊張しないで…」

竜蔵「はあ、すみません。初めてなものですから…」

(プロポーズの挨拶に何度も来るヤツなんかいるわけないだろ)


友梨花「竜蔵さん?」


友梨花が目配せする。


竜蔵「お父さん! お母さん!」

突然の大声にロコが飛び上がる。

(だから、俺はお前の父親じゃないって)


竜蔵「ゆ、友梨花さんをオレ…じゃない…私にください!
 一生幸せにします。お願いします」

アイツがぺこりと頭を下げる。

友梨花も真っ赤になりながら一緒に頭をさげた。


宏子「きっと、そうだろうと思ってたのよ。ジョージとも話していたんだけど」

ロコはますます上機嫌だ。

友梨花がそっと上目遣いに俺を見つめた。

譲二「…二人が決めたことなら…、俺が言うことは何も無いよ」


自分で言いながら、顔が強ばっているのがわかる。

二人の結婚話はトントン拍子に進んだ。式の日取りは三ヶ月後の吉日に決まった。



☆☆☆☆☆

俺:茶倉譲二
その妻
:茶倉宏子
その娘:森田友梨花
友梨花の同僚:八田竜蔵

☆☆☆☆☆
ひとつ屋根の下・もう一つの結末~その5

〈譲二〉

今日は久しぶりに友梨花と二人だけで過ごす休日だ。

ロコを仕事に送り出した後、何となくまったり過ごしている。


譲二「友梨花ちゃん、今日はあの男とは会わないの?」

友梨花「竜蔵さん、今日は幼なじみの友達数人と遊びに行くんですって。独身最後だから色々連れ回されるみたい」

譲二「そっか…。こんな風に二人だけで過ごすのは久しぶりだね…」

友梨花「この頃お休みの日はいつも竜蔵さんと出かけていたから…」


 最後に友梨花と二人だけで過ごしたのはいつだっただろう?

 少なくともその時には友梨花を他の男に取られてしまうとは思ってなかった。


譲二「友梨花ちゃん…。その…あの男とはもう寝たのか?」


 友梨花は頬を少し染めて頷いた。


友梨花「うん…。三回目のデートの時に…」

譲二「そっか…」


 本当の父親もこんな気持ちなんだろうか?

 あの野郎、一発殴ってやりたい。


友梨花「譲二さん…」

譲二「何?」

友梨花「怒ってる?」

譲二「…なんで?」

友梨花「だって…。私はずっと前に譲二さんのものだって約束したのに…」

譲二「そんなの…。俺は最初から友梨花ちゃんを守る資格はなかったんだから…」


 二人で見つめ合う。


譲二「友梨花ちゃんが幸せになるのが一番大切だろ?」

友梨花「譲二さん…」

譲二「ん?」


 友梨花が俺に抱きついた。


譲二「こらこら、婚約者のいる女の子が他の男にそんなことしちゃだめだろ?」


掠れた声で友梨花が呟く。


友梨花「…いて、」

譲二「え?」

友梨花「抱いて…。最後にもう一度だけ…」


 俺は驚いて友梨花を見つめた。


譲二「そんなこと…。本気にしちゃうよ」

友梨花「本気だもん。譲二さんにもう一度だけ抱いて欲しい」



☆☆☆☆☆

彼女の全身、身体の一つ一つにキスをしていく。

それは友梨花の身体への別れのキス。丹念に…、優しく。

友梨花は潤んだ瞳で俺を見つめた。


友梨花「譲二さん…、お願い。あなたが欲しいの…」


 俺はじらすように優しく彼女の腰に口づけをふらせた。


譲二「これが…最後だから…。ゆっくりと…楽しみたい」


 友梨花は身悶えした。


友梨花「…譲二さんの意地悪」

友梨花は美しかった。

初めて彼女を抱いた時、他の男には絶対に渡すまいと誓ったことを悲しく思い出した。



(愛しているよ)

そう言いそうになっては、唇を噛み締める。

今更そんなことを言われても、友梨花が困るだけだろう。




☆☆☆☆☆


涙を浮かべて横たわる友梨花にそっとキスした。


友梨花「私、今日のことずっと忘れない…」


そう言ってもらえるのは嬉しいけど…。


譲二「そんなこと言っても、あの男と二人で暮らし始めたら俺のことなんか直ぐに忘れられるさ…。それに…それでいいんだ」

友梨花「譲二さん…」


二人でしっかりと抱き合った。


友梨花「譲二さんは…竜蔵さんのことを『あの男』としか呼ばないんだね」

譲二「憎い恋敵だからね」


 ちょっとおどけたように言った。


譲二「俺から友梨花ちゃんを搔っ攫っていったヤツだから」

 友梨花は俺の胸に顔を埋めた。その髪を優しく撫でる。

 できることなら、いつまでもそうしていたかった。




☆☆☆☆☆


 結婚式も披露宴もどんどん進んであっという間に終わった。

 花嫁の両親というのは、しなければならないことがたくさんあって、悲しみに浸る余裕はなかった。

 スーツに着替えた友梨花は俺たちに挨拶するとあの男と一緒に二次会に出かけた。

 一日休んだ後は学校があるから、ハネムーンは春休みに行くことになるという。




☆☆☆☆☆



 バスローブを着たロコが風呂上がりの髪を拭いている。


宏子「ジョージ、お先に。あなたもお風呂に入って来たら?」

譲二「ああ、ありがとう。でも、これを飲んでからね」


 焼酎のお湯割りのグラスを持ち上げる。


宏子「わぁ、梅干し入り? 私ももらおうかな」


 ロコは勝手に俺のグラスに口をつける。


譲二「おい、俺用だからきついぞ」

宏子「いいの、いいの。今夜は酔いたい気分だから…ジョージもでしょ?」

譲二「ああ…」

宏子「いい式だったわね…」

譲二「そうだね…」

宏子「…ジョージ、ごめんなさい」

譲二「なにが?」

宏子「最初にリュウくんがうちに来た時、家に上げたのはこうなって欲しかったからなんだ…」

譲二「そっか…」

宏子「他にも…、二人をくっつけるために色々した…」

譲二「うん…知ってるよ」

宏子「え? うそ?」

譲二「それぐらいわかるさ…」

 ロコを抱き寄せ、耳元で囁いた。

譲二「俺たち夫婦なんだぜ」

宏子「私、あなたと友梨花の…」

譲二「ロコ!」


 ロコの言葉を遮った。


譲二「それは言わない約束だったろ」


 ロコは俺と友梨花の仲を知っている。だけど、それをはっきり口に出して言ったことはなかった。


譲二「友梨花ちゃんはもう…竜蔵くんの妻なんだ…」

宏子「それでいいの?」

譲二「いいもなにも…。俺は彼女の義理の父親でしかない」

宏子「ジョージ…」

譲二「ロコ…、泣くなよ…」

 ロコの目から溢れる涙をそっと口づけで吸った。


☆☆☆☆☆


安らかな寝息をたてるロコの隣で、俺は目が冴えて眠れなかった。

寝返りをうって目をつむる。




さようなら、友梨花。

俺の永遠の恋人。



ひとつ屋根の下・もう一つの結末』おわり

コメント

ひとつ屋根の下・もう一つの結末~その1~その3

2014-12-06 09:48:35 | ひとつ屋根の下

ひとつ屋根の下・金木犀or蟻地獄の後、もうひとつ別の結末になるストーリーを思いついたのでupします。
しつこくてすみません。

☆☆☆☆☆

私:森田友梨花
母:茶倉宏子
その夫:茶倉
譲二


☆☆☆☆☆
ひとつ屋根の下・もう一つの結末~その1

〈友梨花〉

スタッフ「式場内に入るタイミングは合図を出しますので、少々お待ちください」


 譲二さんがとても愛しい目でウエディングドレス姿の私を見つめる。


譲二「友梨花ちゃん…とてもきれいだよ…」

友梨花「惚れ直した?」


 ちょっと意地悪な質問だったかもしれない。

 譲二さんは少し悲しそうに微笑んだ。


譲二「ああ…。だから…ちゃんと友梨花ちゃんを花婿のところに届けないとね」

スタッフ「どうぞお入りください」

譲二「さあ、どうぞお嬢さん」


 譲二さんが腕を出してくれる。

 私はその腕に掴まった。


 式場のドアが開き、大きな祝福の拍手が起こる。


 私は譲二さんと一緒にバージンロードを歩いていく…。




 その先に待っていたのは、誇らしげに頬を染めて立つ竜蔵さんだ。



☆☆☆☆☆

譲二さんと結ばれた後…。

譲二
「こうなった以上、きちんとケジメをつけるようにする」

 譲二さんはそういってくれたけど…。お母さんとの離婚の話し合いは上手くいっていないみたいだ…。

 むしろ、前より二人は仲良くなっているように見える。

 私たちの間のことを隠すため? とも思ったけど、二人でいるときのお母さんも譲二さんも本当に楽しそう。

 もちろん、私と二人だけで過ごす時間には、譲二さんは甘く優しく私を扱ってくれる。

 そして…、ベッドの中でも…。

 思い出しただけで真っ赤になってしまう。

 それは週に一度だけのことだけど…、譲二さんに少しずついろんなことを教えてもらってる。



☆☆☆☆☆

 それから3年が経った。

 大学卒業後、私は養護教諭として働くようになった。今年は地元の高校に通っている。

 その高校は普通科で、ほとんどの教諭は男性だ。女性はほんの数人で私以外はみんな既婚者だ。

 だからなのか男性教諭みんなから優しくされている気がする。特に保健体育の八田先生は私のひとつ上なんだけど、何かと言っては保健室に現れる。

 そんな八田先生のことは嫌いではない。

 嫌いではないけど…。

 私は今、譲二さんとのことで悩んでいて、八田先生のことを考える余裕はなかった。

 譲二さんとは、この頃あまり話せていない。

 もちろん一緒に住んでいるのだから毎日顔を合わせている。

 挨拶や通り一遍の話はいつもしているけど、恋人らしいことはほとんどできていない。

 これはお母さんの職場に人が足りて、お母さんが夜勤をしなくなったためだ。

 朝は私が一番早く出るし、譲二さんも仕事が忙しいみたいで、夜は帰って来るのが遅い。

 土日はお母さんが出勤の日もあるけど、譲二さんも忙しくて土日に休めないことの方が多い。

 だから今は一緒に暮らしているのに、メールでの愛の囁きが唯一のつながりになっている。


 今も譲二さんからのメールが入った。

『大好きな友梨花ちゃん



来週の月曜日は学校行事の振替で休みだって言ってたね?

俺も休みがなんとか取れそうだから、久しぶりにデートしない?

外で待ち合わせて、夕方、いや夜まで二人でゆっくり過ごそう。

                    譲二』


譲二さんとのデート。一月半ぶりだ。

私は喜々としてOKの返信を送った。




☆☆☆☆☆

譲二さんと一緒に映画を観て、食事をして、今はホテルのベッドの上だ。


譲二「友梨花ちゃんのこと、ずっと相手にしてあげられてなくてごめんね」

友梨花「ちょっと寂しかった」

 私は譲二さんの胸にしがみついた。

譲二「こら…。そんなことしたら、また欲しくなっちゃうだろ? 帰る時間がまた遅くなってしまう…」

 譲二さんは深く何度もキスしてくれた。

譲二「だけど…、本当に俺たち、このままじゃだめだな」

友梨花「どういうこと?」

譲二「ロコと離婚しない限り、友梨花ちゃんと本当の恋人になることはできない…」

友梨花「お母さんには…切り出せないの?」

譲二「ああ…。というより、ごめん。ロコは俺たちのことを薄々知っている」

友梨花「うそ! だって、そんなそぶりは…」

譲二「最初に離婚を切り出そうとした時に言われた…『あなたたちのことなんて、全てお見通しよ!』って…」

友梨花「それじゃあ、お母さんは私たちのことを知ってるくせに知らんぷりしてるってこと?」

譲二「ああ。そして、俺の話もまともに聞いてはもらえてない…。
俺は以前ロコに『一生君を守る』って誓ってしまってるからね…。
いつもそこを突かれて何も言えなくなってしまう…」

友梨花「そんな…。それじゃ絶対にお母さんとは離婚できないんじゃ」

譲二「ごめん…。ちょっ…、友梨花ちゃん泣かないで…」

譲二さんが私を抱きしめて慰めてくれる…。

ここ最近ずっと苛まれて来た不安もあって、涙は後から後から溢れてくる…。

優しい譲二さんの腕に抱かれながら、私は激しく泣きじゃくった。



その2へ続く


☆☆☆☆☆

吉恋の結婚式の場合、新郎としての譲二さんとメンバーを祝う客としての譲二さん、二つのパターンがありますよね。

でも、この「もしもの話」のルートを考えてたら、もう一つの譲二さんのストーリーが浮かんで来たんです。
すなわち、新婦の父親としての譲二さん。もちろん義理で、ヒロインの恋人なんだけど、悲しい気持ちを抑えたまま、新郎にヒロインを手渡す父親役としての譲二さんというのがありうるな…と。

だから、時計の針を戻して、ヒロインと結ばれた後にヒロインに求婚する相手が現れたら…というところから話を作りました。


なぜ、リュウ兄かというと、他のメンバーだとヒロインと譲二さんが恋人同士だってことを遅かれ早かれ気づくと思うんですよね。
それをふまえてのストーリーでもよかったんですが、今回は二人が恋人同士というのはバレないままの展開にしてみました。
リュウ兄なら茶倉家の事情なんかお構いなしにガンガンヒロインに迫ってもらえると思うんですよね。
『ハートを守れ! 大作戦』の八田刑事をイメージしてみました。
愚直でおっちょこちょいだけど、ヒロインへの好意をストレートに出してくる男性というような。


☆☆☆☆☆

私:森田友梨花
母:茶倉宏子
その夫:茶倉
譲二
私の同僚:八田竜蔵

☆☆☆☆☆
ひとつ屋根の下・もう一つの結末~その2

〈友梨花〉

文化祭の準備に学校全体が謀殺されている。

浮かれた生徒が羽目を外さないように先生方は気を配っている。

準備中思わぬ怪我をする生徒もいるので、私も帰るのが遅くなってしまう。


竜蔵「森田先生。送っていくよ」

友梨花「大丈夫ですよ、八田先生。慣れていますから」

竜蔵「その…、なんだ。暗い夜道は危険だからな。俺にまかせとけ」


 夏場だから暗い夜道とは程遠いのに、ちょっと強引な八田先生に送られて家に帰る。


八田先生は気取りがなくて一緒にいると落ち着ける。

並んで歩くと、とても背が高いので上から声がふってくる。

(そう言えば、八田先生って譲二さんと同じくらいの身長だよね)



☆☆☆☆☆

 結局、玄関先まで送ってもらうことになった。


友梨花「ありがとうございました」

竜蔵「おう。大した手間じゃないから…。その…森田先生…、よかったら俺と…」

宏子「あら、友梨花。男の人と一緒なんて珍しいわね」

友梨花「お母さん…」


 私は八田先生を紹介した。


宏子「あらまあ、わざわざ送ってくださるなんてありがとうございます。
よかったらお茶でも飲んでいきません? 」

竜蔵「いや、俺は…その…」


 お母さんは恐縮する八田先生を強引に家の中に引き入れた。


譲二「おかえり、ロコ。遅かったね。ご飯はもうできてるよ。すぐに用意するから待ってて…。
あ、友梨花ちゃんもお帰り…。ってその人は…」


 譲二さんは八田先生を訝しげな表情でみた。


宏子「友梨花の同僚の八田先生。保健体育の先生なんですって…。
仕事が遅くなったからって、わざわざ友梨花を送ってくださったの…」


☆☆☆☆☆

 結局、4人で晩ご飯を食べることになった。



 いったいお母さんはどういうつもりなんだろう?

困惑しながらもそつなく会話をこなす譲二さん。

戸惑いながらも豪快に料理を平らげていく八田先生。

八田先生を調子に乗せて色々と先生のことを聞き出している上機嫌なお母さん。

私は、そんな三人を観察しながら黙々とご飯を食べた。


 その日から、私を送るという名目で八田先生はうちを訪れて、週に2、3回は晩ご飯を一緒に食べるようになった。



☆☆☆☆☆

 今日は土曜日。珍しくお母さんだけが仕事で、私と譲二さんは休みで家にいる。

二人で朝食の後片付けをしながらおしゃべりをしている。
 
こんな風に過ごすのも久しぶりだ。


譲二「友梨花ちゃん、コーヒーを入れるから座って待ってて」

友梨花「それじゃ、マグカップを用意するね」


 譲二さんの入れたコーヒーを前に二人で座る。どちらからともなくキスを求め合った。


譲二「ねぇ…、あの八田先生のことなんだけど…」


 意を決したように譲二さんが話を切り出した。


友梨花「気になる?」

譲二「うん…。彼は…友梨花ちゃんのことが大好きみたいだから…」

友梨花「…そうみたいだね」

譲二「…友梨花ちゃんも彼のことが好きなの?」

友梨花「嫌いじゃないよ…。元気で明るくて…。気を使わなくてもいいし。
時々意表をつくようなことを言ったりしたりして、びっくりするけど…」

譲二「…そっかぁ…。とうとう現れたか…」

友梨花「何?」

譲二「俺のライバル…」

友梨花「彼は譲二さんのライバルになんかならないよ…。だって譲二さんは特別なんだもの」

譲二「ありがとう…。でも俺は表立っては友梨花ちゃんの恋人にはなってあげられない…」

友梨花「だって…、だって譲二さんはお母さんと別れて私と一緒になってくれるんじゃ…」

譲二「ごめん。そのことだけど…」


譲二さんは苦しそうに、また言い訳を始める。

譲二さんは優しすぎるのだ。

私のことが一番好きといいながら、お母さんに冷たくすることはできない。

お母さんが私たちのことに気づいていると聞いて分かったのだけど、私の前で二人がいちゃいちゃするのもお母さんが譲二さんをうまく操って私に見せつけているんだろう。

女としての経験ではお母さんにはとても勝てない。




☆☆☆☆☆

俺:茶倉譲二
その妻
:茶倉宏子
その娘:森田友梨花
友梨花の同僚:八田竜蔵

☆☆☆☆☆
ひとつ屋根の下・もう一つの結末~その3

〈譲二〉

譲二「ただいま」

玄関を開けると男物の靴が一足脱いであった。

奥からは楽しそうなロコの笑い声が聞こえる。

またあの男が来てるんだな…。

俺は暗い気持ちでリビングに顔を出した。



あの男というのは、友梨花の勤め先の学校の先生で八田竜蔵とかいう男だ。

友梨花を送ると言う名目で我が家に入り浸っている。

あの男のことは友梨花が、というよりロコがたいそう気に入っていて、「リュウくん、リュウくん」と可愛がっている。

そりゃ気にいるよな。

初めて友梨花にできた男友達で、友梨花のことを恋人にしようとしている男なんだから…。

あいつが友梨花と付き合うようになれば、俺から友梨花を引きはがすことができる。



宏子「そうなんだ。今は体育祭の準備で大変なのね」

竜蔵「はい。特にうちのクラスは張り切ってるんで、怪我も多くって…。
それで友梨花さんにも随分とお世話になってます」

(おいおい、もう友梨花のこと、下の名前で呼んでるのかよ)



友梨花「今回は、運営のほとんどが竜蔵さんにまかされているから大変なのよね」

(えーっ、友梨花まであいつのことを名前で呼ぶようになったのか…)



黙って突っ立っている俺に気づいたロコがニコニコしながら近づいてくる。


宏子「ジョージ、お帰りなさい」

友梨花「お帰りなさい」

竜蔵「お父さん、お邪魔しています」

(その『お父さん』というの止めてくれないかな…。急に老けた気がする)


譲二「やぁ、いらっしゃい。ゆっくりして行ってね。俺はちょっと着替えてくるね」


 最後の言葉はロコに言う。

 ロコはしゃべりながら寝室まで付いて来た。

宏子「あのね、リュウくんの実家は八百屋さんなんですって。
それで、今日はたくさんお野菜を持って来てくれたのよ。
野菜の保存方法とか、料理方法とか、お野菜のことにすごく詳しいの」

譲二「そう…」

宏子「ねぇねぇ…。何怒ってるの?」

 下から覗き込んでくるロコの顔があまりにも可愛らしくて、微笑んでしまう。

譲二「怒ってなんか無いさ…。ちょっと疲れてるだけだよ…」

宏子「大丈夫? ご飯の前にお風呂にでも入ってくる?」

譲二「いや…。お腹も空いてるし、ご飯でいいよ。それより…」

 ロコを抱きしめてキスをする。

 ロコは恋人時代から16歳下の俺と付き合うために若作りしていたが、ここ数ヶ月以前より若返った気がする。

ハツラツとしてるというか…。

肌の張りも色つやも実際のところよくなってるんだよな…。

 時々抱いている俺にはわかる。

 ロコは今年51歳になるんだけど…、とてもそうは見えない。

 40代前半といっても通るだろう…。

 20代の娘と競い合っているから? …まさかね。



☆☆☆☆☆

 家では差し障りのないことしか話せないから、デートの誘いはもっぱらメールですることになる。


『今度の日曜日、久しぶりに休みがとれそうなんだ。
ロコも休みだけど、それぞれ別に外出して外でデートしない?

                                                  譲二』


『ごめんなさい。
その日はお母さんと八田先生と一緒に午後から狂言の公演に行く約束になってるの。
お母さんが招待券を三枚もらってきて、八田先生にもあげたみたいで…。
もう約束してしまったので、ごめんなさい。

                  友梨花』


返信メールを見てため息をついた。

ロコとあの男と三人か…。一応、保護者付きではあるけど…。

以前なら、俺の誘いにはスケジュールをキャンセルしてでも付き合ってくれたのに…。



その4へ続く

コメント

ひとつ屋根の下・明里

2014-11-25 09:06:54 | ひとつ屋根の下

 私が考えた譲二さんの危ない『ひとつ屋根の下ストーリー』。前回で一応完結はみたのですが、おまけとして明里さん目線からのお話を書きました。
 そして、本編の明里さんにも通用する明里さんの譲二さんへの本音も盛り込んでみました。

☆☆☆☆☆

私:泉堂明里(あかり)
茶倉譲二…私の幼なじみで元婚約者


☆☆☆☆☆
ひとつ屋根の下・明里~その1

 若い頃からお世話になっていた方が亡くなった。

 この方は名前を口にすれば大抵の人が知っている会社の会長で、父の仕事関係の知り合いでもあったから、子供の頃から「おじさま、おじさま」と言って懐いて親しくしていた方だった。

 その葬儀で偶然、譲二に会った。

 譲二はあの茶堂院グループのオーナー一族、茶倉家の次男で私の元婚約者でもある。

 その譲二自体も一ヶ月ほど前に奥さんを亡くしていた。

 その葬儀にも出席したが、一通りの会話を交わしただけだったから、私は譲二をお茶に誘った。

 色々と、ちまたで噂されている譲二の家庭内のことなど、真偽を確かめたいと思っていたからだった。

 譲二は少し考えたが、「ま、なんとか調整できるだろう…」と言って私の誘いに乗ってくれた。



☆☆☆☆☆

明里「久しぶりね、譲二とこんな風におしゃべりするの」

譲二「そうだな。この間は家内の葬儀に参列してくれてありがとう。
あの時は気も動転してたから、ちゃんとお礼も言えなくてごめん」


 譲二の奥さんはなんと譲二よりも16歳年上で再婚だった。

 そもそも、なんでそんな年増女にひっかかったのだろう?

 私が手ひどく振ったから、同年代の女性は怖くなったとか…。


明里「奥様は認知症だったそうね」

譲二「ああ、葬儀の挨拶の時にもちょっと言ったけど、若年性のアルツハイマーでね。
最後は俺のことも忘れてた…」

明里「え? 自分の主人のことまで? 」

譲二「ああ、知ってるかもしれないけど、ロコは前の夫を事故で亡くしていてね。
昔の記憶はずっと残ってて、俺のことは前の夫だと思ってたみたいだ…」


 うわ、それはかなりキツい。私なら耐えられないわ。


明里「ところで…。その奥様の連れ子と同棲してるって本当?」

譲二「友梨花ちゃんのこと?
友梨花ちゃんとは…一緒に暮らしているか?って聞かれたら一緒に暮らしているよ。
…そもそも、ロコと結婚した時からずっと一緒に暮らして来たからね」

明里「それなら、その子を愛人にしてるとかなんとかいう噂は嘘なわけ?」

譲二「…。相変わらず、単刀直入だな、明里は…」

明里「はぐらかさないでよ。その辺どうなってるの?」

 譲二はため息をついた。

譲二「来月、ロコの四十九日が済んだら、入籍しようと思ってる…」

明里「やっぱり、手を出してたのね?」

譲二「そういわれると身も蓋もないけど。ロコも友梨花ちゃんも、どっちも俺にとっては大切な女性だから」

明里「どうせ、その二人とも向こうから言いよられたんでしょ?」

譲二「…当たらずとも遠からずっていうのが、情けないな…。
明里にはすべてお見通しか…」

明里「だって、譲二が子持ちの未亡人を誘惑したり、連れ子の女の子を襲ったりなんて、絶対想像できないもん」

譲二「誘惑はともかく、襲うってなんだよ、襲うって…。
俺、そんなことしないよ」

明里「わかってるわよ。だから想像できないって言ってるじゃない」

 私は思わず吹き出した。

譲二「笑うなよ」


 譲二は照れたように言った。

 こんな風にからかいがいのあるとこ、ホント昔と変わってないなぁ。


明里「それぞれから言いよられて、どっちもちゃんと断れずにずるずる付き合ってたわけね?」

譲二「なんかその言い方だと、優柔不断で不甲斐ない男みたいだな…俺」

明里「だってそうなんでしょ?」

譲二「まあな…」

明里「それで…、その子はいくつなの?」

譲二「俺より10歳下」

明里「それなら43歳か…。もう子供は無理ね…。経産婦じゃないなら」

譲二「ああ、彼女には申し訳ないことをしたと思ってる…。
本当はもっと前にロコと離婚しようと思ってたんだ」

明里「でも、譲二のことだから、奥様を冷たく切り捨てることは出来なかったわけね」


 ヤレヤレと思った。

 その子と付き合うようになってからも、どうせ奥さんのことも、とても大切にしていたに違いない。


 全く…人間の本質というのは大人になっても、年をとっても変わらないものらしい。


 私はまたクスリと笑った。


譲二「なんだよ」

明里「譲二は昔と変わらないなぁと思って…」

譲二「どうせ俺は成長してないよ」

明里「拗ねないの。誉めてるんだから。
夫とするには最高の人だなぁって」

譲二「俺をすげなくふったお前に言われてもね…」

明里「ほんと…。なんで私、譲二をふったのかしらね?」

譲二「それ、俺に聞かれてもね…。
でも…、なんでなの? 俺も一応知りたい」

☆☆☆☆☆
ひとつ屋根の下・明里~その2

 なぜ、私は譲二をふったんだろう?

明里「譲二のルックスは別に嫌いじゃないし…。
一緒にいると落ち着けるし、こんな風におしゃべりするのは楽しいし…。
あそこまで嫌ったのはなぜかしら?」

譲二「こっちが聞きたいくらいだよ。それで、理由はないの?」

明里「敢えて言うなら…。親が決めた婚約者だったからかな?」

譲二「それだけ?」


 あっけにとられたような譲二の顔が可笑しい。


明里「結婚相手を親に決められたってだけで我慢できなかったから…。
婚約者としてじゃなくて、普通に学校かなにかで知り合ってたら好きになってたかもね」

譲二「え?」

明里「家はライバル企業同士だし、付き合うのを反対されてたら、どうしても結婚したくて駆け落ちくらいしたかも…。
ロミオとジュリエットみたいに」

譲二「なんだよ、それ」

明里「だけど実際は、無理矢理親に決められた婚約者がなんだかんだとモーションかけてくるから、これは全力で逃げなきゃって思うよね」


 譲二は情けなさそうな顔をした。


譲二「結局、俺が明里を好きな気持ちを見せずに、冷たく扱ってたら好きになってくれたかもしれないってこと?」

明里「まぁね」

 譲二がため息をつく。

明里「でも、いいじゃない。
私に振られたお陰で好きな女性が二人もできて」

譲二「おまえには言われたくない」


 譲二は苦笑したが、何かに気づいたようでちょっと真面目な顔になった。



譲二「だけど、実のところ、明里に振られたのが、ロコと知り合うきっかけになったんだ」

明里「それはどういうこと?」

譲二「俺が中学時代、幼稚園児の友梨花ちゃんとは公園で時々顔をあわせて遊んだりしてたんだ」

明里「そうだったんだ…」

譲二「お前に振られた日、その公園で落ち込んでいると、ロコと友梨花ちゃんに会った。
俺が雨でずぶぬれになってたから、心配したロコが家に連れて行ってくれたんだ」

明里「もしかして、その時から好きになったの?」

譲二「まさか…。
でも、ロコは失恋の相談にのってくれて。メアドを交換して。
それからはいつも俺が相談に乗ってもらう側だったんだけど、ロコのご主人が亡くなったとき、それが逆転した」

明里「そうなんだ」


 私が譲二をふったことが二人を引き合わせるきっかけになったなんて…、なんだか不思議な気がした。

 譲二は少し苦しそうな顔をした。


譲二「今年は…俺たちの銀婚式だったんだ…」

明里「結婚してもう25年にもなるのね」

譲二「恋人時代から数えたらもっと長いけどね」

 譲二はとても辛そうにつぶやいた。

明里「譲二…。あなた、奥様のこと本当に愛してたのね」

譲二「当たり前だろ…。結婚生活の後半は色々あったけど…。
楽しい思い出もたくさんある。
友梨花ちゃんのことを好きになったからと言って、ロコのことを簡単に捨てることはできなかった」



 譲二の表情は苦渋に満ちていた。

 誠実に生きようとするあまり、自ら苦しい道を選んでしまった譲二。



明里「でも、これからはその友梨花さんと一緒に生きて行くんでしょ?
 大切にしてあげてね」

譲二「もちろん。今までを取り戻すつもりで大切にするよ」

明里「言うまでもなかったわね…。
あら、もうこんな時間。そろそろ帰らないと…」

譲二「車で送って行こうか?」

明里「ううん。電車で帰るから。譲二も仕事があるんでしょ?」

譲二「ああ。あ、会計は俺がだすよ」

明里「じゃあ、お言葉に甘えて。ごちそうさま」





 譲二と別れて家路をたどる。


 私も大概ドラマチックな人生を歩んで来たと思うけど…。

 譲二の人生もそれに負けないわね。

 ううん、むしろそれ以上かな…。



 心の中でそっとつぶやく。

 友梨花さんと一緒に…、どうぞお幸せにね。


ひとつ屋根の下・明里』おわり


☆☆☆☆☆

明里さん、譲二さんと決して相性は悪くないと思うんだよね。

譲二さんが嫌われてふられたのは、譲二さんがどうこうじゃなくて、親が決めた婚約者だったからだと思う。

本文にも書いたけど、普通にクラスメートとして知り合っていたら、譲二さんのことは普通に好きになってたんじゃないかな。

そして、二人が恋人同士になるという展開もあり得なくはない。

それが譲二さんにとって幸せかどうかはともかく。



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ひとつ屋根の下・星霜(せいそう)

2014-11-21 09:15:47 | ひとつ屋根の下

番外編『ひとつ屋根の下ストーリー』で思いついた譲二さんの危ないストーリー。

>>お母さんが10何歳下の男性と再婚して、その義父が譲二さんとか。

これを『ひとつ屋根の下・母の夫』『ひとつ屋根の下・妻の娘』として妄想した、その後の話です。

☆☆☆☆☆

私:森田友梨花
母:茶倉宏子

その夫:茶倉譲二…母より16歳下、私より10歳上


せい‐そう〔‐サウ〕【星霜】

  (星は1年に天を1周し、霜は毎年降るところから。)としつき。歳月。「―ここに幾十年」「幾―を経る」

「デジタル大辞泉」より  




☆☆☆☆☆
ひとつ屋根の下・星霜(せいそう)~その1

 お母さんの葬儀が終わった。

 葬儀にはお母さんの元同僚の人たちも何人か来てくれたが、参列者のほとんどが譲二さんの仕事関係の人達だった。

 覚悟はしていたが、事前の予想よりも遥かに多くの参列者が来てくれて、斎場の中だけでは収まらず、ロビーに臨時の椅子を並べる騒ぎとなった。

 元気な頃のお母さんなら、この様子を見てきっと面白がったに違いない。

『あら、ほとんどの人達は私のことなんか知らないのにね』

とでも、言っただろうか。



☆☆☆☆☆

 暗くなってから、お母さんの遺骨と一緒に家路についた…。

 私たちのマンションはいつもと同じはずなのに、なぜだか部屋は広々と感じられ、寂しかった。

 自分も疲れているだろうに、譲二さんは優しく声をかけてくれる。

譲二「今日は疲れたろ。お風呂に入ってもうお休み」

 私がお風呂から出ても、譲二さんは喪服のまま祭壇の前に座ったきりだった。

友梨花「お先に…。譲二さんもお風呂に入ってきたら? 疲れがとれるよ」

譲二「ああ…。そうだね」

 ぼーっとしている譲二さんが心配で、顔を覗き込む。

友梨花「大丈夫?」

 そんな私を優しく抱きしめてくれる。

 そして、そっと額にキスを落とすと、

譲二「友梨花ちゃんはもう休むといいよ…」

友梨花「譲二さんは?」

譲二「俺は…もう少し、ここでロコと話をしてるよ」

友梨花「じゃあ…おやすみなさい」

譲二「おやすみ」



☆☆☆☆☆

 夜中にふと目覚めると譲二さんはまだ寝室に来ていなかった。

 起き上がって、そっと居間をのぞく。

 そこには、祭壇の遺影の前で嗚咽をもらす譲二さんの姿があった。

譲二「……ロコ………………」

 男の人が…あんなに悲しそうに泣くのを初めて見た…。

 私は譲二さんに話しかけることもできず、その場を立ち去った。



 私と譲二さんには二人だけの時間や思い出がある。

 だから、お母さんと譲二さんにもきっと二人だけの大切な思いがあるのだろう。

 どんなに愛しい人でも、そこに私は入っては行けない。




☆☆☆☆☆
ひとつ屋根の下・星霜(せいそう)~その2

 翌朝、目が覚めると譲二さんは朝食の支度をしていた。

友梨花「おはようございます」

譲二「おはよう。もうそろそろ食べれるからテーブルについて」

友梨花「譲二さん、ちゃんと眠った?」

譲二「ああ、少しだけどぐっすり眠ったよ…。
今朝はなんだか早く目が覚めてね」

 目が少し赤いが、いつもと同じ穏やかな表情の譲二さんだ。



☆☆☆☆☆

 食後のコーヒーを飲みながら譲二さんが言った。

譲二「ロコの四十九日が終わったら、入籍だけでも済ませよう」

友梨花「え? そんなに早く?
譲二さん、またみんなに色々と言われるんじゃ…」

 譲二さんはにっこり微笑んだ。

譲二「女房が死んだばかりなのに、直ぐに若い子と結婚したって?」

友梨花「うん…」

譲二「そういうことを言う人は、俺と友梨花ちゃんが一緒に暮らしているだけでも色々言うさ。
だから、世間のことは考えずに自分たちがどうしたいかを優先させよう」

 譲二さんはきっぱりと言った。

 そこには昨夜あんなにお母さんの死を哀しんでいた人の姿はなかった。

譲二「それで…、一周忌が終わったら、二人だけで結婚式をあげよう」

友梨花「いいの?」

譲二「俺が見たいからさ…。友梨花ちゃんの花嫁姿」


 私は思わず譲二さんに抱きついてしまい、しばらくは長いキスが続いた。


譲二「俺が不甲斐ないばっかりに…。
こんなに友梨花ちゃんを待たせてしまってごめんね…」

友梨花「ううん…。私はずっと譲二さんの側にいられて幸せだったよ…」

譲二「ありがとう…。
言い訳になるけど…。
ロコには何度も離婚しようと話を持ちかけたんだ…。
だけど、俺たちの間のことを話すことすら許してもらえなかった…」

 譲二さんは思い出すように考え込んだ。

譲二「ロコには『私がいない間、あなたたちが何をしようと勝手だけど、私の前ではいい夫と娘でいてちょうだい』と言われたんだ。
取り付く島もなかった…」

 私は譲二さんを抱きしめる手に力を入れた。

譲二「『私を一生守ってくれるんじゃなかったの?』とも…。
そう言われると俺には何も言い返せなかった。
そうこうするうちにロコは認知症になって…。
離婚できる状態じゃなくなった。
…ほんとにごめんね…。
こんな俺に付き合わせて」


友梨花「譲二さんが悪いわけじゃない。
譲二さんのせいじゃないよ…」

 そのまま…私たちはお互いの温もりを感じながら抱き合っていた。



☆☆☆☆☆

 それから一年と少し経った頃。

 私と譲二さんは二人だけの結婚式をあげた。

 譲二さんは「新しくウエディングドレスを作ればいい」と言ってくれたけど…。

 私は敢えてお母さんのウエディングドレスを着た。

 お母さんにも私と譲二さんの結婚式を見守って欲しかったから…。




 今はもう…祝ってくれるよね、私たちのこと。

 だって今、お母さんは、お父さんと手に手をとって幸せに暮らしているはずだもの。




譲二「友梨花ちゃん…。とっても奇麗だ…。惚れ直したよ」

 譲二さんが優しい目で見つめてくれる。

 お母さんにも同じことを言ってたよね…って思ったけど…それは口にしなかった。

 ただ、頬を染めて譲二さんを見つめ返した。

 やっと…愛しい人に花嫁姿を見てもらえたのだから。







 奇しくも…、私はお母さんが譲二さんと結婚した時と同じ歳になっていた。





『ひとつ屋根の下・星霜(せいそう)』おわり

☆☆☆☆☆

 どの場面でも口さがない人達は色々と言うでしょうね。

 16歳上の女性と結婚した時も言われたろうし、認知症になって施設に預けたら預けたで、年取った妻を放り出して若い娘とくっついているとか、お葬式でも遺族の席で二人が並んでいたら、色々噂する人達はいるだろう。

 でも、譲二さんはそれらに一々言い訳することなく、甘んじて受け入れるような気がするんですよね。

 結果は全て引き受けるというか…。私の中では、譲二さんはそういう男らしさのある人だと思っています。



 ラスト、譲二さんは54歳になってるわけですが…。

 54歳の譲二さんもダンディで素敵なおじさまなんだろうな♪って想像するとニヤケが止まりません。
 中学生から54歳のおじさままで…どの年代の譲二さんも大好き


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ひとつ屋根の下・ロコ

2014-11-20 09:03:03 | ひとつ屋根の下

番外編『ひとつ屋根の下ストーリー』で思いついた譲二さんの危ないストーリー。

>>お母さんが10何歳下の男性と再婚して、その義父が譲二さんとか。

これを『ひとつ屋根の下・母の夫』『ひとつ屋根の下・妻の娘』として妄想しました。

今回は、お母さんの視点から譲二さんとの恋を描きました。

☆☆☆☆☆

私:茶倉宏子
その夫:茶倉譲二…私より16歳下
私の娘:森田友梨花


☆☆☆☆☆
ひとつ屋根の下・ロコ

 ジョージと結婚して三ヶ月が過ぎた。



 前の夫を事故で亡くして直ぐの頃、弾みでまだ若いジョージと寝てしまった。

 荒んだ気持ちの私を必死で慰めようとしていたジョージが鬱陶しく思われて、「それなら私を抱いてごらんなさい。あの人の代わりに一人の男として抱いてよ」と、言い放った。

 驚いたことに彼はそれに応えてくれて…、その後「恋人になって欲しい」とまで言われた。

 「いいよ」と言ったものの、16歳も下の男の子との恋愛が長続きするとは思えなかった。

 それにジョージは私がすがりたい、大人の男としてはあまりにも頼りなく思われた。

 彼はきっと初めてのセックスに舞い上がって、私としたいだけなんだろうと思った。

 そして、若くて可愛い女の子に告白でもされたら、私なんか直ぐに捨てられるだろうとも思った。

 それでもよかった。

 夫を亡くして、一人で娘を育てていかないと行けない私は何でもいいから支えが欲しかったのだ。

 大学生だったジョージは家が大金持ちだったから、それまでバイトなどしたことがなかった。

 ところが、私と付き合い出してすぐにバイトを始めたと胸を張って言う。

譲二「ロコとのデートは俺が稼いだお金で払いたいからね」

 なんだかとても可愛らしくて、笑みがこぼれた。

宏子「そんな…。無理しなくてもいいのに」

譲二「ロコが稼いだお金は友梨花ちゃんのためのものだろ?
それに…、自分がバイトしたお金で彼女とデートするのが俺の夢だったんだ…」

 少し頬を染めてそう呟いた。

 そうだった。

 私とジョージが初めて知り合った時、ジョージは幼なじみの女の子にふられてひどく落ち込んでいたっけ。

 公園でずぶ濡れになって、今にも泣きそうな顔をしていた中学生の男の子。

 もちろん、その時には恋愛感情なんかなかった。

 ただ迷子の子犬のような男の子をなんとか慰めてあげたかった。

 あの時、メアドを交換して、ジョージの悩み事の相談にいつものってあげたものだけど、あれ以来、彼は女の子とはいつもうまくいかなかった。

 とても優しいし、相手のことをいつも思いやっているけど、それが過ぎるために自分の気持ちをうまく相手に伝えることができず、女の子はいつもため息をついては去っていくのだった。

 もう七年近くもそんな彼の相談にのって来たからか、私には色々と言いたいことも素直に言えるようだった。

 だから、最初は彼が若い恋人を見つけるまでの付き合いのつもりだったのだ。



☆☆☆☆☆

 それなのに、ジョージ無しでは生きていくことさえできなくなったのはなぜだろう?

 ジョージと付き合ううちに、彼が私を本気で想ってくれていることにだんだん気づいたからだろうか?

 大学を卒業するとあんなに嫌がっていた実家の茶堂院グループに幹部候補生として就職した。

譲二「ロコにふさわしい男になるためには、ちゃんとした仕事につかないといけないからね。
ここだったら、頑張れば数年でロコと友梨花ちゃんを養える位の給料を稼ぐことができるようになると思うんだ」

 あんなフワフワした頼りない男の子が、いつのまにか逞しい男性になって私の前にいた。

 いつしか私は彼に捨てられることを恐れるようになった。

 一年一年、彼は逞しい大人の男に育っていき、私はそれと同じ速さで老いていく。

 5年前には気にならなかった顔の皺も、毎朝鏡を見る度に気になるようになった。

 ジョージが仕事で忙しくて会えない日が続いた時、私は発作的に自殺未遂を起こしてしまった。

 異変に気づいたジョージが適切な処置をとってくれたので、大事には至らずにすんだ。

 でも、それから私はジョージ無しには生きていけなくなった。

 彼は前にも増して私を気にかけて優しくしてくれるようになった。



☆☆☆☆☆


 友梨花が18歳の誕生日に、私にこう言ってくれた。

友梨花「お母さん。好きな人が出来たら再婚してもいいよ。今まで私のために一人で頑張ってくれたんだもん。もう好きなように生きてくれていいよ」

 嬉しかった。娘にそんな風に言ってもらえて。

 それから直ぐにジョージにプロポーズして、結婚の承諾を得た。

 友梨花にも、「会わせたい人がいるから」と恋人の存在を打ち明けた。

 ただ、私には少し気になることがあった。

 友梨花とジョージは幼い頃、公園で時々遊ぶ仲だった。

 遊ぶと言っても、10歳違いの幼稚園児と中学生だったから、一方的に友梨花がジョージに遊んでもらっていたわけだけど…。

 そして、その頃友梨花はジョージのことが大好きだった。

 友梨花が小学生になった頃、夫の転勤で引っ越してから、二人が会うことはなくなったけど、もう一度二人が会ったらお互いに惹かれ合うのではないかと…。

 それだけが気がかりだった。

 友梨花にそれとなく幼稚園の頃のことを聞いたが、優しいお兄さんがいたくらいのことしか覚えていなかった。

 そこで、ジョージには、友梨花が思い出さないようなら、子供の頃に出会ったお兄さんがジョージだということは言わないと約束させた。

 二人を引き合わせた時、友梨花はジョージが昔なじみだとは気づかなかった。

 そして、友梨花の前で三人だけで結婚式を行った。

 友梨花が強く勧めてくれて、私はウエディングドレスを着た。

 とても照れくさかったけど、ジョージは「とても綺麗だよ。俺、ロコのこと惚れ直したかも」と言ってくれた。

 なぜ、三人だけの式になったかと言うと…。

 そう、ジョージは実家の家族みんなに私との結婚を反対されていたのだ。

 子持ちの16歳上の女との結婚など認められるはずもない。

 私が同じ立ち場だったとしてもやはり反対しただろう。

 ましてや、ジョージの家は普通の家ではない。

 親族からは色々と言われたようだが、ジョージはそれを私には何も言わなかった。


☆☆☆☆☆

譲二「ロコ、どうしたの? 何か考え事?」

 ジョージが優しく声をかけてくれる。

宏子「ん? ジョージと結婚できて幸せだなぁーって、考えてたとこ」

譲二「俺も幸せだよ」

 頬に軽いキスをしてくれた。



☆☆☆☆☆


 夜中に目が覚めた。

 そっと手で探って、隣にジョージがいることを確かめる。

 再婚するまでは、夜中に一人のベッドで目を覚ましては不安に駆られていたものだ…。

 今は…、もうひとりじゃない。

 ジョージの肩にそっとしがみつく。右手を彼の厚い胸板にそっとのせた。

 彼の手が私の手を覆うように掴んだ。

宏子「ジョージ?」

 返事はない。

 …どうやら無意識に私の手を掴んでくれたようだ。

(愛しているよ、ジョージ。これからも一生側にいてね)

 私は安堵して目をつぶった。

『ひとつ屋根の下・ロコ』おわり



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