雇用の調整弁

日雇い派遣業界で「グッドウィル」に次ぐ大手派遣会社「フルキャスト」が事業停止命令を受けた。
最近、「グッドウィル」の労働基準法違反・派遣法違反が摘発されたばかりである。
無協定での残業や違法な給与天引、二重派遣などである。

今回の「フルキャスト」問題は、悪質な派遣法違反を理由とした事業停止命令だ。
派遣法では、労働者の安全や雇用管理の問題などから、港湾運送業務、建設業務、警備業務への派遣を禁じている。
今年３月に「フルキャスト」は、全国５３事業所で建設や警備などの禁止業務に派遣したとして改善命令を受けていた。
その後も違反を繰り返しており、今回摘発された港湾運送業務への労働者派遣により、いよいよ厳しい処分が下された。
この決断には民主党の大勝利があったと思われる。
もし自民党勝利に終わっていたらスポンサー（経団連）に逆らうような事業停止命令は出されなかっただろう。

神戸市内の事業所は８月１０日から２ヶ月間、全国事業所も１ヶ月間の事業停止である。
この期間は新たな派遣や派遣契約ができないから、およそ１万２千人いるといわれる「フルキャスト」の日雇い派遣労働者は職場を失うこととなる。
労働者の敵を処分しても、結局、最大の被害者は労働者となる矛盾はあまりに虚しい。

根本的に改めねばならないのは雇用政策。
派遣労働者を雇用の調整弁として扱う経営側の考え方も改めねばならない。
連合としてできることはなんだろう。
民主党を使って労働政策の充実を図ること、産別組織は組織内で働く派遣・請負労働者の保護を、地方連合は一人でも入れるユニオンを使って未組織労働者の味方になること。
今日も事務所にはユニオンを頼って複数の相談者が見えた。
理想を語ることはたやすいが、実行することは難しい。
選挙が終わって最初の休日、貴重な休日をつぶして対応してくれるスタッフたちに心からの感謝を捧げたい。