けろろの「浜あるき・野良あるき」

漁あるところ、農あるところへ、風土のにおいに誘われて、いそいそ出かけています

江戸時代の循環型農業、三富新田

2011-10-23 23:56:05 | 野良あるき
農業の分野ではとっても有名な、埼玉県の三富(さんとめ)新田に行ってきました。
元禄の時代に拓かれた畑作地が、三百年以上たった現代にもそのままの形で残されているのです。

                  



道路に間口を接し、その奥に細長い短冊形の1区画が、1軒の農家に割りふられています。
その1区画の構成は、屋敷林―農地―雑木林、という3点セット。
上の写真、手前が(今は小学校の敷地ですが)屋敷、中央に畑地、その奥に雑木林が見えます。
面白いことに、雑木林の奥には、さらに別の農家の1区画が続きます。
そして3点セットの並びは、雑木林が背中合わせになって、雑木林―農地―屋敷林、の順。

屋敷林と雑木林は、防風林。加えて、屋敷林には果樹、建材やカゴの材料になる樹木や竹。
雑木林には、落ち葉を畑の肥料にし薪炭にも利用する落葉広葉樹が植えられました。
まさに、循環型農業の見本です。

肥沃とはいえない火山灰土、水利に乏しい土地柄にぴったりマッチしたのが、サツマイモ。
川越名物のイモは、じつはこの三富の畑が産地なのです。

サツマイモの産地化のおかげで経営が安定し、後継者のある農家が多いそうです。
しかし最大の悩みは相続税。畑は農地法で宅地転用にしばりがあるため、雑木林が売られることに。
雑木林の売買にも用途が定められていますが、物流倉庫などはOK。
近くを関越自動車道が通ったおかげで、物流倉庫に雑木林を売ることができて、
農地がかろうじて相続できている…。そういうお話を聞きました。

民俗文化財であり、農業という産業でもある三富新田。
産業の基礎をしっかり支えないと、文化財としての側面も維持できないのです。



この写真は、新田とはまったく関係なく。寺子屋だった「旧島田家」という資料館の屋根。
ちょっとわかりにくいですが、大きなアワビの殻が10個ぐらい、屋根に点々と留められています。
これ“鳥よけ”なのだそうです。
そうか!今はDVDやCDですね。マンションのベランダや市民農園などでよく見かけます。
カヤ屋根のカヤは、鳥の巣材に最適。引っこ抜かれないように、アワビの殻のほかに糸を張り巡らすのだとか。
こんなところでも、海のものが内陸で使われているんですね。
面白い!!