仕事がらみで、農家に加工品作りの技術指導をされている専門家に、お話を聞きました。
用件のあとの雑談で、ふと「最近の農家の加工品の傾向で、気になることは?」と質問。
すると…。
「細菌を扱う加工品に、粗悪なものが増えている」というのです。
特定の細菌(酵母)を増やし、雑菌(カビ)をシャットアウトするのが発酵食品。
味噌、麹、甘酒などです。
逆に細菌(カビ)を一切増やしてはいけないのが、乾物類。
干し柿、切干大根、かき餅、凍み豆腐などですね。
両方で、今までになかった粗悪品が目立つようになったというのです。
原因は「菌を育てるという感覚の伝承」ができていないこと。
ガーン!! しかし「加工の工程、手順だけはちゃんと伝わっている」というのです。
道の駅や農産物直売所が、だ~い好き!!
遠回りしてでも立ち寄るのに…。
どうやら理由は、自家用ではなく販売用に作るようになったこと。
かつて発酵食品や乾物は、家庭生活の中で世代から世代へと伝えられました。
実生活の中で「菌と暮らす」感覚も伝承されていたのでしょう。
それが販売用の「製品」になると、生活環境や風土から切り離され、
目に見えない菌のことを思うこともなく、「何グラム何℃何時間」の工程の産物に。
さらに、農家の個人加工が増えたことも背景にあるようです。
先の専門家は「50代が境。40代以下の個人の加工品に粗悪品が目立つ」といいます。
10年ほど前まで、農家女性の加工品づくりといえば、地域に女性グループを立ち上げ、
みんなの資金と知恵と手を出し合って…、というスタイルが一般的でした。
しかし、国の政策支援(6次産業化)、直売所やネット販売など売り先の確保その他で、
農業経営を支える副業として、とくに若い世代で加工と販売が盛んになっています。
これはこれで、歓迎すべきことではあるのですが…。
「加工グループでは、上手なひとの技や知恵が他のメンバーに伝承されたけれど、
個人加工ではひとりよがりになっている」と、専門家の方はいいます。
ああ、まさに手前味噌!!
これは、フリーランスで仕事をしているわたしにも、ぴったり当てはまる教訓です。
カビの生えた不味い、手前味噌のお仕事をしてやいないか???
年の瀬にあたり、われとわが身を振り返る、じつに含蓄のある、深い~いお話でした。