けろろの「浜あるき・野良あるき」

漁あるところ、農あるところへ、風土のにおいに誘われて、いそいそ出かけています

岩手、アワビの開口は11月から

2011-10-29 23:53:59 | 浜あるき
釜石の“独身もてもて漁師”ヤッチョさんから、連絡をもらった。
誤解のないようにつけ加えると、遊び人というわけじゃなく、若いのに釜石湾漁協理事。
11月に解禁になるアワビの入札が盛岡で行われ、立ち会ったそうです。
漁の前に入札で値段を決めるシステムなんですね。

そこでついた価格(漁協から買う値段)が何と、1キロ1万5千エ~ン!!
(これ書いちゃっていいんですよね…わたしのブログは読者がほとんどいないけれど)
ちなみに、昨年は6千円~8千円。2倍以上です。

  

左と中央が、釜石のアワビ(09年に撮影)。右のが積丹のアワビ(今年10月)。
どちらも、北の海にすむ「エゾアワビ」という同じ種類です。
積丹の今年のアワビの浜値は平年並みで、大がキロ5千円。小さめのがキロ4千円。
いっそ盛岡で売りたいですね…。

岩手のアワビ、高い値段のかげにはいろいろ複雑な事情もあるようで。
まず、海底の津波の影響が心配。
陸から押し流されたものが沈んでいないか、地形が変わっていないか、資源は減っていないか。
とりすぎない配慮で、例年11月の解禁は最大でも4日間(海が荒れて4日も出られない年もある)。
最初の1日漁に出てみて、海底の状態が悪ければ、今年のアワビ漁は打ち切る決定だそうです。
でも、事前に海の様子を見た限りでは「だいじょうぶなのでは?」と、ヤッチョさん。

もうひとつ問題なのは、船が足りない!こと。
磯漁の1トン前後の小船は、どこの浜もほぼ100%が流されました。
新造も修理もなかなか追いつかず、船外機も品薄で入手困難。
結局どの浜も、3~4人が相乗りして出漁します。これは日当制。
水揚げは漁協組合員で分配するのです。ただし、配分方法は漁協によって異なるようです。
さらに、同じ釜石市でも唐丹漁協は(少なくとも11月は)出漁しないのだとか。
みすみすキロ1万5千円を…とは思うけれど、地域の事情がおありなのでしょう。

気仙沼市本吉の漁師さんに、一昨日お会いしたので聞いてみると、
「アワビ漁の話は今年はまったく聞こえてこない」とのこと。
犠牲が多かった宮城。今年のアワビ漁は見送るのでは、というお話でした。

出漁できるヤッチョさんたち、どうぞ大漁(だいりょう)されますように!!

ゴンズイ

2011-10-25 23:55:04 | 野良あるき
三富の雑木林を歩いていて、目にとまった実。
マユミにそっくりだけれど、マユミは種が赤いのではなかったっけ…。
帰ってから調べた。ゴンズイという植物だった。
マユミとは科が違うけれど、図鑑ではマユミのすぐあとに出ていたので近いのでしょう。

しかし、ゴンズイだってー?
ゴンズイといえば、ふつうに見られる海の魚じゃん!
ヒレに毒があるので要注意魚(だから黄色と黒の「オレたちって危ないぜ」色)ですが、
くねくね泳ぐ姿は愛嬌たっぷり。
群れて泳ぐ幼魚は「ゴンズイ玉」と呼ばれ、親しまれています。かわいいでしょ?

 

写真は、両方とも「ゴンズイ」です。
植物のゴンズイの名の由来に「魚のゴンズイのように役に立たない。薪ぐらいしか用途がないから」と、
書かれているネット情報があります。

しかし、いやーまさか、です。
なぜならゴンズイは、わたしにとって「ぜひとも食べてみたい!」魚の上位にあるからです。
成長すると20センチくらいになります。
ナマズ科なので、そんな系統の味わい。さっぱりした脂があってバツグンに美味いらしい。
結局、また食べる話に行きついてしまいました。…失礼。

江戸時代の循環型農業、三富新田

2011-10-23 23:56:05 | 野良あるき
農業の分野ではとっても有名な、埼玉県の三富(さんとめ)新田に行ってきました。
元禄の時代に拓かれた畑作地が、三百年以上たった現代にもそのままの形で残されているのです。

                  



道路に間口を接し、その奥に細長い短冊形の1区画が、1軒の農家に割りふられています。
その1区画の構成は、屋敷林―農地―雑木林、という3点セット。
上の写真、手前が(今は小学校の敷地ですが)屋敷、中央に畑地、その奥に雑木林が見えます。
面白いことに、雑木林の奥には、さらに別の農家の1区画が続きます。
そして3点セットの並びは、雑木林が背中合わせになって、雑木林―農地―屋敷林、の順。

屋敷林と雑木林は、防風林。加えて、屋敷林には果樹、建材やカゴの材料になる樹木や竹。
雑木林には、落ち葉を畑の肥料にし薪炭にも利用する落葉広葉樹が植えられました。
まさに、循環型農業の見本です。

肥沃とはいえない火山灰土、水利に乏しい土地柄にぴったりマッチしたのが、サツマイモ。
川越名物のイモは、じつはこの三富の畑が産地なのです。

サツマイモの産地化のおかげで経営が安定し、後継者のある農家が多いそうです。
しかし最大の悩みは相続税。畑は農地法で宅地転用にしばりがあるため、雑木林が売られることに。
雑木林の売買にも用途が定められていますが、物流倉庫などはOK。
近くを関越自動車道が通ったおかげで、物流倉庫に雑木林を売ることができて、
農地がかろうじて相続できている…。そういうお話を聞きました。

民俗文化財であり、農業という産業でもある三富新田。
産業の基礎をしっかり支えないと、文化財としての側面も維持できないのです。



この写真は、新田とはまったく関係なく。寺子屋だった「旧島田家」という資料館の屋根。
ちょっとわかりにくいですが、大きなアワビの殻が10個ぐらい、屋根に点々と留められています。
これ“鳥よけ”なのだそうです。
そうか!今はDVDやCDですね。マンションのベランダや市民農園などでよく見かけます。
カヤ屋根のカヤは、鳥の巣材に最適。引っこ抜かれないように、アワビの殻のほかに糸を張り巡らすのだとか。
こんなところでも、海のものが内陸で使われているんですね。
面白い!!

3日連続、魚のクール便

2011-10-22 23:57:19 | 浜あるき
昨日、夕方家に戻ると、またまた白いトロ箱が届いていました。
先日、海宝漬のお土産をいただいた、釜石のYさんからです。

           

うわわわーっ!! なんと豪華…というか豪快なんだ~。
箱にぎっちり「詰めるだけ詰めた!」という感。
サケが2本分(右の袋に頭などのアラや白子)、豆アジが50匹、ソッコ(ブリの若いの)3本。
それから自家製イクラの塩漬け。釜石では塩で漬けます。イクラそのものの味がひきたつ絶品!

先日ご紹介したように、例年なら4月からの小型定置網漁を今年はようよう9月に再開。
漁期の許可は一昨日まで。その最終日の漁獲を、おすそ分けしてくださったのです。
しかも、お忙しいのに捌いてまでくださって。その思いと手間とに、お礼はいいつくせません。
「サケは期待したほどたくさんは入らなかったけど、お世話になった方皆に送れた」と、
電話のむこうで奥さんのI子さん。
「わずかだけれど、また漁ができたという報告にもなります」と、ほっとしたような晴れ晴れとしたお声。
被災したからと「世話になりっぱなし」をよしとしない気持ちも、あったのではと感じます。

漁家でも農家でも、お話していていつも感じるのは、
「日本のみなさんの口を養っている」という(恩着せがましいのではない)誇りと責任感のようなもの。
食べることは生きることの基本。これほどシンプルで強く尊い職業はありません。
とはいえ、今の日本ではおかしな逆転現象が起きているわけですが…。
自分を含め、食べ物を全部作ってもらっている人間は、生き物としての弱さを自覚せねばなりません。

話がそれました。
釜石のYさん。小型定置網は本来“楽しみ半分”のようなもので、本業はホタテなどの養殖業。
11月にはホタテの稚貝を海に入れなくてはならないのですが、ロープなどの資材が手に入らず目途が立ちません。
本格的な復興は、まだまだこれからです。

早くも冬の足音

2011-10-20 00:01:03 | 浜あるき
日曜日、朝早いうちは穏やかだったのに、いきなり突風と雷雨。
ナギが続くとの判断で口開けになったアワビ漁の漁船が、出漁して1時間もたたないうちに、
いっせいに港へと逃げ帰ってきました。
晴れたかと思うといきなり土砂降りの雨。この日から数日、そんなお天気。

      

積丹岬から南西側に回り込むと、さらにすごい荒れ模様。立っていられないほどの風です。
民宿の建物の陰に一晩停めておいた車は、朝には潮で真っ白に。冬は毎日がこうなのでしょうか…。

仕事の合間にぶらぶら歩きます。
左の写真。海岸から数キロ入ったところで発見。…何でしょう?
右の写真は、浜に積まれたタコ漁の漁具。北海道ではタコ壺ではなく箱です。ちなみにタコはミズダコです。
木製のものはよく見るのですが、これはプラスチックですね。

       

この時期、北海道の川には、当たり前のようにサケが泳いでいるんです!!
橋の上からそれがはっきり見える。河口には、サケねらいの釣り人たちが。
でっかいなあ、ほっかいどう。