ビタミンP

苦心惨憺して書いている作品を少しでも褒めてもらうと、急に元気づく。それをトーマス・マンはビタミンPと呼んだ。

ワクチン接種を終えた人もウイルスを他人に感染させる

2021年08月27日 21時33分55秒 | Weblog

デルタ株、ワクチン接種後感染者も感染広げる可能性、証拠を確認

鼻腔で増殖する新型コロナウイルスの量も感染性も未接種者と同等、予備的研究

(2021.08.24 NATIONAL GEOGRAPHIC)

 

 新型コロナウイルスのデルタ株は、規定回数のワクチンを接種した人の鼻腔でも、ワクチンをまったく接種していないときと同じように増殖しうることが、8月11日付けで発表された予備的研究の実験で確かめられた。増殖したウイルスが人に感染しうる点についても同程度だった。

 つまり、ワクチン接種を終えた人もウイルスを他人に感染させる可能性があるということだ。その可能性はあるだろうとこれまで多くの専門家が考えていたものの、実験で証明されてはいなかった。

「私の知る限り、ワクチン接種が完了した感染者(の試料)からヒトに感染するウイルスが培養されうることを示したのは、私たちが初めてです」と、米ウィスコンシン大学のウイルス学者で、今回の論文の著者の一人であるケイスン・リーマーズマ氏は語る。論文は、査読前の論文を投稿するサイト「medRxiv」で公開された。

 以前からインド、米マサチューセッツ州プロビンスタウン、およびフィンランドの病院でそれぞれ実施された研究でも、デルタ株にブレイクスルー感染(接種後感染)した場合、感染者の鼻に高濃度のウイルスが存在しうることは示されていた。そのため次に確認すべきことは、ワクチンを接種した人も、感染力のあるウイルスを排出するのかどうかだった。

 デルタ株は極めて感染力が強く、免疫を回避してしまうため、「非デルタ株に比べてワクチン接種後のブレイクスルー感染が起きやすくなっています」と、英ケンブリッジ大学の微生物学者、ラビンドラ・グプタ氏は話す。グプタ氏の研究室は、ワクチン接種を完了した医療従事者もデルタ株に感染することがあり、その鼻に高濃度のウイルスが存在することを最初期に報告したグループの一つだ。

 ウィスコンシン大学の研究結果が正しければ、ブレイクスルー感染した人は、その多くが発症しないまま、知らずにウイルスをまき散らすかもしれない。「これは警戒すべき発見です」と、今回の研究を主導したカタリナ・グランデ氏は説明する。氏は「マディソン市およびデーン郡新型コロナデータチーム」のリーダーを務める公衆衛生管理者だ。

 米スクリプス・トランスレーショナル研究所の創設者で所長のエリック・トポル氏は、デルタ株に感染したワクチン接種完了者が、発症前あるいは発症せずにウイルスを他人に感染させること、そしてこれが従来株よりも高い確率で起こりうることを懸念する。「ですから、ワクチン接種を受けた人にとっても、マスクの着用と感染対策は重要です」

 今回のような研究は、デルタ株が現在推定されているよりはるかに高い割合で拡大しうることを強調するものだと、米医療保険大手ユナイテッドヘルス・グループの最高公衆衛生責任者(CPHO)イーサン・バーク氏は言う。3月25日付けで学術誌「PLOS ONE」に発表された氏の研究は、たとえ予備的であってもすぐに結果の出る検査を頻繁に行うことが、新型コロナの感染拡大を抑える上で非常に効果的であることを示している。なお、氏はウィスコンシン大学の研究には参加していない。

「今回の研究は1地域におけるものとはいえ、ワクチン接種を完了しているか否かにかかわらず、人から人へウイルスが感染する可能性について重要な知見を与えてくれます。このような知見が、特に検証および精緻化されてゆけば、組織が検査やソーシャルディスタンスの確保、ワクチン接種等に関する方針を立てる際に非常に役立つでしょう」とバーク氏は述べている。

■試料中のウイルスに感染性があるかを調べるには

 科学者らは、鼻腔内にあるウイルスのRNAの量を調べるために、Ct値と呼ばれる基準値を採用した(編注:Ct値は、PCR検査でウイルス遺伝子を増幅させる際に、その量が一定値に達するまでに要した増幅回数。つまり、Ct値が低いほど検体中のウイルス遺伝子の量が多い)。

 Ct値はウイルス量、つまり体内のウイルス粒子の数と関連する。ウイルス量が一定の値を超えると、感染者はウイルスを排出して他の人を感染させる可能性があると研究者らは推測する。

「新型コロナウイルスは鼻と上気道に感染します。ここは多量な抗体を長期間にわたって得ることが大変難しい場所です。免疫系は、これらの部位に高いレベルの量の抗体を作るようにはできていません」とグプタ氏は述べている。

 ウィスコンシン大学の研究では、いずれも検査で陽性反応を示したワクチン未接種の人とワクチン接種を完了した人、計719人を対象に、検査に使用した鼻腔用綿棒を分析した。その結果、対象となったブレイクスルー感染者の68%はCt値が25未満、つまりウイルス量が非常に多かったことがわかった。これは体内でウイルスが複製されている徴候だとグプタ氏は説明する。

 検体の鼻腔用綿棒に感染性のあるウイルスが存在するかどうかを確認するため、研究者らは、いずれも検査で陽性反応を示したワクチン接種済みの人と未接種の人、計55人の試料から採取したウイルスを、新型コロナウイルスに感染しやすい特殊な細胞内で培養した。その結果、ワクチン未接種の人の88%、接種済みの人の95%という、全員に近い人の試料で感染性のあるウイルスが検出された。

「試料を細胞に接触させると、感染した細胞は死にます。これは、そこにウイルスが存在し、感染性があることをはっきり示しています」とリーマーズマ氏は説明する。

 ワクチン接種を完了した人も大量の感染性ウイルスを作り出すとしたら、ワクチン接種を受けていない人と同じくらいウイルスを広める可能性があることになる。

■感染予防にはマスクとワクチンを

「現在は、感染性の非常に高い変異株の出現、免疫のない人の多さ、マスク着用をめぐる対立など、悪いことの重なった最悪の状況です」とグランデ氏は言う。

 米疾病対策センター(CDC)は、8月16~22日において米国の95.65%の郡で新型コロナの市中感染の危険が「やや高い」または「高い」としている。CDCが定義する「高い」とは、その郡の過去7日間の新規感染者が10万人中100人以上か、検査の陽性率が10%以上であることをいう。そのような地域ではデルタ株の感染から最大限に身を守り、また他の人に感染を広げることを防ぐために、室内で人前にいるときはマスクを着用するようCDCは推奨している。

 承認されたワクチンによって、新型コロナ感染症の重症化や死亡を防ぐことはできるものの、高齢者、免疫機能が低下している人、基礎疾患のある人では効果が大幅に低下する。

「デルタ株がどのように作用し、感染するのか、そして最終的にどうすれば家や職場、地域社会で身を守れるのかについて理解を深めるには、この変異株に関する情報がもっと必要です」とバーク氏は言う。「それがわかるまでは、マスクの着用、ソーシャルディスタンスの確保、定期的な検査やワクチン接種などの基本的な衛生管理が、感染のスピードを遅らせ、重症化や死亡を防ぐ上で引き続き重要な役割を果たすでしょう」

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 歩く事と水分補給でエコノミ... | トップ | あなたの子供は、 »
最新の画像もっと見る

Weblog」カテゴリの最新記事