ぼくは本を届けた。
連中は言った。
「すごくいいねえ。君から買い取ろう。2万ドルでどうだ。主役にはライアン・オニールか、バート・レイノルズがいいと思ってる」
俺は言った。
「いや、俺が是非これをやりたいんだ」
すると相手は「君は無名じゃないか」
俺は言った。
「それはわかってる。だからタダで出るよ」
そしたら「そういう風に行くもんじゃない」
それから彼らが言った。
「じゃあ8万ドルならいいか?」
俺は言った。
「いやだ」
相手は言った。
「じゃあねえ、これをレッドフォードにも送ろうと思ってるんだ。彼がやりたかったら、君に20万ドルあげよう」
俺は言った。
「それはすごい額だなあ」
・・・・
俺はうちに帰り、家内に言った。
「ああ大変だ」って。
・・・・
でもーー俺には出来なかった。
出来ない! その金が二人の今後を安定させてくれるかもしれないが、でも・・・。
・・・・
自分に言った。
「ここまで頑張ってきたじゃないか、俺の人生! それを売るなんて出来ないだろ!」
「それじゃあ」と連中は言った。
「33万ドル」。
そしてついに「36万ドルだ」。
で、俺は言った。
「ちょっと説明させてくれ。映画は作らないでくれ。作らないでくれ。俺は映画化権を絶対売らないから」。
すると彼らは言った。
「君は頭がおかしい!」。
俺は言った。
「よくわかるよ。でも俺は決して売らない」。
すると会社はまたやってきて言った。
「わかった。君は映画を作っていいよ。週に340ドル払うが、それっきりだよ」
で、俺は言った。
「けっこうだ」
(シルベスタ・スタローン・・・29歳だった1975年、観戦したボクシングの世界ヘビー級タイトルマッチ「モハメド・アリ対チャック・ウェブナーの試合に感銘を受け、それをヒントにわずか3日で書き上げた脚本(後に『ロッキー』の名で映画化される)を持って映画会社に売り込みに行った・・・『アクターズ・スタジオ・インタビュー』)