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相次ぐ工場閉鎖 誘致競争も激化 府は舞鶴港の利便性アピール

2009-11-08 | 地域全般

京都新聞(11月7日付)

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京滋で相次ぐ工場閉鎖 税収・雇用、自治体に打撃

不況の影響から京都府、滋賀県で工場閉鎖が相次いでおり、自治体が税収減と雇用問題に直面している。京都府では建材大手のトステムが先月、住宅着工減少による受注低迷で綾部市の工場を来年3月に閉鎖すると発表。滋賀県でも住宅メーカーや化学メーカーの撤退が続いた。両府県は跡地に新たな企業を呼び込む考えだが、自治体間の誘致競争は厳しく、展望は開けていない。

「トステムには再考を求めたのだが…」。10月8日に撤退方針を聞かされた綾部市の四方八洲男市長は無念さをにじませた。最大の懸案は雇用問題。同社は綾部工場の非正規社員約200人を雇い止めする方針だ。雇用維持される正社員約170人も、その9割は綾部市や舞鶴市の在住といい、転勤困難などの理由で退職者が出る可能性がある。「市税収入も2500万円くらい減るのでは」(四方市長)とみている。

京都府の山田啓二知事も「舞鶴港への影響が心配だ」と表情を曇らせる。トステムは中国・大連の工場からの部材輸送に舞鶴港を利用している。同港の中国航路の取り扱い貨物の4割を占めるといわれ、府が約4億円を投じて整備したコンテナ専用クレーンも大口顧客を失いかねない。

滋賀県でも、3月に積水ハウスの滋賀工場(栗東市)、6月にオムロンの水口工場(甲賀市)、9月に化学メーカーの住友スリーエムの子会社(同)と閉鎖が続いた。不況による従業員削減の影響もあり、県の有効求人倍率は08年1月の1,29倍から今年9月には0,36倍へと大幅に低下した。

京都府はトステムに工場閉鎖後の再活用を求めているが、跡地を売却する場合は新たな企業誘致に乗り出す考え。滋賀県も閉鎖工場の跡地に進出する企業を探している。だが、企業の設備投資意欲は冷え込んでおり、「状況は厳しい」(県企業誘致推進課)。近畿経済産業局によると、今年上半期の工場立地は京都府が前年同期比で半減の5件、滋賀県は6割減の9件だった。

電池大手のジーエス・ユアサコーポレーション(京都市南区)は、電気自動車用電池の工場を新設予定している。誘致には新幹線新駅予定跡地を埋めたい栗東市をはじめ、京都府や岡山県などが参戦し、各府県知事のトップセールスにまで発展。数少ない投資案件をめぐり、激しい誘致合戦が続くとみられている。

京都府も最大20億円の補助制度を売りに企業誘致を強める構えで、府企業立地推進課は「中国やロシアへの航路を持つ舞鶴港の利便性や、京都ブランドなどを立地メリットに生かしていく」と話す。

だが、民主党政権は打ち出す労働者派遣の規制強化や円高の影響を嫌い、生産の海外移転の動きは今後も加速するとの見方も広がっており、自治体の企業誘致は厳しい先行きが予想される。

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