数年前に出会った女性の話です。派手ではない容姿、何も趣味も持たず
「趣味を作らないと」が口癖の彼女の性格は個性的とは正反対の人間。
暗い過去があるわけでも無いのだが、彼女はどうしても暗く見えてしまう。
その彼女の名前は「グロ(仮名)」友達が少ない(というか仕事仲間しか
いない)グロは何かと私の宴会の参加率が高かった。私にしてみれば、
別に誰が来ても良いので何も思わなかったが、彼女にとっては嬉しいの
だろう。いつ見てもニコニコしていた。だが、その笑顔はなぜか暗い。
しばらくするとグロは私にも皆にも宴会にも慣れ出したのか、私のそばに
自然にいるようになった。そして冗談でこういう事を言うようになった。
「ボス~~、いつかセックスしましょね~」
最初のうちは冗談(にしても面白く無いが)に聞こうとしたが、どうも
冗談と本気を入り交っている。私にも選ぶ権利があるってのが解って
ないようだ。私のそばにいさせているのではなく、勝手にお前が近づいて
いるだけだ。歳も離れているガキなので軽く流していた。決して可愛いと
言えない顔に精一杯の魅力を出しているつもりだが、その自信はどこから
湧いてくるのだろうか。私からしてみればただ不気味な暗い笑顔だった。
ある冬、私が主催の40人ぐらいでバスを貸し切ったスキーツアーがあった。
知らない者同士が集まったので、道中に自己紹介をしようと言う事になる。
ほとんどの参加者が幹事である私とはなんらかの関係。自己紹介時には
「ボスヒコさんの○○」と言うのが定番となる。ボスの仕事仲間、ボスの
大学の友達、ボスの友人の彼女、ボスの取引先の営業マンなど。呼ぶ友達も
いないグロは独りで参加していた。彼女の自己紹介の番が回って来た。
「アタシはボスのセフレで~す!」
と言うグロ。そこにいた39人ほどの人達はコレを軽く流す。「ボスも人を
選ぶぜ!」「目立ちたいんだね」などの思考が飛び交っていた。その辺りに
私は丁度モテ期に入っていたので、何人か私の事をよく思ってくれている
有り難い人達がいた。グロがそういう事を知ってわざと言っているのが解る。
しかし、そういう子達含めた優しい皆は笑って済ます。酒が入っている
男性達はわーわー騒いだり、口笛を吹いたりしてそれなりに表現していた。
私は司会進行のクセに1人窓の外の雪景色を見ている。もちろんグロとそんな
事はしない。しかも定期的になんてありえない。一生しない。来世もしない。
意外な展開が!!
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