【反戦】二代目林家三平は
「国策落語」活動を行っている!
父「昭和の爆笑王」初代林家三平は
「肉弾特攻」の訓練を受けていた!
桂春蝶は本業の落語でも
特攻美化の創作落語を上演!
一方、二代目林家三平は
対照的な戦争へのアプローチ
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桂春蝶は本業の落語でも特攻美化の創作落語を上演! 一方、二代目林家三平は対照的な戦争へのアプローチ - ライブドアニュース
こうした林家三平の戦争への視点には、先代の三平の戦争体験も影響しているのかもしれない。
9歳のときに父と死別しているため、先代の三平から直接戦争の話を聞いたことはほとんどないそうだが、実は、初代林家三平は本土決戦部隊として徴兵され、千葉の九十九里浜に配属された過去をもっている。アメリカ軍が上陸した際、爆弾を抱えて戦車に突撃していく「肉弾特攻」のための兵士として訓練を受けていたのだ。もしも戦争が長期化していたら、この戦いで犠牲となっていたかもしれない。
全文は下記に…
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桂歌丸が戦争の空気に危機感! 戦争がもたらした落語界の暗い過去…子供を産まない女性を糾弾する国策落語まで|LITERA/リテラ
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林家三平 (初代) - Wikipedia/初代林家 三平(はやしや さんぺい、本名:海老名 泰一郎(えびな やすいちろう。旧名:栄三郎(えいざぶろう))、1925年11月30日 - 1980年9月20日)は、落語家。社団法人落語協会理事。
【東京大空襲】史上最大の虐殺!時忘れじの集い2015、3月9日(月)上野公園/戦後70年
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桂春蝶は本業の落語でも特攻美化の創作落語を上演! 一方、二代目林家三平は対照的な戦争へのアプローチ - ライブドアニュース
桂春蝶は本業の落語でも
特攻美化の創作落語を上演!
一方、二代目林家三平は
対照的な戦争へのアプローチ
2018年3月4日 16時30分
LITERA(リテラ)
落語家・三代目桂春蝶による〈この国での貧困は絶対的に「自分のせい」〉というツイートが大炎上した問題。本サイトは、3月1日放送『バイキング』(フジテレビ)でそのツイートを正当化するために出演したにもかかわらず、坂上忍、フットボールアワー後藤輝樹、岩尾望からコテンパンに批判されたことをお伝えした。
この『バイキング』での一連の釈明のなかで春蝶は、唐突に、これまでのキャリアのなかで戦争をテーマにした創作落語をつくってきたという話をし始めた。その噺をつくる過程で、ひめゆり学徒隊や従軍看護師だった人たちに取材を行い、そのなかで「私はいまの国というのは幸せなほうなのではないのかなと。日本人に生まれただけでひとつ幸運なのではないかな」と感じたと語っている。
実際、春蝶は戦争に材をとった創作落語を高座に上げている。それが、鹿児島県知覧基地から飛び立った特攻隊員を描いた『明日ある君へ~知覧特攻物語~』だ。
この噺は、死期が迫りつつある病床の祖父を看病しながら眠り込んだ若者が目を覚ますと、なぜか戦中の日本にタイムスリップしていて飛行場に立っており、そこで当時の兵隊らとの交流が始まる、というもの。この時点で、百田尚樹の『永遠の0』を思い出させるが、スタンスもそっくりだ。
たとえば、春蝶はこの落語のなかで、特攻隊員にこんなセリフを語らせているのだという。
「これ以上犠牲を出さぬため、われわれが全員死ぬ以外、日本が救われる方法はない。それがおれたち隊員が考える『守るべきものを守る』ということ」(「産経WEST」2015年8月12日より)。
何だろう、このイデオロギー臭がプンプンするリアリティのないセリフは。春蝶がこの創作落語をつくったきっかけは、知覧特攻平和会館で特攻隊員の遺書を見たことらしいが、あの遺書のどこをどう解釈すれば、こんな安いアニメみたいなセリフが出てくるのか。表向き「戦争の悲劇」を語り継ぐようなポーズをとってはいるが、「特攻」や戦争を美化し、国のために国民が命をなげうつことを称揚しようという意図があるとしか思えない。
このように、本業の落語、戦争に対するアプローチでもネトウヨ的な浅さをさらけ出している桂春蝶だが、一方で、同じ戦争を扱いながら春蝶と真逆のアプローチをしている噺家がいる。それは、二代目林家三平(林家いっ平)である。
二代目林家三平といえば、祖父は七代目林家正蔵、父は初代林家三平、兄は九代目林家正蔵(林家こぶ平)という落語一家の一員として知られるが、そんな二代目林家三平は、敢えて「国策落語」を現代に蘇らせる活動を行っている。
●二代目林家三平はあえて戦時中の「国策落語」を再演!
「国策落語」とは、戦時下に落語界が「戦意高揚」のためにつくった新作落語群のこと。その内容は、軍隊賛美や貯蓄、債券購入、献金奨励などを入れ込んだ、まるでプロパガンダのようなもので、とても「笑い」に昇華されたものではなかった。本サイトでは以前にも、桂歌丸による「つまんなかったでしょうね」「お国のためになるような話ばっかりしなきゃなんないでしょ。落語だか修身だかわかんなくなっちゃう」というコメントとともに、「国策落語」について紹介した記事を配信している(http://lite-ra.com/2015/11/post-1639.html)。
しかし、わざわざ「国策落語」と銘打っていることからもあきらかにように、二代目林家三平は国策落語を上演することで、当時の戦意称揚という目的を再現しようとしているわけではない。その逆だ。戦争礼賛というイデオロギーが無理やり注入された落語のつまらなさ、リアリティのなさをそのまま現代に蘇らせることで、「戦争」の本質を考えようとしているのだ。
たとえば、三平が板に乗せているのは祖父・七代目林家正蔵がつくった国策落語「出征祝」。ケチで有名な大商店の若旦那に召集令状が届いたときの話だが、その中身は到底、「落語」とは思えないものだ。
お祝いのためお頭付きの鯛が出てくると思ったら、イワシの目刺ししか出てこなかったことで、一悶着起きるのだが、いつのまにか、ケチがいかにお国に貢献できるかという"感動話"に。帰ってきた若旦那の父親も息子の出征を「私も日本男児だ。天子さまの子だ。私の倅がお国のために役に立つってんだったら、私は喜んで倅を差し出しますよ」と手放しで喜んだ上、「けちん坊が役に立って国防献金ができる」などというセリフまで口にする。
そして、「一升瓶を二本買ってきた。こら、若旦那さま、縁起がいいな」「若旦那、縁起がいい?」「あぁ、そうだ。一升瓶を二本だろう。二本買った。日本勝った」というサゲで締められるものだ。
この「出征祝」について、林家三平は2016年3月1日の「BuzzFeed Japan News」で「どんな古典落語より難しいですね」と語ったうえで、通常の古典落語との違いをこのように説明している。
「落語ってケチなら笑えるくらいケチだし、登場人物が基本的に失敗するんですよね。そこに人間の業だとか、生きていく上で大事な教えが詰まっている。でも、この話は落語的な価値観で描かれる登場人物が出てくるんだけど、ケチは美徳として描かれる。いびつな構成になっています」
また、三平は同じく「BuzzFeed Japan News」で、2015年の安保法制国会前デモにも触れながら、国策落語をあえて復活させた動機をこう語っている。
「そのなかで、経験談を語り継ぐだけでいいのでしょうか。体験していない人が語っても力は弱くなります。ならば、思いっきり戦争を賛美する落語という真逆のアプローチで、逆に戦争というものを考えるフィールドを作れるのではと思ったのです」
「先の戦争をどう考えるのか。若旦那は18歳から20歳だと思って、演じています。今なら選挙権を持つ世代ですよね。そんな若旦那が遺言を残した時代です。国のために戦争に行くのは嫌でも、家や会社、周囲の人が『非国民』と言われるのが嫌で行ったかもしれない。戦争に負けたという事実をどう捉えますか。いまの時代は平和でものも自由に言える。これからの社会を考えたいと思う人たちの前で、国策落語はまだまだやってみたいと思っています」
●「昭和の爆笑王」初代林家三平は「肉弾特攻」の訓練を受けていた
こうした林家三平の戦争への視点には、先代の三平の戦争体験も影響しているのかもしれない。
9歳のときに父と死別しているため、先代の三平から直接戦争の話を聞いたことはほとんどないそうだが、実は、初代林家三平は本土決戦部隊として徴兵され、千葉の九十九里浜に配属された過去をもっている。アメリカ軍が上陸した際、爆弾を抱えて戦車に突撃していく「肉弾特攻」のための兵士として訓練を受けていたのだ。もしも戦争が長期化していたら、この戦いで犠牲となっていたかもしれない。
初代林家三平の本名は海老名栄三郎というが、彼は戦後に「栄三郎」から「泰一郎」に改名している。二代目林家三平は2015年9月に放送された『昭和の爆笑王林家三平 いま明かされる戦争秘話』(BS朝日)の取材で九十九里浜を訪れ、彼自身もかつて父が行っていたように、砂浜掘った穴に籠って波の音しか聞こえない真っ暗な闇に耐える訓練を行ったという。そこで彼は、父が復員後に名前を変えた理由を悟った。「週刊現代」(講談社)17年1月14日・21日合併号ではこのように語っている。
「波の音しか聞こえない真っ暗闇の中、死の恐怖にじっと耐える父の体験を追想してみました。そこでわかったのは、海老名栄三郎という男は一度死んだということ。復員後、父は名前を栄三郎から泰一郎に改めていますが、この体験と無縁ではなかったと思います」
そして、このときの体験と「心の戦死」は、後に「昭和の爆笑王」として名を馳せる父の破天荒な芸風をかたちづくったのではないかと語っている。
「戦後の日本で、生まれ変わった自分がどう生きるか。その答えとして、世の中は古典落語だけでなく弾けた笑いを求めていると父は考え、そこに突出させた芸に突き進もうと舵を切ったのだと思います」(前掲「週刊現代」より)
いずれにしても、こうした三平の言葉を聞けば聞くほど、桂春蝶との差が浮き彫りになってくる。
国策落語の戦意高揚とリアリティのなさをあえて前面に出すことで、逆説的に戦争のリアリティに迫ろうとしている二代目林家三平。リアリティのない特攻英雄譚をつくりだして「特攻隊員の精神は崇高なもの」などと語っている三代目桂春蝶。いったいどちらが戦争というものを深く考えているのか、答えは明らかだろう。(編集部)
桂歌丸が戦争の空気に危機感! 戦争がもたらした落語界の暗い過去...子供を産まない女性を糾弾する国策落語まで - ライブドアニュース
桂歌丸が戦争の空気に危機感! 戦争がもたらした落語界の暗い過去...子供を産まない女性を糾弾する国策落語まで
2015年11月1日 12時0分
LITERA(リテラ)
戦後70年という節目の年。民主主義を無視するかたちで安保法案が強行採決されてこの夏は過ぎた。そんななか、それでも「戦争の悲惨さ」を伝えようと多くの人が声をあげ続けている。落語家の桂歌丸もそのひとりである。
終戦時には9歳、疎開先の千葉から故郷の横浜に帰ると一面が焼け野原、もちろん生家も焼失していたという経験をもつ歌丸は語る。
〈今、日本は色んなことでもめてるじゃないですか。戦争の『せ』の字もしてもらいたくないですよね。あんな思いなんか二度としたくないし、させたくない〉
〈テレビで戦争が見られる時代ですからね。あれを見て若い方がかっこいいと思ったら、えらいことになる〉(朝日新聞デジタル2015年10月19日)
戦時中、ひもじい思いをしながらも、なんとか口にすることのできたサツマイモばかり食べる幼き日々。それがトラウマとなり、〈あたしぁとうとういまだにサツマイモが食べらんねえんだ〉と告白する歌丸師匠は、落語家らしく、こんな表現で「戦争」の醜さ・悲惨さを表現した。
〈人間、人を泣かせることと人を怒らせること、これはすごく簡単ですよ。人を笑わせること、これはいっちばん難しいや〉
〈人間にとって一番肝心な笑いがないのが、戦争をしている所〉(同前)
戦争には笑いがない。桂歌丸がこう語るのには、戦中の落語界が当時の体制に半ば強制されるようなかたちで53種の噺を口座にかけないよう自粛し、さらに、戦意高揚を煽るような新作落語を次々と発表したことで、戦争協力に加担してしまった過去への反省も込められているのだろう。落語界が戦時中たどった道程とはいかなるものだったのかは、演芸評論家である柏木新による『はなし家たちの戦争─禁演落語と国策落語』(本の泉社)に詳しい。
突然だが、浅草・本法寺に「はなし塚」という塚がある。これは戦時中葬られた53種の「禁演落語」の墓として1941年10月につくられたものである。これら53の噺は、遊郭に関した噺、妾を扱った噺、色恋にまつわる噺など、国のために質素倹約を奨励された時局に合わないとされたものが選ばれた。そのなかには吉原を舞台にした「明鳥」など、今でも盛んに高座に上げられる人気の噺も含まれている。
これら禁演落語は、あくまで落語界側による「自主規制」の体裁をとっていたが、その過程をよく見てみれば、事実上、国からの半ば強制であった。落語界が自粛に走らなければならなかった理由のひとつとして、まず、1940年2月、警視庁が興行取締規則を改正、落語家・歌手・俳優など、すべての芸能関係者が「技芸者之証」を携帯するよう義務づけられたことがあげられる。これにより権力が庶民に大きな影響を与える芸能を管理することがたやすくなった。実際、榎本健一(エノケン)、古川ロッパと並び三大喜劇人として人気を集めた柳家・柳家金語楼は戦中、落語家の鑑札を取り上げられ、俳優への転業を余儀なくされている。彼の自伝『泣き笑い50年』(日本図書センター)には、当時の警視庁とのやり取りがこう綴られている。
〈「きみは、はなし家の看板をはずして俳優の鑑札にし給え。第一、きみがはなしをしたら、お客が笑うじゃないか......」
「そりゃ笑いますよ、笑わせるのがはなし家の商売だもの......」
「それがいかん、いまどきそんな......第一それに、芝居なら"ここがいけないからこう直せ"と結果がつけられるのと違って、落語というのはつかみどころがない......」
「でもねえ、三十何年この方、私は高座を離れたことがなかったんですよ」
「いやダメだ。どうしてもはなしがやりたけりゃ余暇にやるがいい。本業はあくまでも俳優の鑑札にしなきゃいかん......」」〉
庶民から「笑い」すら奪おうとする戦時下体制のひどさがよく分かるエピソードだ。そして、この「技芸者之証」の制度に加え、1940年7月7日に発布された「奢侈品等製造販売制限規則(七・七禁令)」など、銃後の生活の引き締めを意図した動きも決定的な影響を与える。「ぜいたくは敵だ」といった標語が飛び交うなか、遊郭や色恋をネタに笑いを生み出す芸は権力から睨まれるようになっていき、自主規制へと向かわざるを得なくなっていく。
しかし、もっと罪深く、悲劇的だったのは、落語界が戦争協力の一端を担ってしまった「国策落語」だ。戦意高揚のための文化政策への協力を強いられた落語界は古典落語の名作を封印するだけにとどまらず、時局に合った国策落語を新作として次々と発表していく。内容は、軍隊賛美や貯蓄、債券購入、献金奨励などを入れ込んだ、まるでプロパガンダのような内容。本稿冒頭で引いた桂歌丸のインタビューでも当時の国策落語について〈つまんなかったでしょうね〉〈お国のためになるような話ばっかりしなきゃなんないでしょ。落語だか修身だかわかんなくなっちゃう〉と語られている。
人々を笑わせるために演じられる落語なのに、なにもおかしくないという悲しい落語が戦時中はたくさん高座に上げられた。権力の意向に沿うための落語はどんどん歪なものに変質。「笑い」どころか、ただ単に人を傷つけるものにすら変わっていった。当時のスローガン「産めよ殖やせよ」をテーマにつくられた「子宝部隊長」という落語では、子どもを産んでいない女性に向けられるこんなひどい台詞が登場する。
〈何が無理だ。産めよ殖やせよ、子宝部隊長だ。国策線に順応して、人的資源を確保する。それが吾れ吾れの急務だ。兵隊さんになる男の子を、一日でも早く生むことが、お国の為につくす一つの仕事だとしたら、子供を産まない女なんか、意義がないぞ。お前がどうしても男の子を産まないんなら、国策に違反するスパイ行動として、憲兵へ訴えるぞ〉
なにも面白くない、女性を愚弄するようなこのような台詞から、いかに当時の落語がねじ曲げられてしまっていたのかということがよく分かる。ただ、このような状況は、浪曲・漫才・講談など、庶民の人気を集める他の演芸においても同じだった。しかし、芸人たちもただ唯々諾々とお上の言うことに従っていたわけではない。林家彦六は著書『噺家の手帖』(一声社)のなかで、漫才師・林家染団治のこんなエピソードを紹介している。
〈すこし愉快な話をしよう。大東亜戦争になってから国民は金銀を手放しダイヤを提供し、果ては銅像から鉄瓶までお上へ差し上げた。その頃のこと。総理は東条英機大将だ。首相官邸に宴会があって二、三の芸人が余興に出演した。その中に漫才で〈ゴリラ〉の真似を得意にしている林家染団治がいた。
やがて自分の出演順がきたので対人の芸人と二人で定めの場所へ出て一礼し漫才にとりかかると総理以下主客の居並ぶ客間の中央にテーブルが据えてあって花瓶に花が一ぱい飾ってある。漫才を演りながら染団治がどうも彼の花瓶はメッキではなくって本物の金だナと睨んだ。やがて漫才の喋りが終わって得意のゴリラの真似になったので『どじょうすくい』を踊りながら舞台から客席へ降りてゆき卓上の花瓶に近づいてたたいたりひっかいたり肚の中でてめえだけ金を持っていてこの罰当たりウォーッとどなった。庶民の淡い反抗だ〉
また浪曲師の広沢虎造も、愛国的内容の浪曲を演じさせられた壇上で、政府の役員を目の前に〈こういう新作台本は私は甚だ不得意で、やれといわれてもやれまへん、芸人は自分の持っている芸を大切にして、その芸でお国に御奉公すればこそ愛国であって、戦争ものを読んだからというてそれが何の愛国だっしゃろ〉と言い放ったとの逸話も残されている。
これらのエピソードは聞いているだけで大変胸のすく思いのする話だが、これらはあくまでも「ささやかな抵抗」に過ぎず、戦時下、芸人たちは自分たちのやりたい芸をできない状況に追い込まれたのは厳然たる事実だ。
先ほどご紹介した「はなし塚」では、今でも毎年落語芸術協会による法要が行われ、「禁演落語」を生み出してしまった苦い経験を忘れまいと落語家たちが集まっている。しかし、爆笑問題が政治ネタの漫才をNHKに持っていったら却下されたり、SEALDsのデモに参加した石田純一が事務所や広告代理店から圧力を受けたりと、どうも時代は「禁演落語」を生み出してしまった時代に逆戻りしているような気がしてならない。
エンタテインメントは庶民の生きる糧であり、そして、「笑い」は庶民が持ち得る権力への抵抗の武器だ。それが奪われるような状況を再びもたらしてはならないし、権力にそのような介入を許すことも断じて認められない。
最後に、戦時中は「仏領インドシナ二三隊」に従軍し、戦後、人間国宝にまでなった五代目柳家小さんの言葉を引いて本稿を閉じたい。戦争は我々になんの利益ももたらしてはくれないし、何よりも、大切な「笑い」を奪うものなのだ。
〈お前らはよくテレビや映画で見ていると、戦争なんていうものは、何か勇ましいものだ、かっこいいもんだと思っているだろう。冗談じゃねえぞ。そんなもんじゃねえ。実際行ってごらんよ〉
〈そりゃ、もうむごいもんだぜ〉
〈だからな、これから何事かおきても日本は、戦争なんかしちゃいけねえ。行ったおれたちが言うんだから、間違いねえよ〉(井川健二)
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桂春蝶は本業の落語でも特攻美化の創作落語を上演! 一方、二代目林家三平は対照的な戦争へのアプローチ - ライブドアニュース
桂春蝶は本業の落語でも
特攻美化の創作落語を上演!
一方、二代目林家三平は
対照的な戦争へのアプローチ
2018年3月4日 16時30分
LITERA(リテラ)
落語家・三代目桂春蝶による〈この国での貧困は絶対的に「自分のせい」〉というツイートが大炎上した問題。本サイトは、3月1日放送『バイキング』(フジテレビ)でそのツイートを正当化するために出演したにもかかわらず、坂上忍、フットボールアワー後藤輝樹、岩尾望からコテンパンに批判されたことをお伝えした。
この『バイキング』での一連の釈明のなかで春蝶は、唐突に、これまでのキャリアのなかで戦争をテーマにした創作落語をつくってきたという話をし始めた。その噺をつくる過程で、ひめゆり学徒隊や従軍看護師だった人たちに取材を行い、そのなかで「私はいまの国というのは幸せなほうなのではないのかなと。日本人に生まれただけでひとつ幸運なのではないかな」と感じたと語っている。
実際、春蝶は戦争に材をとった創作落語を高座に上げている。それが、鹿児島県知覧基地から飛び立った特攻隊員を描いた『明日ある君へ~知覧特攻物語~』だ。
この噺は、死期が迫りつつある病床の祖父を看病しながら眠り込んだ若者が目を覚ますと、なぜか戦中の日本にタイムスリップしていて飛行場に立っており、そこで当時の兵隊らとの交流が始まる、というもの。この時点で、百田尚樹の『永遠の0』を思い出させるが、スタンスもそっくりだ。
たとえば、春蝶はこの落語のなかで、特攻隊員にこんなセリフを語らせているのだという。
「これ以上犠牲を出さぬため、われわれが全員死ぬ以外、日本が救われる方法はない。それがおれたち隊員が考える『守るべきものを守る』ということ」(「産経WEST」2015年8月12日より)。
何だろう、このイデオロギー臭がプンプンするリアリティのないセリフは。春蝶がこの創作落語をつくったきっかけは、知覧特攻平和会館で特攻隊員の遺書を見たことらしいが、あの遺書のどこをどう解釈すれば、こんな安いアニメみたいなセリフが出てくるのか。表向き「戦争の悲劇」を語り継ぐようなポーズをとってはいるが、「特攻」や戦争を美化し、国のために国民が命をなげうつことを称揚しようという意図があるとしか思えない。
このように、本業の落語、戦争に対するアプローチでもネトウヨ的な浅さをさらけ出している桂春蝶だが、一方で、同じ戦争を扱いながら春蝶と真逆のアプローチをしている噺家がいる。それは、二代目林家三平(林家いっ平)である。
二代目林家三平といえば、祖父は七代目林家正蔵、父は初代林家三平、兄は九代目林家正蔵(林家こぶ平)という落語一家の一員として知られるが、そんな二代目林家三平は、敢えて「国策落語」を現代に蘇らせる活動を行っている。
●二代目林家三平はあえて戦時中の「国策落語」を再演!
「国策落語」とは、戦時下に落語界が「戦意高揚」のためにつくった新作落語群のこと。その内容は、軍隊賛美や貯蓄、債券購入、献金奨励などを入れ込んだ、まるでプロパガンダのようなもので、とても「笑い」に昇華されたものではなかった。本サイトでは以前にも、桂歌丸による「つまんなかったでしょうね」「お国のためになるような話ばっかりしなきゃなんないでしょ。落語だか修身だかわかんなくなっちゃう」というコメントとともに、「国策落語」について紹介した記事を配信している(http://lite-ra.com/2015/11/post-1639.html)。
しかし、わざわざ「国策落語」と銘打っていることからもあきらかにように、二代目林家三平は国策落語を上演することで、当時の戦意称揚という目的を再現しようとしているわけではない。その逆だ。戦争礼賛というイデオロギーが無理やり注入された落語のつまらなさ、リアリティのなさをそのまま現代に蘇らせることで、「戦争」の本質を考えようとしているのだ。
たとえば、三平が板に乗せているのは祖父・七代目林家正蔵がつくった国策落語「出征祝」。ケチで有名な大商店の若旦那に召集令状が届いたときの話だが、その中身は到底、「落語」とは思えないものだ。
お祝いのためお頭付きの鯛が出てくると思ったら、イワシの目刺ししか出てこなかったことで、一悶着起きるのだが、いつのまにか、ケチがいかにお国に貢献できるかという"感動話"に。帰ってきた若旦那の父親も息子の出征を「私も日本男児だ。天子さまの子だ。私の倅がお国のために役に立つってんだったら、私は喜んで倅を差し出しますよ」と手放しで喜んだ上、「けちん坊が役に立って国防献金ができる」などというセリフまで口にする。
そして、「一升瓶を二本買ってきた。こら、若旦那さま、縁起がいいな」「若旦那、縁起がいい?」「あぁ、そうだ。一升瓶を二本だろう。二本買った。日本勝った」というサゲで締められるものだ。
この「出征祝」について、林家三平は2016年3月1日の「BuzzFeed Japan News」で「どんな古典落語より難しいですね」と語ったうえで、通常の古典落語との違いをこのように説明している。
「落語ってケチなら笑えるくらいケチだし、登場人物が基本的に失敗するんですよね。そこに人間の業だとか、生きていく上で大事な教えが詰まっている。でも、この話は落語的な価値観で描かれる登場人物が出てくるんだけど、ケチは美徳として描かれる。いびつな構成になっています」
また、三平は同じく「BuzzFeed Japan News」で、2015年の安保法制国会前デモにも触れながら、国策落語をあえて復活させた動機をこう語っている。
「そのなかで、経験談を語り継ぐだけでいいのでしょうか。体験していない人が語っても力は弱くなります。ならば、思いっきり戦争を賛美する落語という真逆のアプローチで、逆に戦争というものを考えるフィールドを作れるのではと思ったのです」
「先の戦争をどう考えるのか。若旦那は18歳から20歳だと思って、演じています。今なら選挙権を持つ世代ですよね。そんな若旦那が遺言を残した時代です。国のために戦争に行くのは嫌でも、家や会社、周囲の人が『非国民』と言われるのが嫌で行ったかもしれない。戦争に負けたという事実をどう捉えますか。いまの時代は平和でものも自由に言える。これからの社会を考えたいと思う人たちの前で、国策落語はまだまだやってみたいと思っています」
●「昭和の爆笑王」初代林家三平は「肉弾特攻」の訓練を受けていた
こうした林家三平の戦争への視点には、先代の三平の戦争体験も影響しているのかもしれない。
9歳のときに父と死別しているため、先代の三平から直接戦争の話を聞いたことはほとんどないそうだが、実は、初代林家三平は本土決戦部隊として徴兵され、千葉の九十九里浜に配属された過去をもっている。アメリカ軍が上陸した際、爆弾を抱えて戦車に突撃していく「肉弾特攻」のための兵士として訓練を受けていたのだ。もしも戦争が長期化していたら、この戦いで犠牲となっていたかもしれない。
初代林家三平の本名は海老名栄三郎というが、彼は戦後に「栄三郎」から「泰一郎」に改名している。二代目林家三平は2015年9月に放送された『昭和の爆笑王林家三平 いま明かされる戦争秘話』(BS朝日)の取材で九十九里浜を訪れ、彼自身もかつて父が行っていたように、砂浜掘った穴に籠って波の音しか聞こえない真っ暗な闇に耐える訓練を行ったという。そこで彼は、父が復員後に名前を変えた理由を悟った。「週刊現代」(講談社)17年1月14日・21日合併号ではこのように語っている。
「波の音しか聞こえない真っ暗闇の中、死の恐怖にじっと耐える父の体験を追想してみました。そこでわかったのは、海老名栄三郎という男は一度死んだということ。復員後、父は名前を栄三郎から泰一郎に改めていますが、この体験と無縁ではなかったと思います」
そして、このときの体験と「心の戦死」は、後に「昭和の爆笑王」として名を馳せる父の破天荒な芸風をかたちづくったのではないかと語っている。
「戦後の日本で、生まれ変わった自分がどう生きるか。その答えとして、世の中は古典落語だけでなく弾けた笑いを求めていると父は考え、そこに突出させた芸に突き進もうと舵を切ったのだと思います」(前掲「週刊現代」より)
いずれにしても、こうした三平の言葉を聞けば聞くほど、桂春蝶との差が浮き彫りになってくる。
国策落語の戦意高揚とリアリティのなさをあえて前面に出すことで、逆説的に戦争のリアリティに迫ろうとしている二代目林家三平。リアリティのない特攻英雄譚をつくりだして「特攻隊員の精神は崇高なもの」などと語っている三代目桂春蝶。いったいどちらが戦争というものを深く考えているのか、答えは明らかだろう。(編集部)
桂歌丸が戦争の空気に危機感! 戦争がもたらした落語界の暗い過去...子供を産まない女性を糾弾する国策落語まで - ライブドアニュース
桂歌丸が戦争の空気に危機感! 戦争がもたらした落語界の暗い過去...子供を産まない女性を糾弾する国策落語まで
2015年11月1日 12時0分
LITERA(リテラ)
戦後70年という節目の年。民主主義を無視するかたちで安保法案が強行採決されてこの夏は過ぎた。そんななか、それでも「戦争の悲惨さ」を伝えようと多くの人が声をあげ続けている。落語家の桂歌丸もそのひとりである。
終戦時には9歳、疎開先の千葉から故郷の横浜に帰ると一面が焼け野原、もちろん生家も焼失していたという経験をもつ歌丸は語る。
〈今、日本は色んなことでもめてるじゃないですか。戦争の『せ』の字もしてもらいたくないですよね。あんな思いなんか二度としたくないし、させたくない〉
〈テレビで戦争が見られる時代ですからね。あれを見て若い方がかっこいいと思ったら、えらいことになる〉(朝日新聞デジタル2015年10月19日)
戦時中、ひもじい思いをしながらも、なんとか口にすることのできたサツマイモばかり食べる幼き日々。それがトラウマとなり、〈あたしぁとうとういまだにサツマイモが食べらんねえんだ〉と告白する歌丸師匠は、落語家らしく、こんな表現で「戦争」の醜さ・悲惨さを表現した。
〈人間、人を泣かせることと人を怒らせること、これはすごく簡単ですよ。人を笑わせること、これはいっちばん難しいや〉
〈人間にとって一番肝心な笑いがないのが、戦争をしている所〉(同前)
戦争には笑いがない。桂歌丸がこう語るのには、戦中の落語界が当時の体制に半ば強制されるようなかたちで53種の噺を口座にかけないよう自粛し、さらに、戦意高揚を煽るような新作落語を次々と発表したことで、戦争協力に加担してしまった過去への反省も込められているのだろう。落語界が戦時中たどった道程とはいかなるものだったのかは、演芸評論家である柏木新による『はなし家たちの戦争─禁演落語と国策落語』(本の泉社)に詳しい。
突然だが、浅草・本法寺に「はなし塚」という塚がある。これは戦時中葬られた53種の「禁演落語」の墓として1941年10月につくられたものである。これら53の噺は、遊郭に関した噺、妾を扱った噺、色恋にまつわる噺など、国のために質素倹約を奨励された時局に合わないとされたものが選ばれた。そのなかには吉原を舞台にした「明鳥」など、今でも盛んに高座に上げられる人気の噺も含まれている。
これら禁演落語は、あくまで落語界側による「自主規制」の体裁をとっていたが、その過程をよく見てみれば、事実上、国からの半ば強制であった。落語界が自粛に走らなければならなかった理由のひとつとして、まず、1940年2月、警視庁が興行取締規則を改正、落語家・歌手・俳優など、すべての芸能関係者が「技芸者之証」を携帯するよう義務づけられたことがあげられる。これにより権力が庶民に大きな影響を与える芸能を管理することがたやすくなった。実際、榎本健一(エノケン)、古川ロッパと並び三大喜劇人として人気を集めた柳家・柳家金語楼は戦中、落語家の鑑札を取り上げられ、俳優への転業を余儀なくされている。彼の自伝『泣き笑い50年』(日本図書センター)には、当時の警視庁とのやり取りがこう綴られている。
〈「きみは、はなし家の看板をはずして俳優の鑑札にし給え。第一、きみがはなしをしたら、お客が笑うじゃないか......」
「そりゃ笑いますよ、笑わせるのがはなし家の商売だもの......」
「それがいかん、いまどきそんな......第一それに、芝居なら"ここがいけないからこう直せ"と結果がつけられるのと違って、落語というのはつかみどころがない......」
「でもねえ、三十何年この方、私は高座を離れたことがなかったんですよ」
「いやダメだ。どうしてもはなしがやりたけりゃ余暇にやるがいい。本業はあくまでも俳優の鑑札にしなきゃいかん......」」〉
庶民から「笑い」すら奪おうとする戦時下体制のひどさがよく分かるエピソードだ。そして、この「技芸者之証」の制度に加え、1940年7月7日に発布された「奢侈品等製造販売制限規則(七・七禁令)」など、銃後の生活の引き締めを意図した動きも決定的な影響を与える。「ぜいたくは敵だ」といった標語が飛び交うなか、遊郭や色恋をネタに笑いを生み出す芸は権力から睨まれるようになっていき、自主規制へと向かわざるを得なくなっていく。
しかし、もっと罪深く、悲劇的だったのは、落語界が戦争協力の一端を担ってしまった「国策落語」だ。戦意高揚のための文化政策への協力を強いられた落語界は古典落語の名作を封印するだけにとどまらず、時局に合った国策落語を新作として次々と発表していく。内容は、軍隊賛美や貯蓄、債券購入、献金奨励などを入れ込んだ、まるでプロパガンダのような内容。本稿冒頭で引いた桂歌丸のインタビューでも当時の国策落語について〈つまんなかったでしょうね〉〈お国のためになるような話ばっかりしなきゃなんないでしょ。落語だか修身だかわかんなくなっちゃう〉と語られている。
人々を笑わせるために演じられる落語なのに、なにもおかしくないという悲しい落語が戦時中はたくさん高座に上げられた。権力の意向に沿うための落語はどんどん歪なものに変質。「笑い」どころか、ただ単に人を傷つけるものにすら変わっていった。当時のスローガン「産めよ殖やせよ」をテーマにつくられた「子宝部隊長」という落語では、子どもを産んでいない女性に向けられるこんなひどい台詞が登場する。
〈何が無理だ。産めよ殖やせよ、子宝部隊長だ。国策線に順応して、人的資源を確保する。それが吾れ吾れの急務だ。兵隊さんになる男の子を、一日でも早く生むことが、お国の為につくす一つの仕事だとしたら、子供を産まない女なんか、意義がないぞ。お前がどうしても男の子を産まないんなら、国策に違反するスパイ行動として、憲兵へ訴えるぞ〉
なにも面白くない、女性を愚弄するようなこのような台詞から、いかに当時の落語がねじ曲げられてしまっていたのかということがよく分かる。ただ、このような状況は、浪曲・漫才・講談など、庶民の人気を集める他の演芸においても同じだった。しかし、芸人たちもただ唯々諾々とお上の言うことに従っていたわけではない。林家彦六は著書『噺家の手帖』(一声社)のなかで、漫才師・林家染団治のこんなエピソードを紹介している。
〈すこし愉快な話をしよう。大東亜戦争になってから国民は金銀を手放しダイヤを提供し、果ては銅像から鉄瓶までお上へ差し上げた。その頃のこと。総理は東条英機大将だ。首相官邸に宴会があって二、三の芸人が余興に出演した。その中に漫才で〈ゴリラ〉の真似を得意にしている林家染団治がいた。
やがて自分の出演順がきたので対人の芸人と二人で定めの場所へ出て一礼し漫才にとりかかると総理以下主客の居並ぶ客間の中央にテーブルが据えてあって花瓶に花が一ぱい飾ってある。漫才を演りながら染団治がどうも彼の花瓶はメッキではなくって本物の金だナと睨んだ。やがて漫才の喋りが終わって得意のゴリラの真似になったので『どじょうすくい』を踊りながら舞台から客席へ降りてゆき卓上の花瓶に近づいてたたいたりひっかいたり肚の中でてめえだけ金を持っていてこの罰当たりウォーッとどなった。庶民の淡い反抗だ〉
また浪曲師の広沢虎造も、愛国的内容の浪曲を演じさせられた壇上で、政府の役員を目の前に〈こういう新作台本は私は甚だ不得意で、やれといわれてもやれまへん、芸人は自分の持っている芸を大切にして、その芸でお国に御奉公すればこそ愛国であって、戦争ものを読んだからというてそれが何の愛国だっしゃろ〉と言い放ったとの逸話も残されている。
これらのエピソードは聞いているだけで大変胸のすく思いのする話だが、これらはあくまでも「ささやかな抵抗」に過ぎず、戦時下、芸人たちは自分たちのやりたい芸をできない状況に追い込まれたのは厳然たる事実だ。
先ほどご紹介した「はなし塚」では、今でも毎年落語芸術協会による法要が行われ、「禁演落語」を生み出してしまった苦い経験を忘れまいと落語家たちが集まっている。しかし、爆笑問題が政治ネタの漫才をNHKに持っていったら却下されたり、SEALDsのデモに参加した石田純一が事務所や広告代理店から圧力を受けたりと、どうも時代は「禁演落語」を生み出してしまった時代に逆戻りしているような気がしてならない。
エンタテインメントは庶民の生きる糧であり、そして、「笑い」は庶民が持ち得る権力への抵抗の武器だ。それが奪われるような状況を再びもたらしてはならないし、権力にそのような介入を許すことも断じて認められない。
最後に、戦時中は「仏領インドシナ二三隊」に従軍し、戦後、人間国宝にまでなった五代目柳家小さんの言葉を引いて本稿を閉じたい。戦争は我々になんの利益ももたらしてはくれないし、何よりも、大切な「笑い」を奪うものなのだ。
〈お前らはよくテレビや映画で見ていると、戦争なんていうものは、何か勇ましいものだ、かっこいいもんだと思っているだろう。冗談じゃねえぞ。そんなもんじゃねえ。実際行ってごらんよ〉
〈そりゃ、もうむごいもんだぜ〉
〈だからな、これから何事かおきても日本は、戦争なんかしちゃいけねえ。行ったおれたちが言うんだから、間違いねえよ〉(井川健二)
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