KIMISTEVA@DEEP

新たな「現実」を構成するサブカルチャー研究者kimistevaのブログ

現職の先生たちがもっとも嫌うドラマ:「女王の教室」

2006-11-21 17:55:23 | Weblog
「わたしにもっとも近いドラマの教師イメージって、なぁに?」
…と生徒たちに聞くと、100%、「ヤンクミ」(『ごくせん』より)という回答が返ってくる、「男子校にいそうな」「仁義に生きる」若手講師のkimistevaです。

あ。大丈夫です。自分が仲間ゆきえに似てるなんていう誤解はこれっぽっちもしたことがありません。

さてさて本題。
昨年の今ごろ、研究室のK先生から、
「現職の先生方は、みんな、『女王の教室』が嫌いらしいね。」という噂を聞きました。
そしてそれと同じ頃、内地留学で派遣されていた某先生がもっとも好きだと言っていた、教育もののドラマは『ドラゴン桜』でした。…それはいったい、どうなんだ。


さて、その頃、わたしは阿部寛につられて『ドラゴン桜』を一回だけ見たことがありましたが、『女王の教室』は見たことがありませんでした。
そればかりか…、
「天海祐希の宝塚ダンスが見られる!」とか、
「天海祐希の宝塚系戦闘シーンが見られる!」…とか、

そんな細部ばかりが拡大されて伝わるので、噂に聞くストーリーとのギャップがひどくなるばかりでした。

(でも、本当にダンスシーンも、戦闘シーンもありました。驚き。
しかもちゃんと宝塚系の振り付けや殺陣だったので、二重に驚きました。
それにしても、やっぱり天海祐希はいつまでたってもカッコイイ…ほれぼれ)

そんなわけで今回、再放送された最終回と最終回の前話の2回分を見たのをきっかけに、HPで全話のストーリーを拝見いたしました。
ドラマの雰囲気がきちんと残されたまま、ストーリーが辿れるようになっているので、もし、お暇な方がいらっしゃいましたら、ぜひごらんください。

噂どおり、掲示板では賛否両論の議論で盛り上がっていたようですが、
わたしは、ああいう教師のありかたが「賛成」とか「反対」とか、そんなこととはまったく別の感想を持ちました。

視聴者がどのように作品を見るかは自由ですし、
そこからよりクリエイティブな解釈が生まれる可能性もあるので、
まったく見当はずれだとは思いますが、ここに書いておきたいと思います。


『女王の教室』の主人公・阿久津真矢は、大村はま氏(国語教育の有名な実践家)の影響を受けてると思う。
(あるいは、彼女の書いたものに影響を受けて脚本が書かれていると思う)

ああー。国語教育研究関係者しかわからないことを言ってしまった…。
まあ、いいや。

ドラマやHPのストーリーを見ていると、その今回にある阿久津真矢の教育への信念みたいなものの中に、大村はま氏の影がちらちらしているように思う。

「子どもたちは、いずれ、社会に出ていなければならない」ということを第一に考えて教育のありかたを考える点とか。

担任を持ったクラスの初めての授業の前に、クラス全員の顔と名前を完璧に覚えておくところとか。
クラス全員の記録を名前別にファイルにして蓄積してるところとか。

…そう考えると、あの名台詞「いいかげん、目覚めなさい」…ってのも、「気づくこと」をやたら重視するのも、大村哲学だなぁ、と思えたりしてくる。

さらに補足的に言えば、
周囲の教師たちやらに理解が得られない点とか(ドラマの方が大村はま氏よりも周囲の理解者が多い、というのはなかなか笑えない話だ)…そんな細かい設定まで、似てるなぁと思えてきて、どうしようもない。

わたしは、どちらかというと、そっちが気になってしまって、「阿久津真矢は本当は良い教師なのか?」とか、あまりそういう方向で考えられなかった。

ただ、一言言えば、あのドラマが「ああいう先生こそすばらしいんだ!」というアジテーションを徹底的に避けようとしながら、やはり避けられなかった…という点は、とても残念だと思う。
もっと大きな問題圏を視聴者に提出しようとしたにも関わらず、やっぱり、視聴者は、「良い先生か、悪い先生か」という二項対立でものごとを捉えようとしてしまう。
そこに、やはり大きな限界がある。

そして、その限界がたとえば、
「いじめはなくせると思いますか?」という質問に対し、ほとんどの人たちが「なくならない!」と答えるような現実を作ることに貢献してしまったのだとすれば、それはやはり批判されなければならないと思う。
…とはいえ、その批判の対象は、製作者の側ではなく、視聴者の側に、すなわちメディア・リテラシー教育の問題として定位されるべきだとは思うけどね。
(このあたり、製作者の意図はどうなんでしょうね?)

「理解不可能なもの」をそのままゆっくり自分の中で消化していける人は、
きっとたくさんの発見をするのだと思うけれども、
「理解不可能なもの」を抱えきれない人は、きっと、感情的に猛反発したり、
あるいは、「これは良い先生だ!すばらしい先生だ!」と賞賛して、阿久津先生のいうことを、そのまま「真実」として語ったりするんだろうね。

…それはちょっと危険なことなのではないかしら。

まあ、とはいえ、少なくとも、わたしはこのドラマがけっこう好きだ。
だって、天海祐希がひたすら、カッコイイんだもん。

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