東京 DOWNTOWN STREET 1980's

東京ダウンタウンストリート1980's
1980年代初頭に撮影した東京の町並み、そして消え去った過去へと思いを馳せる。

同潤会赤羽分譲地~梅の木荘

2013-03-02 20:46:33 | 北区
北区西が丘を歩いてみて、次に進む前にこれをまとめておかないとということで、改めて歩いてみてきた。現在の北区で同潤会の行った事業は幾つかあるのだが、その中でも十条仲原と赤羽西の普通住宅の建設と経営、西が丘の勤め人向け分譲地の開発と販売は、同潤会の行った仕事をまとめてその成果を見る事が出来るという点で、興味深いと書いた。確かにその通りなのだが、その後に出て来た資料を子細に見ていくと、西が丘エリアの全てを同潤会が開発したというわけではないようだ。むしろ、中心の一部を同潤会が開発して分譲した、それに釣られて周囲も宅地化していったということのようだ。

震災後に十条仲原と赤羽西の普通住宅が建設されたのだが、この場所になった理由としては、広大な未利用地があった事が先ず上げられるが、一方では荒川放水路と岩淵水門の完成までは、隅田川沿いの低地エリアは洪水の頻発する土地で、住宅地としては不向きであった事が上げられるだろう。台地上は安心できる場所であった。

まず、同潤会の分譲地の位置の特定をすべく調べてみた。赤羽地区での分譲住宅は三つに別れている。赤羽第一は、王子区稲付西町三丁目に八戸、昭和4年4月完成された。赤羽第二は、同じ王子区稲付西町三丁目に五十五戸が、昭和4年5月に完成している。この二つは事実上ほぼ同じエリアに当たると思われる。赤羽第三は、王子区稲付町四丁目に二戸、昭和13年6月に建てられている。この中では、赤羽第一と第二が、西が丘という町の形成に大きく関わっているものと言えるだろう。「同潤会基礎資料」に当たってみると、赤羽第二については建物の区割りと配置図が図面として収録されている。


これを元に、現在の地図と重ねて、該当するところを探してみたところ、下の地図の赤く塗ったところがこの配置図に当たると思われる。赤羽第一は、上記図面の右上の角ではないかと思うのだが、決定的な資料が見当たらない。下の地図は、現在の位置関係を元にしたもので、フリーハンドなのでアバウトなところはあるが、概ね位置関係はお分かり頂けると思う。この右手が崖になっており、隅田川の氾濫原の低地へと連なっていく。また、旧北耕地川(稲付川)跡の谷間なども位置関係を掴めるように書き込んでみた。十条仲原の同潤会普通住宅は、感情名七号線の北側で地図の切れ目辺りになるかと思う。JR十条駅から来た道が、環状七号線と交差して、斜めに広い区画を横切っているが、それを頭の中で消してみると、西が丘の住宅地の細かい碁盤目状の区画に隣接して、大きな四角い敷地になっている事が分かるだろうか。これは旧陸軍の施設跡で、十条駅から道がその敷地を横切ったのは戦後の事になる。


この敷地割と建物の配置図を手に、現地を歩いてみたが、さすがに同潤会の建てた家は一軒も残ってはいなかった。それでも、道々に桜の木が植えられているのは、旧同潤会のエリアであることなどが分かった。


地図で見ると、碁盤目状の整然とした区画になっているのはその通りなのだが、現地では起伏があるので、地形的には変化のある町並みになっている。この通りでは、右側だけに桜が植えられている。同潤会の分譲したエリアの端に当たるからという事のようだ。


辺りを歩いていると、確かに、この同潤会による分譲地、梅の木荘と呼ばれたここが出来た事、さらには完成度の高い住宅地である事が知られるようになり、人気が出て周辺も宅地化が進んだというのは、町並みをよく見て歩くと分かる。旧同潤会分譲地でも敷地の分割やアパートの建設もあるのだが、全体の雰囲気としては開発当初のゆとりのある住宅地を保っている。ここから西が丘二丁目方向に進んでいくと、四角行く角はそれほど変わらないのに、一個あたりの区画が小さくなってきて、庶民的な町に雰囲気が変わってくる。

同潤会のアパートも結構家賃が高価であった事も知られているが、分譲住宅も狙い目がかなりハイレベルなものであった事もあって、普通の勤め人の手が出るものではなかったという。場所柄、高級軍人などが多かったという。いまでも、落ち着いた住宅街として、北区内では他にあまり似たところのない雰囲気の町になっている。桜の咲いている時期に、もう一度この町を歩いてみたいと思う。

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