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壱岐・対馬行/その3(壱岐・原の辻遺跡)

物見櫓。左手山の上には一支国博物館


住居の中は1mほど掘り下げられている


入口に立てかけられた朝鮮式梯子


ネズミ返しが付いた穀物倉庫

一支国博物館をあとにすると、すぐに弥生の原風景・原の辻遺跡なのだが、途中安国寺のすぐ横を通った。室町時代の貴重文化財を多数所蔵している臨済宗のお寺だ。本堂の前には樹齢600年を越える長崎県指定天然記念物のスギが立っている。個人旅行なら寄ってみるのだが、車窓から見ただけだ。
さて、原の辻遺跡だ。私的には、壱岐の中ではここが最も印象に残った。ガイドが良かったかもしれない。メモなどを書いた書類を片手にかかえ、野球帽を少し深めにかぶって説明される姿は、遺跡愛そのもの。原の辻遺跡は、弥生時代の多重環濠集落あとだ。魏志倭人伝に出て来る「一支国」の王都で、国の特別史跡に指定されている。特別史跡は、“遺跡の国宝”だそうだ。弥生の特別史跡は、ここを含めて3カ所。あとの2つは登呂遺跡と、吉野ヶ里遺跡だ。登呂には行ったことはないが、吉野ヶ里は発掘され始めた頃と、整備されてからの2回行ったことがある。話はそれるが、ある講演の中で城郭考古学の千田嘉博さんが吉野ヶ里について次のように指摘した。杭が逆向きだと。杭は攻める側にあるはずなのに、攻められる側にあるとの指摘だ。今度訪ねたら確かめてみたい。
ところで原の辻遺跡だ。遺跡全体の形はほぼ楕円形で、あちこちに住居跡や穀物倉庫などが復元されている。藁葺き屋根で、その中は1mほど掘り下げられていた。その深さと、藁葺きの藁の向きが朝鮮式なのだそうだ。茅や藁で屋根を葺く場合、日本では普通穂先が上だが、ここの藁葺きは穂先は下なのだ。食材の倉にかけてある梯子も朝鮮式だそうだ。入口に立てかけられた梯子は、一木が踏み台の形に削られていた。裏返しにされた大きな下駄にも見えた。穀物倉庫には感心。床はY字の形をした枝木で支えられ、枝の分かれ目の下にはネズミ返しが付いていた。せっかく収穫した穀物をネズミにやられてしまったらたまらない。わが家では、乾燥が終わった籾は、コンバイン袋に入れてすぐに保冷庫に入れて15度保存だ。故にネズミも虫も付かない。しかし、数十年前までは厚手のスギ板で囲った所に保管していたが、毎年決まってネズミに穴をあけられていた。ということで、Y字のささえといい、ネズミ返しといい、感心することしきりだった。この他、物見櫓もあった。これは朝鮮から海を渡り、川を遡ってきた船が来るのをいち早く見つけ、迎えるためだったそうだ。すぐ側には、角が丸い住居の復元も。これも朝鮮形式との解説だった。
王が住んでいた場所は、樹木で囲まれた中央の小高い部分だ。小さな広場のようになっていて、その入口には、2本の丸太が両脇に立っていた。鳥居の元と考えられ、その上には鳥形の彫り物があった。私的にはGoodこの上無しだ。一通りの説明が終わると、もう夕方近く。おっと、忘れてはいけない。「日本最古の権」、竿秤(さおばかり)の分銅ことだ。日本で使われ始めたのは奈良時代以降のようだが、ここでは弥生時代後期には使われていたようだ。交易の場面で大切なものをはかるのに使われたものだろう。ただ、ツアー参加者には、竿秤そのものを知らない人もいた。時代と住んだ所の違いか? 名残惜しいが、夕陽が長い影をつくり始める中、ガイドとアシスタントの方に別れを告げバスに乗り込んだ。そして、お宿へ。


物見櫓と角が丸い住居


入口の丸太の上には鳥の彫り物


ガイド説明感謝(最古の権の前で)


大層なお宿ではなかったが、部屋からは入江が見えた。漁船の他、小さなドックも。波静かな入江はどこからでも魚釣りができそうだったが、気になったのは山の竹の色。竹という竹が黄色っぽいのだ。よく見ると樹木も茶色っぽいものがあった。それにお宿の軒の裏。部分的にスケスケになっているのだ。しばらくして気がついたが、あの台風9号と10号のせいだ。九州西海上を抜け、朝鮮半島へ北上した2つの大型台風だ。台風10号にいたっては、これまで経験したことのないような暴風や大雨、高波、高潮が発生すると予報された。幸い九州へ達する前に少し弱まったが、壱岐・対馬は台風のすぐ右側になり大変だったのだ。どこもここも新型コロナで大変な上に、壱岐・対馬は台風の強力パンチが加わったのだ。そんな中で出迎えられたお宿は久しぶりのツアー客だったのだろう、この日の夕食はとても豪勢だった。そして美味しかった。取れ立ての魚の刺身やアワビ等の他、少し薄くはあったが壱岐牛も。その上、デザートで終わりと思ったら最後にイサキの塩焼きまで。普段なら食べきれないところだが、美味しさのあまり全部平らげた。イサキの塩焼きは今でも忘れない味だ。ということで、満腹のお腹をかかえて旅の1日目は無事終了した。

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