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『グランド・マスター』を観た

2013年06月01日 | 中華圏映画
 何といっていいのか……とにかく《映像》に圧倒されたというのが鑑賞後の感想である。

 香港アート系監督のウォン・カーウァイが描く詠春拳“香港宗師”葉問の物語、というだけで違和感バリバリなのだが、過去にも金庸の『射雕英雄伝』のキャラクターたちを用い、自由創作した武侠片『楽園の瑕』をモノにした実績があるので馬鹿にはできない。
 実際、目にしたのは『楽園の瑕』クンフー版とも言うべき《達人》たちの苦悩と愛の物語であった。日本軍侵攻によって運命の歯車が狂わされてしまう葉問、女の幸せを捨ててまで父を殺した師兄・馬三への復讐を誓う若梅、国民党のスパイという職を投げ出して香港へと亡命する一線天……闘いとは《武》のみならず。《生きる》事が闘いなのである。

 題名となっている《GRANDMASTER(一代宗師)》は、武の高みを極めた者の呼称である。映画は二部構成のよな体裁をとっており、前半が葉問が中心となり、北派の大物・宮宝森の後継者争いを、後半は香港に渡った葉問と再会した若梅が語る十年前の復讐劇という具合になっており、最初から葉問の物語を期待すると「あれれ?」と肩透かしを食う。それだけ若梅を演じたチャン・ツィイーのインパクトが強いという事だ。白い葬装姿のツィイー(白い雪原に広がる葬列のシーンは圧巻!)、毛皮のコートを身に着け満州・奉天駅で馬三と死闘するツィイー、完全に葉問を演じたトニー・レオンを喰っている。しかしトニーも見事な演技力、4年間の準備期間で修練した詠春拳で激しい格闘シーンも、人生の酸いも甘いも演じ切り《葉問》というキャラクターに(作品としての)リアリティを持たせている。モダンでエレガント、そして《本物》の香りすら漂わせる新しいスタイルの功夫映画の誕生である。

 実は劇場公開前に本国版の映像を観賞したのだが、やや冗長気味に感じられた本国版よりも、シェーブさせきちんとアクションも《物語》も語っている日本公開版の方が良かった。ただエンドロール前の《葉問無双》のサービスシーンは、クンフー映画好きや《葉問系列》作品初鑑賞の観客にはいいかもしれないが、個人的には蛇足に思えた。とにかく観客の賛否両論を(これから)巻き起こすであろうこの映画は、間違いなくクンフー映画史に名を残すであろう傑作である。


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