中古ビデオ紹介もあと少しとなりましたが、ちょっと変更。久々の作品紹介となります。
今回はタイ初の本格的劇場CGアニメーション映画『Nak』(08)です。なんだ、また日本アニメのパクリか、と思われるかもしれませんが、ところがどっこい!オリジナリティあふれる作画と世界公開も十分に狙えるほどのクオリティの高さをもっているのだ、これが!
お化け(ピー)と人間がなんとなく共存しているタイの農村。年に一度の村祭りの夜に母親に内緒で遊びに来た姉弟が人間界を征服しようと企む悪霊に襲われ、生贄として弟を誘拐されてしまう。助けを求めお化けの居住区へ迷い込んだ姉は心優しい女性の幽霊であるナークの協力を得ると、彼女の導きによって悪霊たちの本拠地であるバンコックへと向かう。生贄の儀式の時である皆既日食までに彼女たちは弟を救う事が出来るのであろうか…?

タイ人の間では知らぬもののいない妖怪メーナーク・プラカノンを主人公にして、今までの定番ストーリーではなく(産死したナークが幽霊となりながらも愛する夫の帰りを待つ、というもの)全く新しい物語を作り出した。それが成功してるかどうかは最終的な興収が分からないので何ともいえないが、少なくとも元の話を知っている私には十分に楽しめた。
ま、ファミリー向けなので夫に言い寄ってくる女性たちを驚かしたり、幽霊と分かった夫がナークから逃れようとするといったメーナーク映画では基本中の基本のエピソードはキツイか。悪霊たちと戦う正義の妖怪という『ゲゲゲの鬼太郎』のようなキャラクターには変化したが、強い母性愛の持ち主といった面はそのまま生かされているのでまったくの改悪ではないと思う。
なぜ世界標準的レベルを持った作品になり得たのだろう?その答えともいえる人物がプロデューサー(共同)として名を連ねていた。『マッハ!』、『トム・ヤム・クン!』そして最近では『チョコレート』の監督として世界のアクション映画ファンにその名は知られているプラチャヤー・ピンケーオが参加していたのだ。なるほど世界レベルというものを知ってるわ、こりゃ。最近の作品では一場面CGアニメーションが挿入されていたが、きっと本格的劇場アニメ映画がやりたかったに違いない。

ともあれ、ナークの八面六臂の大活躍も素敵だが、静かなタイの農村や騒がしいバンコックをマンガ的ではあるが忠実に描いた背景画、ノスタルジーあふれる農村での生活描写など“動”以外の場面も注目なので是非観てもらいたいと思う。
でも、これ日本公開されるのかな?してほしいな…
