HIMAGINE電影房

《ワクワク感》が冒険の合図だ!
非ハリウッド娯楽映画を中心に、個人的に興味があるモノを紹介っ!

完全たる怪奇映画 『夜半歌声』

2005年11月09日 | 中華圏映画
 今でこそ中国映画は世界的名声を得ているが、第二次大戦前、まだ中華民国だった頃1930年代にも世界の映画レベルに引けを取らないほどの状態にあったという。芸術性の高い作品は研究者に任せるとして、ここでは娯楽性の高い作品を紹介していこう。
 今回は故レスリー・チャンのリメイク作が有名な『夜半歌声』(37)だ。リメイクの方はラブストーリーにウエイトが置かれていたが、オリジナル版はムードたっぷりの怪奇映画なのだ。

 人気俳優だった主人公は、舞台を観にきていた富豪の娘と恋に落ちるが、彼女に横恋慕する地主によって顔に硫酸をかけられ、ふた目と見られぬ顔となってしまう。彼は覆面を被り、事件のショックで精神に異常をきたした彼女のため夜な夜な歌を歌う。数年後ある劇団の青年がボロボロの劇場で歌の練習をしている所、主人公と出会い、彼から醜くなった自分のかわりに彼女の前で歌を歌って欲しいと頼まれる…
   
 『オペラ座の怪人』を思わせる悲恋もののストーリーだが、セット、照明、カットが見事なまでに“怪奇映画”を醸し出している。主人公のボロボロになってしまった顔のメイクも当時のハリウッド製怪奇映画にも引けをとらないほどの出来で、モノクロ画面との相乗効果により、観るものに恐怖と悲しみをあたえる。ラストの、群集により火をつけられた塔の中で主人公が息絶える場面は『フランケンシュタイン』を思わせ、ところどころ同年代のユニバーサル製怪奇映画の影響をうかがわせる。西洋的な感覚を持つ中国語を話す事以外はまったく中国らしくない洗練された映画だ。これが1937年製作って信じられます?