夢色

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基本ネタバレ注意。
火月 神の気まぐれ よろずメモ。

<二月花形歌舞伎@松竹座>

2017-02-24 | 舞台

たまたま、ぴあ貸し切りデーの優待価格の日を見つけて、その日は空けで早く帰れるし、と思ってとりあえず取ってみたチケット。
二月花形歌舞伎です。
 ちょっと若い役者さんが多いな~って思ってたら、花形歌舞伎ってそういう意味なんだね。
花道寄りの席は全部売り切れで、舞台上手端っこらへんだったけど、前めの席が取れたので、とりあえず観れたらいっかぁという気分で行きました。
そしたらなんと、大正解!( ´艸`)
めちゃくちゃ良かったです!
こんなに良いなと思ったのは、義経千本桜の狐の宙乗り観て感動した時以来かも。

 いつものホールには、ビュッフェ作『暫』。ビュッフェって、ほんとハイカラ( ´艸`)
 緞帳も華やかです。

連獅子が見たくて、午後の部にしました。
今日の演目は、<幕開きのご挨拶>「祇園祭礼信仰記 金閣寺」「連獅子」です。
松竹座の花形歌舞伎での挨拶は初めてとのことで、楽しみにしてきました。

今日の挨拶は、松也さん。
良い声で口上を述べられた後、ガラッと普通のお兄さんになって(笑)会場笑い。
あらすじを噛み砕いて分かりやすく説明してくださいました。
そして、最後にはDVDの宣伝もしてw

早速1幕が始まります。
足利将軍家にまつわる騒動を題材にして、名前が信長とか秀吉とかをもじった名前が出てきて、面白いな~って思いました。
此下東吉(このした とうきち)とか(笑)
謀反を企む松永大膳が、将軍を暗殺し、その母を金閣寺へ幽閉。さらに、仕えていた絵師・狩野雪舟の孫娘の雪姫と夫の絵師を監禁。
そこに正義の味方、此下東吉(木下藤吉郎のもじり)が大膳の家臣になりたいとやってきます。
結果的にはそれは将軍の母を取り戻すための策で、前もって潜入していた佐藤正清(加藤清正もじり。笑) とともに将軍の母を救出し、ついでに雪姫と夫も救い出すという。
この雪姫は、歌舞伎の三姫と言われる難しい姫役の一つらしい。
というのも、後ろ手に縛りあげられたまま、演技をしないといけないから。

見どころはいくつかあって、まずは東吉と大膳の碁と頓智のやり合い「碁立て」。
大膳が昔強奪した、雪姫の父が持っていた狩野家 家宝の宝剣「倶利伽羅丸」を抜いて滝に映すと、龍が現れるという「宝剣」のシーン。
縛られた雪姫が、祖父雪舟の涙のネズミの逸話さながらに桜の花びらでネズミを描き、縄抜けをする「爪先鼠」。
などなど。

初めて観たお話だったから、状況を飲み込むまでに少し時間がかかるけど、クライマックスに向かっては殺陣もあったり、見どころがたくさんで面白かったです。
刀を滝に映すと龍が現れるシーンは、滝の爆音が大太鼓の音で表現されて、龍は差し金で出てくるんだけど、めっちゃちっちゃくてかわいい龍で(笑)思わずツッコんだわw
刀をかざすと どんどんどんどん・・・って太鼓が鳴って、鯉みたいな龍が出てきて(笑)刀を隠した瞬間、ふぃやぁ~っ って感じでポチャンって落ちていくのが可愛すぎた(笑)

大膳の中村又五郎さんは、さすがの貫禄で、ぴしっと場が締まる。
雪姫の梅枝さんは、たおやかで儚げな雪姫を演じてて、すごく難しい体勢で女らしい科を作って、凄いなと思います。
これでもかと桜吹雪がどんどん降り注ぐ中での演技は、女なのにとても迫力があって息を吞みました。 
二匹の白鼠も、差し金の人形だったので、ちょっと可愛かった(笑)
ちょちょちょちょちょ・・・って左右から雪姫の体を登って、縄をかみ切って、雪姫を助けた後は、二つにぱっかーんって(笑)
桜吹雪になって消えたのでした 

金閣寺のセットも、ちょうどこのお話が出来た時代に大道具の技術が発達したそうで、2階に囚われてる将軍の母のところへ行くシーンでは、金閣寺自体が奈落に少し下がって 2階が良く見える仕掛けになってて、びっくり!
金閣寺の象徴の金の鳳凰が良く見えるようになるので、これはその時代のお客さんに大受けしたっていうのも納得です。

最後、大膳を捉えるのではなく、大膳の本拠地へ乗り込んで勝負しよう、と計らうところも、なんか昔の時代の武将たちっていう感じ
初めての演目だったけど、圧巻の1幕でした!


今日めっちゃ良くない?!ってテンション上がったままに、第2幕へ。
連獅子は、以前一度だけ観たことがあるけど、前は毛振りの場面だけだった気がする・・・
お能の親獅子・子獅子の場面や、間の二人の僧による狂言の場面は初めて見た。

親獅子の狂言師右近を松也さん、子獅子の狂言師左近を右近さん・・・ややこしい・・・(笑)
親獅子は優雅で堂々としていて、子獅子は若々しく溌剌としてて、二人で少しずつ違うのもすごい。
咲き乱れる牡丹と遊ぶシーンから、谷底へ子獅子を蹴落とすシーンへ。
親獅子は何度も子獅子を突き落とし、そのたびに子獅子が突き落とされまいと逃げたり、落とされても登ってくるんだけど、そのうち疲れて 谷底で休憩してしまう子獅子(笑)
親獅子が心配になって、目もくらむような谷底を何度もあっちかな~ こっちかな~って行ったり来たり覗き込んで心配そうに探している様子に胸が詰まりました。
怖気づいたんじゃないか、育てた甲斐がなかったのではないか、と心配しているという解説でしたが、それだけじゃなくて大丈夫だろうか?と心配して探している様子が、本当に胸がぎゅっとなった。

そんな親の気も知らず、あ~疲れた。と一眠りしてる子獅子(笑)大物やわ(笑)
昼寝から覚めて、どうやって登ろうかと思案していると、上から覗き込んでる親獅子が川に映り、目が合った親子。
・・・って、めちゃくちゃ深くて谷底が見えないくらい遠かったん違うんかーい!(笑)
と突っ込みつつ(笑)
親が探しているのに気づいて勇気づけられた子獅子は、意気揚々と崖を駆け上り、親の元へと登りきるのでした。

戻ってきた子獅子と親獅子は、再び牡丹の間を飛び回る蝶々を追いかけて仲良く遊びます。

獅子の親子が引っ込むと、間狂言の場面へ映ります。
獅子が出ると噂の山道を歩くのに、道連れが居たと最初はお互いに喜ぶ2人の僧。
でもじつは、法華宗と浄土宗と 違う宗派であることが分かり、「これは嫌な奴と道連れになってしもうた」って・・・おいっ!(笑)
お互いに言い合ってて、それがまた絶妙の間と声色だから、始終会場が大爆笑。
どちらが素晴らしいかの言い合いが始まり、法華宗の僧は団扇太鼓を叩いて「南無妙法蓮華経」を唱え、浄土宗の僧は叩き鉦を打って「南無阿弥陀仏」を唱え・・・ん?いつの間にかお互いのセリフが入れ替わったよ?(笑)
こういうの、想定内のハチャメチャいいよね(笑)絶妙のリズム感w

最後は、どちらもすばらしいと落ち着いたところで、山が暴れだし、獅子が出るぞということで我先にと逃げ出す二人。
途中で、お互いにさりげなく足を引っかけ合ってますよ(笑)

や~ いっぱい笑ったw
狂言って面白い。
歌舞伎や文楽よりも、たぶん分かりやすし、登場人物がどこかしら抜けてるところが面白いんだろうね。

最後は、親子の獅子の霊が登場して、牡丹の花の間で遊んだあと、「狂い」といわれる毛振りが披露されます。
これがすごかった!
どちらもとんでもない長さで頭を振ってた あんなに振ったら死んでしまう!(笑)
親獅子は大きく貫禄のある狂い、子獅子は若さで勝負、って感じ。
頭を回すんじゃなくて、腰で回すらしいですが、腰で回しても目は回ると思う(笑)
もう拍手が鳴りやまないし、もうやめたげて!っていうくらいに激しく長く毛を振ってました。
子獅子のほうは花道に出て回してて、空気が動いて反対側の端っこに座ってる私のところまで風が来るくらいでした!
これはもう、すごかったの一言。


興奮冷めやらぬまま、幕が閉じました。
いやはや、なんとな~く取ったチケットだったのですが、大当たり。
こんな素晴らしい芝居を2つも観ることが出来て、幸せです!
松也さんは本当に上品な声と演技で、素晴らしい。
若い人たちばかりだけども、堂々としてて、良い役者さんになると思います。

同じ演目でも、演じる人によってちょっとずつ印象が違うから、お気に入りの役者さんを見つけることができて、良かったです!