夢色

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火月 神の気まぐれ よろずメモ。

<シレンとラギ@梅田芸術劇場>

2012-05-05 | 舞台

  
今日は、劇団☆新感線 初観劇です

南と北の国が争う時代のお話。
ギセン将軍を王する北の国は、モロナオ執権が牛耳っており、その王宮の警備に当たるキョウゴク官領と、その息子ラギ、暗殺一族の毒使いシレンがメインキャスト。
20年前に南の国の王・ゴダイを暗殺したシレンだったが、ゴダイが生きていたとのニュースを聞かされ、再び暗殺へ向かうことに。
旅するうちに、シレンとラギは愛し合うことになるが、その裏でそれぞれの国のそれぞれの陰謀が動き出して、そこにシレンとラギの秘密が絡み・・・。

ざっくりとそんな感じのストーリーです。笑。

全体的な感想としては、最初の掴みが入り損ねて、正直今回の観劇は失敗したかなぁって思ったくらいで
でも、途中からどんどん引き込まれて、続きが気になって・・・。
やっぱりそれは、藤原くんの演技のおかげかなぁ。
明らかに笑いを取りに行くシーンがあったりして、少々くどい印象を受けたから、そういうところがこの劇団の好みを分けるんだろうと思ったけど。
でも、確かに いのうえ歌舞伎 っていうくらい、和風なところもあって。
特に第1幕の終わりは、桜吹雪が舞って ぞくぞくしました。
そして、配色も綺麗だったと思います。


ラギ役の藤原竜也は、本当にはまり役って感じで、ていうか、やっぱりこういう 少し危ない 歪んだ愛がよく似合うんだねぇ
その分、今まではあまり好みじゃなくて ちゃんと見たことがなかったのですが、彼も本当に演技が好きな役者さんなんだなーって感じて、大好きになりました!
エゴだと思うくらい 真っ直ぐに心をぶつけて。
絶望して 南も北も関係なく 全てを潰してしまうくらいの哀しい狂気。
斬られながら あなただけは逃げてって シレンを守ろうとする姿。
哀しいくらいの若くて青い愛で、それに救われる人も 壊される人もいるだろう。
そんな儚くて強いキャラクターを よく演じていました。
ささやく喋り方も 上手。
笑いも取れてたしね。笑。
かわいい

シレン役の永作さんは、思ったよりすごく小柄で華奢で。
暗殺者としての 斜に構えたような 駒として生きることを受け入れざるを得なかったその生き方が、余計に小柄な体を小さく見せて、守ってあげたくなる雰囲気でした。
暗殺者なのに、「殺しは愛じゃない。自分の心を削ってヒトの命を奪うこと。」とラギに諭すシーンが、なんというか。。。女としての強さとか覚悟とか。
それは悲痛な叫びなのに 生きる者としての温かさを感じて、シレンが大きく見えました。

ゴダイって、単純な悪かと思ってたら、意外とそうじゃなくて、それが面白かった。
子供みたいに呆けてしまったゴダイもかわいかったけど(笑)それが、桜の下で突然 もとのゴダイに戻った瞬間、場の雰囲気が大きく変わった。
高橋克実さん、ホントすごい役者さん!
あの威圧感というか 存在感。
前の金閣寺を観た時も思ったけど、テレビ俳優さんと 舞台役者さんって やっぱり違う。
どちらか 得手不得手が それぞれの俳優さんにはあると思ったし、(例えば岡田君は、きっと 舞台役者さんって柄じゃないと思う)、どっちがすごいって訳じゃないんだけど、舞台役者さんは、実物を目の前で 同じ空間で 空気を感じるぶん、その存在を肌にビリビリ感じるから迫力が違うって思う。
これがファンの方が 舞台にはまる訳なんだろうな~。
死ぬ前に「所詮この世は行き地獄。お前はやっとこの世の入り口に立ったのさ!」って言う その感じが、悪役というより ヒーローみたいだった!
かっこいいっ!って。
思ってたよりあっけなくゴダイが死んでしまって、シレンも死んでしまって(実は違うけど)、第2幕 どんな展開になるの?!って思ってたら、意外や意外にラギがそっち側みたいなことで。
キョウゴクが悪者になったけど、うーん、なんというか 最初よりも小物になった感じでした。
結局 自分の娘を欲してただけで 友も息子も(これも実は違うけど)殺してしまう。
最後は全部殺してしまえー!みたいな。
悪のスケールとしては、ちょっと尻すぼみな印象はうけましたが、最後のシレンとラギの憎い・でも愛してる その相反する感情の空気と、キョウゴクとの立ち回りは良かったです。

最後の最後に、毒にやられた国の人々を助けるために旅立つシレンとラギ。
白い毒が降り注ぐ中 奥に消えていく2人の背中は、浄化と希望を象徴していたと思います。
それに、ギセン王の 途中のネジとんだ感じもすごかったけど、「え!じゃあ ずーっと虫を採って暮らしてもいいの?!」という無邪気な台詞が、なんとも哀しくて 思わず涙してしまった。。。


最初、え・・・近親相姦ですか・・・と思ったのですが(そっちは ちょっと苦手。笑)、構えたよりもドロドロしすぎてなくて、逆に私には良かったなって。
それにしても藤原くんは、そういう役が多いのね
ストーリーというより、藤原くんの 愛する気持ちだとか 絶望とか その都度の心の痛みが伝わる演技に、なんども泣きました。

たしかに評価は分かれるかもしれませんが。
新感線は、なかなか楽しいものでした
パンフレットも ゴシックな写真集みたいになってて、素敵です
また機会があれば他の話も観てみたいです