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里山悠々録

里山の家と暮らし、田んぼや畑、そして水墨画のことなどを記録していきます

今年は水路の掃除に悪戦苦闘

2025年04月15日 | 田んぼ

田んぼの仕事も次第に多くなってきましたが、今年悪戦苦闘しているのが水路の掃除。
幹線道路の側溝や法面などは本来自治体の管理下にあるものです。しかし、田舎では集落が共同作業で清掃や刈り払いを行います。
そして、日常の管理は近くの田んぼの所有者が行うのが暗黙の了解事項。
水路の掃除は田んぼの水管理をする上では欠かせません。早めに済ませないと余裕がなくなってきます。
3月中には苦労しながらも一通り済ませ一安心といったところでした。
ところが、直後に瞬間風速30数mの暴風が吹き荒れ、そこに追い打ちを掛けるように纏まった雨。
せっかくの掃除も元の木阿弥になりました。殆どやり直しに近い。
里山では落ち葉が大量にあるため大風が吹くとこれらが水路や堀に集まって堆積します。
それが雨量が増すと流されるのであらゆる所に詰まってしまいます。


コンクリートの側溝も土砂やゴミが溜まっています。
これを払わないと流れが悪くなり、大雨が降れば水が溢れ出します。
それでも昨年は日照り模様で大雨が少なく、土砂の流れ込みが少ないのは助かりました。


結構な重労働ですが、いつまでも放置は出来ません。綺麗になりました。
所々に設置されているマスがくせ者。


ここにはゴミや土砂が溜まりやすく、一度綺麗に掃除したのにこの有様。


ようやく取り除きました。


このような所が何カ所かあります。


ポイ捨てのゴミも出てきます。ただ、常に綺麗にしておくことがポイ捨ての抑制にも繋がります。


道路側はコンクリート側溝が主ですが、山側は土側溝です。
土側溝は自然に土が崩れ浅くなってくるので泥上げが欠かせません。


落ち葉も満遍なく集まって堆積し、流れが悪くなります。


しかし、日を置かずに繰り返し掃除することになるとは思いませんでした。
これで流れが良くなるでしょう。


掃除の作業をしていて土止めの杭が腐っているのを見つけました。
補修はすでに行っていましたが見逃したようです。忘れないようにと直ちに打ち直しました。


田んぼは地味な作業が多い。まして里山の田んぼは手が掛かります。
できれば誤魔化してしまいたいところながら、結局後でしっぺ返しが来るのでコツコツやるしかないのです。
都会の人には理解できないだろうなあ。
そういえば、昔テレビでこんな作業をしているお百姓のそばを通るママさんが子供に勉強しないとあんな風になるよと言い聞かせている姿を見たような。


水稲の種籾水漬けを開始

2025年03月23日 | 田んぼ

前日から行ってきた種籾の種子消毒は24時間で処理完了です。


古ビニールの覆いを外します。


そのままだと薬液が滴るので、引き上げてしばしそのまま置き薬液を切ります。


使用書ではすぐ水漬けを開始して良いことになっていますが、我が家ではこの後、数時間風乾しています。
直ちに水漬けすると水が汚れてしまいます。また薬剤が確実に定着することも期待です。
風乾は、風通しの良い日陰に一輪車に乗せたまま置くだけです。


風乾後、水漬け開始です。


発芽を良くするため水漬けは必ずやらなければなりません。目安は2週間ほど。
「ひとめぼれ」は発芽しにくいので水漬け期間は長めの方が良いと言われています。


この後は2、3日ごとに水を交換します。
但し、種籾消毒の効果を安定させるため最初の3~4日は水の交換はしません。
昨秋からコメの価格高騰が話題になっています。
末端価格で倍近くになっているというのですから生産者にとっても想定外のことです。
資材も高騰し、刈り取り作業を委託する我が家のような小規模生産はとても採算がとれず赤字覚悟でした。
モチベーションも落ちるところまで落ちてはいましたが、環境保全と我が家の米を欲する人のために作り続けてきました。
価格は高いほど良いなどとは全く考えていません。生産費が確保できる価格が望みです。


種籾消毒でコメ作りのスタートを実感

2025年03月22日 | 田んぼ

コメ作りのスタートを実感するのが種籾の準備に取り掛かる時でしょうか。
僅かばかりのコメ作りながら多少の緊張感が伴います。それは苗作りに失敗は許されないからです。
水稲の育苗は準備の期間が長く、野菜のように簡単には播き直しが効きません。
これが購入した検査済みの種籾。


昔は自種を使った時代もありましたが、今は出荷の際に種子の証明が必要になるため自種は使えません。
品種は「ひとめぼれ」。
自前で全て完結していた時代は何品種か作りましたが、刈り取り作業を委託するようになってからは1品種のみ。
2品種くらい作ってみたいのが本音ながら、我が家のような小規模生産では作業の受け手側から断られます。
例年ならまず種籾を選別する塩水選を行うところですが、今の種は精選が非常に良い。
昨年、省略して特に支障なかったので今年も省略します。
種籾は扱いやすいよう4つの網袋に分けます。


種籾消毒に用いる薬剤はテクリードCフロアブル。効果が最も安定しています。


薬剤を水に溶かし200倍液を作り、種籾を入れた網袋を投入して種籾消毒の開始です。


古ビニールで覆いをし、このままの状態で24時間処理します。


減反に加え道路の拡張などで面積が減り、昔から見ると1/3くらいになりました。
作付けは大幅に減少したものの何はともあれ米作りのスタートです。

水稲育苗ハウスのビニール掛け

2025年03月19日 | 田んぼ

春の彼岸ともなれば、田んぼの方もそろそろ動き出します。
水稲育苗ハウスにビニール掛けをしました。
我が家の育苗ハウスは40年以上にはなりますが、正確な年数は不明なほどの年代物です。
近隣でもこのような旧式のパイプハウスは見かけなくなりました。
但し、他に数棟あった老朽化ハウスを解体する折り、パイプを全てダブルにし強化しています。
そして、毎年点検し補強補修を重ねつつ使い続けています。
今や小生とどちらが長く持つかと言ったところですが、ここまでくると愛着を感じるほどになってきました。
とは言え、リスクが高いので水稲の育苗期間のみの利用です。
ビニールを掛けるのは天候が悪ければできません。そして、一人では無理です。今回の助っ人は一人。
多少風があるもののこのくらいなら上々、安心して出来ます。
肩部から下のサイドビニールは1週間ほど前に付け、雨風の心配がないよう縛ってあります。


縛っていたサイドビニールは全て下ろします。


屋根部分に梨地の加工ビニールを中央で合わせるよう2枚掛けます。。
まず、片側に1枚の屋根ビニールを掛け、動かないよう仮止めします。


同じようにもう1枚の屋根ビニールを掛け、所々に仮止めしておきます。


各スパンごとにマイカー線を張りビニールをしっかり固定します。
この旧式のパイプハウスはこのマイカー線でビニールを保持させる仕組みです。


このマイカー線が命で外れてしまえば飛ばされます。強風には特に注意が必要です。
マイカー線は次第に緩みが出てきます。時々点検して必ず締め直します。
これでビニール掛けは終了。


さらに我が家では遮光シートを掛けます。


これは作業する時の日除けのためですが、強風時に掛ければその対策にも有効です。
作業するときはサイドビニールをあまり開放することなく専ら遮光シートを掛けてやっています。
遮光シートは一人で容易に上げ下ろしができるよう簡単な仕掛けがしてあります。
古い黒マルチは雑草防止のためぎりぎりまで掛けたままにしておきます。
さらに中央の通路に支柱を立てます。支柱は昔間伐したヒノキ材。


この旧式パイプハウスは屋根の傾斜が緩く、梨地ビニールも何年も使っているため雪が滑り落ちにくい。
10年に一度あるかどうかと言う雪対策です。
当地方は西高東低の気圧配置で大雪になることは稀で南岸低気圧が北上する時が問題になります。
最近も繰り返し南岸低気圧が北上。雪になるか雨になるかは気温次第で常に大雪になる可能性をはらんでいます。今日も同じような状況です。
過去には3月末に猛烈に重い雪が30㎝くらい積もり苦労した経験があります。大雪とまではならないまでも4月に雪が降ることも珍しいことではありません。
保険のようなものですが、保険は無駄になってこそ幸いと思うようにしています。
遮光シートは雪が降ると落ちないので、普段は外しておきます。


これで一連の作業は終了です。

人を惑わす「米食味ランキング」は見直すべき

2025年03月07日 | 田んぼ

 今年また「米の食味ランキング」が発表されました。関係者が一喜一憂する姿が恒例となっています。
 発表しているのは一般財団法人日本穀物検定協会と言うところ。
小生は6年前、そして昨年も同時期に同様の記事を投稿していました。今更同様のことを記してもしょうがないとは思いつつも今年はコメ高騰の影響か協会会長の記者会見が全国ニュースでもローカルニュースでも流れるなど益々大げさになりました。

 昔は日本穀物検定協会も「食味ランキング」もさして顧みられることのない存在だったと思います。
 昔は良食味の品種育成が進んでおらず、本県の主力品種だったササニシキや新潟のコシヒカリが美味いコメの代表的な品種となっていました。それが平成6年に食管制度から新食糧法に変わった頃から各県が米の独自品種を開発するケースが格段に多くなりました。北海道もきらら397を開発するに至り品種間や産地間競争が増大。「食味ランキング」も注目されるようになった訳です。
 産地側あるいは販売側も有効に活用できる面があるためよりニュース性が高まったのです。しかし、近年の傾向は品種本来の特性とはかけ離れ話題作りの対象ばかりになっているようです。今の「米食味ランキング」は小生には功よりも罪が大きいよう見えます。

 一般財団法人日本穀物検定協会(HPはこちら)は会長、理事長はじめ農水省のいわゆる天下り役職員が多数。農水省の意向が色濃く反映されるのは当然とも言えます。県やJA全農なども表面切ってクレームを付けるなど出来ないことでしょう。
 因みに当県の令和6年産米の評価はひとめぼれがA、つや姫が特A、ササニシキがA'ランクという結果でした。
 昨年、同時期にかなり詳しく投稿しましたが、内容が変わることはないので後段にそのまま再掲してみます。興味ある方は一読いただければ幸いです。

 今回は、少しだけ当県のササニシキを例に述べてみます。
 日本穀物検定協会が評価の基準にしているのは昔は日本晴だったと思いますが、その後は実情に合わせコシヒカリの複数産地のブレンド米としています。そして、基準米同等のものを「A'」とし、上位のものを「特A」、「A」、下位のものを「B」、「B'」と5段階にランク付けしているのです。
 そもそもコメは果物のようにそのまま食すれば誰でも美味い不味いが分かるものではありません。甘い、酸っぱいといった分かりやすい評価が出来ず、必ず炊飯という一手間が加わります。したがって、炊くときに米の乾燥具合や品種にあった水加減、釜との相性もあり全ての銘柄を同一条件で行うこと自体が困難と言えます。しかもパネラーがエキスパートであったとしても官能試験で行われる以上主観が入らざるをえません。50年前の品種ならはっきり不味いというものがありました。今は全ての品種が美味しいと言っても過言ではなくなりました。但し、産地の土壌や気候、作り方で差が出ることは確実にあります。それを僅かのサンプルで評価しようというのはいかにも無理があるというものです。
 現在の多数の品種はコシヒカリの血を引く粘りの強い品種です。基準米がコシヒカリなので粘りの強い品種ほど評価が高くなっています。
 かつてコシヒカリと並び称されたササニシキは逆であっさりとした優しい味わいが特徴です。したがって特に寿司米として新米がそのまま使え高く評価されていた訳です。現在は粘りの強いコシ系ばかりなので新米はストレートには使えず古米とブレンドして使われることが殆どでしょう。
 残念ながらササニシキは低温や病気に弱く、平成5年の大冷害を契機に激減しました。それでも、ササニシキ復活への期待は根強くあり生産者もそれに応える取り組みが行われています。
 ササニシキが特Aを獲得したのは30年ほど前で、以来コシヒカリが基準米になってからは獲得できませんでした。基準米と対照的な食味が特徴なので当然の成り行きです。それが6年前に突然の特A、食味が変わるわけはないので水加減なのかたまたま釜の相性なのか、はたまた恣意が入ったのか。
 近3年は当然のごとくA'ですが、そもそも旨さの特徴の違うものを同一に評価すること自体無理というもの。それが時として特Aになったりするのですから、殆どが良食味米となった今日ではコメの味の違いは分かりにくいものになりました。
 少しばかりのサンプルで公的な評価をするやり方は見直すべきと考えますがどうでしょう。そうでなければ判定に至る詳細な内容を示すべきです。人を惑わしたり法人の存在をアピールするパフォーマンスでは困るのです。

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再掲 
毎年、3月初め頃になると米の関係者が「米の食味ランキング」なるものに振り回される姿が年中行事化しています。
今年もまたどこ産地の何銘柄が特Aランクに入った、落ちたで一喜一憂、誠にもって怪現象です。
小生が丁度5年前にも同様のことを投稿していました。
改めて読み返してみましたが、当時と全く状況は変わらないので、まずはそのまま再掲してみます。
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人を惑わせる米食味ランキング(2019年3月17日)
 先頃、平成30年産米の食味ランキングが発表されました。
 これは毎年一般財団法人日本穀物検定協会が全国の品種の白飯を試食して評価し、ランキングを行っているものです。
 特Aランクなるものができてから、今頃になると関係者がこの発表に一喜一憂する姿が毎年のように見られるようになりました。
 昨年は、魚沼産コシヒカリが特Aランクから外れ大きな話題になりました。
 今年、本県産の米は、ひとめぼれ、ササニシキ、つや姫と主力3品種が特Aランクを獲得し、一安心といったところですが、喜んでばかりでいいものでしょうか。ササニシキは実に23年ぶりの特A取得ということですが、来年はどうなるか分かりません。
 魚沼産コシヒカリはさすがに特Aに復活しましたが、山形県では主力のはえぬきは今年も取得できず、岩手県はひとめぼれが特Aに復活したものの力を入れている新品種(参考品種扱い)の金色の風は評価を落としました。各県の関係者はさぞかし困惑していることでしょう。
 日本穀物検定協会の食味試験は、専門の評価員20名で白飯の「外観・香り・味・粘 り・硬さ・総合評価」の6項目について、複数産地コシヒカリのブレンド米を基準米とし、各産地の品種を比較評価して、基準米同等のものを「A'」、上位のものを「特A」、「A」、下位のものを「B」、「B'」と5段階にランク付けしています。 
 かつて基準米は日本晴だったと記憶していますが、今はコシヒカリですから評価の基準は相当変わっているはずです。ブレンド米はどこの産地のブレンドか興味のあるところです。
 食味試験はあくまでも人間の目と舌で評価するわけですからどんなエキスパートでも主観に左右されることは否めません。今の品種は、昔のように量は沢山穫れるけれどもはっきりまずいといった品種は見なくなりました。
 本県のササニシキは23年ぶりの特Aということですが、私は、基準米がコシヒカリである以上、再び特Aになるのは難しいだろうと見ていました。それはおいしさの基準が違うからで、マグロと鯛ではどちらがおいしいかといったことに近いのではないかと思います。
 かつて本県のササニシキは新潟コシヒカリとともに旨い米の両横綱といわれていました。それぞれ旨さに個性があり、支持する消費者が二分されていたとも言えます。特に寿司米としてササニシキは高い支持を得ていました。
 しかし、ササニシキは低温と病気に弱く作りづらいため、平成5年の大冷害を契機に、ひとめぼれに大きく転換されました。我が家も同様です。
 ひとめぼれはコシヒカリの血が入っているので粘りが強く歯ごたえがあるため、当時、ササニシキに慣れた人はひとめぼれは顎が疲れるなどと言う人もいました。
 ところが、先日偶然テレビで米の各品種の特徴を紹介していたので見ていたら、ひとめぼれは一番あっさりしています、と紹介していたのでびっくりです。それほど、今は粘りのある餅けの強い品種ばかりになったと言うことなのか、そして、人間の舌の基準は変わっていくもの、はたまた人の主観というのはよく分からないもの、と考えさせられたことでした。
 何年か前になりますが、新米の試食会に出る機会があり、ひとめぼれ、ササニシキ、こしひかりの白飯を食べ比べて当てる催しがありました。ひとめぼれとコシヒカリは間違うかもしれないがササニシキは間違わないだろうと思ったところ、見事全部外れてしまいました。
 とかく、米は果物のように甘い、酸っぱいといったものではないので評価そのものが難しい。炊くときに、米の乾燥具合や品種にあった水の量というものがあり、釜との相性もありそうです。また、個人の好みの硬さもあるので、全く同じ条件で食味試験すれば、有利不利が出てしまうのはやむを得ないでしょう。少なくとも、今は粘りは強いほどプラスに評価されています。
 本来であれば、品種の特徴に応じた炊き方で、もっと合理的な、そして個性を評価する仕組みが必要と思うのですが。さもなければ、人を困惑させない発表の仕方を考えてほしいものです。
 来年、また同様の風景が繰り返されることでしょう。
 ちなみに、日本穀物検定協会の食味試験の釜はパナソニック製だそうですが、我が家の釜は古い安物の釜ですが違います。
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 5年前、水稲主力3品種が揃って特Aランクを獲得した本県産米ですが、今回の令和5年産米はひとめぼれ、つや姫がAランク、ササニシキがA'ランクという結果でした。
 繰り返しになりますが、コシヒカリが基準米である限りモチモチで歯ごたえのある米の評価が高くなるのは必然でしょう。
 ササニシキは風味のあるやさしい食感でべたつかず寿司米に最適の米なので対照的と言えます。したがって、ササニシキが特Aになることはないだろうと思っていました。それが5年前に突如特Aに。結局その一度きりだったのですが、実に不思議なことでした。
 今の主要な品種は殆どがコシヒカリの血が流れています。宮城県育成のひとめぼれと秋田県育成のあきたこまちは片親がコシヒカリ、山形県育成のつや姫はコシヒカリとひとめぼれの血が濃く皆コシヒカリ一族と言って良いかもしれません。ササニシキだけが孤独な雰囲気です。
 特別な猛暑だった昨年は異常年としても平成30年だけがササニシキにとって都合の良い年だったとは思えません。同様の年は他にもあったはずです。
そもそも、かつて小生が試食会でササニシキの新米を間違ったように米の味は分りにくい。果物のように甘い酸っぱいと言った旨さに際だった個性がないからです。
 昔は米の品種で美味いまずいがはっきり分る時代がありました。50年前には我が家でもササニシキ以外にササミノリやトヨニシキなどと言った品種も作っていました。味ではササニシキにかなわなくとも収量が安定していたからです。
 戦後食糧難の時代、まずは量の確保が第一、増産運動真っ盛りでした。八郎潟干拓もその一環でした。それが1970年を境に米過剰の時代へと環境は大きく変化したのです。
 さて、一般財団法人日本穀物検定協会とはどういったところなのか。
沿革を見てみると、米穀の配給制度が廃止されたのに伴い米穀流通の円滑化のために政府と民間との第三者検定機関として昭和27年に社団法人「東京穀物検定協会」が設立されたのが始まり、以後各地に社団組織の協会が設立されています。そして昭和30年に財団法人「日本穀物検定協会」に統合され、下部組織として各地に支部ができています。
 何れも農林省(当時)の肝煎で行われたものと推察され、現在の会長、理事長など多数が農水省のいわゆる天下りのようです。当然のことながら農水省の意向を反映した運営がなされていると思われます。
 米は長く国の食糧管理制度の元に置かれ、玄米の等級格付けを国が行ってきたことから日本穀物検定協会が一般に知られることは殆どありませんでした。それが次第に知られるようになったのは米食味ランキングを発表するようになってからです。米の食味ランキングは昭和46年産米からとなっていますが、これは米が過剰になり減反政策が開始されたのと一致します。国では米の量から質への転換を図ることにしたのです
 記憶も朧気ですが、昔は米食味ランキングも殆ど注目されていませんでした。今のように品種の育成が進んでおらず、品種と産地による味の差が大きかったからです。当時は本県のササニシキと新潟県のコシヒカリが美味い米の代表で米食味ランキングは顧みられることはなかったように思います。
 大きく変わったのは平成6年に食管制度が廃止され新食糧法に変わった頃。各県が米の独自品種を開発するケースが多くなって品種間、産地間の競合も増大しました。かつてまずい米の代表とされた北海道はきらら397を開発し、今や良質米の産地です。
 そして、米食味ランキングに特Aなるランクが作られ徐々に注目されるようになったのです。当然農水省の誘導もあったことでしょう。当初はさして気にも留めなかった関係者もマスコミで報じられるようになり無視できなくなったのでした。
その後、さらに米の生産流通の自由度に拍車が掛かり価格はほぼフリーの状態になりました。このような環境の変化が米食味ランキングで販売の有利不利に影響を及ぼすのではと関係者が一喜一憂する事態となりました。
これがHPに掲載されている食味試験(ランキング試験)
 米の品質や味は品種だけでなくその土地の土壌や微気象、作り方にも左右されます。刈り取りの早晩でも変わってきます。また水分含量にも幅があるので炊き方や釜の特性によっても食感は変わってきます。
 しかも食味試験が人の目と舌による官能試験なので、如何にエキスパートとは言え予見が入らないとは言えません。ましてAと特Aの境界線上などではどうなのか。A判定と特A判定が10人ずつだったらどうするのだろうと考えてしまいます。最終判定をどうしているのか知りたいものです。恣意が入るのではないかと危惧するのも当然かもしれません。
 また、評価員は日本穀物検定協会HPでは20名となっていますが、新聞では100名と報じられています。どうなっているのでしょう。
 これが全国の米の食味ランキング表
「昨年、東北は異常な高温だったことから食味にも影響したのではないか」とテレビの会見でコメントしていました。それは否定しませんが、日照条件も良かったので我が家では見た目も味も例年と全く変わりませんでした。


高温とは言っても九州より東北が暑かったわけではなさそうに思います。ちなみに大分県のひとめぼれとつや姫はともに特Aランクでした(全く他意はありません)。
 しかし、僅かのサンプルの評価が何万トンの評価に影響するとしたらどうでしょう。プラスもあるしマイナスもあるのでお相子と言ってしまえばそれまでですが。そんなこともあってか、日本穀物検定協会では米の食味ランキングについて以下のように記しています。
「主な産地品種銘柄について、当協会がその供試試料を食味試験した結果に基づいて評価するものであり、流通するすべてのお米を評価しているものではありません。なお、第三者が当協会の確認を受けずに米の食味ランキングに関する情報を用いて行い、又は行っている一切の行為について、責任を負うことは出来ません。
 米の食味ランキングのランクを精米袋等に表示される事業者様へのお願い。精米袋等に特A評価を表示される場合については、「商品そのものの評価ではありません」等と表示を行い、消費者に誤解を与えるおそれのないようにしてください。不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)の不当な表示の禁止第四条で問題になる可能性があります。」
 もっともの予防線ですが、ならばもっと具体的に評価の方法や内容、決定方法について具体的に記載してもらいたいものです。
 以前記されていた釜のメーカーの記載は今回は確認できませんでした。ちなみに我が家の釜は相変わらず古い安物の釜です。これで十分美味しく炊けています。


 米の食味については米・食味鑑定士協会など民間でも独自のコンクールが行われています。また、当県では市町村レベルでササニシキ系のみのコンクールを行うなどの取り組みも見られます。
 いずれにせよ米食味ランキングも日本穀物検定協会そのものについても、米の消費拡大という本来の目的にかなったものであって欲しいと思います。