水瓶

ファンタジーや日々のこと

ヴォネガットとアシモフと

2015-08-08 08:54:27 | 雑記
あまりの暑さにぎりぎり歯ぎしり・・・してるわけではなく、横浜人形の家の入口にあるくるみ割り人形です。
くるみどころか頭蓋骨も割れそうなほど巨大です。
あんまり暑くて頭の働きもよくないんですけれど、昨日へまをやらかしたので、それを忘れるために一生懸命ブログ書きました。
いやあ、ここまで暑いとぼーっとしちゃいますよね。。でも気を抜きすぎないように気をつけなきゃ。しょんぼり。


キューバの人形(左端だけグリーンランド)。
ここ一週間の暑さは、こういう妖怪みたいなものが頭の中を踊り狂いそうな感じでした。
あ、なんか妖怪知っとるけに似てるのがいるな。。。

オールディスの「地球の長い午後」、あきらかにこの本の影響と思われるおっそろしい夢を見てから中断してます。
本の中の悪夢のような世界が本当の悪夢になっちゃあたまらん…!



アシモフの「鋼鉄都市」、続けて「裸の太陽」を読みました。この二作の主人公は同じ刑事です。
ミステリ仕立てのSFですが、どっちの話も犯人が法的にきっちり断罪されなくて、
けれど後のことを考えた時に、いい方に向かうと思われる解決の仕方をします。
主人公の奥さんの名前はジェゼベルといって、ユダヤ教の預言者を迫害したイスラエル王妃からとった名前で、
主人公の名前イライジャは、ジェゼベルに迫害された預言者エリヤのことだそう。
このことにまつわる夫婦の会話に、アシモフのユニークな見方が出ているようで面白いです。

解説によると、アシモフはロシア系ユダヤ人で、幼い頃に、ソ連になったばかりのロシアからアメリカに移民して来たそうです。
ソ連になってからユダヤ人にはいづらくなったそうで、その頃はまだ、亡命とかしなくても外国に移民できたんだそうです。
そういえばアシモフという名前はロシア風ですね。もふもふ。



私はカート・ヴォネガットも好きなんですが、この人はドイツ系アメリカ人で、ドイツ移民の多いアメリカの町で生まれ育ったそうです。
なので、WWⅡの時には、町ごとちょっと警戒されるというか、ちょっと嫌な雰囲気になったそうです。
ヴォネガット本人は、アメリカ兵としてドイツの地に初めて足を踏み入れ、捕虜になり、
連合軍によるドレスデン爆撃に巻き込まれ、かろうじて生きのびてアメリカに帰って来る。
その経験をもとにして「スローターハウス5」が書かれます。
最中よりもむしろ終わった後になってどんどん深まってくるような体験があると思うけれど、
きっとそういう体験だったんじゃないかと思います。

ヴォネガットの小説には「人として許されないようなことをしてしまった人の一生」を扱ったものがいくつかあります。
たとえばナチスの関係者や、ベトナム戦争で、まず生きて帰ってこれないとわかっている死地に赴かせる兵士を沢山育てた教官、
将来を期待され人望の篤かった友人をごく個人的な嫉妬心からか破滅に追い込んでしまった人、
何の罪もない妊婦を、遊びのようにして射殺してしまった少年、などなど。
私がヴォネガットを好きなのは、そういった人々にスポットを当てる所です。
どうやったら、そういう許しがたい人たちが救われるんだろう?という目で、後の、さらに後の話まで追いかける。
そうしてヴォネガットは、そういう難しい物語の終わらせ方がとても上手です。どれも後味はふしぎと悪くない。

移民のように、足場がしっかりしていないなかで暮らすと、不安がつきまとったり、つらい思いをしたりするだろうけれど、
アシモフやヴォネガットのようにユニークで、けれどやさしい物の見方、考え方は、
そういうぐらぐらした足下で育って来たんじゃないかと思います。
特定の「そこ」にいなくてもいい。あなたはそうでなくてもいい。
読者への条件が少ないというか、条件の難しい人を受け入れるというか、
それが、アシモフやヴォネガットが色んな国で読まれてる理由の一つかなあとも思います。
ヴォネガットは晩年に「国のない男」というエッセイを書いています。
ニューヨークで幸せに暮らしていたようだけれど、やっぱりそういう気持ちがずっとあったんだなあ。。。
でも、しっかりした足下がないことは不幸だけれど、長い目で見た時には悪いことばかりじゃない。ですよね?


アルメニアの人形。アルメニアは内陸の国です。海に囲まれた日本とは逆ですね。
人形の家では時々入れ替えや並べ替えをしているようで、その時々によって、目に止まる人形が違ったりします。
で、帰ってどういう国かなと地図やwikiで調べたりして、それが面白かったりするんです。
たぶん、人形なのがいいんじゃないかな。


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