水瓶

ファンタジーや日々のこと

超盆地超葡萄都市トルファン

2016-12-22 20:35:42 | シルクロードのこと
神保町の東方書店で入手した写真のシルクロード歴史地図。こんなよいものがあるんです。
今はこの地図と「地球の歩き方・西安 敦煌 ウルムチ」を参照しながら、井上靖の「私の西域紀行」を読んでます。
NHKのシルクロードの本も欲しかったんだけど、五冊分冊ぐらいなので、まとめて買える所がAmazon古書でも見当たらず思案中。
多分写真がすごくいいはずなんですよね。
「地球の歩き方」は写真はあまり大きくないけど、都市情報とか見どころとか大体網羅されてるのでありがたい。
でもホテルの紹介や具体的なガイドがのってるので見てると行きたくなるのが困る。。。

井上靖の小説は一冊も読んだことないんですが、西域が舞台の小説をいっぱい書いていて、
書いていた当時は現地に行ったことがなかったので想像で書くほかなかったそうなんですが、足を踏み入れた数少ない先人たち、
スヴェンやヘディンらの探検家、また日本の大谷探検隊も、道中どんな感じだったかほとんど記録に残しておらず、
参考にならなかったそうです。探検家っていうのはとにかく目的地にたどり着くことが一番だから、
途中の景色がどうとかなんて眼中になく、そうじゃなきゃ探険なんかできないんだみたいなこと書いててなるほどなあと思いました。
それを意識してか井上靖の紀行文は、景色や都市、村の雰囲気など、恬淡とていねいに書いてくれてて楽しめます。

なんでも日本人は西域に弱いんだそうで、えっ、でもそれ日本人だけじゃないだろと思うんですがどうだろう。
たしかに私もはまったけど、なんでだろうなあと自分でも思うんですが、まずあの風景。
年間降水量十何ミリという乾燥した砂漠に隣接するのは、森林限界を軽々と越える天山山脈や崑崙山脈ら6000メートル級の山々。
草木一本見当たらない苛酷を絵に描いたような景色には、なぜか強く心魅かれますよね。。
車で町から遺跡へ移動する時に、延々連なる砂丘に視界をさえぎられて気が狂いそうな感じがし、
そこを越えたら越えたで真っ平らな大平原にまっすぐな道が果てなく続き、これはこれで「死」が頭に浮かぶだろうと書いていて、
どれだけネガティブな土地かと思うけれど、そういう直接的な極限が目に見える土地って、人を魅きつけるのかも知れませんね。

それにしても、砂漠の川が伏流する場所では川沿いの道が湿地帯のようになっているので、
車が泥にはまるので次々乗り捨て乗り継いで行ったという話もすごい。。。
ていうか次々乗り継げる車があったのって中国政府の全面的なバックアップがあったからのようで、
NHKの例のシルクロード番組の撮影班とかも同行してたようなんですが、小さな村へ行っても歓待されたそうで、
こんな友好的な時期があったのかとちょっと驚きます。角栄さんあたりのあれなんでしょうか。
ちなみに草木一本なくなる手前の荒れ地には駱駝草という草が生えているそうで、画像検索するとわかるんですけど、
トゲが生えてるっていうかトゲで構成されたような植物なんですが、なんとラクダだけはこの草食べるそうです。
どうやってこのトゲ草食べるのかと思ったら、口から血を流しながら食べるそうで、力技か!ラクダすごい。。。

ところでどうしてこの極限的な砂漠が古来からオアシス都市として成り立ったかといえば、
天然オアシスがちょうどいい間隔で存在してたわけでなく、カレーズ(カナート)と呼ばれる灌漑施設を作ってきたからだそうです。
これよくできていて、一定の間隔で井戸を掘って、地下水路でつなぐんだそうで、
そんな高度な土木工事を相当古くからやってたなんて、すごいですよね。
山脈の雪解け水が豊富で、水源に近い井戸から遠い井戸になるにつれ深く掘り下げるそうです。
だから砂漠なのに水不足知らずで農耕には意外に適してるんだそう。ブドウ、綿、コーリャン、ウリや西瓜など名産らしい。
そういえば、ブドウは西から中国に伝わって豊穣の象徴になったって、古代の鏡展に行った時に説明されてたっけ。

で、またGoogleマップで遊んでいたら、タリム盆地の東(右端)に、
かなり大きなエメラルドグリーンの長方形の施設が砂漠にぽつんとあるのを見つけたんです。
なぜこんな砂漠の真ん中に巨大なプールが……と思ったら「罗布泊镇」と書いてある。。
調べたらこれでロプノールと読むらしく、えっ、それはもしやさまよえる湖とかいうやつ?と調べてみたら、どうも塩田らしいです。
昔タリム盆地は海の底だったんだそうで、それで塩が出るんでしょうか。
巨大プールは硫酸カリウムを含む肥料を製造するプラントということのようです。
これ衛星写真で見るとかなりインパクトあります。長辺20kmですって。こんなん造っちゃうんかい。
ロプノールのwikiによるとこの辺りで核実験とかもやってたらしくて、なんか古代都市楼蘭ロマンと食い合わせ悪いよね。。

タリム盆地の含まれる新疆ウイグル自治区の首府はウルムチだそうで、地球の歩き方見てびっくりしたんですが、
西域は大変な辺境とばかり思ってたら、なんとウルムチは人口285万の大都市なんですね。
日本のニュースとかでよく見る中国の都市っていうと北京と上海ぐらいだけど、
こないだ世界ふれあい街歩きでやってた大連(旧満州)にもすごい高層ビルが建ってたし、
地方都市でもそんなに人口多いのかと絶句しました。怒濤のような発展ぶりでちょっと怖いぐらい。。。
西域はまだ、観光資源として古いものが遺される方針なんじゃないかと思うけど、
地球の歩き方の写真見ると、古跡のすぐ近くに建設中の巨大ビルが写ってたりします。
あと、回教徒が多い地区は古いたたずまいを保ってることが多いようです。きっと牛肉麺てお店がある所だよ。

行ってみたい街を沢山見つけたけれど、天山北路と南路の東の分岐点に当たるトルファンという都市があって、
そこは世界でも有数の、超盆地みたいな所だそうです。
かつては火州と呼ばれていたほどだそうで、火焔山という山もあり、夏は40℃越え。
だけど湿気がないので日陰に入るとわりと快適だそうです。今の日本の夏のが苛酷だなそれ。。。
Googleマップ見ると葡萄沟民俗村とかあって、緑色の短冊地帯はたぶんみんな葡萄畑じゃないかと思います。
歴史を楽しむのに、人を追うとか物を追うとかあるけど、シルクロードの場合は都市を追う、っていう感じがします。
都市を通して歴史を見るんだなあって。超盆地超葡萄都市トルファン。

砂漠の真ん中のレストラン

2016-12-16 21:18:43 | シルクロードのこと
砂漠をラクダのキャラバンが行くシルクロードというと、
タリム盆地(タクラマカン砂漠)北にある天山山脈の北側を通る天山北路、
天山山脈の南側、砂漠の北辺を通る天山南路、
そして砂漠の南に点々と存在するオアシス都市をたどる西域南道の3つのルートのことをいうらしいです。
wikiによればタクラマカン砂漠の語源は

ウイグル語の「タッキリ(死)」「マカン(無限)」の合成語と言われ、
「死の世界」「永遠に生命が存在し得ない場所」といったニュアンスとされる。


だそうです。面積はおよそ30万平方km。
日本は約37万平方kmだそうなので、日本よりちょっと小さいぐらいでしょうか。でっけえ。。。
こんな具合で、井上靖の「遺跡の旅・シルクロード」読み終えてすっかり西域にはまり、
昨日はGoogleマップでタリム盆地を拡大して遊んでいたら

・・・あれ?死の砂漠のド真ん中、南北に道路が走ってる???

見れば砂漠中央西にはG217、東にはG218と表示がある道路が走ってるではありませんか。Gは国道のことらしい。
地図の縮尺で見ると、東西に長いタクラマカン砂漠とはいえ南北ですら800キロくらいはありそう……
中途に都市があるでなし、シルクロードじゃないから観光用でもなし、
砂嵐ですぐに道路が埋まりそうなものを保守するのも大変だろうに、なんでこんな何にもないとこに道路通したんだろう。
・・・いやいや、G217をアップアップしてたどってみたらなんかあるぞ!

[ Traffic Convenient Restaurant 交通便民餐厅 レストラン ]

レストラン???こんな砂漠のド真ん中に?

いったいお客はどれぐらいくるのか。食材の調達はどうしているのか。よくよく見ればスーパーマーケットもくっついてるし。
最大まで拡大して見ると、かなり大きい施設のようで、耕作地っぽいものも見えるし、ひょっとして自給自足に近い感じ???
まるでゾンビに備えて最適な感じの最終防衛戦線のようであります。

乏しい検索能力を駆使して、タクラマカン砂漠を南北に走る道路についての数少ない日本語のブログを探したところ、
そう、砂漠のど真ん中には油田があったのです。埋蔵量も相当らしい。なああーるほどう!
(ちなみに東西に走るシルクロードについてのブログはけっこうあります。大変な辺境ですがやっぱり人気があるんですね。)
で、この南北に走る道路はタクラマカン砂漠公路といって、主に石油を運ぶタンクローリーのための道路のようです。
タクラマカン砂漠を東西に走るのがシルクロード、南北に走るのはオイルロード、というわけですな。

と、いうことは、死の砂漠のど真ん中のレストランの常連客は、きっと石油を積んだトラック野郎の運ちゃんたちですね。
それらしきレストランの写真も見つけたんですが、いたってそっけない感じの雑居的な低いビルで、
そこにスーパーマーケットも併設されているんだろうと思います。
どうも店内はきれいとはいえないらしいけど、イスラム風ラーメンの蘭州牛肉麺ていうのがすごいおいしいらしい。。
でもここで働いてる人、皆ここに住んでるんだろうなあ。毎日通勤なんか無理そうだし。
どんな暮らしなんだろう。南極越冬隊員みたいな感じでしょうか。
いやあ、しかしGoogleマップはすごいのう。



上にあげたシルクロード3ルートのうち、最短期間で行ける西域南道は一番ハードなルートで、
オアシス間が百キロにもなる区間があったりして危険も多かったそうです。
三蔵法師やマルコ・ポーロが旅したのはこの西域南道らしい。
今の観光ツアーでも日程見ると、半日ぐらい砂漠のバス移動だったりと、なかなか上級者向けのようです。

シルクロードの何がすごいって、紀元前から唐の時代までというかなり早い時代に、
こんな大変な砂漠が通商ルートとして栄えてたことでしょうか。
崑崙山脈から豊富な雪どけ水が大河となって流れ、砂漠にオアシスができ、そこには人が住むことが可能だった。
砂漠のオアシス都市は川の移動とともに移動して来たそうで(一夜にして川の流れが変わってしまうようなこともあったらしい)、
いまだ古い都市の遺跡が砂の下にいくつも埋まっているそうです。
けれど何より、それら陸路のシルクロードが衰退した後も、オアシス都市はずっとあり続けていたっていうのがすごい。。。
昭和五十年代で、西域の人口の40%が漢民族、残りの60%は、かつては五胡十六国ともいわれた少数民族の人々だったようです。



井上靖が訪れた小さな町では、昼下がりに散歩をしていたら、いつのまにか人が集まってきだして、
しまいにはほぼ町中の人が静かに後をついて来ていたそうです。ひええ。。外からほとんど人が来たことがなかったらしい。
今は観光で世界中から人が来るんでしょうけど、ちょっと昔、ネットどころかテレビもなかった頃には、
砂漠に囲まれた小さな町で、人はどんな風に暮らしていたんでしょうか。

砂漠の真ん中に一軒のレストランを見つけてぐぐぐいっと心ひかれ、
気づけばスヴェン・ヘディンから地球の歩き方まで、シルクロードの本を買い漁っている始末。
辺境のリアルっていうのか、こういうこと検索して調べてゆくの本当に楽しいですね。
さあ、まずは頭の中でシルクロードを旅しよう。タッキリマカンの砂漠をね!

消えてゆく都市

2016-11-23 17:30:02 | シルクロードのこと
シルクロードと聞くと、ちゃ〜らら〜♪らら〜♪らら〜らちゃらら〜♪とメロディーが浮かぶ人はどのぐらいから上なんでしょう。
おお、なつかしいなあ………。でも放映の頃はまだ子どもで、この手の番組は退屈で見てませんでした。

昨日の世界ふれあい街歩きで敦煌をやっていました。
砂漠に囲まれた都市で、街の中から盛り上がるような砂丘が見えるんです。
市場にはスパイスとか漢方の材料だかが並んでて、あれがなんとも魅力的なんですよね。
これだよ、これ。バッザールってやつは。
一見なんだかわからない砂漠の植物の干したのとか、あれどうやって食べるんだろ。
唐辛子が電柱とかに干してあって。あと敦煌の中華料理、ロバ食べるんですよ。ロバ!

昔らしい白い土壁の家に住んでるおばあちゃんに庭をほめると、「でももうすぐ私たちも立ち退きだよ」とさびしそうに言っていて、
その家もそう遠くないうちに、まわりに建っているような団地になるらしいです。
おばあちゃんとなかよしの孫娘の方は「この街は近代化が遅れていたけど、これから豊かになるのよ」とうれしそうに言ってる。
ほんとにそうなんでしょうね。今すごい勢いで変わっていってる。
でもたぶん、敦煌にはまだ、私なんかが持ってる古いイメージの中国が残っていて、
それは道ばたマージャン卓を囲んでるじいさんたちとか、野外で卓球してる人たちとか。
だから今が、見てて面白いと思う敦煌の最後の姿かも知れない。他の中国の都市はどうなんだろう。
私はどちらかというとおばあちゃんの気持ちの方に共感するんだけれど、でも私も古民家は好きだけど、
正直なところ住みたいとは思わないしなあ。こういうのをセンチメンタルっていうんですかね。
たしかに新しい建物の方が実際に暮らすにはいいけど、かといって、消えてく物を惜しむ感情をまるきり感じるなってのも無理ですよね。
さびしいことはさびしいと素直に言えるのはいいよ。

で、ちょっと前に中央アジアら辺のことを気軽に読める本ないかなと探してて見つけた、
井上靖の「遺跡の旅・シルクロード」っていう紀行エッセイ読んでるんですが、この人の文章すごく読みやすいですね。

巨大な教会や僧院は征服者の祈りによってでなく被征服者の祈りによって建てられているのであり、高い塔の頭頂部の琺瑯の色は、奢れる者の誇りによってでなく、苦しい一生を沙漠に送った貧しい人々の悲しみによって、あの独特な美しい色の冴えを出しているのであろう。

中世ぐらいの寺院の建築って、たいていは戦争で捕虜になった人たちが現場で働かされてたんですよね。
だからキリスト教の寺院はイスラム教の人が、イスラム教の寺院はキリスト教の人たちが、実際に手足を使って建ててる。
考えてみるとへんな話だ。。。



                 



昨日の地震では、津波で被害がほとんど出なくて本当によかったですね。朝は震災のことを思い出して不安な気持ちになりました。
電脳マヴォ読みあさってて、ご本人が震災に遭われた時のことを描いたエッセイマンガ見つけたんですが、これとてもよかったです。
シリーズ他のエピソードも面白いです。ほんと今のマンガのレベルたっかいなあ。

オレ外伝④ 好日