カラフルな衣装にとぼけた表情。オランダ万才と書いてあるこの人形は…?
オランダ万才とは、諏訪神社の祭礼
長崎くんちで披露される芸能だそうです。ルーツは比較的新しく、昭和の初め頃。
愛知県は旧三河国の伝統芸能である三河万歳をオランダ風にアレンジしたもので、
「長崎に漂着したオランダ人2人が生計を立てるために『万才』を披露しながら正月を祝って回った」
という筋書きに沿って行われるそうです。変にリアルな。
(サイト左上の動画の冒頭にオランダ万才の映像が見られます。)
先日行きました横浜人形の家、常設展のコーナーから世界の人形たちの写真です。
このオランダ万才の人形は日本の人形のコーナーにあったんですが、こちらで取り上げることにしました。
三河万歳については、網野喜彦さんか宮本常一さんの本で少し触れられていたんですが、
もうちょっと詳しく書かれた本はないかと調べたらあまりなくて、一番上に来たのは岡本綺堂の半七捕物帳にある、
ズバリ
「三河万歳」という一篇。三河万歳について結構詳しく書いてあって、なかなか面白かったです。
wikiの
才蔵市の記述は、この小説から引用してるんじゃないかな。
岡本綺堂は江戸時代も遠からぬ明治5年生まれ、そういう風俗を実際に肌身で知ってたのかもなあと思います。
読んでて思い出したけど半七捕物帳って、明治になって、隠居している老半七から聞き手が十手時代の話を聞くという、
ちょっと珍しい形を取ってるんですよね。けれんみのない、いぶし銀の本格派だよ!
で、その岡本綺堂の「三河万歳」によると、三河万歳は太夫(万歳ともいう)と才蔵との二人で組んでやる芸能で、
年の暮れに家々を祝福して回っていたようです。三河国は家康の出身地ということで江戸でも受けがよく、
太夫はわざわざ三河国から江戸まで来るんですが、相方の才蔵は太夫が期間内だけ雇うため、
日本橋の四日市で才蔵市という市が行われていたそうです。万才の相方探しの市場!
理由はわからないけど、才蔵候補は安房房総から来ることが多かったようです。太夫も才蔵も、普段は農民なんですね。
上等だと武家屋敷を回ったりしたそうで、そうすると結構な実入りにもなったんでしょうか。
ちなみにこうした門付(かどづけ)の人々が回る家々を旦那場といって、誰がどの家を回るか決まっていて、
門付をやめる時には、後継の人に旦那場の権利みたいなものを売ったそうです。ショバとかなわばりみたいな?
今の万才とは大分違うようですが、年の暮れや年始にやっていたというなごりは今もありますね。
たとえば染之助染太郎とかが昔の万才に近かったのかな。。この人たちを見かけるのはお笑い芸人の中でも、
お正月に特化していたように思います。いつもより多めに回しております!
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このカナダのバンクーバーのお人形は横浜人形の家の入口近く、横浜の姉妹都市の人形たちのコーナーにあります。
以下その都市の人形たちをいくつかご紹介。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/38/a7/9dcfd069f4d978703d4d87523e1c0737.jpg)
同じく横浜の姉妹都市、インドはムンバイの人形です。古い呼び方ではボンベイ。
そういえば
ボンベイ・サファイアってお酒があるんですよね。名前のとおり、サファイアブルーの瓶がとてもきれいです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/8b/7035edf8d2ad82b48d6cfdd030616cc8.jpg)
こちらはウクライナのオデッサの人形。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/19/56/a6febb573ce699c36fb9b2fd72d0682e.jpg)
フランスのリヨンの人形。フランス人形のイメージとは違って庶民風ですね。大道芸の人とかかしら。。。
上に上げた都市のほか、アメリカのサンディエゴ、フィリピンのマニラ、中国の上海、ルーマニアのコンスタンツァの、
全部で八都市が横浜の姉妹都市だそうです。いっぱいいるね~
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/cat_2.gif)
よく耳にするけど
姉妹都市って実のところどういうものなのかと思って調べたら、こういう感じらしいです。ふうん。。
〈追記〉:
「リヨン 人形」と打ったら「リヨン 人形劇」と出て来まして、
どうやら写真の人形は
リヨンの人形劇ギニョールのようです。
リヨンは絹織物で栄えた土地で、歯の治療薬を売るための客集めに始めて人気になった人形劇に由来するようです。
フランス版ガマの油売り?コマーシャルの元祖みたいなものでしょうか。
たぶん写真左が織物職工のギニョールで、右は酔っぱらいのニャフロン。
そう、なんかこの酔っぱらったみたいに顔が赤くてヒゲの青い、妙にリアリティのあるおっさん顔を見ている内に、
この人形にはなにかしら面白い背景があるに違いないと思ったのです。いい名前だなあ、ニャフロン。
そういえば前に、昔イギリスで人気だったパンチとジュディという人形劇についてちょこっと書いたんですが、
動画で探したらあったので見てみたんです………が、正直、あんまり面白くなかったんですね。。
時代も違うし、娯楽ズレしてしまってる現代の目には、退屈に感じてしまう内容なんだろうと思います。
でも、パンチとジュディとギニョールに共通しているのは、イタリア由来であること、
観客は庶民で、おそらく見る人の大半は文字が読めなかっただろうこと、風刺的なブラックさを含んでいること、
うっぷんを晴らすような内容であること、などじゃないかと思います。
それにしてもギニョールは、貴族階級を象徴するようなフランス人形と対称的ですね。
背負ってる物語はフランス人形よりも面白いかも。
美しさやかわいらしさを見せようとしたようには思えない人形には、案外こういう背景が隠れてるのかも知れませんね。
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グリーンランドのお人形。北欧だと思ってたら、
グリーンランドはカナダの北にあるんですね。
世界最大の島で、旧デンマーク植民地で、今はデンマーク王国を構成していて、独自の自治政府あり。。ん???
あ、そうか。世界地図をwikiにあるように見ると、なるほどデンマークとも近いわけだ。
んじゃやっぱり北欧でいいんですな・・・?
そういえば日本で見慣れてる世界地図は日本が中心にあるけど、各国、自国が中心に来る世界地図を採用してるんですよね。
ちょっとずらすだけで、見慣れた世界地図が全然違って見えてくるんだから不思議なもんです。
そういうのを固定観念というのじゃ、たぶん。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5b/bb/0c64cc3d81b826d5b057fbc54ea66804.jpg)
アメリカの鳥の人形。小さいんですがカラフルで目を引かれました。マンガみたいでユニーク!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1c/da/0f9b1c2d96b91606c4d90050c029b91d.jpg)
中国の「送君仙子」。横浜に縁のある知人を通じて、胡錦濤前主席から人形の家に寄贈されたものだそうです。
こりゃまた大物来ましたね。。米の粉を材料に使った、しん粉細工製の人形だそうです。
調べてみたら、「送君」は見送るとか別れのような意味、「仙子」は仙女というような意味らしいんですが。。
ガラス瓶の中の精巧に作られた小さな人形で、私はなんかこういうモチーフ好きなんですよね。
スノードームとかボトルシップとか、閉じられた小世界とでもいいますか。
・・・にしても東アジアには「米粒に字を書きたがる文化」みたいな所があると思うんですがどうでしょう。こまけいの。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1f/c0/f77edb9fa3f59d82fed6f94796c5b5a9.jpg)
キルギスのお人形。説明書きにもあるように、兼高かおるさんから寄贈されたものだそうです。
そうそう、「鐘高かおる世界の旅」って番組ありましたね。あんまり見てなかったけど。。。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/27/19/bd180800cd9f930eebf451579deae112.jpg)
モルドバのお人形。
モルドバはルーマニアとウクライナに挟まれた東ヨーロッパの内陸国だそうです。
世界にはまだまだ知らない国がいっぱいあるのう。
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スイスのお人形。ヨーロッパ各国の人形って、顔や衣装が似てて区別がつきにくいんですが、地元の人にはわかるんだろか。
子どもの本を読んでいて感じる悲しさの出所ってなんだろなあと考えていたんですが、
絵本だとかの子どものための世界は、登場人物たちがたとえ動物だったとしても、
やはり実際の世界をベースにしたひな形のようなものが多く、けれど読んだ子どもたちが負担なく受け止められるように、
激しい怒りや悲しみ、不安などのネガティブな強い感情を引き起こすような事物が取り除かれているんですよね。
でも年齢が上がるにつれ、そういったネガティブなものも予習のように少しずつひな形の世界に取り入れられていて、
それで子どもの本には、小学校低学年向けとか高学年向けとか、中学生以上とかの記載がされているんじゃないかと思います。
この書き分けもけっこう難しいんだろうなあ。
そんな風に、子ども向けの本をつくっている人がおそらく一番に気をつけてやらなければならないのが、
負の感情の原因を取り除いたり、年齢に適するよう薄める作業で、その辺をやさしいといおうか、悲しいといおうか……。
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ラスコーの壁画を思わせるウガンダの人形。うーむ、写実をつきつめてゆくと抽象になるのだ(てきとう。)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/86/ffc65c048172f17e0323ef368e0853e6.jpg)
南アフリカ。やっぱりアフリカの人形、というかデザイン感覚というか、は、
ヨーロッパともアジアとも全然違う雰囲気なんですよね。
民族衣装を着て、それぞれにかわいい、美しい、ユーモラスな表情を見せる人形たち。
人形を作る過程でも、怒りや悲しみや不安のもとを取り除いてゆく作業が行われているんでしょうね。
ついで。小説「三河万歳」の中で半七が上役から、事件の調査を「鮭の頭でも拾う気でやってくれ」と言われるんですが、
これがどういう気持ちなのかいまいちわからない。。。