水瓶

ファンタジーや日々のこと

「戦国大名」「天下一統」

2016-06-29 20:19:07 | 雑記
中公文庫の日本の歴史「下克上の時代」から「戦国大名」、今「天下一統」の途中で、面白いんだけれど、時々げんなり。
戦国時代ゆえ戦戦はあたりまえとしても、そうした乱世に生きてる武将たちさえちょっと腰がひけるように見える信長。
本ではこれからさらに拍車のかかった信長が、比叡山を焼き討ちしたり高野聖一千人余殺戮するようです。うげえ。
こんな人、敵にいても味方にいても上にいても下にいてもいやだなあ。。
でも、信長が初めて上洛(京都にゆく)した時には、すでに京の町では天下を取る人との評判が立っていたそうで、
昔でもそういう情報は早かったのは、商人がかなり敏感に反応していたからのようです。

でも近江、今の滋賀県琵琶湖畔は行ってみたいなあ。こないだテレビでちょっと見たんですが、近江八幡てすごくよさそう。
信長の夢、今はなき安土城、安土の城下町は近江八幡の近くだったんですね。恥ずかしながら知らなんだ。。
あと比叡山もあるし、昔の大工さんとかが定期的に道具を調達しに来たりしたのも近江だったそうだし、
時代は後になるけど、ひこにゃん彦根城もにゃんと琵琶湖畔ではないですか。みどころ多いじゃん!
京都への水運商ルートであった琵琶湖周辺はすごく重要な地域で、独立気風の高い菅浦という惣村などもあり、
さすがの信長も平定するのに手こずったようです。法華衆、一向一揆、僧兵などなど、とにかく全体的に荒々しい。

しかしこの、日本中上から下まであふれんばかりだった荒々しい気風が、江戸時代にはほとんど見られなくなるのは、
そういう時代を目の当たりにした家康その後の将軍たちが、そういった気風が育つ土壌を徹底的につぶしていったからなんでしょうか。
滅私奉公的な武士道も、裏切り寝返り当たり前の戦国時代があったからこそ、後世江戸時代になってできたもののようです。うーむ。



「戦国大名」では、北条早雲、武田信玄、上杉謙信、毛利元就、朝倉義景などなど、私レベルだとぼんやり名前だけ知っていたような武将たちについて書かれていて、面白かったです。
「三本の矢」の、ちょっといい話の武将ぐらいにと思ってた毛利元就が、そんな陰険な人だとは思わなかったけども。
でも、親子兄弟の間での殺し合いも珍しくなかったからこそのたとえだと思うと、戦国の世のなんとすさまじきことよ。
今いう兄弟仲良く、みたいな感じじゃなくて、ほんとにあれなんだもんなあ。。
ていうか、何かというと契約がわりに嫡子だのを人質にとるってどういう野蛮だ。

あと、北条早雲が名前のかっこよさを意識していたのは間違いないと確信しました。
戦国武将にとって、名前のひびき、鎧装束、花押などのかっこよさはすごく大事なんだと思います。イメージ戦略というやつじゃ。
ていうか戦国武将は名前をコロコロ変えるな!やたら名前に義ってつけるな!覚えられない上にも覚えられないじゃないかあ!
でも信長の、うつけ時代のちょんまげが「茶筅」と言われ、生まれた子の名前にも茶筅てつけるのは、どんだけ茶筅が好きなんだと。
マンガとかに書かれる信長のちょんまげだけなんかヘンなのは、そういう記録がちゃんとあったからなんですね。
なんかお茶にすごく興味あったみたいで、秀吉もそうですし、今の茶道ともまたちょっと違って、
すごく人を魅きつける最先端の何かが当時のお茶にはあったんでしょうか。



この中公文庫の日本の歴史が出版されたのは1960年代、巻によって書いてる人は違うんですが、
著者紹介を見ると大体1910年代あたりの生まれで、みんな文章がすごくしっかりしてて、
読んでて感じる安定感安心感がただごとじゃないんですが、私はそんなに数読んでるわけでなないけれど、
なんかそれぐらいの世代の学者さんとかって、やけに名文家多くありませんか。
宮崎市定、益田勝実、梅原猛、などなど、なんか格が高いっていうとあれだけど格高い。
でももし私が出版社のえらい人で、歴史の本書いてもらうとしたら、他のどの分野の本よりもやっぱり安定感を重視するだろうなあ。
しかしその文章の安定感てのは、いったいどっから来るんだろう。

以下、信長に会ったキリスト教の宣教師ルイス・フロイスが、ローマに当てた親書に書いた信長の様子です。「天下一統」から。

「この尾張の王は、年齢三十七歳なるべく、長身痩躯、髭少なし、声ははなはだ高く、ひじょうに武技を好み、粗野なり。正義および慈悲の業をたのしみ、傲慢にして名誉をおもんず、決断を秘し、戦術に巧みにしてほとんど規律に服せず、部下の進言にしたがうこと稀なり。かれは諸人より異常なる畏敬を受け、酒を飲まず、みずから奉ずることきわめて薄く、日本の王侯をことごとく軽蔑し、下僚に対するがごとく肩の上よりこれに語る。諸人は至上の君に対するがごとくこれに服従せり。よき理解力と明晰なる判断力とを有し、神仏その他偶像を軽視し、異教いっさいの卜(うらない)を信ぜず、名義は法華宗なれども、宇宙の造主なく、霊魂の不滅なることなく、死後なにごとも存せざることを明らかに説けり。その事業は完全にして巧妙をきわめ、人と語るにあたり、紆余曲折を悪めり。」

まるで星座に星を打つように的確に描かれる信長の輪郭。ううやだやだ、おっかねえ。。。
このルイス・フロイスという宣教師、ただ者じゃないのです。きっとくぐってる修羅場がちがうんだぜえ。


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