川崎市麻生区と東京都町田市の境にあるセレサモスという名で農協の直売所がある。多くの農協直売所が全国に展開しているが、生産者と消費者とが直結し、新鮮で地元産の野菜等を消費者へ格安で届けている。平日も午前中から混雑していて、土曜・日曜日には、自家用車が駐車場には入れず、交通渋滞を発生させていると聞くが、これほど盛況なのは、消費者ニーズに沿っているからであろう。
地方の幹線道路沿いにも道の駅があり、同様に地元産の野菜等特産品を販売している。販売している商品の中には生産者の氏名や似顔絵まで添えてあり、直売という雰囲気を醸し出している。中にはバーコードで生産情報を読みとることが出来る。バーコードには使用した農薬の有無などの情報が含まれている。生鮮品の出所が明らかにされれば、アレルギー症を持つ方には安心して食することが可能となる。
人気の源泉はおそらくこの情報にあるものと推察しているが、見栄えや形に拘るあまり、選別は必要であろうが、選別する人手を要する。廃棄物が多く出て、商品の価格が高くなるのは好ましいことではない。形が悪くても、大きさに違いがあってもその商品の情報が明確であれば、消費者は購入するであろう。露地栽培をすればハウス栽培と異なり、虫食いや異形が発生するが、新鮮な風味は変わりがない。むしろ、病害や防疫のため化学薬品を大量に使用し、自然栽培から遠ざかる生産の在り方の方が問題である。
政府の農政の改革が始まっている。向こう5年間の農政改革基本方針が決まってきた。改革の中心は全中(全国農業協同組合中央会)の見直しで縮小方向とするようであるが、米あまりから専業農家が極端に減る中、銀行から病院まで備え、補助金での減反政策の失政など多くの問題が吐出している。TPP(環太平洋経済連携協定)の影響は従来の農業の在り方を一変させ、農協等の関係者は農業者の保護を旗印として囲い込みに躍起となり、組織や政策の継続を訴えてはいるが、消費者の意向を無視してきた結果が招いたことで大幅な改革を行われることは必至である。
農業従事者の育成や、技術指導は農協の役目の一つであるが、際だった成果が上がらない状況は少子高齢化社会の到来のせいばかりではなく、一般人の農業への参入規制、税制や補助金等の農政が一般に見えにくく、閉じられた世界であったことは疑う余地もない。
全中を解体し、組織を再構築することは大いに賛成であるが、情報の公開と、若者が入職しやすい環境を創出し、消費者の意向を無視することがないよう開かれた農政を期待したい。
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