ブログ「かわやん」

森羅万象気の向くままに。

2009年12月アクセスNO2記事 日曜新聞読書欄簡単レビュー

2010年12月29日 10時31分21秒 | Weblog
凱風社の本を2009年最後の日曜新聞読書欄簡単レビューで紹介したが、今年凱風社の本で縁ができ片山通夫さんの本など縁ができたのは不思議なものだ。以策ね12月のアクセスNO2の記事を再録します。
 
今年最後の日曜新聞読書欄簡単レビューです。以下敬称略。渡辺豪『国策のまちおこし 嘉手納からの報告』(凱風社、一六八〇円)ー毎日ーは、嘉手納町長の宮城篤実さんの自治体運営の姿を描いた。国策を逆手にとり、まちおこしを行ったのだが、そういえば読谷村もそうだ。というより山内村長時代にアメリカに掛け合い米軍が使用する読谷飛行場を取り戻した。村役場がそこに建つ。国策を逆手にとったのではないが、沖縄の自治体は米軍との関係の中で自治を存分に発揮しないといけない状況にある。宮城町長の講演を町の文化センターで聞いたことがあるが、哲学者のような風貌の人だった。騒音被害などの米軍基地被害に対峙して町の六割以上を基地に接収されている状況を打開すべき奮闘されている。二〇〇億の巨額をどう役立て住民の生存権を守る営みをされたか、本書がその姿を示してくれる。『沖縄タイムス』で80回連載されたものがベースになっている。

 同じく毎日では、やがて100歳にとどこうかという高齢でも医者として現役で医療活動をする日野原重明がさきほど他界した森繁久彌に関係した本3冊をあげている。そのうちの1冊がレオ・バスカーリア『葉ッパノフレディーいのちの旅』(童話屋、1575円)。米国の哲学者の著者が子どもたちに死の意味を教える内容。葉っぱのフレディーが四季をへて土に帰る物語98年には日本でベストセラーになった。その後長男を失った森繁久彌は土に帰り新たないのちを育む地面フレディーから「いのちは循環する」ことを知り、長男の死という悲しみをのりこえ精一杯生きる勇気を得たという。日野原はこの一冊を最初にあげている。

折口信夫の旅の追体験をした書が芳賀日出雄『折口信夫と古代を旅行く』(慶応義塾大学出版会、三三六〇円)ー毎日ー。民俗学は旅により発見されるのかもしれない。折口はまれびとを古代研究の要として発見したが、その発見の背後に旅する折口がいた。その追体験はビジュアル折口学の案内書ともなっている。「神と人とのドラマをあざやかに目に灼きつける」と評者持田叙子は書いている。

読売も産経も朝日も「今年の3冊」特集だが、産経では早稲田大学の石原知秋が文学の危機について書いている。石原が『新潮』最新号の2つの対談特集についてふれ、平野啓一郎と東浩紀の「情報革命期の純文学」を主に論じている。自己プロデゥースしなければいまの危機は越えられないと説き、平野ー東は自覚的と評価する。もうひとつの大江健三郎と古井由吉対談では、「文学の外へ開かれていない」と評し、作家の自己プロデゥース能力を説く。文学が隆盛時は外に開かれずとも自足していたが、いまは時代が違うという。夏目漱石が『虞美人草』での道徳的テーマでの設定失敗から、自らの哲学を封印したと紹介している。商業主義は大作家をして外に開かせたというわけだ。
ただ石原が自己プロデゥース能力を具体的に書いていないから読者にはよくわからない嫌いがある。

読売の今年の3冊では女優の小泉今日子が青春にからむ3冊をあげている。宮下奈都子『よろこびの歌』(実業之日本社、1300円)、吉田修一『横道世之介』(毎日新聞社、1600円)、梯久美子『昭和二十年夏、僕は兵士だった』(角川書店、1700円)。最後の書は青春時代に兵士だった各界著名人へのインタビューだ。
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