闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.346
この作品はこれまで何回かみているが、いつも圧倒されるのは原田美枝子が次郎の君の脇差を奪ってその場に押し倒し、首筋に切りつけながら脅迫恫喝するシーンで、ここでは完全に男女の立場が逆転している。その後根津甚八の馬鹿殿は兄の正妻にまるで女のように犯されたあと、今度は女に戻った楓に泣きを入れられ、美しく狡猾な彼女はそれからは馬鹿殿を自分のいいなりに御していくのである。
このシークエンスに比べると大殿と3人の息子たちやお付きのピーターとの掛け合いなどはずいぶん精彩を欠き、大殿自身の心理を含めて人間関係があざやかに描かれているとはいえない。
その代わりにすこぶる印象的なのは緑の大草原を疾走する馬に跨った武士たちの群像、紅蓮の炎を上げて燃え尽きる城やその中から死人のように白衣でよろけ出てくる大殿、画面狭しと移動する戦士たちの戦闘シーンで、そのさまはまるで一幅の華麗で悲愴な絵巻物を見せられているような気分である。
このような雄大な景観をバックにした勇壮な時代劇は、もはやわが国では二度と撮られることはないだろう。武満徹の音楽も地味ではあるが忘れ難い。
にしてもさっさと民主党を見限りシンクタンクに転職するという神奈川4区長島一由 蝶人