池田澄子著「三橋敏雄の百句」を読んで
照る日曇る日 第2071回
異色の俳人、池田澄子が、恩師である異色の俳人、三橋敏雄の百句を選んで解説したふらんす堂の新書版である。
掲句のはじまりは初期作品をまとめた「青の中」の冒頭の
窓越に四角な空の五月晴
であるが、「しだらでん」の中の辞世と思しき
山に金太郎野に金次郎余は昼寝
まで合計百句の秀歌が並んでいて圧巻である。
三橋敏雄(1920~2001)は新興俳句弾圧事件で弾圧された渡辺白泉や西東三鬼に師事した新興俳句無季派の歌人で、長年に亙って日本丸や海王丸で勤務した船員でもあるが、例によってコメントを加えず、気に入った作品をずんずん並べて諸兄姉の鑑賞に付したい。
少年ありピカソの青のなかに病む
出征ぞ子供ら犬は歓べり
われ思はざるときも我あり籠枕
立ちあがる直射日光被爆者忌
箸置や危かり憲法第九条
当日集合全国戦歿者之生霊
絶滅のかの狼を連れ歩く
はつなつのひとさしゆびをもちゐんか
先人みな近隣に存す秋の暮
信ずれば平時の空や去年今年
家毎に地球の人や天の川
海がくれなほ沈む日や秋のこゑ
かもめ来よ天金の書をひらくたび
いつせいに柱の燃ゆる都かな
あやまちはくりかへします秋の暮
桃採の梯子を誰も降りて来ず
死に消えてひろごる君や夏の空
英米仏トップは次々交代すどうするんじゃい日本と東京 蝶人