2012年4月、ソニーの社長兼CEOに就任した平井一夫さんは、
「ワン・ソニー」を実現すると語りました。
JR東日本は、「グループ経営構想V~限りなき前進~」のなかで、
「一体感のあるグループ経営の推進」を掲げています。
デンソーは、先週、国内外のグループ会社の幹部500人を集め、
「グローバルカンファレンス」を開催しました。
背景には、「グループの一体感」を醸成するというねらいがあるといいます。
このほか、NTTグループや、パナソニックなど、
多くの企業が、いま「一体感」の醸成に力を入れています。
なぜいま、「一体感」なのでしょうか。
以下に、理由を三つあげてみたいと思います。
一つ目は、社員の帰属意識の回復です。
かつて、日本企業は、年功序列型賃金制度や終身雇用制度によって、
家族型経営を行っていました。しかし、バブル崩壊後、
「失われた20年」の間に、能力主義、実力主義の導入が進みました。
“企業一家意識”は、いまや昔の話です、
企業は、社員に「自律しろ」というようになりました。
企業に守られてきた社員たちは、
突然「実力主義だ」「自律だ」と、企業から突き放された結果、
企業への帰属意識や忠誠心を失い、バラバラになりました。
しかし、実際のところ、企業への忠誠心や帰属意識は、
社員のモチベーションや満足度、ひいては仕事の生産性と、
深いかかわりがあります。優秀な社員のリテンションにも有効です。
日本企業は、社員の帰属意識や忠誠心それらを取り戻すために、
いま、企業内の「一体感」を醸成しようとしているわけです。
二つ目は、IT化の進展です。
IT化によって、遠く離れた場所にいても、
テレビ会議やメールなどを使って、仕事ができるようになりました。
一方で、物理的に遮断された社員たちは、互いに「一体感」をもち、
それを実感することが難しくなっているのです。
三つ目は、グローバル化です。
いまや、規模の大小にかかわらず、多くの企業は、
世界中に拠点を構えて、ビジネスを行うようになりました。
すると、当然、社員もグローバル化が進みます。
国籍や人種、文化、宗教などが異なる人々が、
「一体感」をもって、一つの企業としてまとまる必要があります。
そのために、企業理念や企業の方向性、課題などを共有する必要が出てきます。
デンソーの「グローバルカンファレンス」は、この一例でしょう。
「一体感」の醸成に努める企業の課題は、何でしょうか。
「一体感」をもたせつつ、もたれあいではなく、
自ら成長していく「個」を育てることでしょう。
企業は、過去の家族型経営に立ち戻るのではなく、
「一体感」と「個」が両立する、新しい在り方が求められています。
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