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片山修のずだぶくろ Ⅰ

経済ジャーナリスト 片山修のオフィシャルブログ。2009年5月~2014年6月

豊田章男さん、レクサスブランドをどうするのですか

2014-04-04 19:28:56 | トヨタ

 

トヨタの弱点の一つは、レクサスです。
それを証明するかのようなニュースがあります。

2013
年度の国内新車販売台数において、
独ダイムラーの高級車ブランド「メルセデス・ベンツ」が、
レクサスを逆転したというのです。
5
年ぶりのことです。
5
年前、レクサス関係者は、「10年でブランドを確立する」
といっていました。

1989
年に米国から始まったレクサスブランドは、
すでに誕生から25年目です。
2005
年以降、国内でも展開され、9年目に入りましたが、
まだ、当初イメージしたブランドには育っていない。
実際、これぞというような「いいクルマ」が
レクサスからなかなか出てきません。

確かに、一般人の目から見ても、欧州のベンツやアウディには、
高級車として一日の長があります。
私は、せんだって、オランダでアウディの「A8」に
乗る機会がありましたが、走りのよさは圧倒的です。
重いようで軽やか、軽やかなようで重い。
皮張りのシートのプレミア感。内装の優雅さ。
大人の落ち着き。乗っていて楽しくなる。
クルマ全体の仕上がりの良さは、
筆舌に尽くしがたいというのはオーバーにしても、
脱帽させられましたよ。

それに比べて、レクサスには、「おおっ」と思わず声を
あげたくなるようなサプライズがない。
きらきらする輝きというか、正直、まだまだ個性が感じられません。
トヨタが努力していることは認めます。
レクサスを生産する工場の従業員は、トヨタの従業員とは制服が違う。
彼らにレクサスブランドの自覚をもたせ、モチベーションをあげるためです。
北米でアフターサービスの充実が評価され、
国内販売店でも「おもてなし」を強化していた時代がありました。
スピンドルグリルを採用し、一目でレクサスとわかる顔もつくりました。
ブランド確立に向け、依然として試行錯誤しています。

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現在のトヨタは、第一トヨタ、第二トヨタ、ユニットセンター、
レクサスの4事業体からなりますが、これらのうち
レクサス事業「レクサスインターナショナル」は、
社長の豊田章男さんの直轄です。
レクサスが本体に寄り掛かることなく、
早く独り立ちするようにと、独立事業部にしたわけです。
ところがいまだに、どんなレクサス車をつくろうとしているのか、
方向が見えません。

それは、簡単なことではないのはわかりますが、
しかしながら、国内市場というトヨタのお膝元で
ベンツに負けているようでは、
グローバル市場で、確固たる地位を築けるわけがありません。
道は遠いといわざるを得ません。
日経が報じるように、ベンツが好調な要因は、
「Aクラス」や「CLAクラス」など、
300
万円台を中心とした低価格戦略にあるにしても、
残念な話ではありませんか。

トヨタは14年3月期、24000億円の利益を出すなど、
順風満帆に見えますが、課題があるとすれば、レクサスの立て直しです。
レクサスブランドは、ワールド・プレミアブランドとして、
いまだ確立されていない。
今後、章男さんがもっともっと苦労を重ねながら立ち向かい、
成し遂げなければならない、大きな大きな課題だと思います。

 


豊田章一郎さんの「私の履歴書」の読み方①

2014-04-01 16:55:14 | トヨタ

昨日書いたように、今日から日本経済新聞で、
豊田章一郎さんの「私の履歴書」が始まりました。
私は昨日、「真偽のほどは定かではありません」として、
平岩外四さんのことに触れましたが、
今日の「私の履歴書」によれば、本当のようですね。

初回の今日は、英国のサイエンス・ミュージアムに、
父の豊田喜一郎らが開発したG型自動織機が
恒久展示されていることに触れられていました。
これを見にいったときの話は、じつは、私は、01年でしたか、
章一郎さんにインタビューしたときに伺いました。
「非常に晴れがましいことなんですよ」と、
誇らしげに語っておられました。

この英国訪問の際、章一郎さんは、
喜一郎が1929(昭和4)年にG型自動織機の特許を譲渡した先の
プラット・ブラザーズ社の跡を訪問したとおっしゃっていました。
ちなみに、トヨタ自動車の立ち上げ資金は、
この譲渡金10万ポンドが原資になっています。
つまり、世界一の自動車メーカートヨタは、この自動織機から始まった。

「創業者のプラット・ブラザーズは地区では有名な方で、
産業革命のリーダーとして地域や街に貢献した。
公園には立派な銅像が立っていました」とも、章一郎さんから聞きました。

じつは、祖父の佐吉も、1910(明治43)年に
プラット社を訪れている。
豊田自動織機は、日露戦争後の不況の影響で、
このころ、業績不振に陥ります。
その責任追及の矛先を向けられた佐吉は、
1910年に技師長を辞任し、アメリカ見学に出かける。
そして、日本との工業力の差に圧倒されます。
一方で、自動織機に関しては、米国でも、その後の欧州視察でも、
自分がつくった技術に自信を深めたといわれています。

自分のアイデアでも、世界一流の織機に勝てるかもしれないと、
日本に帰ったあと、再出発します。そして、最終的に、
息子の喜一郎ほか部下たちが、G型自動織機を生み出したわけです。
いわば、先だってのテレビドラマ「LEADERS」前史ですよね。

それが、イギリスの地に展示されているのを見て、
章一郎さんが「祖父や父の志や心が改めてしのばれ、
感慨一入のものがあった」と振り返るのも、当然でしょう。

これからも、「私の履歴書」を読んで、
気がついたことがあったらば、“読み方”をしるしたいと思います。

 


豊田章一郎さんは、いまなぜ「私の履歴書」を書くのか

2014-03-31 17:55:24 | トヨタ

日本経済新聞の文化面の名物コラム、「私の履歴書」に、
明日から、トヨタ自動車名誉会長の豊田章一郎さんが登場します。
章一郎さんは、トヨタ創業者の豊田佐吉の孫で、
せんだってのドラマ「LEADERS リーダーズ」の主人公のモデル、
豊田喜一郎の息子にあたります。
そして、現社長の章男さんの実父にあたります。

章一郎さんの略歴は、まず、
1952年にトヨタ自動車前身のトヨタ自動車工業に取締役として入社。
81年にトヨタ自動車販売の社長に就任。
82年からは、トヨタ自動車工業と自動車販売が合併して誕生した、
トヨタ自動車の初代社長に就任します。
92年に会長に退くまで、10年間にわたってトヨタトップを務めました。

私は、章一郎さんは、トヨタのグローバル時代の基礎をつくったと思います。
三代目社長だった石田退三さんの時代は、
1950(昭和25)年の労働争議が集結したばかりで、
石田さんは、トヨタは「三河の田舎侍」でいいのだと公言していました。
東京に出ていくなんて、考えられなかった。

しかし、四代目社長の豊田英二さんを経て、
五代目社長の章一郎さんの時代になると、82年の工販合併、
そして同年に“東京本社”を構え、この頃からトヨタの社風は
「田舎侍」を完全に抜け出し、国際化の歩みを始めました。
そして、章一郎さんは、94年に経団連会長を務めました。
トヨタは、これを機に日本を代表する企業へ、
また、グローバル企業へと変身します。

しかし、章一郎さんご本人は、大変謙虚な方です。
私は、章一郎さんにインタビューしたとき、こんなセリフを聞きました。
「私は、先人がつくりあげたトヨタのおいしいところを食べただけです」
じつに謙遜な方です。

真偽のほどは定かではありませんが、
「私の履歴書」の執筆をめぐっては、
「郷土の大先輩の平岩外四さんを差し置いて、私が書くわけにはいかない」
といって、断っていたとか聞きます。
平岩さんは、同じく愛知県出身で、東電社長、会長を務め、
章一郎さんの前に経団連会長を務めていた人物です。
ちなみに、その平岩さんは、2007年に亡くなっています。

章一郎さんが、「私の履歴書」の執筆を決断された背景には、
何か理由があると思います。以下は、あくまで私の推論です。
息子の章男さんは、トヨタ社長に就任して5年近くが経ちます。
この間、リーマン・ショック後の大赤字、米国での品質問題、
3.11
によるサプライチェーンの寸断など、難局を乗り越え、
社長業が完全に板についてきました。
章一郎さんが、安心して過去を振り返る心境になったことは、
容易に想像されます。
これから、どんなエピソードが語られるのか、楽しみです。


今どきのテレビドラマ「LEADERS」について愚考

2014-03-26 17:50:31 | トヨタ

先週末に、トヨタをモデルにしたTBSテレビの大型ドラマ
「LEADERS リーダーズ」が放映されました。
知らない会社ではないので、久々にテレビドラマを見ました。
気になることがあったので、その感想を述べてみます。

愛知自動車のモデルは、もちろんトヨタ自動車ですが、
西国銀行のモデルは住友銀行、佐一郎は喜一郎、
洋一郎は章一郎さんがモデルなど、ちょっと知識があれば、
すぐにわかるつくり方になっていましたよね。
日銀総裁の財部登は、一万田尚登さんかな、とかね。

原案は本所次郎の『小説日銀管理』と『トヨタ自動車75年史』とか。
「トヨタ自動車の全面協力」となっていましたから、
どんなドラマになっているのか、興味がありました。
女性がからむあたりは、ドラマですからご愛嬌ですが、
正直、ストーリーより描写が気になって仕方がなかった。

例えば、一つひとつの動きや表情が、かなり誇張されて描かれていました。
顔のアップのシーンが多い。
ショットの使い方など、シーンの組み立て方が、
いちいち、劇画チック。いや、劇画の描写法そのもの。
演出は、あの「半沢直樹」と同じ人なのだそうですから、
こういう撮り方が、いまは視聴者にウケるんでしょうか。

それにしても、どうも劇画チックなシーンばかりが目につきました。
昔とは、ドラマのつくり方というか、
見せ方が変わってきているなという感想です。
集団シーンなどは、CGで描いているので、劇画になるのはわかりますが、
いちいち絵が気になりましたよ。

ほかにも、工場の作業員は、わざとらしく、みんな顔にスミをぬっている。
主人公の手が映るシーンでも、やはりわざとらしいスミが目につく。
いいたいことはよくわかります。でも、一視聴者としては
なんだか白髪三千丈というか、春画手法というか、気になりましたね。
名古屋市内の街並みが中国の町にそっくり。
また、居酒屋の天井が妙に高い……など、ストーリー云々以前に、
細かい点が目につきましたね。
やっぱり、上海の映画村で撮ったようですね。

どうしてこうも、テレビドラマが劇画チックに、
わざとらしくカリカチュアされた表現になったのか。

愚考するに、ネット動画が普及したり、
テレビ番組をスマホやタブレットの小さい画面で見るなど、
視聴者の映像との付き合い方が変わってきているからではないか。

つまり、テレビドラマは、ネットと競合するなかで、
テレビならではの特色を打ち出し、
小さい画面でも楽しんでもらえるよう、試行錯誤をしているのかな。
テレビドラマはいま、迷っているのではないか。
素人目ですが、そんな感想を持ちました。

 


トヨタは高齢化先進国の福祉車両をリードせよ

2014-03-11 18:12:39 | トヨタ

トヨタは、今日、「福祉車両取材会」を開きました。
日本は高齢化先進国です。
2025年にかけての高齢者人口の増加は急激で、
75歳以上の後期高齢者の人口は、00年の約900万人から、
25年には約2178万人と、2.5倍に増えると推計されています。

政府は、超高齢社会を迎えるにあたり、
病院や施設での医療や介護を減らし、
在宅医療や在宅介護へとシフトさせていく方針です。
つまり、今後は、家庭で使える福祉車両のニーズが増えると考えられる。
そこで、自動車メーカーも、福祉車両に注目しているわけですね。

トヨタは、60年代から福祉車両への取り組みを開始し、
現在、国内の福祉車両市場におけるシェアは、約7割にのぼります。
一方、杖や車いすを利用する人口は500万人ほどと見られますが、
そのうち、トヨタの福祉車両を購入している人は、約1%に過ぎません。
つまり、まだまだ、ノビシロがあると考えられます。

福祉車両は、大きく、「介護式(乗せてもらう車両)」と、
「自操式(自分で運転する車両)」に分けられます。
今日の取材会では、両方のタイプが展示されていました。

 

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※自操式のフレンドマチック取付専用車(写真は「アクア」)

新型「ヴォクシー」、新型「ノア」では、今回、大きい車いすへの対応や、
商用車ではない乗用車としては初めて、
ストレッチャーに対応したタイプなどが紹介されました。

さらに、新型「ヴォクシー」「ノア」の福祉車両は、
「普通のクルマ化」を進めたといいます。
従来のスロープ車は、スロープ板が邪魔になって、
荷室への荷物の出し入れの際、いったん、スロープを開く必要がありました。
新型車は、スロープを使わないときには、板を前に倒すことができ、
荷物の出し入れが容易なだけでなく、スロープの上に、
三列目のシートを出すことができるようになっています。


また、車いすを利用しなくなったときには、
車いすを積むスペースに、
後付けのシートを取り付けられるようになりました。
つまり、せっかく福祉車両を買いかえたのに、
介護していた人が亡くなるなど、車いすを使わなくなった場合、
再び車を買い直す必要がなくなるということです。
近年、子育てをしながら介護をするなど、
普段使いのクルマを車いすでも使いたいというニーズがありますから、
「普通のクルマ」化は、当然の流れといえるでしょう。
 

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 ※介護式のリフトアップシート車(写真は「ノア」)

以前にも書いたことがありますが、今後、高齢化が進むのは、
日本だけではありません。世界的に高齢化が進みます。
つまり、福祉車両の需要は、世界中にあるはずです。

北欧など福祉先進国では、ロボットアームのようなもので、
車いすを掴んで持ち上げるような車両も開発されていると聞きますが、
日本には、そこまで大胆に改造された車両は、まだありません。
福祉先進国では、おそらく、政府からの補助金なども出ているのでしょう。
日本は、福祉車両を購入する場合、消費税がかからないだけで、
補助金などは支給されません。
在宅医療や在宅介護を推進する以上、
福祉車両への補助金の支給を考えてもいいのではないでしょうかね。

日本人の感性は、利用者の使い勝手の配慮など、
細やかな気遣いの点で、福祉車両の開発には適しているはずです。
世界一の自動車メーカー、また、高齢化先進国の自動車メーカーとして、
トヨタには、福祉車両の市場や技術を、リードする役割が期待されます。