トヨタの弱点の一つは、レクサスです。
それを証明するかのようなニュースがあります。
2013年度の国内新車販売台数において、
独ダイムラーの高級車ブランド「メルセデス・ベンツ」が、
レクサスを逆転したというのです。
5年ぶりのことです。
5年前、レクサス関係者は、「10年でブランドを確立する」
といっていました。
1989年に米国から始まったレクサスブランドは、
すでに誕生から25年目です。
2005年以降、国内でも展開され、9年目に入りましたが、
まだ、当初イメージしたブランドには育っていない。
実際、これぞというような「いいクルマ」が
レクサスからなかなか出てきません。
確かに、一般人の目から見ても、欧州のベンツやアウディには、
高級車として一日の長があります。
私は、せんだって、オランダでアウディの「A8」に
乗る機会がありましたが、走りのよさは圧倒的です。
重いようで軽やか、軽やかなようで重い。
皮張りのシートのプレミア感。内装の優雅さ。
大人の落ち着き。乗っていて楽しくなる。
クルマ全体の仕上がりの良さは、
筆舌に尽くしがたいというのはオーバーにしても、
脱帽させられましたよ。
それに比べて、レクサスには、「おおっ」と思わず声を
あげたくなるようなサプライズがない。
きらきらする輝きというか、正直、まだまだ個性が感じられません。
トヨタが努力していることは認めます。
レクサスを生産する工場の従業員は、トヨタの従業員とは制服が違う。
彼らにレクサスブランドの自覚をもたせ、モチベーションをあげるためです。
北米でアフターサービスの充実が評価され、
国内販売店でも「おもてなし」を強化していた時代がありました。
スピンドルグリルを採用し、一目でレクサスとわかる顔もつくりました。
ブランド確立に向け、依然として試行錯誤しています。
現在のトヨタは、第一トヨタ、第二トヨタ、ユニットセンター、
レクサスの4事業体からなりますが、これらのうち
レクサス事業「レクサスインターナショナル」は、
社長の豊田章男さんの直轄です。
レクサスが本体に寄り掛かることなく、
早く独り立ちするようにと、独立事業部にしたわけです。
ところがいまだに、どんなレクサス車をつくろうとしているのか、
方向が見えません。
それは、簡単なことではないのはわかりますが、
しかしながら、国内市場というトヨタのお膝元で
ベンツに負けているようでは、
グローバル市場で、確固たる地位を築けるわけがありません。
道は遠いといわざるを得ません。
日経が報じるように、ベンツが好調な要因は、
「Aクラス」や「CLAクラス」など、
300万円台を中心とした低価格戦略にあるにしても、
残念な話ではありませんか。
トヨタは14年3月期、2兆4000億円の利益を出すなど、
順風満帆に見えますが、課題があるとすれば、レクサスの立て直しです。
レクサスブランドは、ワールド・プレミアブランドとして、
いまだ確立されていない。
今後、章男さんがもっともっと苦労を重ねながら立ち向かい、
成し遂げなければならない、大きな大きな課題だと思います。